2022年11月16日 衆院厚生労働委員会 強制保護入院調べよ 宮本氏が形骸化を指摘

 日本共産党の宮本徹議員は16日の衆院厚生労働委員会で、精神福祉法や難病法など五つの法案を束ねた障害者総合支援法改定案について、市町村長同意による精神障害者を強制入院させる医療保護入院の問題を追及しました。
 宮本氏は、家族がいない場合や同意を得られない際に市町村長の同意で強制入院が可能となる医療保護入院について「形骸化しているという声が立場を超えて指摘されている」と強調。「実態把握を法施行後に行うようだが、今やるべきではないか」と迫りました。
 加藤勝信厚生労働相は「改正案の施行にあたって、同意のプロセスが適正か把握していきたい」と述べ、施行前に調査しない考えを示しました。宮本氏は「形骸化しているもとで市町村長同意の対象を拡大してよいのかが問われている。いま調査し、立法事実があるのかはっきりさせる必要がある」とただしました。
 宮本氏はまた、精神医療審査会が医療保護入院や定期報告について、書類審査のみで入院者と面談するなどの実質的な審査ができていないと指摘。「審査員の常設化や大幅な増員が必要だ」と追及。加藤厚労相は「精神保健医には限りがあり、審査会に指定医の大幅増員は現実的には難しい」と述べるにとどまりました。

以上2022年11月24日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月16日 第210回衆院厚生労働委員会第9号 議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。法案の前に一点、昨日、報道を見て大変驚いたんですけれども、統一協会で、教団が関わって、教義に基づいて養子縁組が七百四十五組も行われていたと。信仰上の目的を達成するための養子縁組で、子供の福祉に反すると思います。養子縁組あっせん法に基づく都道府県知事の許可も得ておりません。大臣、これは養子縁組あっせん法、児童福祉法に抵触するんじゃありませんか。
○加藤国務大臣 報道は承知をしております。どのような組織であっても、養子縁組あっせん法に規定する許可を受けずに、養子縁組あっせんである、養親希望者と児童との間を取り持って養子縁組の成立が円滑的に行われるように第三者として世話をすることを反復継続的に行うのであれば、それが金銭の授受にかかわらず、同法に反するものであるというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 これは早急に調査をしなければいけないと思いますけれども、今週中に調査は開始されるということでよろしいんでしょうか。
○加藤国務大臣 御指摘のその報道を受けまして、昨日、事務方に対して、養子縁組あっせん事業に当たる行為がいわゆる旧統一教会の中で行われているかどうか、事実確認の確認を行うよう指示したところでございます。現在、世界平和統一家庭連合本部の所在地を管轄する東京都と厚労省の連名でこうした事実確認の確認の質問書を提示し回答を求めるという方向で調整を行っているところでございますので、その確認結果を踏まえ、必要な対応を更に検討していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 早急な調査をお願いしたいと思います。法令違反が確認されれば、これは宗教法人法に基づく解散命令請求の新たな一つの要件を満たしていくことになるのかなというふうに思っております。法案についてお伺いします。私からも、まず、午前中の参考人質疑に関わって、何点かお伺いしたいと思います。市町村長の同意による医療保護入院について、これが形骸化している、こういう声が、立場を超えて今日の午前中は参考人の方から御指摘がございました。適切な入院の判断ができない、入院後全然関わっていない、こういうことがあるわけです。先ほど、田中委員とのやり取りで、この市町村長同意の医療保護入院について実態把握を行うような答弁がありましたけれども、先ほどの答弁を聞いていると、これは法施行後にやるかのように聞こえたんですけれども、そうじゃないと思うんですね。やるべきは、そもそも、今、市町村長同意で医療保護入院を拡大していいのかどうか、ここを今調べなければいけないんだと思います。その点、現状、問題点、この市町村同意による医療保護入院について、今、このタイミングで実態調査を始める必要があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今回の改正案で、今委員がお話しになったような中身にさせていただいておりますし、同時に、病院から家族への説明、市町村の同意のプロセスも適正に実施されていくということが必要でありますので、先ほど申し上げたように、改正案の施行に当たって、こうしたものがしっかりとなされているか、こうしたことを把握していきたいということを先ほど申し上げたということでございます。
○宮本(徹)委員 改正案の施行に当たってというのは、施行の後なんですか、その前にやろうということなんですか。
○加藤国務大臣 施行後、実際、施行された中においてどう実施されていくのか、その辺も含めてしっかりと把握していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 施行されたらその問題点をつかむのは当然のことだと思うんですけれども、そもそも、市町村同意そのものが形骸化していると、今日、与党の推薦の参考人の方からも厳しい指摘が出ていたわけですよね。そんな形骸化しているものの下で市町村同意の対象を拡大していいのかというのが問われているわけですから、私は、法施行後ではなくて、今やって、立法事実が本当にあるのかないのかというのをはっきりさせる必要があると申し上げておきたいというふうに思います。それから、もう一点。今朝の参考人質疑の中で、入院期間を定めても、更新回数の上限がなければエンドレスに強制入院が続くという指摘がありました。中でも、精神医療審査会がマンパワー不足で実質的な審査がなかなかできないんだという話が、これも与党、野党を超えての参考人からの指摘がありました。私は、この精神医療審査会がやはり全ての強制入院について実質的な審査をしっかり行っていく、書類審査だけではなくて、入院後速やかに入院者との面談も実施すべきだと思います。そのために、常設化だとか審査委員の大幅な増員、これが必要なんじゃないでしょうか。
○加藤国務大臣 精神保健指定医には、先ほども答弁申し上げた、限りがあります。医療機関で患者に必要な医療を確保する観点から、精神医療審査会の審査を行う指定医の大幅増員を図ることは、なかなか現実的には難しいと考えております。患者から退院請求がなされた場合には、原則として患者の意見を聴取する、行うこととしておりますが、さらに、今般の改正案では、精神科病院に入院中の患者について、患者を訪問し、患者の話を傾聴する入院者訪問支援事業を新たに設けたところでありますので、こうした体制をしっかりとしいて整備をしっかり図っていくことを通じて、先ほど委員が御指摘がありましたような、適正に執行がされるように努力をしていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 お医者さんを増やしていくということも私は是非取り組んでいただきたいと思いますし、併せて、常設化ですよね、今、皆さん、パートタイムでやられているわけですから、常設化することも含めて是非検討していただきたいと思います。あわせて、今日、参考人で、JPAの辻さんが、難病法の関連で何点か要望を述べられておられました。一つは、症状が重症化した際の医療費助成の開始の時期を重症化時点に遡る期間について、指定医が申請に必要な臨個票を作成するのに二週間から一か月かかる、指定医のいる病院は決して身近な医療機関ではないことや、医療機関や申請窓口が平日しか開いていないことなどを考えると、入院などしていなくても一か月では余裕がない、原則三か月、これをお願いしたいという話でした。全ての患者が安心して適切な治療が開始できるよう、これについては十分な期間を設定すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今般の改正案で、難病の医療費助成について、申請日から重症化時点に遡って開始する仕組みに見直すわけでありますが、申請日から遡る期間の限度については、本年七月、患者団体も参加する関係審議会において御議論いただきました。個々の事情により様々なケースが考えられ、原則一か月としつつ、入院その他緊急の治療が必要であった等の事情がある場合においては、前倒しの期間はおおむね三か月程度が妥当ではないかとされたことを踏まえて定めることとしており、関係者の議論に沿った適切な期間と認識をしているところであります。申請日から遡って助成する事情の有無については、患者からの医療費助成の申請書にチェックボックスをつけるなど、簡易に地方自治体が確認できる方法とすることでしておりますし、また、改正案が成立した暁には、その施行に当たって通知やQアンドAで具体的なケースをお示しすることにより、可能な限り、全国的に、そしてスムーズな取扱いがなされるよう努めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 これはせっかく遡りの制度を設けるわけですから、間に合わないということで重症化時点に遡っての適用が受けられないという方が出ないように、しっかりとした運用をなされるように定めていっていただきたいと思います。もう一点ですけれども、登録者証については、マイナンバーとの連携に不安の声が上がっているということでした。疾病名だとか病状がひもづいたら心配だという声もあるということをおっしゃっておられました。希少疾患や遺伝性疾病等への偏見や差別などにつながらないようにしなければならないと思います。また、マイナンバーカードを持たずに、あと、通知カードもなくした人や、あるいはマイナンバー連携をしたくない人、あるいはデータベースに登録したくない人も、希望すれば登録者証が利用できるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今般の改正案で、指定難病の患者の方々が福祉、就労等の各支援を円滑に利用できるようにするため、患者が指定難病にかかっている旨を証明する事業として、いわゆる登録者証の発行をまず行うこととしております。また、現行の難病制度におけるマイナンバー連携の状況も踏まえ、患者の利便性の向上、また自治体における発行事務の負担軽減を図るため、登録者証をマイナンバー連携の対象としているところであります。登録者証のマイナンバー連携による情報流出等が要因で、疾患情報を基にした偏見や差別につながってはならないことは当然のことであります。マイナンバーカード自体に登録者情報が入らないこと、本人確認手続が厳格であることから、仮にマイナンバーカードを紛失した場合であっても、不正に難病患者等であることやその疾病名を知ることは困難であると認識をしておりますが、実際にマイナンバー連携する難病患者等の情報の内容は、福祉、就労支援の窓口で必要となるということでありますから、その情報として、指定難病患者であることといったことに限る、いわゆる疾病名は含まない、そういった方向で検討していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 後段にお答えになっていないんですけれども。
○加藤国務大臣 マイナンバーカードを持たない方への対応ということであります。指定難病患者データベース等へのデータ登録を希望しない場合であっても、指定難病に罹患している等の要件を満たす場合には登録者証を発行することができるわけであります。また、何らかの事情によって手元にマイナンバーカードがない方について、指定難病患者であることを確認する方策に関しても、関係団体等の皆さんの意見も幅広く聞きつつ、丁寧に検討していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 この登録者証の制度ができれば、毎回毎回福祉サービスを使う際に診断書を取り直すということがなくて済む、経済的負担の軽減という点では大変いい制度だと思いますので、これはあまねく希望される方が受けられるような運用をお願いしたいというふうに思います。続きまして、通過型グループホームの創設についてお伺いをしたいと思います。東京は既に通過型グループホームがあります。私の知人のNPO法人は、現在、滞在型のグループホームと通過型のグループホームを運営しております。実は、二つ目のグループホームをつくるときに、元々二つ目も滞在型グループホームでつくろうと思っていたんですけれども、自治体の側から、通過型にどうしてもしてほしい、こう言われて、やむなく通過型にしたと。この結果、何が起きたかといいますと、本人の状態からいえばとても三年では自立できない方も、通過型のグループホームに入るということになりました。三年を迎えてどうなったのか。結局、自治体に配慮してもらって、通過型だけれども、その後もしばらくいられるようにはしてもらっているわけですけれども、これは、自治体によってはそういう判断が異なってくるというのも起きちゃうわけですよね。私は、十分な滞在型のグループホームが足りない下で通過型グループホームをどんどんつくるということをやったら、当事者のニーズに沿わないことが起きかねない、これを私の地元の経験からも大変感じております。そういう認識は、厚労省にはあるんでしょうか。
○辺見政府参考人 今回の改正案は、グループホームの支援内容といたしまして、共同生活住居における日常生活上の支援に加えまして、独り暮らしを希望する方に対する支援を含むということを法律上明確化するものでございます。グループホームは地域における障害者の住まいの場として重要な役割を担っており、グループホームの共同生活を希望する方は、改正後もこれまでどおりグループホームを利用できるという仕組みとするものでございます。したがいまして、今回の改正による独り暮らしに向けた支援というのは希望者に向けての支援でございますので、利用者の意に反した追い出しは適当でないということを法改正に伴いまして周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 私の質問の趣旨が伝わっていないようなんですけれども、入っている人を出すなんてとんでもない話ですし、入るときに選択できるというのは当たり前の話なんですけれども、問題は、滞在型のグループホームが今足りないんですよね。ところが、自治体の側は、通過型をつくれ、こういうふうに言ってくるというのが現状起きているわけですよ。そうしたら、通過型に入らざるを得ないじゃないですか。通過型に入ったら、三年たったら出てくださいよという話になっちゃうんですよ。そういうことが起きないことを考えたら、私は、通過型グループホームというのは、今考えるというのは時期尚早だと思います。もっと滞在型グループホームが必要な、充足するところまでしっかりつくるというのをそれぞれの地域でやらないと、おかしなことが起きるんじゃないかと思いますよ。
○三ッ林委員長 辺見部長、簡潔にお願いします。
○辺見政府参考人 各地域におけます障害福祉サービスの整備につきましては、自治体が定めます障害福祉計画において、地域のニーズを踏まえて策定をしていただくことになっております。今回の法改正によりまして、グループホームのサービス内容に独り暮らし向けの支援が入るということにするわけでございますけれども、その趣旨も含めまして令和六年からの障害福祉計画が策定されるように、現在検討中の国の指針等においても何らか工夫をしてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 どういう暮らし方を選ぶかは障害者の意向に基づくというのをはっきりさせていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。