2019年6月14日 財務金融委員会 年金削減はやめ、減らない年金制度をつくるべき

 日本共産党の宮本徹議員は14日の衆院財務金融委員会で、公的年金削減で老後に2000万円の蓄えが必要とした金融庁の審議会報告書を麻生太郎金融相が「政府の政策スタンスと異なる」と受け取り拒否したことを批判。「国民の批判が広がったら、あわててごまかすのではなく、年金の現状を国民に説明し、どういう年金制度なら国民の生活の安心がつくれるか真剣に議論すべきだ」と主張しました。
 宮本氏は、米軍への思いやり予算の縮減や防衛費の後年度負担の抑制を求める財政制度等審議会の報告書は政府の政策とは違うのに受け取っているとして「金融庁の報告書だけ受け取らないというのは、ご都合主義だ」と批判。しかも、報告書をまとめたワーキンググループの出発点は2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」だとして「政府の政策スタンスと違うどころか、政府の考え方を正直に書いているだけだ」と指摘しました。
 麻生氏は「(報告書が)大きな不安を広げている点が問題」などと答えました。宮本氏は、年金が減り続けるとの報告書の指摘は事実だとして「貧困な年金制度をそのままにして、自助努力にまかせようとしているから不安と怒りが広がるのではないのか」とただしました。
 しかし、麻生氏は「年金は負担と給付のバランスを取れるようにした」というだけ。宮本氏は「このままでは基礎年金は3割減る。これでどうやって生活できるのか。減らない年金制度をつくるべきだ」と求めました。

≪2019年6月14日 第198回衆院財務金融委員会第16号 議事録≫

○坂井委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。質問します。このワーキンググループが出した報告書が、ないんだとか、あるいは受け取らないんだとか、本当に驚き桃の木山椒の木であります。とりわけ、政府の政策スタンスと異なるから受け取らない、おかしな言い方だなと思うんですよね。政府の政策スタンスと違うものをこれまで大臣は受け取ってきているんじゃないですか。例えば、財政制度等審議会、防衛費について、後年度負担がふえれば予算の硬直化につながるから後年度負担を抑制しなさいと、随分前から書いていますよ。思いやり予算を削減しなさいと、書いてあります。政府のスタンスと違う審議会の報告書、これまで大臣は受け取ってきているじゃないですか。御都合主義じゃないですか。
○麻生国務大臣 今の御質問ですけれども、受け取っているじゃないかと言うけれども、今回ので一番の問題なのは、この答申というか作業部会の文書が、少なくともこの文書が、もともと外に、クローズじゃありませんからね、あそこの委員会は、御存じのように。オープンでしょう、あそこの委員会は。それも御存じありませんか。あの委員会はクローズじゃありませんよ。もともと完全にあいていますから、毎日ネットに載っていますよ。御存じなかったんですか。ちょっと待ってください、それは全然、前提が違いますから。(宮本委員「そんなことに時間をかけずに進めてください」と呼ぶ)いやいや、時間をかけるためにやっているんじゃなくて、御存じないという前提だと話が全く違うから。クローズじゃないですよ、これは、オープン。まずこれが大前提ね、御存じなかった方もいらっしゃるかもしれませんけれども。私どもは、この種の、今回の話は、これによって非常に大きな不安とかそういった形になっておりますから、そういった意味では、我々としては、この点に関しましてはそこの点が一番問題なのであって、今までの、先ほどの話もいろいろありましたけれども、これによって大きな不安になって、今回のような大きな騒ぎになったということはなかったと思っておりますので、私どもは、受け取りますということで、その上でやらせていただく、判断をするというふうにさせていただきますが、今回は、少なくとも、何だかんだ、不安だ何とかと、えらいあおったような形にこの一週間ぐらいの間に感じますから、これ以上やっていくのは全然意味がない。私どもとしては、そういった意味で、いいところはありますよ、だから、ホームページにそのまま残してありますから、そのまま見ていただいたら誰でもごらんになれます。そういった形にしてありますから、私どもとしては、きちんとした対応はそこでやらせていただくとして、その上で、少なくともこれを、公文書として上がってきたという形にして、審議会まで上げて通すよりは、その前の段階で、私どもとしてはこの種の話は受け取れません、政策の参考にはすることはありませんということをきちんと申し上げておいた方がよろしいのではないかと判断をさせていただいたというように御理解いただければと存じます。
○宮本委員 政策的スタンスが異なったものを今までは受け取ってきたけれども、今度は受け取らない、その理由は、不安を広げて騒ぎになったからだと。騒ぎになったから受け取らない、それが本性なんじゃないですか。参議院選挙を前に、世論が年金問題に関心が向いて、このままじゃ選挙に不利かもわからない、そういうことで、突然、受け取らないと言い始めたんじゃないか、そうとしか思えないですよ。それで、今回の報告書でいいますと、政府の政策スタンスと違うどころか、私は、政府の考え方を正直に書いているだけだと思いますよ。このワーキンググループも勝手に行われたわけじゃないですよね。金融庁のホームページに未来投資戦略二〇一八の抜粋が書いてあります。ちょっと読んでいただけますか。
○三井政府参考人 読み上げさせていただきます。「高齢化社会に適合した金融サービスの提供」というくだりでございます。「確定拠出年金について、本年五月に施行される中小事業主掛金納付制度や簡易企業型年金制度の周知を行うとともに、個人型確定拠出年金(iDeCo)も含め、運営管理機関の営業職員による加入者等への運用の方法の情報提供を可能とするなど、私的年金制度の普及・充実を図る。」「金融機関における、老後の資産運用・取崩しを含めた資産の有効活用に適した金融商品・サービスの提供のほか、成年被後見人の財産の保護の仕組みの充実など、高齢者が安心して資産の有効活用を行えるようにする環境整備を図る。」でございます。
○宮本委員 今読んでいただきましたけれども、見出しは、二、投資促進というところに書いてありますね。高齢化社会に適合したサービスの提供、私的年金制度の普及、充実を図ると。公的年金だけでは、どんどんどんどん減っていくから、私的年金制度の普及、充実を図ろう、これが未来投資戦略、閣議決定で決められている。これでワーキンググループの議論がスタートしているわけですよね。これは昨年六月十五日の閣議決定です。このワーキンググループのスタートの前に、昨年七月三日に、金融庁自身が「高齢社会における金融サービスのあり方(中間的なとりまとめ)」というものを公表しております。これは私も拝見させていただきましたけれども、一番初めをめくると、「高齢社会の現状とリスク」と書いてあるんですね。リスク。一番初めに書いてあるのは、「資産寿命が生命寿命に届かないリスク」「長生きした場合、貯蓄を全て取り崩し、公的年金のみによって生活する世帯が増加」と書いてあるんです。裏を返せば、公的年金のみで生活するのはリスクだと書いているわけですよ、金融庁は。公的年金だけでは生活が賄えないということを認めているじゃないですか。公的年金のみではリスクというのが金融庁自身の認識なんじゃないですか。
○三井政府参考人 お答え申し上げます。確かに昨年六月に、これは金融庁が、審議会とかワーキンググループではなく、個別に有識者の方々のところにお話をお聞きしまして、まず議論の出発点を勉強するためにいろいろ勉強したものを取りまとめて、それを行政の見える化という観点で公表させていただいたものでございます。そこで、御指摘のとおり、資産寿命という言葉が最近、金融老年学で使われるようになっているということを学びまして、その言葉を使わせていただいています。金融庁でございますので、民間金融というのが仕事のなりわいでございますけれども、そうした場合に、個人の貯蓄というのが、寿命が長くなっていく過程で、生きている間に底をつくことがあり得るリスクでございます。ここで申し上げているのは、公的年金がリスクであるというふうに書いているわけではございませんで、自分の民間貯蓄が底をつくリスクということで書かせていただいているものでありまして、それでは、貯蓄というものをいかに長く、賢く、そして安全に長もちさせるかということを勉強する必要がある、こういう問題意識でございます。
○宮本委員 この文書にははっきり、公的年金のみによって生活する世帯が増加する、これがリスクだと書いてある。どう考えたって、貯金がなくなって、公的年金だけでは不足ですよ、だからこれから私的年金を重視しましょう、こういう話じゃないですか。実際、ワーキンググループの中でも、厚労省の課長が、高齢者の収入と支出の差は毎月五・五万円だ、今後、公的年金の給付は減る、私的年金が重要になる、こういう説明をやったわけですよ。さらに、自民党の参議院選挙の政策を見ましたけれども、これも今回の審議会ワーキンググループの報告書と同じですよね。人生百年時代の到来を踏まえ、国民が生涯にわたり安定的な資産形成を行うため、つみたてNISAを更に普及すると。年金だけでは生涯にわたる安定はない、裏を返せばそういうことですよね。だから、こういう政策を出したということです。ですから、今度の報告書に貫かれている、公的年金だけでは生活に足りないですよ、だからこれからは私的年金ですよ、投資してください、これは、政府や自民党の方針そのものじゃないですか。
○三井政府参考人 お答え申し上げます。リスクという言葉を多用して大変申しわけございません。金融庁は、金融システム、金融市場の所管省庁であることで、金融の仕事に携わっておられる方々が一般的にリスクという言葉を多用することもありまして、こういった文書にリスクという言葉を使って、やや混乱を招いたところを反省してございます。リスクでございますので、このこと自体が善であるとか悪であるとか、それから、そのリスクが起きるときのベースになる公的年金が足りないからとか、あるいはこれがまずいからということの含意はございません。繰り返しになりますけれども、自分の貯蓄がゼロになる、あるいは、長寿化が進むことによって貯蓄の取崩しが、寿命が全うされるよりも手前でゼロになる可能性があるという確率というんでしょうか、可能性があるということをリスクということで表現させていただいている次第でございます。また、金融庁として、むやみやたらに投資を促進することが必ずしも個人の家計資産の蓄積に資するものであるというふうに単純に考えているわけではございません。そこは、それぞれの家計の投資経験、知識、あるいは、どの程度の価格変動を受容するだけの資産あるいは収入があるかどうかといった、もろもろの経済的あるいはその方々の知見も含めた状況に応じて、適切な金融商品・サービスを購入して初めてその資産形成が成り立つという前提で、この資産形成というものを申し上げているということでございます。
○宮本委員 何でそこで局長が答えるのかわからないんですけれども。本来、政府や自民党の方針を聞いているわけですから、麻生さんが答えなきゃおかしいなと思うんですけれども、大臣がいらっしゃらないです。とめてもらっていいですか。
○坂井委員長 大臣が戻られるまで速記をとめてください。
〔速記中止〕
○坂井委員長 速記を起こしてください。宮本君。
○宮本委員 それで、先ほど緑川委員が、事前にこの報告書を大臣にどのようにレクをしたのかということを聞かれておりました。私もちょっと聞きたいなと思ったんですが、大臣に金額の話は事前にはレクはされていなかったということですけれども、これから公的年金はどんどん所得代替率が下がっていく、公的年金だけでは賄い切れないから、私的年金、NISAだとかiDeCoが大事だ、こういう中身ですよという説明を事務方はされたんじゃないですか。
○三井政府参考人 お答え申し上げます。大臣には私から説明した記憶がございます。私自身は、公的年金制度について、マクロスライド措置も含めて詳しく勉強しているわけではございません。むしろ、貯蓄というものがあったとして、そしてそれを支出に充てるということをしたとしまして、寿命が延びる、とりわけ退職した後の期間が長くなりますと、同じペースで支出すれば、先に貯蓄がなくなるということですので、そういう資産寿命というものを延ばすためにはどうするか、そういうことを説明したという記憶がございます。(発言する者あり)
○坂井委員長 着席をしてください。できる限り思い出して、正確にお願いをいたします。
○三井政府参考人 はい。では、断定的に申し述べられることを申しますと、公的年金が減るということは、私の口からは申しておりません。あるいは、公的年金が頼りなくなっていくということを政務三役の場で私は説明したことはございません。
○宮本委員 事前に私が聞いていた話というのは、マクロ経済スライドで公的年金が減るという話もしたというような話を伺っていますけれども、説明者によって言うことがころころ変わるのでは、私たちは何に基づいて質問すればいいのかと思ってしまいますよ。報告書の中には、今、川内筆頭からありましたが、まさにそのことが書いてあるわけでしょう、公的年金だけでは足りなくなるから、だから私的年金が必要だと。大臣は、そういう説明を受けた記憶があるんじゃないですか。(発言する者あり)速記をとめてください。
○坂井委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○坂井委員長 速記を起こしてください。麻生大臣。
○麻生国務大臣 私の場合、ちょっと政府委員ではありませんので、正確な記憶ではありません。正確な記憶ではありませんというのは、私の記憶にはないということです。
○宮本委員 報告書のかなめの部分を報告していないなんてとても思えないわけですけれども。とにかく、国民の批判が広がったら慌ててごまかす、こういう姿勢ではなくて、まず、年金の現状を国民に説明して、どういう年金制度をつくっていったら国民生活が安定するのか、こういう議論こそ私は真剣に国会はやらなきゃいけないと思いますよ。大臣は、報告書が不安を広げた、だから不安を一掃しなきゃいけないということを言われましたけれども、一体、国民は何に不安を感じていると思いますか。
○麻生国務大臣 いわゆる年金というものを、それは人によって何も、老齢年金に限らず、いろいろ年金はございますから、その年金は、企業年金があってみたり、農業者にとりましては農業の年金があったり、額も違いますし、いろいろあるんですが、総じて、年金というものは、何となく、これでなくなるんじゃないかとか、一時期ありましたよね、年金はこのままいったらなくなっちゃうんだと、ついこの間まであったじゃないですか。共産党さんもいろいろ言っておられた記憶がありますけれども。今、現実問題としては、そういう話はなくなってきているとは思いますよ。少なくともこの六年間の間に、GPIFも四十四兆積み上がっていますし、いろいろな形でなくなってきているとは思いますけれども、それでも、今回のこういったような表現でいくと、間違いなく、年金という制度そのものが危ないんじゃないかとか、また、私は金を二千万持っていないから、何となく、これじゃ生活できなくなるんじゃないかとかいろいろな話を、どんどんどんどん想像したような話ができ上がっていった、そういう不安、そういった何となく先行き不安というものを助長したところが一番問題なんだ、私はそう思うんですけれどもね。
○宮本委員 国民が不安に思っているのは、今の公的年金だけでは老後の生活には足りない、この事実に一番不安を感じているんですよ。しかも、それが、年金が更に減額されていく。そういう中で、今度の報告書は、自助努力でお金を投資して、自分でたくさん用意しなさいと。貧困な年金制度をそのままにして、国民の自助努力に任せるようなことをやるから、不安が一層高まっているんじゃないですか。違いますか。
○三井政府参考人 先ほど、事前説明のところについて、年金のことについてどのぐらいちゃんと説明したかということを事実関係で話せというふうな御指摘がございました。繰り返しになりますけれども、資産寿命を延ばす必要があるということは申し上げました。それから、年金ということに一切触れていないかということであるとしますと、それは当然触れている可能性はあります。ただし、私の口から、年金が将来当てにならないとか、あるいは、年金では生活できなくなるとは申し上げておりません。ただし……(発言する者あり)
○坂井委員長 不規則発言は控えてください。
○三井政府参考人 ただし、所得代替率が下がるあるいはマクロスライド調整があるということは報告書の中に書いてあります。それは恐らく、記憶と言って申しわけないんですが、それは当然話していると思います。なぜならば、貯蓄の資産寿命を延ばさなきゃいけないということを私が話している以上は、その前提として、公的年金が将来ふえていく、なので貯蓄は減らしてもいいんですということは論理矛盾になりますので、当然今よりふえることは考えられないということは言っていないと論理的につじつまが合わないことから、資産寿命を延ばすと私が明確に申し上げた記憶があることからすると、公的年金は今以上にふえていくということにはなっていないはずだということを前提に話している、明示的にそういう言葉を使ったかどうかは別として、そういう含意のあることを話していると思います。
○宮本委員 ですから、公的年金はふえていかない、減っていくんだとちゃんと大臣に説明して、だから私的年金だという説明をして、大臣は、だからこれから人生百年考えろという記者会見をやったという話じゃないですか。それで、私ももう一度聞きますけれども、貧困な年金制度をそのままにして、どんどんどんどんこれから年金は減額していく、にもかかわらず、これからは自助努力で、これをもっと自助努力を強めて、自分たちで投資してくださいと、ここに国民の不安と怒りがあるんじゃないですか。大臣、違いますか。
○麻生国務大臣 少なくとも平成十六年度の改正の前の話と改正の後の話は別に考えられぬといかぬのだと思いますけれども、平成十七年で改正をされた結果、少なくとも現在の年金制度というのは現役の負担と給付のバランスというのがとれるようにしたわけでしょう、あの制度というのは。そちらの方がお詳しいんだと思いますけれども。そういった形になっておりますから、どんどんどんどんふえてある日突然に年金の支給額ががたんとなくなるとか、若しくは負担をしている方がぼんと上がるとか、そういうことにならないようにあの制度はつくったんですよね。そのとおり、今、これまでの間、それ以後、約十七、五、六年たちますけれども、そういった形で運用してきておりますのは御存じのとおりなので、私どもとしては、将来的なことをそういったことのないようにあの法律はつくったというように考えております。
○宮本委員 あの法律でやっていけば、所得代替率で見ていけば、基礎年金は実質三割減るんですよ、今よりも。どうやって生活していくんですか。今でも、国民年金で単身の方は七十になっても八十になっても頑張ってバイトをされている方がたくさんいらっしゃいますよ。それが今の現状ですよ。それを更に減らしていく。減らしていくから、今度は皆さん、どんどん投資して、貯金してください、こういう姿勢が国民の不安と怒りを招いているんだということを真剣に受けとめるべきだと私は思います。大企業に税や社会保険料の負担をしっかり求めて、減らない年金制度をつくっていく、このことこそ必要だということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。