2024年3月27日 衆院厚生労働委員会 生活保護買い物に車 宮本徹議員 運用見直し求める

配付資料 一般社団法人反貧困ネットワーク提供資料
配付資料 厚生労働省『生活保護問答集2024年度』改正案
配付資料 朝日新聞2024年3月22日付
配付資料 2024年3月21日三重県津地裁判決より抜粋
配付資料 厚生労働省ホームページ及び総務省ホームページをもとに、宮本徹事務所にて1枚に統合
配付資料 厚生労働省ホームページ

 日本共産党の宮本徹議員は27日の衆院厚生労働委員会で、「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する」とした生活保護法の目的に照らし、日常生活に不可欠な買い物などへの車の利用を認めるなど、実態に見合った運用を行うよう求めました。
 津地裁は今月、通院に限り保有を認められた車の運転記録を提出しなかった親子の生活保護を停止した三重県鈴鹿市の処分は違法だと判断しました。宮本氏は、日常生活に不可欠な買い物など必要な範囲で車を利用することは「自立した生活を送ることに資する」とした判決を示し、「通院のために自動車の保有を認められた人が買い物に車を利用する場合と、毎回福祉タクシーを使う場合とどちらが自立した生活に資するか」とただしました。
 武見敬三厚労相は「どちらも自立した生活を支援することになる」としながら、「自動車は原則として保有が認められない資産であり、保有が認められた目的に限って利用されるべきだ」と答弁。宮本氏は「車で買い物に行くことも自立に資すると認めた。保有が認められた目的に限るという判断は改めなければいけない」と指摘し、判決の立場をふまえ、人権の立場から運用を見直すよう重ねて求めました。

以上2024年3月31日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年3月27日 第213国会衆院厚生労働委員会6号議事録≫

○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。資料を御覧いただきたいと思います。生活保護申請サポートだとか住まいの支援を掲げながら、困窮者を狙い、生活保護を食い物にする悪質な貧困ビジネスが広がっております。初期費用ゼロとホームページでうたっているのに、家具、寝具、乾麺など購入を強要され、保護費が残らない。支払えるまで身分証やキャッシュカードを取り上げる。あるいは、入居者の金銭管理能力の有無にかかわらず、強引に金銭管理を委託する契約を結ばせる。相模原市の生活保護利用者でニューライフに入居する百六十五人中百五十六人が金銭管理を委託する契約を結んでいて、支援団体に相談があった方はほぼ全員が強引に金銭管理されていた、こういう話も聞きました。そして、こうした貧困ビジネス、郊外なのに家賃は住宅扶助額上限いっぱい、相場よりかなり高いということになっております。こうした悪質な貧困ビジネスについて、無料低額宿泊所の基準に当てはまらないものも含めて実態調査をして規制すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 福祉事務所は、生活保護受給者への定期的な訪問活動などによって、その生活実態の把握や居住環境の確認に努めておりますけれども、その際、無料低額宿泊所に当てはまらない住居も含めて、住環境が著しく劣悪な状態にある、それから、居住の提供以外のサービスの利用を強要するなどの不当な行為があるなど、転居が適当と確認した場合には、適切な居住場所への転居を促すといった必要な支援は行うこととしております。こうした対応が福祉事務所で適切に行われるよう、昨年九月に自治体宛てに通知を行い、周知徹底を図りました。また、無料低額宿泊所については、平成三十年の社会福祉法の改正で、いわゆる貧困ビジネス対策として、事前届出制や最低基準の導入、改善命令の創設などの規制強化が行われました。これらにより、都道府県等から事業者に対して届出の勧奨などを行うなど必要な指導を行うことで、適切な事業運営が図られてきていると認識をしております。一方で、届出義務自体に罰則がないこともございまして、無届けの施設も存在しております。このため、本法案では、届出義務違反の無料低額宿泊所への罰則を創設するとともに、無届けの疑いがある施設を発見した場合には市町村から都道府県に通知を行うことを努力義務化するという改正も含んであります。こうした取組によって、無料低額宿泊所の適切な事業運営、すなわち、悪徳な貧困ビジネスというものを抑え込んでいく、こうしたことをしっかりとこれからも続けていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 昨年、私も支援団体の皆さんと厚労省に実態を伝えて、新年度の生活保護問答集でもそうした、今大臣が述べられたようなことも書かれているということになっているんですけれども、これは待ちの対応ということですよね。見つけたら転居させましょうという話で、貧困ビジネスそのものを規制していくという話にはなっていないわけですよ、貧困ビジネスそのものを。もちろん、無料低額宿泊所に当たるものだったら、その法律に基づく規制というのは、指導というのはできるわけですけれども、それに当てはまらないものも含めてちゃんと、対応をどうするのかというのを、これはしっかり検討していかなきゃいけないと思うんですよね。だって、生活保護申請サポート、こう名のっているホームページが本当に増えているんですよね。そこはしっかり対応していただきたいと思います。加えて、こうした悪質な貧困ビジネスが入居先とする部屋は、同じアパートのほかの部屋若しくは直前までのその部屋の家賃あるいは相場よりもかなり高い、一・五倍だとか二倍だとかこういうことになっているわけですよね。こうした悪質なケースについては対応を取る必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 福祉事務所は、生活保護受給者への定期的な訪問活動などによって、この生活実態の把握や居住環境の確認に努めて、必要な支援を行っております。その中で、生活保護受給者が新たに入居しようとする住宅の家賃などが、近隣の同種の住宅の家賃額と比較して、合理的な理由がなく高額な水準になっていると認められる場合には、適正な家賃額の物件への入居について助言、指導を行うようなこともしております。また、住宅扶助については、その支給額が住宅の質に見合ったものとなるよう、平成二十七年七月から、床面積が一定以下の場合についてはその床面積に応じて上限額を減額する措置を講じております。この無料低額宿泊所については、平成三十年の社会福祉法の改正で、事前届出制や最低基準の導入などの規制強化を行って、行政が、最低基準に基づいて、居室面積などの施設の整備や居室使用料を含めた事業内容等の適合性を確認をし、必要に応じた指導を行うこととしておりまして、更に加えて、本法案では、届出義務違反の無料低額宿泊所への罰則の創設などを盛り込んでおりまして、施設が無料低額宿泊所に該当する場合には、届出を行わせて、最低基準に適合するよう指導を行うことで適切な事業運営につなげていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 面積の話をしているんじゃないんですよね。家賃の話をしているんですね。周りよりも高ければ転居を指導しているという話ですけれども、本当に、同じアパートの隣の部屋に比べて二倍の値段で入れる。あるいは、この貧困ビジネスのところは大家さんにも呼びかけているわけです。大家さんも、そこに相談して、埋めるために貧困ビジネス業者の力をかりているんじゃないかと思われるようなケースもあるわけですよね。ですから、改めて、しっかり、こうした貧困ビジネスの食い物にされないようにというのは徹底していただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。加えて、先ほどの話では、そういうケースを福祉事務所が見つけたら対応するという話をされているわけですけれども、社会福祉法でケースワーカーの配置基準は決まっておりますけれども、指定市、東京二十三区、県庁所在地、中核市百九自治体のうち、標準数を満たしていない自治体というのが六十八自治体、六二%に上るんですね。貧困ビジネス対策という点でも、ケースワーカーの確保、増員、これはしっかりやらなきゃいけないと思いますが、大臣、いかがですか。
○武見国務大臣 生活保護制度というのでは、最低生活の保障を行うとともに、生活保護受給者の自立の助長を行うことを目的としておりまして、これを担うケースワーカーについては、生活保護の受給世帯に応じて適切な配置がなされることが重要であり、また、その果たす役割は極めて重要であると認識しております。このため、社会福祉法で定める被保護世帯数に応じたケースワーカーの標準数の配置に必要な交付税措置を行っておりまして、地方交付税の算定上、ケースワーカーの増員が図られてきております。また、ケースワーカー一人当たりの担当世帯数も減少してきております。さらに、配置されているケースワーカーの数が標準数に満たない福祉事務所については、必要な人数を充足するよう、国や都道府県が行う事務監査においてこれを指導しております。
○宮本(徹)委員 指導していても、六二%の自治体が大都市では満たしていないわけですから、しっかり対応していただきたいと思います。次に、生活保護の運用の話でございます。資料の四ページ目を御覧いただきたいと思います。鈴鹿市で、車の利用を子の通院に限定して、車の運転記録を提出しなかったことなどを理由に生活保護を止めたことについて、津の地方裁判所は違法といたしました。五ページ目に判決を引用しておりますけれども、日常生活に不可欠な買物等の必要な範囲で車を利用することは自立した生活を送ることに資するものだということを判決でも書いているわけですね。この間、厚労省は、自動車の保有については、保有が認められた目的のために限って利用されるべきだ、こういう姿勢を取ってきました。そこでお伺いしたいんですけれども、通院のために自動車の保有が認められた人が、日常生活に不可欠な買物をする場合、車を利用する場合と、あるいは毎回買物をタクシーで行う場合と、どちらが自立した生活を送ることに資すると大臣はお考えですか。
○武見国務大臣 実際には、端的に言えば、どちらも自立した生活を支援することになるというふうに思われます。しかし、実際には、生活保護制度上は、自動車は最低限度の生活の維持のために活用できる資産に該当していて、その維持費が生計を圧迫することを踏まえて、原則として自動車の保有は認められておりません。ただし、障害者ということであれば、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通院、通所又は通学のために自動車を必要とする場合などであって、一定の要件を満たす場合には、例外的にその保有を認めてきております。例外的に自動車の保有が認められた場合でも、自動車は原則として保有が認められない資産であるということなどを踏まえて、保有が認められた目的に限って利用されるべきものと考えております。こうした取扱いについては、平成二十八年十月の大阪高裁判決でも、保有を容認された自動車の保有目的以外で通常の生活需要のための無制限に自動車の利用を容認することは、必要な場合を除き保有を認めないとしている現行の解釈と相入れず、自動車を保有できない他の被保護者との公平性を欠くことになりかねないとして、合理的なものとの判断がされております。このため、委員御指摘のように、保有を容認された目的以外での自動車の利用について比較することはなじまない、こう考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 生活保護法の目的は、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とするとあるわけですよね。最低限度の生活だから最低限度の車の利用しか駄目なんだということじゃないんですよ。自立を助長すると。自立を助長するということから考えたら、先ほど大臣おっしゃいましたように、車の保有を認められた方が車で買物に行くことも自立に資するというふうにお認めになっているわけですから、当然、これまでの保有が認められた目的に限るという考え方は、私は改めなきゃいけないと思いますよ。先ほど、平成二十八年の大阪の高裁判決のことを持ち出されましたけれども、その大阪の高裁判決よりも新しく、地方裁判所が津で考え方を今回示したわけですよね。日常生活に不可欠な買物等の必要な範囲で利用することは自立した生活を送ることに資するものなんだと。そういうものに使っちゃいけないということこそ、生活保護法の目的から照らしてもおかしいんじゃないかということになっているわけですから、これまでのしゃくし定規の考え方、大臣、そのペーパーは見ない方がいいですよ。はっきり言って、そのペーパーは今までの厚労省の立場が書かれているわけですから、常識的な考え方、新しい判決の立場、人権の立場から考えたら、ちょっとこれはもう考え直した方がいいと思いますが、ペーパーを見ずに一言お答えください。
○武見国務大臣 まだその他の裁判で実際に全て法的に決着したわけでありませんから、その経緯もきちんと見ておかなければならないだろうと思います。その上で、やはり、障害者に関わる自立性を強化することができるということであれば、様々な手段も同時に想定されます。しかし他方で、それが他の方に対する生活保護サービスとの間で不公平感が出るというようなことがあってはならないという点もまた事実でありますし、最低限の生活保障をするという法律の設定の仕方に基づいた基準のつけ方もあるだろうと思います。したがって、この点に関して一概に、一面だけ取って、これが自主的に非常に強化されるものだからといって、それをやはり直ちに変えるということはなかなか難しい課題だというふうに思います。
○宮本(徹)委員 この津の裁判がこの後更に次の段階に進むのかどうか分かりませんけれども、いずれにしても、生活保護法の目的は、最低限の生活の保障と同時に、自立を助長をすることを目的とするとあるわけですから、本当に実態に見合った司法判断がなされているわけですから、是非考え方を改めていただきたいということを重ねて求めておきたいと思います。もう一点、生活保護についてお伺いします。二〇二三年に生活保護基準は改定されました。資料の六ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、生活保護基準は、五年前の改定額に比べて、高齢者世帯でいえば、ほとんどの世帯がほぼ上がっていないに等しい状況なわけですね。下位一〇%の低所得者層の消費水準と比較する方法を用いるというやり方自体が、私は大変問題だと思います。その上で、赤いところに囲んでありますように、物価というのは、二〇一九年と比べて、昨年の時点で六・六%、今年二月の時点で八・一%上がっているわけですね。今、五年に一回、生活保護の基準というのを見直しているわけですけれども、インフレが続いていく中で五年に一度の見直しでは、健康で文化的な最低限度の生活保障というのは私はできないと思うんですよ。ですから、これは毎年見直していく、こういう方向にかじを切るべきだと思います。それとも、毎年、臨時の現金給付を続けるというんでしょうか。どういうお考えでしょうか。
○武見国務大臣 まさに、生活扶助の基準と申しますものは、最低限度の生活を保障するために、一般国民生活における消費水準との比較において相対的なものとして水準を設定するという考え方であります。国民の消費動向や社会情勢、経済情勢などを総合的に勘案して、必要に応じて改定を行うこととしております。生活扶助基準の検証については、令和四年十二月の生活保護基準部会の報告書において、一般の低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から検証を行うことが基本とされております。その上で、令和五年十月に実施した生活扶助基準の見直しにおいては、生活保護基準部会の消費実態の検証結果を基本としつつ、令和六年度までの臨時的、特例的な対応として、一人当たり月額千円を検証結果に加算するとともに、加算を行っても従前の基準額から減額となる世帯については、従前の基準額を保障する措置を同時に講じております。足下の物価上昇を含めた社会経済情勢等を総合的に勘案した対応をこのような形で行ったところでございます。さらに、令和五年度補正予算においては、物価高により厳しい状況にある生活者等への支援として、住民税非課税世帯への給付金が生活保護受給世帯も対象に設置されているところであり、この給付金は、保護費とは別に生活費に充てることができる取扱いとなっております。いずれにせよ、今後とも、生活扶助基準の改定の必要性については、国民の消費の動向であるとか、社会経済情勢などを総合的に勘案して判断することが重要であって、引き続き、国民の消費動向の変化等を注視してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 状況を総合的に勘案したら、本当に引き上げないと、生活保護の皆さんから本当に生活が大変だというお話、恐らく与野党を超えて聞いていると思いますので、これは検討をお願いしたいと思います。最後ですけれども、次の資料を見ていただければ、生活保護世帯は、都道府県別の大学進学率が一般世帯と比較して、最高値と最小値の差が大変大きいわけですよね。この原因が一体どこにあると考えているのか、お伺いしたいと思います。あわせて、家庭の経済状況によって大変進学格差は大きいわけでございますが、子どもの学習・生活支援事業について補助率を引き上げ、どこの自治体でも高校中退にならないような支援や大学進学への支援ができるようにすべきではないか、創設する進路選択支援事業も必須事業化すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○新谷委員長 朝川社会・援護局長、簡潔にお願いいたします。
○朝川政府参考人 まず、大学進学率についてですけれども、大学進学率に関する都道府県ごとの地域差は、生活保護世帯は一般世帯と比較して大きい傾向にございます。このような地域差の原因につきましては、それぞれの地域によって様々な事情があると考えられるものの、自治体による大学等への進学に向けた取組の差異でありますとか、地域における進学や就職に向けた環境の差異でありますとか、地域における大学等の数等の差異など、様々な要因が影響しているのではないかと考えております。また、子どもの学習・生活支援事業についてでございますけれども、こちらは自治体の裁量性も高く、柔軟にやっていただく事業でございまして、現在、補助率二分の一ということにさせていただいておりますが、重要な事業であることには変わりございませんので、しっかり様々な方策で取組を推進していきたいと考えております。また、新しくこの法律で創設いたします子どもの進路選択支援事業、訪問の事業につきましては、新たに事業を設けるものでございますので、まずは法律上の位置づけを得て、自治体に事業の導入を促してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 本当に進学格差は経済状況で大きいですから、やはり、子供の貧困対策というのはどこの地域も漏れなく行われるというのを是非原則にしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

≪生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案採決部分 2024年3月27日 第213国会衆院厚生労働委員会6号議事録≫

○新谷委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。この際、本案に対し、足立康史君外一名から、日本維新の会・教育無償化を実現する会提案による修正案が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。足立康史君。

○足立委員 ただいま議題となりました生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。本修正案の内容は、本法案の検討条項に、生活困窮者に対する支援等が公正で分かりやすいものであることを確保する観点も含めて検討することを追加するものであります。これにより、生活困窮者に対する支援等がどの地域に住んでいても必要な方々にしっかりと行き届くようにするとともに、支援等の対象者及び納税者双方にとって簡素で納得の得やすいものであることを確保する観点も含めて検討が加えられ、その結果に基づいて法制度やこれに基づく運用の改善等の必要な措置が講じられるものと考えております。そして、究極的には、誰一人取り残されない、包摂的な社会の実現に資するものとなることを期待するものであります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○新谷委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。本法案の全体を見れば、居住支援や生活保護世帯の子供への支援の拡充など、支援団体と当事者の要望に沿った前進面も多くあります。しかし、人権の観点から看過し得ない点が一点あります。本法案は、医療扶助の適正な実施に向け、都道府県がデータ分析等を行い、市町村に対して必要な援助を行うよう努めるとし、厚労大臣は、都道府県が調査を行うため必要な支援を行うとしています。医療扶助の現状は、精神科病院への不要な長期入院など是正すべきものもありますが、二〇一八年の法改正において、医療扶助における後発医薬品の使用を原則化という、生活保護利用者に対する差別的取扱いが法定化されています。後発医薬品の中には、本日も質疑の中でありましたが、医療現場や患者から、効き目が違う、体に合わないなどの声が上がっているものも少なくありません。ホクナリンテープのように、論文で効き目が違うとされているものもあります。医療扶助における後発医薬品の使用の原則化は、治療内容の選択権を奪う人権侵害であります。医療扶助における後発医薬品の使用割合は、国民全体より高くなっています。本法改正により、医療扶助の適正化の名で、後発医薬品の使用割合が国の目標を満たさない市区町村に対して後発医薬品の使用の圧力となり、生活保護利用者への差別的取扱いが更に進む危険があります。法案審議の中で、厚労省からは、都道府県に対して参考となる考え方を示すことを考えており、具体的な内容については、有識者の意見も踏まえて検討を進めるとの答弁がありました。国が示す考え方によっては、生活保護利用者の治療内容の選択権を奪う、更なる問題も生じかねません。次に、修正案についてです。生活困窮者への各支援事業は、自治体による実施率の格差が大きく、また、住宅確保給付金も様々な要件で線引きがされ、支援の対象は極めて限定されております。公正に、どの地域に住んでいても必要な支援が行き届くよう、制度の拡充が必要です。よって、修正案には反対しません。最後に、本法案は、今求められる支援策という観点からしても、極めて不十分です。参考人質疑において、社会保障の根幹として住まいの支援の抜本的強化を求める声が強く出されました。住宅手当創設等に踏み出すべきです。また、各支援事業が全自治体で実施されるよう、補助率を引き上げ、必須事業にしていくべきであります。支援に当たる人材確保のための財源の手当ても必要です。以上指摘し、本法案への反対討論といたします。

○新谷委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。まず、足立康史君外一名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。この際、本案に対し、大串正樹君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。井坂信彦君。
○井坂委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 一 「住まい」は生活の基盤そのものであり、その確保に向けて入居時から入居中、退居時までの切れ目のない居住支援の体制を構築するため、住宅セーフティネット制度や居住支援法人との連携、空き家・公営住宅の活用も含め、居住支援に関する省庁横断的な施策の推進を図ること。また、生活困窮者居住支援事業の全国的な実施に向け、小規模自治体での広域実施の推進等、実施率の向上に資する効果的な支援策を講ずること。二 本法による見直し後の生活困窮者住居確保給付金の支給状況を把握するとともに、生活困窮者等が安心して暮らせる居住保障のあり方について引き続き議論を継続すること。三 子どもの貧困への対応として、子ども食堂等、学校や家庭以外の子どもの居場所の充実を図るとともに、重層的支援体制整備事業との連携を強化すること。また、教育行政やこども家庭庁の施策とも連携を図りつつ、被保護世帯の子どもの大学等への進学を促進するために必要な施策を行うこと。四 生活困窮者自立相談支援事業の機能を強化するため、社会福祉士等、専門性を持つ専任職員を配置するとともに、地域の実情に応じた適切な人員体制が確保されるよう、良質な人材確保を促す補助体系に見直すなど、相談支援員の処遇改善による人材確保及び定着促進を図ること。また、相談支援員の研修の充実などスキルの向上や資格の取得を支援するための必要な措置を講ずること。五 生活困窮者の早期支援につなげられるよう、支援会議等の設置を更に促進すること。その際、現場の業務負担に留意し、既存会議の活用等、効率的な運用の促進に努めること。六 生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業の質の改善を図るとともに、自治体間格差を是正するため、好事例の横展開、未実施自治体への丁寧な支援などで平準化を図りつつ、両事業の全国的な実施を目指すための方策を検討すること。七 生活困窮者就労準備支援事業における就労体験先への交通費負担を軽減する予算措置を実効的なものとすること。八 支援対象者の社会参加や就労体験・訓練の場をより多く確保し、地域で支える体制を整備するため、認定就労訓練事業者の認定方法を工夫するとともに、事業者に対する優先発注、税制優遇、事業の立上げ支援等の経済的インセンティブの活用や支援ノウハウの提供など、受皿となる団体や企業が取り組みやすい環境を整備すること。九 生活困窮者向けの就労準備支援事業、家計改善支援事業及び居住支援事業の全国的な実施等を図るための指針を策定するに当たっては、委託先となる法人の財政基盤の安定化及び相談支援員の処遇改善を図るため、地方自治体による委託先の選定において、複数年度契約の方法も採りうることや、経費の多寡のみで評価するのではなく、支援の質や実績、地域の実情への理解や関係機関との連携状況を総合的に評価すべきことを明記すること。十 生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携強化に当たっては、被保護者が生活困窮者向けの事業に参加する場合でも、ケースワーカーと連携し、保護の実施機関が継続的に関与する仕組みとするとともに、現場の業務負担の増加により支援の質が低下しないよう、両制度の実施機関の適切な人員体制を確保すること。十一 医療扶助の適正化を推進するとともに、地方自治体のガバナンス強化の観点から、被保護者の国民健康保険や後期高齢者医療制度への加入について検討を深めること。また、不正請求を行った医療機関の指定取消しを徹底すること。十二 地方自治体における保護の実施体制については、その質及び量の両面において必ずしも十分とは言えないのが現状であることに鑑み、本法に定めた被保護者等に対する支援施策の確実な実施を図るため、地方交付税措置の更なる拡充を含む必要な措置を講ずるよう検討すること。十三 社会福祉協議会における緊急事態対応の仕組みについて、平時から検討を行うこと。十四 ひきこもりを対象としたいわゆる「引き出し屋」による被害防止のために必要な措置を講ずるとともに、当事者及びその家族に対して生活困窮者自立相談支援事業やひきこもり地域支援センターの周知、アウトリーチの強化を行うこと。以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○新谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、武見厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武見厚生労働大臣。
○武見国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいります。
○新谷委員長 お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。