2023年3月16日 衆院本会議 75歳以上医療国庫負担増を 保険料引き上げやめよ 宮本徹氏迫る

 75歳以上の医療保険料引き上げなどを盛り込んだ健康保険法等改定案が16日の衆院本会議で審議入りし、日本共産党の宮本徹議員が質問に立ちました。
 同改定案は、年収が153万円を超える75歳以上の後期高齢者を対象に、医療保険料を大幅に引き上げるもの。岸田文雄首相は「2030年度時点での負担率は、現行制度で13・34%、見直し案では14・06%となる見込みだ」と明かしました。
 物価高騰のもと年金は目減りし、昨年10月からは後期高齢者医療費の窓口負担も倍増しており、受診抑制が懸念されます。宮本氏は「後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率は、制度発足から減っている」と指摘。「現役世代の保険料負担の上昇を抑制するためと言うのであれば、国庫負担こそ増やすべきだ」と迫りました。
 宮本氏は、改定案が「都道府県の保険料の水準の平準化」の名のもとに、自治体が独自に行っている国民健康保険料(税)の軽減をやめさせようとしている問題を指摘。世帯当たりの国保加入者の人数に応じて負担させる「均等割」の廃止も求めました。
 宮本氏は、出産育児一時金の引き上げに伴い、財源の一部に後期高齢者の医療保険料増額分が充てられようとしていると指摘。「弱い者同士で負担を押し付け合うような仕組みにしてはならない」と強調し、大企業・富裕層優遇の是正、大軍拡予算の見直しにより財源を確保すべきだと追及しました。

以上2023年3月17日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年3月16日 第211国会衆院本会議第11号議事録≫

○副議長(海江田万里君) 宮本徹君。

○宮本徹君 日本共産党を代表して、健康保険法等改正案について質問いたします。(拍手)本法案の第一の問題点は、七十五歳以上の高齢者の保険料負担割合を見直し、保険料を大きく引き上げようとしている点であります。二〇三〇年時点での後期高齢者負担率は、現行制度では幾ら、法改正すれば幾らになると見込んでいますか。来年七十五歳を迎える方が九十歳までに支払う一人当たり保険料の合計は、法改正すれば現行制度に比べおおよそ何倍増えますか。今回、負担増となるのは、年収百五十三万円、月十二万七千五百円以上の方です。なぜ年収百五十三万円なのですか。物価高騰の中、政府は、年金を目減りさせております。総理は、月収十二万七千五百円の方の生活に余裕があるとお考えでしょうか。昨年十月の後期高齢者医療の窓口負担二倍化が受診に及ぼしている影響をどう把握されているのでしょうか。後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率は、制度発足から減っています。後期高齢者支援金に係る国庫負担額も含め、仮に制度発足時の国庫負担率に戻せば、幾ら国庫負担は増えますか。現役世代の保険料負担の上昇を抑制する、そのためというのであれば、国庫負担こそ増やすべきであります。本法案の第二の問題点は、都道府県の保険料の水準の平準化の名の下に、自治体が独自に行っている保険料軽減をやめさせようとしていることであります。既に二〇一八年度から国保の都道府県化が進められ、自治体の法定外繰入れをやめる圧力がかけられております。全国の自治体の一般会計から国保会計への法定外繰入れの総額は、二〇一七年度と比べ、一体、幾ら減っていますか。同じ医療を受けるのに、国保が他の保険者よりも突出して保険料が高いことこそ問題であります。政府がやるべきは、公費投入を増やして、せめて協会けんぽ並みの保険料に引き下げることなのではありませんか。とりわけ、人頭税と同じ均等割は廃止すべきです。子育て支援、少子化対策としても、十八歳までの均等割は直ちに廃止すべきです。加えて、国民健康保険には傷病手当制度がありません。コロナ禍では、私たちも求め、非正規労働者など向けのコロナ特例の傷病手当制度ができましたが、これも廃止されようとしています。働き方の違いによる差別はなくすべきです。国の責任で傷病手当制度を設けるべきではありませんか。本法案の第三の問題点は、出産一時金の引上げとセットで、出産一時金の費用を新たに後期高齢者医療制度に求めている点です。負担を求める先が違うのではありませんか。総理は子育て予算の倍増を掲げていますが、これからも、少ない年金の高齢者に負担増を求めていくのでしょうか。弱い者同士で負担を押しつけ合うような仕組みにしてはなりません。所得一億円の壁をなくすなど、大企業、富裕層優遇を正すことで財源を確保すべきなのではありませんか。何よりも、大軍拡予算をやめれば、大きな財源が出てくるのではありませんか。第四に、医療費適正化の名で、個々の患者にとって必要な医療が抑制される危険です。医療費が医療費見込みを著しく上回る場合には、その要因の解消に向けて、医療機関などと協力して対策を取る努力義務が都道府県に課されます。医療資源の効果的、効率的活用に関わって、医療資源の投入量に差がある医療として、白内障手術や化学療法の外来での実施、リフィル処方箋が例示されております。手術、抗がん剤などの提供形態の違いには、医療資源の偏在や患者の状態、生活、社会的背景もあり、医療資源の均てんこそ優先すべきではありませんか。また、薬の処方期間は医師の判断によるものであり、国が長期処方を目標値に設定して推奨するようなことは、見落としや状態悪化始め、医療安全上も無責任なのではありませんか。さらに、本法案は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備が法律に明記をされます。卒前卒後の医学教育に、かかりつけ医機能を発揮する医師を養成する視点が求められます。一人の医師が地域の患者ニーズを全て満たせるような診療を行うことやかかりつけ医機能を担うことは困難であり、グループ診療、病診連携など、地域の中での連携が重要です。絶対的な医師不足の解消も必要です。同時に、フリーアクセスへの更なる制限がかかるような制度にしては決してならない、このことを指摘しておきたいと思います。医療制度に関わり、二点お伺いしたいと思います。子育て支援にとって重要なのが子供の医療費無料化であります。十八歳まで医療費の無料化を進める自治体が今広がっております。国の制度として、十八歳までの子供の医療費の無料化を進めるべきではありませんか。総理の決断を促したいと思います。最後に、健康保険証の廃止についてであります。マイナンバーカードの取得は任意です。任意であるにもかかわらず、誰もが医療にかかるために必要な健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化することは、全く筋が通らないのではありませんか。マイナ保険証を使わない人に発行する資格確認書は、窓口負担を高くし、毎年、申込みの手続を必要とするといいます。取得が任意であるマイナ保険証を使わない者に対するペナルティーを課すことは許されないのではありませんか。健康保険証廃止の撤回を強く求めて、質問を終わります。(拍手)

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員の御質問にお答えいたします。高齢者の保険料負担の見直し等についてお尋ねがありました。本法案は、高齢者負担率について、後期高齢者人口の変化を反映する仕組みとすることで、後期高齢者一人当たりの保険料と現役世代一人当たりの後期高齢者支援金の伸び率が同じとなるよう見直すものであり、二〇三〇年度時点での負担率は、現行制度で一三・三四%、見直し案では一四・〇六%となる見込みです。二〇四〇年頃までの一人当たりの保険料額は、様々な要因によって影響を受けるため、正確にお示しすることは困難ですが、二〇三〇年以降においては、後期高齢者人口も減少局面に入ることから、負担率の伸びは緩やかになり、二〇四〇年頃には、現行制度と今回の改正案とではおおむね同じ負担率となる見込みです。今回の見直しでは、負担能力に応じた負担とすることで、現行制度において均等割保険料のみが賦課される年収百五十三万円以下、約六割の低所得の方々には、制度改正に伴う負担の増加が生じないようにすることとしております。また、昨年十月からの窓口負担割合の見直しが後期高齢者の受診に与える影響については、国会の附帯決議に基づき、適切に把握できるよう取り組んでまいります。そして、後期高齢者医療に対する国庫負担については、仮に制度が創設された平成二十年度の国庫負担割合を令和二年度の後期高齢者医療費に乗じた場合、約六兆円となり、同年度の国庫負担の総額約五・五兆円との差は約五千億円となりますが、制度創設当時から現在まで、給付費に対しては三分の一の国庫負担を維持しています。引き続き、国として、安定的な保険財政の運営に向け、必要な財源を確保してまいります。国民健康保険の法定外繰入れや均等割保険料等についてお尋ねがありました。国民健康保険の法定外繰入れの総額は、二〇一七年度は千七百五十二億円、二〇二〇年度は七百六十七億円であり、九百八十五億円減少しておりますが、平成三十年度の国保制度改革により、他の制度より手厚い公費による財政支援を更に拡充し、毎年約三千四百億円の追加公費を投入しています。国民健康保険の均等割保険料については、世帯の人数に応じた応分の御負担をいただくことが基本ですが、所得の低い世帯には一定の負担軽減を行うとともに、今年度から、未就学児の均等割保険料を一律半額に軽減しています。また、傷病手当金については、国民健康保険には様々な就業形態の方が加入しているため、保険者による任意給付としており、これを全国一律の制度とすることについては、被保険者間の公平性や財源の確保など、課題が多いと考えております。出産育児一時金に対する後期高齢者医療制度からの支援等についてお尋ねがありました。現在は、出産育児一時金の費用は現役世代自身の保険料を基本として賄われていますが、後期高齢者医療制度の創設前は、高齢者世代も出産育児一時金を含め子供の医療費について負担していたことを踏まえ、今回の改革では、子育てを全世代で支援するため、出産育児一時金について後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することとしており、その際には、負担能力に応じた負担とすることで、低所得の高齢者の方々の負担増が生じないようにしております。また、子ども・子育て政策の充実について、財源を考えていくに当たっても、まずは政策をしっかり整理することが必要であると考えており、財源については、充実する政策の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくのかを考えてまいります。なお、大企業、富裕層優遇税制の是正についての御指摘ですが、税制については、所得税の最高税率の引上げなど、経済社会の変化を踏まえた累次の改正を行ってきており、また、今般の税制改正でも、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化、こうしたことを行うこととしております。防衛力の抜本的強化は国民の命を守り抜くために待ったなしの課題であり、子供政策とどちらか一方という二者選択の問題ではなく、共に実現していくことが政府の責任だと考えており、防衛力強化のための財源は、年末に決定した方針に従って対応してまいります。医療費の適正化についてお尋ねがありました。地域における医療資源については、必要な医療が提供されるよう、都道府県において、医療計画に基づく医療提供体制の整備が行われており、こうした医療資源が効果的、効率的に活用されるよう取り組んでまいります。また、薬の処方期間は個々の患者の状態に応じ医師の判断により決められるものであり、そうした医療サービスの特性に留意しつつ、地域ごとに、都道府県、医療関係者、保険者などが地域差などの実態を把握した上で協議を行い、適正化に向けた実効性のある取組を推進していきます。かかりつけ医機能が発揮される制度整備についてお尋ねがありました。政府としては、国民、患者目線に立って、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要であると考えております。このため、医学教育については、医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて、医師として求められる基本的な資質、能力として、新たに「総合的に患者・生活者をみる姿勢」、これを追加しています。また、本法案では、地域で必要なかかりつけ医機能を確保するための具体的方策について地域の関係者で協議することとしており、協議の結果に基づき、例えば、医療従事者に対する研修の実施、医療機関同士の連携の強化等の取組を進めるとともに、医師確保計画に基づく医師確保の取組を推進することにより、地域ごとに必要な医療を必要なときに受けられる体制を確保してまいります。子供の医療費についてお尋ねがありました。子供の医療費については、国として、医療保険制度において、就学前の子供の医療費の自己負担を三割から二割に軽減しています。さらに、子供の医療費の支援は自治体独自の子供の医療費助成制度として広く行われており、これを全て国の制度として実施することは、対象年齢や自己負担の有無等で様々な違いがあるほか、自己負担の軽減による受診行動の変化も考えられ、厳しい医療保険財政等を勘案すると、課題が多いと考えております。一方で、子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、こども政策担当大臣の下、三月末をめどに、子ども・子育て政策として充実する内容をパッケージとして具体化し、その上で、骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。マイナンバーカードを保険証として利用することにより、よりよい医療を受けていただくことが可能になる、医療制度全体の効率化につながる、こうした、患者、医療機関、薬局、保険者にとって、様々なメリットがあります。こうしたメリットを早期に実現するため、令和六年秋に健康保険証の廃止を目指すこととしております。国民の皆様には、マイナンバーカードと保険証を一体化するメリットを御理解いただけるよう、丁寧に説明する努力を重ねてまいります。(拍手)

○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。