2016年2月24日15:40~衆院財務金融委員会 大企企業減税廃止・縮小を
宮本徹議員は24日の衆院財務金融委員会で、大企業が恩恵を受けている研究開発減税などの租税特別措置の廃止・縮小を求めました。
宮本氏は、会計検査院所見が政府の租税特別措置について、効果等を不断に検証して真に必要なものに限定し、国民への説明責任を的確に果たしていくことなどを求めていると強調しました。
その上で、2012年の研究開発減税額が、省庁の事前見込み2591億円に対し3494億円と900億円も大きくなったこと、14年度も総額型の研究開発減税導入で省庁の見込みを大きく上回る減税額となったことをあげ、政府の検証を求めました。
麻生太郎財務相は「関係省庁は適用状況をしっかりと検証し、説明責任を果たしていく」などと答えました。
宮本氏は、史上空前の利益をあげているトヨタ自動車が、13年度は1200億円、14年度は1083億円と最大の研究開発減税を受けていることをあげ、「1社にずば抜けた減税が行われており、偏っている。国民が納得できる必要最小限の措置とはいえない」と批判。16年度末に期限がくる増加型・高水準型の研究開発減税をはじめ、大企業を優遇する租税特別措置を廃止し、国民の暮らし向上のための財源に回すことを求めました。
以上2016年2月26日付赤旗日刊紙より抜粋
≪第190回 財務金融委員会第6号 2016年2月24日 議事録≫
○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。二十分ですので、租税特別措置と研究開発減税に絞って質問させていただきます。庶民には消費税増税、赤字企業には外形標準課税の拡大の一方で、黒字大企業は大減税。そして、黒字大企業が大きな恩恵を受けている税制の一つが租税特別措置です。昨年も研究開発減税の問題を議論させていただきました。赤字国債を発行して租税特別措置を行っているような今は状態だと言っていいと私は思うんですよ。内部留保をため続ける大企業への減税というのが中身としては多いわけですから、思い切った見直しが必要だと思います。まずお伺いしますけれども、二〇一四年度の実態調査を見ますと、研究開発減税は、昨年をさらに上回って六千七百四十六億円、そのうち上位十社が三六・四%を占めて、減税額は二千四百五十五億円。この上位十社の納めている法人税額は幾らでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。先生今御指摘の計数は、毎年財務省が国会に提出をしております租税特別措置実態調査の報告書に基づくものでございまして、この報告書は、平成二十二年の立法当時におきまして、個別名は公表しないという整理になっているところでございます。こうした中で、今御指摘ありましたように、特定の租税特別措置の適用額の上位十社につきまして、法人税の納税額といった、報告書を超えた追加的な情報をお示しするということにつきましては、報告書の情報と突き合わせた場合、個別企業名が推測されやすくなる、あるいは、それについての法人納税額についてまでの推測のおそれが生じるということもございまして、追加的な情報をお示しすることはできないということを御理解をいただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、個別企業名は、去年、出してくれと言って出せないという押し問答もありましたけれども、今回は別に個別企業名を聞いているわけじゃないんですよ。十社まとめて出してくれ、そうすれば個別企業は特定されることは、まあ特定は簡単にできるんですけれども、有価証券報告書を見ればできるわけですけれども、政府としてはそれを出せないと言うんだから、十社まとめてだったら出せるんじゃないかということを言っているわけです。だって、租税特別措置の透明化というのがもともとの趣旨だったわけですね。これが本当に公平にやられているのかどうかといったときに、実際、減税を巨額に受けているところがどれぐらい税金を納めているんだ、何ぼ納めているんだ、こういうことは、やはり明らかにされないと私はおかしいと思うんですよ。かつて、三メガバンクグループ銀行が長期にわたって法人税を納めていないことがありました。そのときは、過去の議事録を見ましたら、財務金融委員会の場でも、政府の側からは、おおむね十年ぐらい納めていませんということで、それこそ企業名を特定できますね、納めていませんという話ですから。そういう答弁をした例もあるわけですよ。ですから、別に個別の企業名を明らかにしろと言っているわけじゃないですよ。租税特別措置が公平なものなのかどうなのかと明らかにする上でも、どれぐらい税金を納めているのかというのをこれは明らかにする必要があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、これをぜひ検討していただけないですか。個別の企業名を明らかにしろということじゃないですよ。
○麻生国務大臣 財務省が毎年国会に提出をさせていただいております租特適用実態調査の報告書につきましては、平成二十二年度の立法当時において、個別企業の名は公表しないというように整理をされておるのは御存じのとおりです。したがいまして、お求めのように、特定の租税特別措置の適用額の上位十社につきましても、法人税の納税額といった、報告書にはない追加的な情報をお示しすることになりますと、報告書の情報と突き合わせをいたしました場合には、個別企業名がより推測されやすくなるということになりますので、個別企業の法人税の納税額についてまで推測されるおそれが生じるということから、そうした情報をお示しすることはできないということを御理解いただければと存じます。
○宮本(徹)委員 同じペーパーを読まれても困るんですけれども、いわば、税の公平性と信頼にかかわる問題だと思います、どれぐらい実際に納めているのかということは。これはぜひ検討していただきたいと重ねて求めておきます。そして、この研究開発減税については、昨年、会計検査院が厳しい指摘を行いました。「所見」がこういうことを書かれております。「租税特別措置等は、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則の例外措置として設けられているものであり、その効果等を不断に検証して、真に必要なものに限定すべきである」、「関係省庁においては、適用額からみた業種や企業の偏りの状況や、特別措置の適用に伴う減収額が減収見込額を上回る状況等について、検証内容を一層充実させ、拡充等の要望に当たっては適用実態等からみて拡充後もなお措置の内容が必要最小限であるとする説明を十分行い、特別措置の実効性を高めるとともに、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことが望まれる。」ということが書かれております。財務省としては、この会計検査院の指摘というのはどう受けとめられているんでしょうか。
○麻生国務大臣 この研究開発税制につきましては、企業の研究開発への取り組みというものを後押しするものであって、実際に、幅広い企業に活用をされておると思っております。適用額、いわゆる減収額が大きくなっておりますので、政策効果などをよく見きわめていくことも必要だというのは当然のことだろうと存じます。既に平成二十七年度税制改正において、総額型の税額控除の限度を、当時の原則であった法人税額の二〇%から三〇%へと上乗せする特例が期限を迎えましたので、一般の研究開発の上限枠を二五%とするなど見直しを行っており、約一千百四十億円の財源を確保いたしており、一定の改革は実現したものと考えております。今後とも、会計検査院の報告書でも指摘をされておりますように、関係省庁、これは適用状況をしっかりと検証し、説明責任というものを果たしていくべきものであり、財務省といたしましても、他の関係省庁とよく議論を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 いや、会計検査院がとりわけ指摘したのは、事前の減収見込み額との差なんですよ。二〇一二年度の研究開発減税について事前の減収見込みは二千五百九十一億だった。ところが、実際は三千四百九十四億で、九百億円も減税の方が大きかったわけでありますよ。ところが、なぜ減収額が大きくなったのか、その検証もやらずに、次から次へと拡充の税制改正要望が出されて、実際には拡充がされてきた。ここを会計検査院は問題にしているわけですよ。国民の納得できる必要最小限の特例措置だ、その額として二千五百九十一億円というのが見込み額で示されたわけですよ。それを九百億円も上回って、それがふえたことの検証もないままさらに要望するというのは、およそもうこれは、必要最小限の措置とはとても言えないことになっていると思うんです。この指摘についてはどう受けとめているんでしょうか。
○麻生国務大臣 これは、租特のいわゆる適用額、減収額になりますけれども、につきましては、個別企業の企業経営等々の状況に応じて事前の見込みから変動し得るものだとは思いますけれども、会計検査院の報告書で指摘されておりますように、関係省庁においてそうした状況について分析をよくして、その検討結果を税制改正要望に反映させていくべきものだと考えております。また、そうした指摘を踏まえて、財務省といたしましても、今後の税制改正のプロセスにおきましては、租特のあり方についてさらにしっかり検討してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 検討していくということですけれども、ちなみに、二〇一四年度の研究開発減税、総額型は五千五百三十五億円です。このときの税制改正要望の際の省庁の減収見込み額は四千七百六十七億円ですから、これも物すごく大きく上回っている。だから、省庁がこれぐらいが必要最小限ですよというのを上回る減収が繰り返されているわけですよ。だから、本当にそれが必要最小限の措置とはもう言えない状況になっているということで、厳しい検証をしなきゃいけないと思うんです。しかも、各省庁が出してきている税制改正要望自体かなりいいかげんだというのを、今回改めて見て、私は思いました。税制改正要望の記載要綱というのを財務省にいただきました。そこには「要望の措置の妥当性」という欄があるんですけれども、ここには何を書くかといいますと、「課税の公平原則に照らし、国民の納得できる必要最小限の特例措置となっているか否かを記載すること。」というふうに書いてあるわけです。では、研究開発減税の税制改正要望はどうなっているか。これは平成二十五年度のも見ましたけれども、このときは総額型を一・五倍に拡充したときですよ、二〇パーから三〇パーに引き上げたときですね。この要望の措置の妥当欄を見ましたけれども、なぜ必要最小限の措置となるのかという話は何も書いていないんですよ。書いてあるのは、簡単に言えば、我が国においては研究開発の中心は企業だ。それに対する国の支援は少ない。だけれども、イノベーションのためには研究開発を促進することは必要だ。世界各国でも研究開発の優遇税制があります。こういう話しか書いていないんですよ。財務省の記載要綱では、国民が納得できる必要最小限の措置だということを書けということになっているのに、そういうのも書かずに、実際は、こういう税制改正要望を受けてやられているわけですよ。こういうのはちょっとやり方として大変ずさんじゃないかと思うんですけれども、大臣、どう思われます。
○麻生国務大臣 今の御指摘ですけれども、この租特につきましては、真に必要なものに限るべきとされているというのはもう事実でありまして、これは、関係省庁が適用状況をしっかりと検証して実効性というものを高めると同時に、説明責任というものを果たしていくべきものではないかという御指摘は正しいと思っております。したがいまして、財務省としても、これは十分に検証を行っていくべきと思っておるところでもありますので、これらを踏まえまして、今後とも租特のあり方というものにつきましては、さらにしっかり検討してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 しっかり検証していただきたいと思いますけれども、私、結局こういう租特のあり方なんか、いつも経団連からの要望を受けて与党税調で話し合って決まっちゃうから、実際は、記載要綱はいいかげんなものであっても決められちゃう、こういうことになっているんじゃないかというふうに思ってしまいます。その上で研究開発減税の問題をさらにお伺いしたいと思いますけれども、二〇一三年度のトップがトヨタです。一千二百億。二〇一四年度分もトップはトヨタで、一千八十三億ということです。ですから、一社に二年も続けて一千億を超えるという減税を行う、これは偏っているという認識はないでしょうか。
○麻生国務大臣 研究開発税制の適用金額について一社が一千億を超えるというのは、確かに大きな数字ではあります。しかし、そうした企業が研究開発投資に積極的に取り組んでいるあらわれでもあると思っておりますので、その分だけ法人税を多く負担しているということでもあろうと思っております。最大でも法人税の四〇%が限度ということになろうと思いますので、そういった数字になります。傍ら、研究開発税制の全体としては、適用金額全体に占める十社の割合は二十六年度は三六%でありますが、比較的高い水準ではありますが、他方、適用件数というのを見ますと、中小法人の利用も約八千件ございます。また、全体では一万二千件に及んでもおりますので、幅広い企業に活用されている面もあるのではないかと考えてもおります。
○宮本(徹)委員 幅広い企業が、中小企業なんかが活用するのはいいと思いますけれども、ただ、一社に一千億円、ずば抜けた金額で毎年減税措置が行われているというのは、これは、普通に考えたら偏っていますよ。一千億あったら、どれだけ国民のためのいろいろな施策ができるのかということだと思います。しかも、トヨタの利益というのは空前なわけですよ。二〇一四年度までの二年間で税引き前利益は一兆二千六百八十九億円ふえている。連結内部留保は三兆円以上ふえて十八兆円。こういうところに一千億の減税をしていく。これが国民が納得できる必要最小限の措置と言えるんでしょうか。だってトヨタは、これだけの体力がありますから、研究開発をやりますよ、減税しなくたって。それだけの体力を十分持っているところですよ。ここに毎年一千億の減税を租税特別措置でやるというのは、国民が納得できる必要最小限の措置とはおよそ言えないんじゃないでしょうか、大臣。
○麻生国務大臣 この制度につきましては、企業の研究開発への取り組みを後押しするというのが一義的なところでありまして、実際に幅広い企業に活用されておりますのは今申し上げたとおりです。適用額、いわゆる減収額が大きくなっておりますが、政策効果などをよく見きわめていく必要があるということは、そう思っております。既に二十七年度の税制改正において、総額型の税額控除の限度を当時の原則であった二〇%から三〇%へ上乗せする特例が期限を迎えましたので、既に開発の上限額を削っておりますので、そういった意味では、一定の改革が実現したものだと考えております。いずれにいたしましても、会計検査院の報告書でも指摘されておりますように、よくよく多省庁の、これは関係しているところがいろいろありますので、他省庁ともよく議論を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 政策効果を見きわめるということを繰り返されるわけですけれども、経済産業省が毎年委託調査をして、研究開発減税の効果というのは出されています。それを見て私は思うんですけれども、例えば二〇一四年度の税制改正では、研究開発減税の増加型というのが拡充されたんです。それについてのアンケートですけれども、増加型を利用する見込みの企業でも、この税制改正の影響がなかったと答えたのが八一・二%なんですよ。ですから、結局、企業はそれぞれがもうけを上げて競争に勝ち抜くために、やはり必要な研究開発はやっていっていると思うんですよ。だから、この増加型を拡充したけれども、税制改正がなくても自分たちで研究開発したというところが圧倒的多数というのが、経済産業省のやっている委託調査でも出ているわけですよ。これは、そういうところもしっかり見て政策効果を見きわめるということはやっていただきたいというふうに思います。その上で、二〇一六年度末で研究開発減税の増加型、高水準型は特別措置の期限が来ます。同じ期限を迎える設備投資減税、これは今度の税制改正でやめるということが盛り込まれたわけですけれども、この研究開発減税の増加型、高水準型の租税特別措置は廃止が盛り込まれておりません、今度の税制改正には。これは何で盛り込まなかったんですか。
○麻生国務大臣 この租税特別措置というのは、特定の政策目的を実現するための有効な政策手段となり得るということがあります一方、間違いなく、必要性や政策効果を見きわめた上で見直しを行っていくべきものであるという点に関しましては全くそうだと思っておりますので、個別の租税特別措置の性質を踏まえてその取り扱いというのを考えていく、これは適当なことだと思っております。御指摘の生産性向上設備投資促進税制につきましては、全体の期限が二十八年度末であるところから、一部は既に二十七年度末が期限でありますので、それに合わせて、二十八年度の税制改正プロセスで議論を行ったものであります。また、この制度は設備投資の促進を目的といたしておりましたので、政府として、官民対話などの場におきまして設備投資の拡大を呼びかけております中、この制度につきましても、期限をいたずらに延長しないという姿勢をきっちり示すことによって企業に投資判断の前倒しを促すということを狙って、期限どおり、二十八年度末に廃止することについて明確にしたものであります。他方、研究開発税制のうち、いわゆる増加型及び高水準型の部分についても、二十八年度末が期限とされておりますが、これは、企業の研究開発の取り組みを後押しするためのものであると同時に、期限が到来する二十九年度税制改正プロセスにおいて、政策効果などを十分見きわめた上で見直しを検討していくべきものと考えておりますので、生産性向上設備投資促進税制とは事情が少々異なっておると考えております。
○宮本(徹)委員 政府税調の原則は、期限が来た租税特別措置は原則的にやめるということが書き込まれているというふうに思います。そういう点でいえば、何で研究開発減税は続いていくのかということを考えると、やはり結局、経団連が言うから、経団連の研究開発減税だけは残してくれという、そこにいつもいつも応えているからそういうことになってしまっているんじゃないかと疑わざるを得ません。やはり経団連の方に顔を向けている限り、本当だったら国民の暮らしを支えるための大事な財源が奪われ続けるということになりますので、そういうところの政治姿勢はきっぱり改めて、租税特別措置というのは期限が来たらきっぱりやめて、国民の暮らしを支える財源に回す、こういうことをしていただきたいということを求めまして、質問を終わります。