2022年12月6日 衆院本会議 統一協会の被害者救済法案審議入り 宮本徹氏「実態に即した規制を」

 統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案が6日の衆院本会議で審議入りしました。法案は法人等による不当な寄付勧誘を禁止するもの。日本共産党の宮本徹議員は、マインドコントロール(洗脳)下での寄付勧誘被害を救済できるよう「被害の実態に即した規制を設けるべきだ」と求めました。
法案4条は「寄付の勧誘をするに際し」「困惑させてはならない」としています。しかし、統一協会は宗教勧誘であることを隠して教義を植え付け、洗脳下においてから寄付勧誘を行っています。
 宮本氏は、寄付の時点だけを見れば、違法に植え付けられた教義への使命感から進んで寄付を行っているように見えるケースが多いと指摘。「統一協会の献金被害の多くが取り消しの対象から外れるのではないか。法案を修正し、困惑類型とは異なる統一協会の被害実態に即した規制を設けるべきだ」とただしました。
 岸田文雄首相は「いわゆるマインドコントロールによる寄付は、多くの場合不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法案による取り消し権の対象となると考えられる」と述べました。
 宮本氏は、入信当初に困惑してもその際に「寄付が必要不可欠」との勧誘がなく、入信と寄付勧誘に時間差があり寄付勧誘の際は進んで献金しているように見える場合、「取り消しの対象とは読めないのでは」と質問しました。岸田首相は「入信前後から寄付に至るまでが一連の寄付勧誘であると判断でき、事後的に寄付当時困惑していたと考えた場合は取り消し権の対象になる」「一連の寄付勧誘と判断できない場合も、入信時に抱かされた不安が継続している場合に法人等がこれに乗じて寄付勧誘をすれば、取り消し権の適用対象になる」と答弁。入信時に困惑しても「寄付が必要不可欠」と告げられなかった場合には触れませんでした。
 宮本氏は取り消しの対象になるか条文上明確にするよう要求。岸田首相は「法案が成立した際には個別の事例に即して条文の適応可能性を示す」と述べるにとどめました。

以上2022年12月7日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年12月6日 第210回衆院本会議第13号 議事録≫

○副議長(海江田万里君) 宮本徹君。
○宮本徹君 日本共産党を代表して、寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問いたします。(拍手)今必要なことは、統一協会によるこれまでの被害者を救済し、新たな被害を防止することです。統一協会は、数十年にわたり、違法な霊感商法、高額献金で国民の財産を収奪し、被害を広げてきました。統一協会のイベントに参加し、祝電を送り、広告塔の役割を果たしてきた政治家の責任は重大であります。統一協会と政治の癒着の中で、解散命令請求も行わず、被害を防ぐ有効な手だてを取ってこなかった政府の責任もまた重大ではありませんか。本法案は、これまでの被害を直接救済するものではありません。被害者救済へ国の責任を果たすべきではありませんか。本法案の最大の弱点は、統一協会の被害実態に即した規制となっていない点です。統一協会は、宗教勧誘であることも、入信後、高額献金を求めることも秘匿して、数か月かけ、正体隠しの伝道、教化システムによって教義を植え付けます。信者は、自由意思に基づかないで統一協会の教義に帰依させられ、自由な意思決定ができない状態にされます。そして、統一協会は、教義の実践として献金などをさせます。本法案は、寄附の勧誘をするに際し、不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠であることを告げ、困惑させてはならないとしています。しかし、寄附の時点だけを見れば、信者は、困り戸惑うことなく、違法に植え付けられた教義への確信、使命感から進んで寄附を行っているように見えるケースが多くあります。河野大臣は、義務感、使命感に駆られている状況を全て困惑と言うのは無理だと思うと答弁されています。統一協会の献金被害の多くが取消しの対象から外れるのではありませんか。法案を修正して、困惑類型とは異なる、統一協会の被害の実態に即した規制を設けるべきであります。総理は、答弁で、入信当初に不安をあおられる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に取消権を行使することが可能な場合があると述べています。どういう場合が可能で、どういう場合が不可能なのか。四条六号は行政措置の対象ですから、判断基準を責任を持って示していただきたいと思います。入信当初に不安をあおられて困惑しても、その際に寄附が必要不可欠との勧誘がなく、入信当初と寄附の勧誘に大きなタイムラグがあり、寄附の勧誘の際には、既に教義に基づく確信で、使命感で進んで献金しているように見える状況の場合、四条六号の取消しの対象とは読めないのではありませんか。この法案では、統一協会は、最初の入信のときには寄附を求めていない、寄附の勧誘の際は困惑していない、必要不可欠とは告げていないなどと反論するでしょう。取消しの対象となるか、最終的に判断するのは司法です。条文は明確でなければなりません。総理は、法案が成立した際には条文の解釈の明文化を図ると答弁されていますが、明文化できる解釈なら、今修正して条文化すべきではありませんか。法人等への配慮義務として、寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることを課しますが、この規定では、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがあり、寄附の勧誘の際には、教義に基づく確信で、使命感で進んで献金しているように見える場合、配慮義務の対象にならないのではありませんか。被害防止の実効性を高めるために、文言を修正するとともに、配慮義務規定全体を禁止規定とし、報告徴収、勧告、公表等の行政措置及び取消しの対象とすべきではありませんか。次に、子や配偶者など被害者家族の救済です。法案では、債権者代位権の特例を設けますが、扶養義務の範囲では取り戻せる範囲は余りに狭く、無資力要件があるため、取り戻せるケースは極めて限定的であります。新法が成立した場合、一年をめどに、債権者代位権の活用について速やかな検証と法の見直しが必要ではありませんか。さらに、禁止される、寄附のための資金調達要求について、生命保険の解約など、生活の維持に重要な財産に広げるべきであります。また、取消権の行使期間についても、マインドコントロールを脱するのに時間がかかることを考慮し、民法に準じて、寄附したときから二十年とすべきではありませんか。解散命令請求について伺います。政府は質問権を行使していますが、統一協会の側が違法行為を裏づける新たな事実を答えないことも想定されます。その場合でも、これまでの判決などで統一協会の法令違反の組織性、悪質性、継続性は明らかであり、速やかに解散命令請求に踏み切るべきではありませんか。総理に残されている最大の宿題の一つが、自民党と統一協会の癒着の解明、癒着の一掃であります。自民党の点検では、隠されていた国会議員と統一協会との関係が今国会の中でも次々と明るみになってまいりました。地方議員については、更に深刻な状況が広がっております。今後一切関係を絶つという総理の方針は徹底されておりません。自民党として責任を持った調査を国会議員、地方議員問わず行うべきではありませんか。以上、指摘し、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員の御質問にお答えいたします。旧統一教会問題の被害者救済への国の責任についてお尋ねがありました。政府として、旧統一教会による霊感商法や多額献金による被害者の方々が存在するということを深刻に受け止めております。だからこそ、政府として、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化等による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直し、この三つの対策を国として責任を持って進めてまいります。統一教会の献金被害の実態に即した規制についてお尋ねがありました。いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法案による取消権の対象となると考えられます。また、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後に冷静になって考えると、当時、不安に乗じられて困惑して寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って、取消権を行使することが可能であると考えられます。また、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できると考えております。取消権及び第四条第六号の禁止行為の対象となると判断される基準についてお尋ねがありました。御指摘のような事案では、事後的に寄附当時困惑していたと考え、その寄附が、不安をあおり、又は不安に乗じ、重大な不利益の回避のために寄附が必要不可欠である旨告げるという不当な寄附の勧誘行為によるものであることが、勧誘者の持参した資料や当時の記録、本人や周囲の供述等により総合的に認められる場合に、取消権や禁止行為の対象となります。入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合等の取消権の取扱いについてお尋ねがありました。御指摘のような場合でも、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断でき、また、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には、取消権の対象になると考えています。また、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法案の第四条第六号の不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことから、取消権の適用対象になると考えています。条文の解釈の明確化についてお尋ねがありました。新法では、行政としての姿勢を示す観点から、法人等の行為の類型を可能な限り客観的で明確なものとして規定するなど、可能な限り要件が明確となるよう条文化を進めてまいりました。法律の解釈についてその全てを条文化することは困難ですが、法案が成立した際には、個別の事例に即して条文の適用可能性を示し、法律の周知を図り、その適切な活用を促進してまいります。配慮義務についてお尋ねがありました。御指摘のような、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合であっても、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合には、配慮義務規定の対象となります。また、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できない場合であっても、入信時に、寄附に関する適切な判断が困難な状況に陥っている個人に対し更に行われる寄附の勧誘については、より一層、個人の自由意思を抑圧する行為と言え、配慮義務規定の対象になると考えられます。配慮義務規定全体を禁止規定とすべきとの御指摘ですが、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果が高いと考えております。債権者代位権についてお尋ねがありました。債権者代位権は、債権者が自らの権利を守るために必要な範囲で債務者の有する第三者への債権を行使できるようにする制度です。この制度は、本人が無資力であることが前提となりますが、今回の新法では、将来の債権の保全を可能とするなど、制度を活用しやすくすることで、家族らの被害救済につながると考えております。また、家族の住居や生活維持のために欠くことのできない事業用資産を処分して寄附資金を調達することを求める行為を禁止するとともに、寄附勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養家族の生活の維持を困難にすることがないようにすることを配慮義務として規定しています。これらの禁止規定や配慮義務の規定により、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性も高めることができると考えております。こうした債権者代位権の適切な行使や損害賠償請求などを通じ被害回復を図ることができるよう、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備や訴訟費用の支援なども進めてまいります。なお、債権者代位権の特例に関する規定については、他の規定と同様、規定の施行の状況及び社会経済状況の変化を勘案し、適切に見直してまいります。そして、寄附のための資金調達要求及び取消権の行使期間についてお尋ねがありました。御指摘の生命保険については、それが現在の生活の維持に重要な財産である場合には、その解約による寄附を勧誘することは個人や家族の生活の維持を困難にすることがないよう配慮する義務に抵触すると考えられます。このため、こうした寄附勧誘があった場合には、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求が可能であると考えられます。一方で、現住居の不動産等とは異なり、現在の生活の維持に重要でない場合も想定されることから、その解約による寄附資金の調達の禁止までは定めなかったものであります。また、取消権の行使期間については、民法よりも取消し対象が広がることとの比較考量で短くなる一方で、権利を適切に行使することができない状態から脱するために相応の期間を要する事例があることを踏まえ、寄附の意思表示をしたときから十年間とするなど、いわゆるマインドコントロール以外の類型の取消権の行使期間よりも長い期間を設定することとしております。そして、解散命令請求についてお尋ねがありました。旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収、質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の業務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにし、法律にのっとり、必要な対応を行ってまいります。このため、十一月二十二日に所轄庁たる文部科学大臣が宗教法人法に基づき報告徴収、質問権を行使したところであり、今後もスピード感を持って適切に対応するものと考えております。そして、旧統一教会との関係の調査についてお尋ねがありました。閣僚を含む多くの議員が、社会的に問題がある旧統一教会、その関係団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の皆様の政治への信頼を傷つけたことを率直におわび申し上げます。自民党においては、各議員それぞれが、旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告し、新たな接点が判明した場合には、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底することを方針としております。大切なことは、未来に向かって関係を絶つことであります。自民党においては、旧統一教会及び関係団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、既にガバナンスコードを改定し、対応方針について党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいりたいと考えております。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします