靴型装具に 従来通り 保険適用を

 「義肢装具士ではない技術者がつくる障害者用の靴型装具を、これまで通り保険適用してほしい」―。足に障害のある人や靴型装具の技術者らが、衆院議員会館で2万7800人余の署名簿を厚生労働省に提出、同省の担当者に要望しました。日本共産党の宮本徹衆院議員が同席しました。
 健康保険制度では、リウマチなどで足が変形し、市販の靴が履けない人たちに、医師の指示で医療用の靴(靴型装具)が提供されてきました。ところが、2018年以降、保険適用されずに全額自費となった事例が出て、傷害がある患者に深刻な影響が出ています。
 発端は厚生労働省が18年に出した通知。不正防止のため、業者の領収書に、装具提供の責任者として義肢装具士の名前を書くことを求めました。
 その結果、義肢装具士でない技術者が、医師の指示で製作した装具について、これまでは保険適用していたのに、適用しない保険者が出てきました。「義肢装具士の名前」の記載がないというのが理由です。
 署名提出と厚労省への要望には、首都圏や福岡県から患者、靴型装具の技術者が参加。厚労省からは担当職員4人が応対しました。
 要望は、厚労省通知「治療用装具の療養費支給申請に係る手続きについて」の訂正です。「治療用装具を取り扱った義肢装具士の氏名」を義肢装具士に限定せず、「治療用装具を取り扱った技術責任者の氏名」にするなどです。
 義肢装具士でない技術者による靴型装具を長年提供してきた「足と靴の相談室ぐーぱ」(福岡県大牟田市)の田中隆基さんは、両足関節亜脱臼の患者の例を紹介しました。義肢装具士が関与し、保険適用でつくった靴は、痛くて歩けず、結局は返品。このため、自費でもいいからと、同相談室で医師の指示に従って靴型装具を製作しました。
 国民健康保険を運営する大牟田市は当初、保険適用しない方針でした。田中さんたちは、2年にわたって市と協議し、昨年同市は保険適用を決めました。「市は法令、関係通知などを詳細に検証し、義肢装具士でない技術者が医師の指示に基づいて提供する装具にも、法と実態に即して支給するようになった」と同市の努力も示し、通知の訂正を求めました。
 東京・新宿区の川村憲明区議(日本共産党)は、「新宿区の国保の加入者は、従来通り支給されているのに、75歳(障害者は65歳)になって東京都後期高齢者医療広域連合の加入者になったとたんに不支給になる。厚労省は患者の立場に立って、対処してほしい」とのべました。
 患者のリウマチ患者の女性(60)は「この靴で行動範囲がすごく広がった。元気を与えてくれた靴です。自費では、部屋履き用までは作れず不自由している。私たちの実情をわかってほしい」と訴えました。
 厚労省側はこの日「通知は変更しない」と回答。参加者の疑問や質問には、あいまいな答えに終始しました。
 署名をよびかけた「NPO法人よかよかネットワーク」(大牟田市)の永江二郎さんは、「もうあしかけ4年にわたって厚労省とのやりとりが続いている。しかし、なぜ不支給なのか、ちゃんとした回答がない。患者が裁判を起こすしかないというのは、理不尽としかいいようがない。私たちはあきらめるわけにはいかない」と抗議しました。
 この問題を国会質問でとりあげてきた宮本議員は「靴型装具の問題は人権にかかわる。厚労省のみなさんが、患者の声をきちんと受け止めてなんとかしたいと思えば、いまの現状を変えることができるはず。だれのための保険制度かよく考えていただきたい」とのべました。

以上2022年6月20日付赤旗日刊紙より抜粋