2022年3月31日 衆院本会議 薬機法改正案 安全性確保できるか 宮本徹氏ただす
パンデミックなど緊急時にワクチンなどの医薬品使用を緊急承認する制度を導入する薬機法改正案が31日の衆院本会議で審議入りし、日本共産党の宮本徹議員が質問しました。
改正案は医薬品の有効性が確認されれば、臨床試験の途中段階でも期限付きで承認するものです。
宮本氏は、緊急時でも安全性・有効性がないがしろにされてはならないと主張。2020年に安倍晋三首相が承認したアビガンは、139億円の予算で200万人分備蓄したが新型コロナに有効性を示せなかったとして、時の権力者の意向による承認はないと断言できるかとただしました。
岸田文雄首相は「科学的なエビデンス(根拠)に基づき、公平かつ公正に手続きを行う」と述べました。
宮本氏は、第3相試験(検証的臨床試験)結果の前に確認できる安全性には限界があり、期限内に改めて行う承認申請は第3相試験の成績の提出を原則とすべきだと指摘。「国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがある」という規定だけでは、緊急承認がどこまでも拡大される恐れはないかとただしました。
岸田首相は、原則として成績の提出が必要で、新型インフルエンザや新型コロナウイルスと同等のまん延状況を規定していると述べた上で、「一定の有効性が推定されない限り、緊急承認の対象にはならない」と答えました。
宮本氏は、メリットを上回る重大な副反応や副作用が判明することがあり得るとして、情報収集と解析、監視体制が重要だと指摘。積極的で迅速な救済制度を求めました。
以上2022年4月1日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年3月31日 第208回衆院本会議第16号 議事録≫
○副議長(海江田万里君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 日本共産党を代表して、薬機法等改正案について質問いたします。(拍手)物価の急激な上昇が、国民の生活となりわい、日本経済に深刻な影響を与えております。緊急に補正予算を組み、消費税減税、年金削減中止、行き過ぎた円安政策の見直しなどなど取り組むべきであります。新型コロナウイルス対応予備費の活用は、財政法違反の目的外使用ではありませんか。総理の答弁を求めます。さて、安全で有効な治療薬とワクチンは、人々の命を守り、人類がパンデミックから抜け出すために決定的な役割を果たします。パンデミックへの対応で、緊急時の使用許可、薬事承認の制度は必要です。しかし、緊急時であっても、安全性、有効性がないがしろにされてはなりません。薬害の温床になるような制度であっては決してなりません。政府は、新たに設ける緊急承認の制度について、安全性については確認を行い、有効性については推定すると説明します。何をもって有効性が推定できるとするのでしょうか。二〇二〇年五月、安倍元総理が今月中の承認を目指したいと前のめりになったアビガンは、百三十九億円の予算を組み、二百万人分を備蓄しましたが、その後、新型コロナウイルス感染症に対する有効性を示すことができませんでした。岸田総理に伺います。時の総理が有効性が確認されていない個別の治療薬の薬事承認に口を出すなど、あってはならないことなのではありませんか。本法案により、時の権力者の意向で、有効性が確認されていない医薬品が承認されることは絶対ないと断言できますか。次に、本法案の緊急承認の制度では、例えば、アビガンの観察研究、臨床試験で示されたデータで有効性が推定されるものとなるのか、伺います。さらに、感染力を持つウイルスの量が有意に減少することは確認できたが、症状改善の効果はプラセボと比べて統計学的に有意な差は認められないようなケースは有効性が推定されるものとなるのか、伺います。安全性についてです。第三相試験の結果が出る前に確認できる安全性には限界があるのではありませんか。医薬品の安全性、有効性は、人種差、民族差がある場合があります。緊急承認の制度では、海外でしか治験が行われていない場合、日本人が使用した場合の安全性と有効性をどのように確認、推定するのでしょうか。期限内に改めて行う承認申請については、通常の承認申請と同様の第三相試験の成績の提出を原則とすべきであります。次に、発動の要件です。国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのある疾病の蔓延その他の健康被害の拡大を防止するためという法案の規定のみでは、何が緊急かはどこまでも拡大されるおそれはありませんか。また、海外で許可された治療薬とワクチンがコロナの特例承認で使われております。これらと比べて効能、効果がはっきり劣るものは、緊急承認の対象となり得るのでしょうか。次に、市販後の安全対策について伺います。緊急承認した場合、使用を広げる中で、効果に欠けていたり、メリットを上回る重大な副作用が判明することがあり得ます。この場合、政府は、二年間の期限を待たずに速やかに承認を取り消すのでしょうか。かつて、スピード承認されたイレッサでは、多くの方が副作用、間質性肺炎で亡くなりました。有効性は第二相試験における腫瘍縮小率によって判断し、延命効果の証明が承認の条件とされました。ところが、第三相試験で有効性の証明ができなかったにもかかわらず、承認は取り消されませんでした。日本だけが、有効性のない患者にも使用を続けました。こうした薬害の歴史を絶対に繰り返さない、法的な担保はありますか。緊急承認する場合、その後の有効性や副作用、副反応等の徹底した情報収集と解析、監視の体制が極めて重要であります。特例承認した新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、接種後の死亡の九九%以上が情報不足により評価不能とされ、安全対策に生かされておりません。情報不足であっても因果関係が否定できないものは、安全対策に生かすべきであります。小さなシグナルも検出できるよう、米国のVSDのように、ワクチン接種の記録とその後の診療データを組み合わせて追跡調査できる仕組みを設けるべきではありませんか。また、市民自らが副反応、副作用を容易に報告できる仕組みも設けるべきであります。さらに、新型コロナワクチン接種後の重篤な症状の機序や治療法の研究を進めるべきであります。答弁を求めます。次に、健康被害の救済についてであります。緊急承認された医薬品は現行の救済制度の対象とするとしていますが、そもそも有効性等について推定であり、救済制度もそれに応じて支給要件を緩和すべきではありませんか。新型コロナワクチン接種後の死亡について、救済されたものはいまだありません。国には、積極勧奨した責任があります。根拠を持って因果関係を否定できるもの以外は、積極的に救済の対象にすべきであります。また、書類を集めるのにも大変な時間と労力がかかり、国に申請後も、審査に更に数か月かかります。仕事ができず、生活に窮する事態も生まれております。救済の思い切った迅速を図るべきではありませんか。以上を指摘し、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員にお答えいたします。物価高騰への対応についてお尋ねがありました。ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするため、今月二十九日に、原油価格・物価高騰等総合緊急対策の策定を指示いたしました。その際、新たな財源措置を伴うものについては、まずは、一般予備費、コロナ予備費を活用した迅速な対応を優先してまいります。そして、コロナ予備費については、本予備費の趣旨に該当しているか否かなど、個別具体の施策の内容に基づいて判断されることになると考えております。今後、具体的な施策の検討を進め、四月末をめどに本対策の取りまとめを行ってまいります。緊急承認制度における有効性の考え方についてお尋ねがありました。今般創設する緊急承認制度は、安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組みとしています。有効性の推定については、例えば、後期第二相試験の成績により、一定の有効性があると考えられる場合を想定しています。申請者から提出されたデータに基づき、専門家の意見も踏まえつつ、総合的に審査することとしており、個々のケースについて予断を持ってお答えすることは困難ですが、いずれにせよ、緊急承認制度も含め、薬事承認に当たっては、科学的なエビデンスに基づき、公平かつ公正に手続を行ってまいります。なお、お尋ねのアビガンは承認審査中であり、その取扱いについてはお答えすることを控えます。安全性の確認等についてお尋ねがありました。安全性については、通常の薬事承認と同等の水準で確認することとしており、第三相試験の結果が出る前であっても確認できるものとされています。また、日本人での臨床試験が実施されていない場合であっても、海外の臨床試験のデータや科学的な知見に基づき、人種差や地域差の懸念があっても高いベネフィットがあると推定できる場合には、日本人での有効性を推定でき、また、同様のデータ等から安全性が確認できるものとされています。期限内に改めて行う承認申請にあっては、原則として、通常の承認申請と同様に第三相試験の成績の提出が必要とされており、個々の品目ごとに適切に対応してまいります。緊急承認制度の適用についてお尋ねがありました。緊急承認制度は、緊急に使用する必要があり、他の医薬品での代替が困難な医薬品を制度の対象とすることとしています。緊急性については、感染者の急速な増加等の状況を踏まえ、当該医薬品を緊急に使用する必要があるかを勘案することとしており、具体的には、新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同等の疾病の蔓延状況を想定しています。また、個々の製品の承認については、安全性の確認を前提として、一定の有効性が必要であり、一定の有効性が推定されない限り、緊急承認の対象にはなりません。また、期限内に、通常の承認申請と同様に有効性を確認し承認することとしております。市販後の安全対策等についてお尋ねがありました。今般創設する緊急承認制度は、市販後の安全対策の中で重大な副作用が判明した場合等に、速やかに承認を取り消すことができる仕組みとしています。市販後は、製造販売業者による医薬品安全性監視計画の策定や、患者自らが医薬品の副作用やワクチンの副反応が疑われる事例を報告できる仕組みなどを活用し、しっかりと安全対策を行ってまいります。また、新型コロナワクチン接種後の死亡事例については、情報不足により評価不能とされた事例も含め、集団としての傾向の評価を行い、安全対策に活用しています。引き続き、新型コロナワクチン接種後の症状に対しては、治療法を含め、必要な研究を行ってまいります。さらに、予防接種の実施状況と副反応と疑われる症状の発現状況等を個人単位で連結し、効果的に報告、把握するシステムがないことが課題となっていると承知しており、予防接種の安全性等に関する調査をより的確に行うためのデータベースの整備に向けた具体的な検討を進めてまいります。健康被害の救済についてお尋ねがありました。緊急承認された医薬品については、通常承認と同水準で安全性の確認を行うことを前提としており、その健康被害に対しては、現行の医薬品副作用被害救済制度に基づく救済の対象とすることが適切と考えています。また、新型コロナワクチンによる健康被害については、予防接種健康被害救済制度により、国の審査会が因果関係を認定した場合に迅速に救済を行うこととしており、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も含め、救済の対象としています。さらに、一定の場合に診療録等の提出を不要とし、国の審査会に新たに新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会を設置するなど、救済の迅速化を図っています。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。