2024年4月5日 衆院厚生労働委員会 育休給付保険料率引き上げ 労働者にツケ回すな

配付資料 労働政策審議会(職業安定分科会雇用保険部会)での議論
配付資料 「労働行政の現状(データ資料)」(2023年10月全労働省労働組合)より
配付資料 「公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績)」より
配付資料 「令和6年度 厚生労働省機構・定員査定について」より

 日本共産党の宮本徹議員は5日の衆院厚生労働委員会で、雇用保険法等改定案による育児休業給付の保険料率の引き上げは労働者らの負担増になり許されないとして、国庫負担割合の引き上げを求めました。
 改定案は、育児休業給付の国庫負担割合を、原則である8分の1に引き上げる一方、保険料率を0・4%から0・5%に引き上げることを盛り込んでいます。政府は国庫負担割合を2007年に原則の55%に、17年には10%に引き下げる法改定を行い、現在の負担割合は原則の80分の1です。厚労省の山田雅彦職業安定局長は、07年以降減らされてきた国庫負担額は「計6375億円、(育児休業給付の区分経理が始まった)20年度以降で3089億円」にのぼると明らかにしました。
 宮本氏は、厚労省の試算と照らし合わせれば、20年度から国庫負担割合を原則に戻しておけば保険料率を引き上げる必要はなかったとし、「保険料率引き上げは、国庫負担割合を引き下げてきたツケを労働者らにまわすものだ」と批判しました。
 宮本氏は、8分の1の国庫負担では「子育て支援に対する国の責任の重さに見合ってない」と指摘。育児休業給付への国庫負担を、失業給付の原則と同じ4分の1に引き上げれば、保険料率を引き上げなくてもやっていけると強調しました。武見敬三厚労相は「事業主や労働者に影響を与えるものであり、丁寧に議論を進める」と述べるだけでした。

以上2024年4月7日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年4月5日 第213国家衆院厚生労働委員会9号議事録≫

○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。本法案は、保険料率を引き上げるものになっております。物価高で、労働者の皆さんは今大変厳しい状況にあります。赤字の中小企業も大変な状況です。私は、負担は増やしていくべきではない、このことを強く申し上げておきたいと思います。資料の二ページ目に、労政審のJAMの奥委員の発言、二つ目に出ておりますが、国庫負担割合がもっと早く本則に戻っていれば、労使の保険料率の本則を引き上げることにはつながらなかった、こういう発言があるわけですね。これは参考人にお伺いしますけれども、育児休業給付の国庫負担割合引下げの暫定措置、時限的措置が取られてきましたけれども、二〇〇七年度から二〇二三年度までの間で合計幾らの国庫負担が減額されてきたのか、そして、そのうち、育児休業給付を失業給付から切り離して区分経理を始めた二〇二〇年度から二〇二三年度では幾らなのか、お答えいただけますか。
○山田政府参考人 お答えいたします。育児休業給付に関する国庫負担割合について、本則が給付に要する費用の八分の一であるところを、御指摘のように、平成十九年度以降、当分の間、本来の五五%の額に暫定的に引き下げ、平成二十九年度から令和六年度までの間、本来の一〇%の額に時限的に引き下げることになっていました。これらの国庫負担の暫定措置につきましては、その時々の国の財政状況や雇用保険財政の見通しなどを踏まえて、国会での御審議を経た上で講じてきたものであり、この暫定措置がなかった場合という仮定の御質問について答えることは差し控えたいですけれども、今般、育児休業の取得者増等を背景に育児休業給付の支給額は年々増加しており、財政基盤の強化が急務であることから、本法案では、国庫負担の負担割合について八十分の一から八分の一に引き上げることとしたところであります。
○宮本(徹)委員 暫定措置、時限的措置を取ったことによって幾ら国庫負担が減額されたのか、合計額を答えてくださいと。こんなのすぐ計算できるでしょう。
○山田政府参考人 お答えします。先ほど申し上げたとおり、国庫負担に関する暫定措置は、その時々の国の財政状況だとか雇用保険財政の見通しなどを踏まえて、国会での御審議を経た上で講じてきたものであり……(宮本(徹)委員「同じことを答えなくていいから、数字を答えてくださいよ」と呼ぶ)ええ。機械的な計算として、平成十九年度から令和五年度にかけて、給付額に国庫負担割合の本則を当てはめて機械的に計算した金額と実際の国庫負担額との差額は、計六千三百七十五億円となります。また、令和二年度から令和五年度にかけて、給付額に国庫負担割合の本則を当てはめて機械的に計算した金額としては、実際の国庫負担額との差額は、計三千八十九億円となります。
○宮本(徹)委員 時間の無駄遣いじゃないですか、大臣。幾ら共産党の質問は最後まで行ってほしくないからといって、こういうやり方は私は許せないと思いますよ。今、数字は、あったとおり、多額の額が削られてきたわけですね。仮に、いつの時点で国庫負担割合を本則に戻していたら二〇三〇年度まで保険料率を引き上げなくとも育児休業給付の積立金の底がつくことなく運営できたのか。遅くとも育児休業給付の区分経理を始めた二〇二〇年度から国庫負担を本則に戻しておけば、二〇三〇年度までは保険料率を引き上げる必要はなかったのではないかと思いますが、いかがですか。
○武見国務大臣 数字についてはすぐにお出しできなくて、大変失礼をいたしました。ただ、いろいろと緻密に考えると、仮説の立て方によって数字が変わるということもあるので、非常に慎重にお答えさせていただいたという点は御理解いただけると助かります。私の方の回答も、仮定の質問にお答えすることは差し控えるが、育児休業給付の国庫負担については、国の厳しい財政状況やその時々の雇用保険財政の見通しなどを踏まえて国庫負担の在り方について検討し、暫定的措置を講じてきた。しかしながら、今般、男性の育児休業取得者数の増加などを背景にこの支給額が年々増加していることに加えて、二〇三〇年における男性の育児休業取得率を八五%とするという目標達成に向けて取り組むこととしておりますので、政策が奏功して支給額が一層増加することが想定されますので、男性育休の大幅な取得増に対応できるよう、国庫負担割合を本年度から給付費の八分の一に引き上げるなど、育児休業給付を支える財政基盤を強化するものとしたものでございます。今後とも、育児休業給付の安定的な財政運営を常に図ってまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 お答えはないわけですけれども、政府の出しております、労政審の出しております育児休業給付の財政運営試算を見ましたら、今回の措置を取った場合に、令和十年度、十一年度が〇・五%に保険料率が上がって、令和十二年度、二〇三〇年度で〇・四%に戻る、これによって資金残高が二千五百八十五億円という計算になっているわけですね。二か年〇・五%上がるということは、〇・一上げれば約二千億円収入が増えますから、四千億円収入が増えることによって二千五百八十五億円残りが出るというのが、二〇三〇年度の本法案の試算なわけですね。つまり、仮に育児休業給付の区分経理を始めた二〇二〇年度から国庫負担の割合を本則に戻しておけば、先ほどの話は三千八十九億円ですか、あったわけですから、もう明々白々、元々その時点で本則に戻しておけば保険料率を引き上げる必要はなかったんですよ。ですから、今回の保険料率の引上げという提案は、国庫負担割合を引き下げ続けてきたツケを労働者らに回すものだと言わなければならないと思います。さらに、資料、先ほど配った一ページ目を見ていただきたいんですけれども、労政審の議論を見ていますと、国庫負担割合を本則の八分の一に戻すだけじゃなくて、更に引き上げる、このことを求める意見が繰り返されております。日本商工会議所の委員の方は、繰り返し繰り返し、雇用保険財政における国庫負担の割合を本則に戻すということはもとより、更なる負担も検討すべきという発言を毎回のようにやっております。あるいは、中小企業団体中央会の委員の方も、引き上げるということであれば、今後の支出増を見込んで八分の一以上の国庫負担割合を御検討いただきたいということで、本則以上に国庫負担割合を引き上げるべきだという意見がたくさん繰り返されてきたわけでございます。大臣、これこそ本来、国がやるべきことなんじゃないですか。
○武見国務大臣 昨年秋以降の雇用者保険制度の見直しについて、労働政策審議会で議論をいただいてきておりますけれども、育児休業給付における財政基盤の強化の在り方について議論を重ねる中で、労使の代表委員から御指摘の点も含めて様々な意見がありました。その上で、厚生労働省としては、今後の男性育休の大幅な取得増などに対応できるように、育児休業給付の国庫負担に関する暫定措置を廃止して、令和六年度から給付費の八分の一に引き上げる、そして、当面の保険料率は現行の〇・四%に据え置きつつ、今後の保険財政悪化に備えて本則の保険料率を令和七年度から〇・五%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率については保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入することについて、労働政策審議会での議論も経た上で、本法案を提出したところでございます。育児休業給付の保険料については、本法案が成立した暁には、今回導入する仕組みの下で、労働政策審議会の意見も聞いて、実際に保険料率を弾力的に調整できるかを毎年度確認することになりますが、その際には、事業主や労働者に影響を与えるものであることも十分に認識しつつ、丁寧に議論を進めていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 労働者や中小企業、赤字の中小企業にも影響を与えるわけですから、上げないでくれという声が繰り返されてきたわけですよ。大体、育児休業給付の国庫負担割合が八分の一という数字に何か根拠があるんですか。子育て支援に対する国の責任の重さに見合っていないんじゃないかと思いますが、この八分の一という数字の根拠というのはあるんですか。
○武見国務大臣 育児休業給付については、育児休業の取得に伴う賃金収入の喪失に対して生活支援を行わない場合、更に深刻な保険事故である失業に結びつくおそれがあることから、失業を保険事故とする求職者給付に準じた国庫負担を行うこととしております。それが、概念的に、八分の一というふうにしたことの一つの意味づけだろうと思います。求職者給付の国庫負担割合が給付費の原則四分の一とされていることから、育児休業給付の国庫負担割合については、その半分である給付費の八分の一としたということであります。したがって、政府としては、失業時の給付費を通じて労働者の生活と雇用の安定を図ることを中心的な役割とする雇用保険制度の下で、育児休業給付についても、給付の性格にふさわしい国庫負担を行い、責任を果たしたいという考え方でこのような形になったと思います。
○宮本(徹)委員 大臣も、その答弁を読みながら、本当かなと思いながら読んだんじゃないですか。恐らく今、委員、ここにいる方々も、今の説明を聞いて、ああ、なるほど、これで八分の一なんだと分かった人は誰一人いないと思いますよ。だって、雇用保険法自体は、失業しているときも、あるいは子供を養育しているときも、どちらも、労働者の生活の安定、雇用の安定を図る、これが一条の目的で書いているわけですよ。目的にはそこに差なんてつけていないですよ。ですから、失業給付が四分の一でやってきたんだから、同じように育児休業給付についても四分の一に引き上げていくということをやれば、これは本当に、当面保険料を引き上げなくともやっていけるんですよ。私たちはそういう修正案も考えておりますので、是非、大臣も、与党の皆さんと相談していただいて、法案の修正も考えていただきたいと思います。続きまして、ハローワークの体制についてお伺いしたいと思います。今回の法改正で適用拡大とあります。これで五百万人が新たに加入するということで業務量も大変増えていくわけですが、ちょっと資料の三ページ目を見ていただきたいんですけれども、これは国公労連が作成した長期病休者の資料なんですね、一番下のところなんですけれども、これを見ますと、厚生労働省職員だとか都道府県労働局職員の長期病休率というのが、国家公務員全体に比べて高いんですね。これは何か原因は分析されているんでしょうか。
○村山政府参考人 お答え申し上げます。厚生労働省において長期病休している職員の比率を最近五年間で見ますと、省全体ではおおむね一・九%から二・七%、うち本省ではおおむね一・九%から二・九%、また労働局ではおおむね二・〇%から二・八%で推移しており、国家公務員全体の病休率、具体的にはおおむね一・四%から一・九%でございますが、これと比べて、どの年を取っても高いことは事実でございます。お尋ねの高い病休率の要因として、全職員に対するアンケートから浮かび上がってきているところといたしましては、業務内容にやりがいはあるものの、そもそもの業務量が過大であることや、その結果、超過勤務が多く、ワーク・ライフ・バランスの確保が難しいことなどがうかがわれております。同時に、省内組織の在り方として、職員のメンタルヘルスをめぐる課題については、人事や福利厚生の観点から関係部門が個々別々に取り組んできたということから、総合的また専門的な支援機能が弱いといった点も事実でございます。このため、まず、業務に応じた体制確保の観点から、本年度については、本省内部部局や御指摘のハローワーク等を中心に定員増を図っており、また、業務の効率的な推進の観点から、外注可能な業務の外注化、ウェブ会議の推進、勤務時間管理のシステム化等の取組を、スケジュール管理しながら進めているところでございます。その上で、病気休業、ひいては離職を防止する取組といたしまして、本年四月一日に、大臣訓令に基づきますヘルスケア推進室を大臣官房に新たに設けまして、メンタルヘルス不調の一次予防に重点を置いて、共済組合診療所に配置している保健師や公認心理師等の保健スタッフも含めた一体的な体制を整備し、本省内はもとより、労働局等の地方機関の管理者や担当職員の研修体制を強化しつつ、今後、心身の健康づくりに向けた対応強化を目指しているところでございます。今後とも、職員が心身とも健康で、働きがいを感じられる職場づくりに向けて努力してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 一番初めに述べられたように、業務量が職員数に照らしても非常に多い、これが最大の長期病休者の多さの原因だというふうに思います。本当に頑張って働いておられると思います。資料をお配りしておるのを、四ページ目を見ていただきたいんですけれども、ハローワークの仕事でいうと、職員一人当たりの失業者数を比べると、欧米主要国と比べて日本は大変多いんですね。正規職員一人当たりで見ると、ドイツに比べて、一人当たり十倍の失業者数を見ているということになります。そして、資料の五ページ目を見ていただきたいんですけれども、にもかかわらず、この間、地方労働行政職員は、二〇〇四年から二〇二〇年にかけて三千人近く削減され、その中、ハローワークでいえば、定数が約二千五百人その間に削減されております。業務は増える、しかし常勤はどんどんどんどん定数が減らされてくる、それを非常勤でカバーするということになってきたわけですが、これが長期の病休者を生む大きな要因になってきていると思います。大臣、私は、定員削減をここまでやってきたことへの反省が必要だと思います。今回の法改正で業務量が増えます、どの程度の人員増が必要なのか、これは見積もっているんでしょうか。今回百名程度の定員の改善をしますけれども、これでは全く足りないと思いますが、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 労働局職員については、政府の定員合理化計画の下で、国民への行政サービスの低下を招かないよう留意しながら業務の効率化を進め、長期的には定員が減少をしてまいりました。一方で、新たに取り組むべき分野等については増員要求を行って、必要な人員の確保に努めてきたところであり、令和四年度以降は、労働局職員の定員は増加に転じているところでございます。今般の法改正では、例えば適用拡大では、現在の被保険者の約一割に相当する約五百万人が新たに雇用保険の適用を受け得ることになることなど、事業主の手続負担のみならず、ハローワークにおいても業務量が増大することが見込まれます。このため、業務プロセスの見直しを含めたDX化であるとか、申請手続、審査業務の効率化などを推進するほか、追加的に必要となる体制について、今後、順次確保に努め、円滑な施行に向けて万全の体制を整えてまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 やはり、大臣、長期病休率がほかの省庁より高いという状況は一刻も早く改善しなきゃいけないと思うんですよね。厚生労働省、労働行政を扱い、健康を守る厚生行政をやっているところが、民間の労働条件と比べても本当にブラックな働かせ方が蔓延し、そして健康を損ねる、これはあってはならないことだと思うんです。ちょっと、次の質問まで行く時間がないから、本当に、この状況を、ほかの省庁に比べて病休率が高いという状況は改善しなきゃいけない、この思いについて、最後、聞かせてください。
○新谷委員長 武見厚生労働大臣、簡潔にお願いします。
○武見国務大臣 はい。実は、私、大臣に就任して、厚生労働省の職場をざっと回ったときに、昼は電気を消して、皆さん静かにしながら時を過ごしておられる、それから、地下に行くとそば屋の手前のところにはちょっとした休憩所みたいな場所があるんだけれども、そこにはコンクリートの上に机が幾つか置いてあって、そこに職員が机にもたれかかるようにして寝ていて休んでいるという状況を見まして、これは駄目だなと思ったんです。それで、政務の私どもでこれは何とかしようという意見が一致いたしまして、三浦政務官にその役割を担っていただいて、事務次官に、職場の環境改善というのをもっと徹底的にやるべきだ、そのためのきちんとした方針を取りまとめようということで、今、その作業を進めているところでございます。
○宮本(徹)委員 本省も当然ですし、ハローワークや労基署も含めてしっかり対応を求めて、残りの質問は次回させていただきます。ありがとうございました。