雇用保険法改正案可決 宮本徹氏が反対討論 日本共産党の雇用保険法等一部改正案の修正案

【案文】雇用保険法等一部改正案の修正案
【新旧】雇用保険法等一部改正案の修正案
【要綱】雇用保険法等一部改正案の修正案

以下2024年4月14日付赤旗日刊紙より抜粋

 育児休業給付の保険料率を引き上げる雇用保険法改定案が11日の衆院本会議で、自民、公明、立憲民主、日本維新の会などの賛成で可決されました。日本共産党は反対しました。日本共産党は10日の衆院厚生労働委員会に修正案を提出しましたが、反対多数で否決されました。
 改定案は、育児休業給付の保険料率を0・4%から0・5%に引き上げ、自民党政権が2007年、17年と2度にわたり国庫負担割合を引き下げてきたツケを労働者・中小企業に押し付ける負担増を含むものです。介護休業給付の国庫負担を引き下げたままにする暫定措置を継続し、教育訓練支援給付金の給付率を引き下げます。
 日本共産党の修正案は▽保険料率は引き上げず、育児休業給付の国庫負担割合を4分の1へ引き上げる▽教育訓練支援給付金の給付率を引き下げない▽介護休業給付の国庫負担割合を8分の1へ引き上げる―などの内容です。
宮本徹議員は同委で討論し、「私たちの修正案に必要な経費は1080億円だ。米軍への思いやり予算の半分程度でできる。軍事費を倍増しようとしながら、お金がないという言い訳は成り立たない」と主張。育児休業給付、介護休業給付の国庫負担割合引き上げを求めました。

≪2024年4月10日 第213国会衆院厚生労働委員会第11号議事録≫

○新谷委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。この際、本案に対し、宮本徹君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。今般の政府案は、雇用のセーフティーネットを拡大する点では、一定の評価に値するものであると考えます。しかし、第一に、育児休業給付については、保険料率の引上げが示されております。社会保険料の引上げが繰り返される中、国民の可処分所得が減り、中小企業の負担が過重になっています。労使に新たな負担を生じさせ得る措置は、行うべきではありません。また、少子化の一つの要因である家事、育児の負担が女性に偏っている状況を改善する上で、男性育休の取得促進は、岸田総理の掲げる異次元の少子化対策の主要対策の一つでもあります。これを推進する国の責務は重いと考えます。育児休業給付の国庫負担割合は、求職者給付の元々の原則と同じ四分の一に拡大すべきであります。第二に、教育訓練支援給付金については、その給付率の引下げが示されています。この給付金は、働く方々が安心してキャリア形成や新たな就職先の確保につなげていくために重要な役割を果たすものです。したがって、安易に引き下げるべきではありません。第三に、介護休業給付の国庫負担について、現在適用されている暫定措置を二〇二六年まで延長することが示されています。団塊の世代が七十五歳前後となる中、介護休業給付の財政基盤の強化は喫緊の課題です。以上のような認識の下に、支援を必要とする働く方々が適切に保護されるよう、本修正案を提出した次第であります。次に、修正案の内容について御説明します。第一に、育児休業給付について、これに要する費用の四分の一を国庫の負担とするとともに、育児休業給付に要する費用に対応する部分の雇用保険料の引上げに関する改正を行わないものとします。第二に、教育訓練支援給付金の給付率の引下げに関する改正を行わないものとします。第三に、介護休業給付に要する費用に係る国庫の負担額について、暫定措置を廃止することとします。以上が、本修正案の趣旨及びその内容の概要であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○新谷委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。この際、宮本徹君提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。武見厚生労働大臣。
○武見国務大臣 衆議院議員宮本徹君提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。
○新谷委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。政府案に反対する立場で討論させていただきます。本法案に反対する第一の理由は、育児休業給付の保険料率引上げが、国庫負担割合を引き下げてきたツケを労働者、中小企業に負わせる負担増であり、国民の可処分所得を奪うものだからであります。歴代自民党政権は、育児休業給付の国庫負担割合八分の一を二〇〇七年と二〇一七年、二度にわたって引き下げてきました。本委員会の審議において、二〇〇七年以降に削減された国庫負担額は計六千三百七十五億円、育児休業給付の区分経理が始まった二〇二〇年度以降で三千八十九億円に上ることが明らかになりました。厚労省の試算と照らし合わせると、二〇二〇年度から国庫負担割合を本則に戻しておけば保険料率を引き上げる必要はなかったことになります。子育て支援に対する国の責任からして、そもそも八分の一の国庫負担では軽過ぎます。労政審での議論の中でも、育児休業給付の国庫負担を更に増やすべきとの意見表明が繰り返しありました。昨日の本委員会の参考人質疑におきましても、国が全面的に負担するべき、更に引き上げるべきとの意見が相次ぎました。育児休業給付への国庫負担を四分の一に引き上げれば、当面、保険料を上げる必要はありません。先ほど、武見大臣からは、理由なく、政府としては反対だ、こういう発言がございましたけれども、私どもの修正案に必要な財源は一千八十億円であります。米軍への思いやり予算の半分程度でできるわけでございます。財政が厳しい、お金があればという声が前からも聞こえてまいりますけれども、しかし軍事費は倍増に向けて増やしているわけであります。そうした言い訳は成り立ちません。反対理由の第二は、介護休業給付の国庫負担割合の引下げを継続することにあります。反対理由の第三は、教育訓練支援給付金の給付率の引下げであります。この給付金は、人手不足が深刻な医療、社会福祉分野への人材確保の役割を果たしております。給付金受給者の就職率は、この給付金を受給していない同じ対象年齢の方と比較して高く、直近の受給者は四万一千人にも上ります。リスキリングを推進するというのであれば、こうした分野は拡充こそ必要だ。以上、指摘しまして、反対討論とさせていただきます。(拍手)
○新谷委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。まず、宮本徹君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。次に、原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。この際、本案に対し、大串正樹君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。井坂信彦君。
○井坂委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。一 雇用保険の適用拡大による短時間労働者の就労状況の変化について調査を行い、その結果を踏まえ、労働政策審議会において必要な検討を行うこと。
二 複数の事業所で雇用される労働者の雇用保険の加入手続が確実に行われるよう、周知・広報を強化すること。また、複数の事業所で雇用される労働者への雇用保険の適用の在り方等について労働政策審議会において検討を行うこと。
三 我が国の完全失業者に占める基本手当の受給者割合が二十パーセント程度となっていることも踏まえつつ、今般の適用拡大の施行状況を把握し、必要な取組を検討すること。
四 教育訓練給付について、効果的な給付の観点から、講座の効果、賃金上昇の確認方法等の十分な検証を行い、その結果を踏まえ、労働政策審議会において必要な検討を行うこと。
五 教育訓練給付の拡充措置について、非正規雇用労働者の活用状況を把握するとともに、より多くの非正規雇用労働者が教育訓練を受けられるよう必要な支援を行うこと。
六 雇用保険の国庫負担は雇用政策に対する政府の責任を示すものであることから、求職者給付の国庫負担の在り方について、令和四年の雇用保険法改正により導入した国庫負担の仕組みの下で、適正な財政運営を行うとともに、国の財政・財源の構造から検討を行うこと。
七 介護休業給付の国庫負担割合の暫定的引下げについて、労働政策審議会において引き続き検討を行い、令和九年四月一日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で、暫定措置を廃止して本則の水準に戻すものとすること。
八 雇用形態に関わらず、職業能力の開発・向上が労働者の雇用や職業の安定のために不可欠であるとともに、我が国経済の発展にも資するものであることを踏まえ、労働者の職業能力開発支援について、給付の趣旨を踏まえた国庫負担を含めた必要な予算を確保すること。
九 保険料率の引上げは拠出する労使に多大な影響があることを踏まえ、育児休業給付の保険料率を弾力的に調整できるかを労働政策審議会で確認する際には、育児休業給付の状況や見通しに基づいた丁寧な議論を行うとともに、その財政運営の在り方について適時に検証していくこと。
以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○新谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○新谷委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、武見厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武見厚生労働大臣。
○武見国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいります。
○新谷委員長 お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。この際、お諮りいたします。第二百八回国会、早稲田ゆき君外十六名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案につきまして、提出者全員より撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。また、御報告いたします。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会との連合審査会は、明十一日木曜日午前九時から開会することとなりましたので、御了承願います。次回は、来る十二日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。