2022年12月7日 衆院厚生労働委員会 介護職員 処遇改善を 宮本徹氏 国に支援を求める

配付資料 出典:全国保険医団体連合会 2022年11月28日「保険証廃止・オンライン資格確認義務化意識・実態調査」 
配付資料 出典:21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会 2022年11月「全国老人ホーム施設長アンケート結果 速報版」

 日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院厚生労働委員会で、介護職員の処遇改善や、電気代等の高騰に苦しむ福祉施設に自治体の支援が追い付いているか国として調査するよう求めました。
 宮本氏は「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会」が約1万の施設を対象に実施し2107人の施設長が回答した「全国老人ホーム施設長アンケート結果」を示し、3年前に比べ介護職員が「確保しにくくなった」「全く確保できない」との回答が4分の3に上ると指摘。「最大の問題は処遇だ」として、全産業平均並みの賃上げに向け、政府が来年度予算を手当てするよう求めました。
 加藤勝信厚労相は「(処遇改善にむけ)介護報酬を3%引き上げた」と答弁。宮本氏は「3%だと物価高にも追いつかない。軍事費を増やす議論ばかりしてこういう分野の予算を増やさないのか」と批判しました。
 宮本氏は、政府が介護保険料の見直しを議論する中、圧倒的多数の施設長は利用者負担を増やすべきではないと答えているとして「公費負担割合を引き上げるべきだ」と主張。加藤厚労相は「これ以上引き上げるのは慎重に考える必要がある」などと背を向けました。
 宮本氏は、電気・ガス代など物価高騰に伴い、北海道のある福祉法人では負担増が5300万円の一方、補助金が1800万円しかないなどの実態を示し、「(支援が)全く見合っていない」と述べ、国が実態調査するよう求めました。

以上2022年12月16日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年12月7日 第210回衆院厚生労働委員会第12号 議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、オンライン資格確認システムについてお伺いします。資料をお配りしております。全国保険医団体連合会のアンケート調査ですけれども、導入しない、できないと答えられている方が、七十代以上では三一%ということになっております。高齢で長く続けるわけでもないから、今から導入費用の負担も大変だし、閉院しよう、こういう声があちこちで上がっているのは大臣も御存じのことだと思います。そもそも、国の政策によって閉院を早めなければならないというのもおかしいことだと思いますし、その地域によっては、かけがえのない病院であることもあるわけで、地域医療にとっても深刻な事態だと思います。高齢であるなど、導入に困難を抱えている医療機関については、義務化の免除を早急に決断すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 医療保険のオンライン資格確認でありますけれども、本年八月に、来年四月からの全国保険医療機関、薬局での導入を原則として義務とする制度の詳細を公表して以降、顔認証つきカードリーダーの申込数は大きく伸びておりまして、十一月二十七日現在、義務化対象施設で申し上げると、約九五%が申込みを済ませておられます。また、オンライン資格確認の運用を実際に開始した施設は、義務化対象施設の約四割でございます。一方、現在紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関、薬局は原則義務化の例外であり、常勤の医師等がレセプトの電子請求義務化の時点で六十五歳以上、現在でいえば七十五歳以上程度であった保険医療機関、薬局、又はレセプトコンピューターを使用せず手書きで請求を行っている保険医療機関、薬局では、オンライン資格確認は義務とされていないところであります。さらに、医療現場から、必ずしも医療機関等の責めに帰さない事由による場合には、原則義務化の経過措置が必要という声もいただいているところでございます。今委員のお話がありましたが、地域医療に支障を生じることがあってはならないわけでありますので、やむを得ない事情がある場合の必要な対応については、年末頃を目途に、導入の状況を点検し、必要な検討を行いたいと考えております。
○宮本(徹)委員 年末と言いますけれども、もう十二月です。やはり、判断が遅ければ遅くなるほど閉院しなきゃいけないんじゃないかという動きも広がってしまいますので、できるだけ早く、もう十二月ですから、決断をいただきたいと思います。二つ目に、介護、障害者福祉等々の福祉施設への電気代、ガス代等、物価高騰への支援について伺います。今、国は自治体に臨時創生交付金を出して、自治体から事業者に支援されるということになっているわけですけれども、その額が、やはり実際に増えている負担増の額に支援額が見合っていないという声がたくさん寄せられております。幾つか私のところに来たのを紹介しますと、例えば、北海道のある法人、物価高騰の影響は五千三百万円程度、補助金一千八百万。福岡のある福祉法人、水光熱費は前年から八百五十七万円増の予想、自治体からの補助金は六十一万円。宮城のある法人、八十床の特養ホーム、電気代が九百万円増加に対して、補助七十万円。デイサービスなどを併設している五十床の特養ホームは、電気代増加三百万円に対して、補助九十万円。山形のある法人は、負担増一千五百万円程度に対して、県から二百七十万円、あと、基礎的自治体から追加があるかどうかという話などなど、もっとたくさんあるんですけれども、自治体を通じて国は支援をしているということになっているわけですけれども、実際は、御存じのとおり、介護報酬だとか障害福祉サービスの報酬だとかというのは決められている世界ですから、ここにこの間の物価高騰のとりわけ電気代の上がり方が大きくのしかかっているのは、恐らくこの部屋にいる全ての議員の皆さんのところに届いている話だと思います。やはり、自治体を通じてのこの支援で十分なのかというのは、しっかり国として実態把握が必要じゃないかと思うんですよね、今のこのレベルで大丈夫なのかと。それで、必要な手だてを取らなきゃいけないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今、介護、障害の福祉施設等に対しては、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金、これを活用して、各都道府県あるいは市町村において実施をしていただいております。私どもとしても積極的な活用を促してきた結果、多くの自治体で、光熱費の増加に対応する給付などの支援を実施する、あるいは前向きに実施を検討していただいているところでございますので、こうした交付金の活用によって、地域の実情に応じ、きめ細かい支援が行き渡るよう、自治体を後押しをするとともに、物価の動向や介護現場等の収支の状況、これをしっかり注視をしていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 しっかり注視されるということですけれども、よく幾つか調べていただいて、これは本当に更なる支援が必要だというのは間違いないことだと思いますので、手だてを打っていただきたいと思うんですね。福祉医療機構は、収支が悪化しているところに対しては特別融資をやりますよということを言っていますけれども、借金してしのいでくださいというのがやるべきことではないと思うんですよね。しっかりここは国が責任を果たしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。その上で、今日は資料をお配りしておりますけれども、二十一世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会の皆さんが全国の老人ホーム施設長アンケートというのをやりまして、結果の速報版が十一月下旬に公表されました。これは、約一万の施設を対象に、二千人を超える施設長さんが答えられておりますので、本当に多くの方の声ということだと思います。資料の二ページ目を御覧になっていただきたいと思うんですけれども、介護職員の確保について、三年前に比べて確保しにくくなったという方、そして、全く確保できない、この二つを合わせて四分の三に上る。いよいよ介護人材の確保に苦労する状況が広がっていると思います。大臣、この原因と対策、どうお考えでしょうか。
○加藤国務大臣 我々も、介護サービスに従事する方々の確保が大変難しいということは認識をしているところであります。そうした原因として、少子高齢化に伴う介護需要が一方で増加している、他方で、生産年齢人口の減少等、労働力人口の減少という構造的な課題に加えて、労働条件、処遇等の要因で採用が難しいということが挙げられると考えております。こうした中で、介護人材の確保に向けては、介護報酬改定等により、累次、処遇改善を図ってまいりました。加えて、就業促進、職場環境の改善による離職の防止、人材育成の支援などを含めて総合的に取り組んできたところでございます。また、令和三年度からは、ハローワーク、訓練機関及び福祉人材センターの連携強化により、他分野から参入する人材に対する介護分野の職業訓練から就職までの一体的な支援も行わせていただいているところでございます。必要な介護サービスが安心して受けられるよう、サービス提供を担う介護人材をいかに確保していくのか、大変重要な課題でありますので、これをしっかりと認識し、そして、今申し上げたような様々な取組を通じて人材確保対策を進めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 大臣がおっしゃったように、最大の問題は処遇の問題だと思うんですよね。全産業平均に比べて、いまだ大幅に賃金が低い。御存じのとおり、介護業界は、今年は人手不足倒産も増えているという状況になっているわけです。今年は三%目安の九千円アップというのがあったわけですけれども、十一月の消費者物価指数の速報値を見ますと、持家の帰属家賃を除けば四・七%増ですから、今年二月からやった引上げを上回る物価高ということになっています。しかも、この間の報道を見ていますと、来年二月には値上げラッシュがまた予定されている。さらに、電気代も大幅な値上げ申請がなされるという状況になっているわけですよね。そういう中で、労働組合は、連合さんは五%、全労連は一〇%、この春闘で賃上げということを言っております。全産業平均並みの賃金ということに向けて、もちろん物価上昇を大きく上回るのは当然なんですけれども、全産業平均並みの賃金ということを考えたら、相当なものをやはり来年度予算で手当てしていく必要があるんじゃないかと思いますけれども、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 介護職員の方々については、全産業平均に比べて給与が低く、人材確保を図るため、これまでも累次の処遇改善に取り組んできたところであります。その結果、全産業平均との給与の格差、これは縮小しているというふうに考えておりますが、さらに、今般、介護職員等の処遇改善に取り組むため、現場で働く方々の給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置を講じたところでありますので、まずは、今般の処遇改善の措置が介護職員の皆さんの給与にどのように反映されているか、こうしたことを検証していくことが重要だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 三%だと物価にも追いつかないですし、なおかつ、全産業平均と格差が縮まっても、民間が春闘でどこまで上がるかというのはありますけれども、民間が上がっていけばまた格差は広がっちゃうわけですよね。ですから、そこは、民間も賃上げが必要ですけれども、政府が責任を負っている分野でしっかり責任を果たしていただきたいと思うんですよね。私は、軍事費を増やす議論ばかりやっていて、何でこういうところの予算を増やす議論が進まないのかというのは、加藤大臣も、心をしっかりと働いている皆さんのところに更に寄せていただいて、取組を進めていただきたいと思います。あわせて、資料の四ページ目、五ページ目のところを見ていただきたいと思いますが、今、介護保険部会で介護保険の給付と負担の見直しを議論されておりますけれども、多くの施設長さんの声は、例えば、介護保険の利用料負担でいえば、二割以上に増やそうという方は少数なんですよね。逆に、一割に戻そうとか、あるいは、低所得者の減免を更に拡充しよう、こういう声が上がっているという状況です。これは介護現場の皆さんの実感だというふうに思います。一方で、介護保険料もどんどん今上がっているという状況があるわけですよね。本当に皆さんが安心して介護を受けられる、そして、この物価高の中で暮らしを守っていくということを考えた場合には、国庫負担をしっかり増やしていく、この議論こそ介護保険部会でやらなければならないんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今お話があった幾つかの点は、現時点で、これまでの社会保障審議会介護保険部会等々における議論を踏まえて、現在、介護保険部会で議論を行っていただいているところでございますので、現時点で見直しの方向性が決まっているものではございません。また、介護保険制度は、高齢化の進展に伴い介護ニーズが増大する中で、従前は全額公費による措置制度だったわけであります。しかし、それでは対応に限界があるということで、給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用しようということで現在の介護保険制度がスタートし、そして、保険料、公費でそれぞれ五割を負担する仕組みとなっているわけでありますので、公費負担割合をこれ以上引き上げるということについては慎重に考える必要があるのではないかというふうに思っております。ただ、制度の持続可能性を確保していくことは当然必要でありますので、必要なサービスが必要な方に行き届くよう、いろいろな御意見をしっかり伺い、丁寧に議論を重ねていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 国庫負担を増やさないと本当にもたないと思いますので、真剣な検討をお願いしたいと思います。最後に、資料の八ページ目、九ページ目に、昨年度運用が始まった科学的介護情報システム、LIFEについての資料があります。効果や意義を感じている人が余りにも少ない。利用者にとっても効果や意義を感じている施設長さんがなぜこんなに少ないのか、これはどうお考えでしょうか。
○大西政府参考人 お答え申し上げます。高齢者の自立支援、重度化防止の取組を推進していきますには、科学的根拠に基づく介護を推進していくことが極めて重要でございます。このため、先生御指摘のとおり、三年度介護報酬改定におきまして、高齢者の状態、ケアの内容等のデータを収集しまして、それを活用しながらケアの質の向上を目指す取組でありますLIFEを活用した場合に、介護報酬での加算を算定できることといたしております。このLIFEを活用した取組の状況につきましては、厚労省におきまして調査研究を行っております。利用者の状態や課題を把握しやすくなったですとか、利用者のアセスメント方法やアセスメントの頻度の統一が図れたなど、LIFEの活用によって利用者のケアに役立ったとの評価が得られたりしております。ただ、他方、先生のおっしゃいますのとつながるわけでございますけれども、一部の事業者様からは、データを入力する職員の負担が大きい、使用している介護ソフトがデータ連携に対応していない、ケアの質の向上に向けた具体的な活用の仕方が分からないといったお声も聞こえてくるところでございます。そういったことから、これらの課題に対応するため、システムの改修ですとかマニュアル整備を進めるほか、LIFEを通じたケアの質の向上に関する好事例集の作成などに取り組んでいるところでございます。引き続き、介護現場の御意見を丁寧に聞きながら、科学的に効果が裏づけられた質の高いサービスの推進に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 時間になりましたから終わりますけれども、介護現場は、統計表だけ送られてきてもどう活用していいのか分からないというのが実態ですよ。これは抜本的な見直しが私は必要だと思いますよ。以上述べまして、質問を終わります。