2022年5月10日 衆院内閣厚労連合審査会 保育士配置基準上げて 公定価格抜本引き上げを

配付資料 出典:「保育分野の業務負担軽減・業務再構築のためのガイドライン」(2021年3月厚生労働省)
配付資料 出典:全国福祉保育労働組合作成資料
配付資料 出典:内閣府ホームページ

 日本共産党の宮本徹議員は10日の衆院内閣・厚生労働両委員会の連合審査で、こども家庭庁設置法案に関連し、保育士の配置基準と公定価格の抜本引き上げを求めました。
 宮本氏は、英国の配置基準は4、5歳児8人に対し保育士1人だが、日本では30人に1人の保育士配置で、戦後直後から変わっていないと言及。直ちに引き上げるべきだと迫りました。野田聖子こども政策担当相は「毎年度の予算編成過程で財源確保に努める」などと答弁しました。
 宮本氏は「ずっと同じ答弁だ」と批判した上で、内閣府の資料では1日11時間・週6日保育所開所に必要な保育士の労働時間は513時間で、公定価格で530時間カバーできるとするが、このうち約80時間は人件費ではなく「業務省力化」名目の管理費だと指摘。業務省力化費は保育士1人当たり、年額32万円にすぎず、単純計算で最低賃金以下の時給800円になることを明らかにし、公定価格に基づいた保育士配置では法令を順守したシフトは組めないとただしました。野田担当相は「あらためて確認した」と述べるだけで、内閣府の藤原朋子子ども・子育て本部統括官は、公定価格でシフトを組める根拠を述べることができませんでした。
 さらに宮本氏は、厚生労働省の資料では「休憩時間がとれない」との声が紹介されており、労基法違反が常態化していると質問。後藤茂之厚労相は「当然課題として直されるべきものだ」「休憩時間の確保は適切な労働環境だけでなく、保育の質の向上からも重要だ」と答えました。

以上2022年5月11日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年5月10日 第208回衆院内閣委員会厚生労働委員会連合審査会第1号 議事録≫

○上野委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、保育園の配置基準と公定価格についてお伺いをいたします。例えば、イギリスでは、ゼロから二歳児は保育士一人に対して子供三人、四、五歳児は一対八ですが、我が国では、一、二歳児は一対六、四、五歳児は一対三十と、一人一人の成長と安全、命に関わるにもかかわらず、四、五歳の配置基準は戦後直後から変わっておりません。こども家庭庁をつくり、こどもまんなかというのであれば、配置基準は直ちに引き上げるべきだと思いますが、いつ引き上げますか。
○野田国務大臣 お答えします。教育、保育の質の向上のためにも、保育士等の職員配置の改善を図っていくことは重要な課題と考えています。三歳児に対する職員の配置改善に関しては、平成二十七年度から取り組んでいます。一方、いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項については、一歳児や四歳、五歳児の配置改善については未実施となっている次第です。子供政策に関する財源確保については、基本方針においても、政府を挙げて、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討を進め、確保に努めていくこととしています。一歳児、四歳児、五歳児の配置改善などの〇・三兆円超の事項についても、引き続き、毎年度の予算編成過程において財源の確保に努めてまいります。
○宮本(徹)委員 だから、こども家庭庁をつくることに行っているわけですけれども、前の答弁と変わらないですね、今お伺いしていましたら。毎年度の予算編成過程で確保に努めるというのも、ずっと同じ答弁ですよ。これはやはり変わらなきゃまずいと思うんですね。今日議論をしたいのはその先なんですね。この余りにも低過ぎる配置基準を基に公定価格が定められておりますが、実際は、その低い配置基準を裏づける費用も公定価格に見積もられておりません。労働基準法は、一日八時間、週四十時間労働を原則としております。一方、保育園は、一日十一時間、週六日、六十六時間開所、これが基本です。そもそも、今の公定価格に基づく保育士の人数で、休憩時間や配置基準など法令を遵守してシフトを組むことは可能なのか。野田大臣にお伺いしますが、子供八十九人、公定価格上で保障された常勤保育士十一人の場合、週六日、六十六時間開所のシフトの具体例を示すことはできますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。保育所は一日十一時間の開所を原則としており、公定価格においても、一日十一時間、週六日の開所を想定して積算をしているところでございます。委員がお示しされているケースについて申し上げれば、朝七時から十八時までの十一時間が公定価格の対象となり、十八時以降については延長保育事業において別途措置をされております。また、朝の登園時や夕方の降園時は徐々に子供が登降園するという実態がございます。こうした前提の下、公定価格においては、登降園時の児童数に応じた職員配置とすることや、子供が少ない時間帯における短時間の非常勤職員の活用を念頭に措置をしておりまして、実際の現場においてもそのような対応が行われていると考えております。ただ、一方で、保育所等の現場におきましては公定価格上の配置基準を超える職員が配置されている実態があると承知をしており、教育、保育の質の向上のために、保育士等の配置の改善を図っていくことは重要な課題だと考えております。先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、昨年末に閣議決定をいただきました基本方針も踏まえまして、〇・三兆円超の事項についても引き続き財源の確保に努めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 具体的なシフト例というのを実は現場の保育士の皆さんが示してくださいということをずっと求めているんですけれども、示せないんですよ。なぜかというと、組みようがないというのが元々あるんです。しかも、私が事前に内閣府からいただいた資料があるので、今日、配付資料三ページ目につけていますけれども、計算上は可能だというふうに資料を持ってきたんですけれども、随分なでたらめなんですね。三ページ目を見ていただきたいんですけれども、設備運営基準上必要とされる保育士は延べで五百十三時間分です、公定価格上措置されている保育士は五百三十時間分ですと持ってきました。ところが、この一、二、三までは実際の保育士ですね。四は業務省力化ということが書かれていて、これが約八十時間分あるんですね。じゃ、この業務省力化分の経費というのは幾ら出しているかというのは、大臣、御存じですか。年額、一人当たり三十二万円なんですよ。実は、これで一人当たり週八時間分の業務省力化費を計算しているんですね。ですけれども、年三十二万円を週八時間で単純に割ったら、時給八百円になるんですよ。最低賃金以下ですよ。ですから、年額三十二万円で毎週八時間分の保育士確保というのは法律上できないわけですね。ですから、この五百三十時間分、公定価格上措置されている保育士でカバーできるんですというのは全くのでたらめなんですね。しかも、この政府資料では業務省力化というのをここに入れていますけれども、その資料の裏面の四ページ目を見ていただければと思いますが、この業務省力化というのはどこに入っているかといいますと、人件費、管理費という区分がありますけれども、管理費の方に入っているんですよ。人件費に充てていないものをわざわざ人件費の側に回して、あたかもこれで公定価格上保育がちゃんとできるだけの人数を保障していますというふうな説明をしているわけです。この資料は内閣府のホームページに出ているんですよね、堂々と。いろいろな審議会でも出している資料なんですね。こういうごまかしをやっているというのを、野田大臣、御存じでしたか。知っていたかどうかだけでいいですから。参考人に聞いていません。参考人に聞いていません。野田大臣が知っていたかどうか。
○野田国務大臣 詳細な数字とかは存じておりません。今委員からも御指摘がありまして、事前に、この委員会に出席するに当たって、改めて確認をさせていただきました。
○宮本(徹)委員 改めて確認していただいて、これは随分なでたらめだというふうに思いませんでしたか。いやいや、それは大臣に答えてもらわないと。役所は答えられないですから。役所の人はもういいですよ。
○上野委員長 内閣府藤原子ども・子育て本部統括官。まず、藤原さん、お願いします。
○宮本(徹)委員 聞いていないんだから。ちょっと、委員長、おかしいでしょう。
○上野委員長 まず、技術的な説明をお願いします。
○藤原政府参考人 御指名いただきましたので、御答弁申し上げます。公定価格では、週六日の開所に対応するため、保育所の人件費につきまして、配置基準に基づく保育士数、それから休憩時間に対応する保育士数一名、それから、十一時間開所に対応するための保育士に加えまして、今委員が御指摘いただきました業務省力化の改善費として上乗せをしております。これらの公定価格の全体によりまして、土曜日も含めて週六日の開所を行っていただくということにしております。ただ、大臣からも答弁申し上げたとおり、配置改善は非常に重要でございますので、毎年の予算編成過程でしっかり努力をしていきたいということでございます。
○野田国務大臣 詳細は今参考人が申し上げたとおりで、しっかり配置基準に取り組んでいきたいと思います。
○宮本(徹)委員 今の説明、全く説明になっていないじゃないですか。もう本当にいいかげんなんですよ。ちなみに、仮に五百三十時間分つけたとしても、それでシフトを組もうと思ったら、はちゃめちゃなものしか組めない、現場からすれば。真ん中をずっぽり三時間も待機時間を設けるとか、そんなことをしない限り、まともなシフトは組めないんですね。法令を遵守して現実的なシフトが組めるようなお金というのは、公定価格上、今措置されていません。これは、是非、大臣の目で検証していただきたいと思います。だからこそ、今、経営実態調査でも、公定価格上の保育士の配置人数十二・三人に対して、実際の配置人数は十六・七人というふうになっているんですよ。組みようがないから、現場はそうやって組んでいるわけです。給与を薄まきにして運営しているのが実態なわけです。ここは本当に根本的に変えなきゃいけないということを申し上げておきたいと思います。さらに、資料の一ページ目を御覧いただきたいと思うんです。これは、厚生労働省の保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドラインのあるページですが、ここに、休憩時間が取れないという典型的な声が紹介されております。休憩中に書類などの業務を行っているために実際には休めていない、休憩時間は与えられているが、保育から完全に離れることができないため休んだ気がしない。後藤大臣に来ていただきましたけれども、これは労基法違反ですね。
○後藤国務大臣 労働基準法違反かどうかは個別の事案ごとに判断するために、御指摘のガイドラインの記載のみで法違反かどうかは一概にお答えできませんが、一般的には、労働基準法における休憩時間とは、労働者が労働から解放され、自由に利用することが保障されている時間のことをいいます。このため、休憩時間とされていても、実際には業務に従事した場合や、労働から離れることが保障されていない状態で待機等をしていた場合、いわゆる手待ち時間でございますが、これは労働時間として扱われるものでございます。なお、御指摘のガイドラインの記載は、保育現場に向けて業務改善の実践に向けた取組方法を示すに当たり、解決すべき課題の例として記載しているものであるわけでございまして、当然、課題として直されるべきものの例であると思います。
○宮本(徹)委員 労基法違反は明確だと思うんですよね。ですから、今の低い配置基準に基づく公定価格では、給与を薄まきにして保育士を現場は増やしておりますが、それでも足りなくて労基法違反が常態化しているというのが厚生労働省自身の認識なわけですよね。休憩時間が取れないと注意散漫になって、子供の安全と発達保障にとって極めて重大なことになると思いますが、それはそのとおりですよね。
○後藤国務大臣 保育所において、保育士が休憩時間を確保することは、適切な労働環境の確保という観点だけではなくて、保育の質の向上の観点からも非常に重要であると認識をいたしております。
○宮本(徹)委員 この間、重大な事故もあるわけで、安全のためにも保育士を増やす必要があるというのははっきりしていると思います。報道を見ていましたら、今年、東京二十三区では、世田谷を除いて保育園の申込みの人数が減り、過半数の区でゼロ歳児の空きも三桁になっているということであります。政府の見込みでは、保育所の利用児童のピークは二〇二五年度とされておりますが、その基になっている国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計よりも出生数は大きく落ち込み続けております。出生数が減り、利用児童数がピークを越えて漸減する下で、安易に保育園を廃園するのではなくて、配置基準を改善するチャンスとして今取り組む必要があるのではないかと思いますが、野田大臣、いかがですか。
○野田国務大臣 近年、出生数は減少傾向にあります。また、厚生労働省の地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会の取りまとめにおいて、人口減少地域においては、定員割れなどにより保育所の運営が困難になってきているなどと指摘をされているところです。同検討会の取りまとめでは、保育所を多機能化して、地域の子育て支援の中核的機関とするなど、地域の実情に応じて必要な機能を選択し、展開することについても真剣に検討するべきとも指摘されております。人口減少地域等においては、保育所等が地域の子育て支援に対する多様なニーズに応えていくことが重要だと考えています。他方、教育、保育の質の向上を図るためにも、保育士等の職員配置の改善を図っていくことは重要な課題と考えています。三歳児の配置改善に関して、平成二十七年度から取り組んでいます。一歳児や四歳、五歳児の配置は、先ほど申し上げたように、配置改善についてはいわゆる〇・三兆円超の質の向上事項とされていて、現在のところは未実施となっています。子供の政策に関する財源確保については、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針においても、政府を挙げて、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討を進め、確保に努めていくこととしておりますので、一歳児や四歳児、五歳児の配置改善など〇・三兆円超の事項についても、引き続きしっかり毎年度の予算編成過程において財源の確保に努めてまいります。
○宮本(徹)委員 保育所等の整備交付金がこの間減ってきているんですけれども、二〇一四年度、二〇一七年度、二〇二二年度は幾ら予算を組んでいますか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。保育所等整備交付金の当初予算額では、二〇一四年度、平成二十六年度は約千三百一億円、これは安心こども基金の内数でございます。平成二十九年度は五百六十四億円、令和四年度は四百十七億円というのが当初予算の額でございます。ちなみに、令和元年、二年度、三年度の補正後の予算額で見ますと、それぞれ、八百九十六億、八百五十五億、九百二十六億円、このような状況になってございます。
○宮本(徹)委員 ぐっとここに来て保育所等整備交付金の額も下がってきていますので、しかも、これから保育所に入る方が低くなれば、公定価格という点でも、予算も減っていくことになるのは目に見えているわけですね。ですから、予算の面でも人の面でも配置基準を改善する、ある意味、いい機会が来ているわけですから、こども家庭庁、こどもまんなかというのであれば、本当に真剣に子供の権利のために配置基準を改善する、このために決意を持って取り組んでいただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。