戦争法案 ”砂川判決根拠論”崩れる 宮本徹衆院議員の質問 2015年6月10日
日本共産党の宮本徹議員は特別委で、政府見解が引用した1959年12月の最高裁判決(砂川判決)では「集団的自衛権は一切議論にもなっていない」と追及しました。横畠(よこばたけ)裕介内閣法制局長官は「(判決は)集団的自衛権について触れていない」と認めました。安倍晋三首相や自民党は、砂川判決が集団的自衛権行使容認の根拠であるかのように言いはやしていますが、これが破たんに追い込まれる重要答弁です。
政府見解は、砂川判決の「(国の)存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得る」としている部分を集団的自衛権行使容認の根拠にしています。しかし、この主張には憲法解釈変更論者からも異論が噴出。昨年7月の「閣議決定」にも盛り込まれませんでした。
宮本氏は、砂川判決では、駐留米軍が憲法9条2項の「戦力」にあたるかどうかが問われ、集団的自衛権についての判断を行っていないと指摘。しかも、政府見解が引用している部分は、判決を導き出す論理とは直接関係ない傍論にすぎないとただしました。
横畠長官も「(引用部分は)裁判で結論を出すために直接必要な議論とは別」と述べ、「傍論」であることを確認しました。
宮本氏は、最高裁判決は、駐留米軍を「違憲」とした地裁判決にあわてた日米両政府が最高裁に圧力を加えてだされたものだと指摘。「正当性が疑われる砂川判決を憲法9条の解釈を覆す根拠に使うなどとんでもない」と批判しました。中谷元・防衛相は「指摘も踏まえて、今後さらに勉強していく」としか答えられませんでした。
結局、何のために戦争法案が必要なのか―。
日本共産党の宮本徹議員は10日の衆院安保特別委員会で、1972年の政府見解では集団的自衛権行使は禁止されていたにもかかわらず、今回の戦争法案で「安全保障環境が根本的に変容」したためにこれを許容するとした政府見解(9日)について、「何をもって、いつ頃から根本的に変容したのか」と問いただしたところ、中谷元・防衛相は明確に答弁することができませんでした。
宮本氏は「実際に世界で他国に対する武力攻撃で、国の存立が脅かされた国があるのか」と、具体的な存立危機事態の事例を示すよう追及。中谷防衛相は具体例をあげられず、「しっかり調べて答弁します」としか回答できませんでした。
宮本氏は「答えられなければ立法事実(法案の提出理由)がないということになる。憲法解釈の根拠がないということだ」と断じました。
「武器等防護」で米空母「護衛」可能に 防衛相答弁
中谷元・防衛相は10日の衆院安保法制特別委員会で、「武器等防護」の範囲を米軍等の他国軍部隊にまで新たに拡大する自衛隊法95条改定案について、自衛隊が平時から戦時まで米空母の「護衛」が可能になることを明らかにしました。日本共産党の宮本徹議員への答弁。
空母は、艦上で多数の戦闘機を運用できる大型艦船で、米軍の強大な戦力投射能力の中核をなす兵器。「戦闘機が『戦闘現場』に向かって(空母から)飛び立つものの、空母自身が『非戦闘現場』にいる場合は自衛隊の警護ができるのではないか」と宮本氏は追及。中谷防衛相は「(空母が)自衛隊と共同行動している場合が前提だ」と述べ、空母「護衛」が可能と認めました。
さらに防衛省の黒江哲郎防衛政策局長は、自衛隊による防護対象となる「武器等」には、武器だけでなく、弾薬・火薬・船舶・航空機・車両・有線電気通信設備・無線設備・液体燃料といったあらゆる装備品が含まれると答弁。防護活動の形態については、「戦闘現場」でなければ自衛隊が警備部隊そのものを派遣する可能性にも言及しました。
宮本氏は、自衛隊が米軍と一体に相手に反撃すればそのまま戦闘状態に入っていくことになると指摘し、「事実上の集団的自衛権がなし崩しで発動されることになる」と批判しました。
以上2015年6月11日付 あかはた日刊紙1面および2面より抜粋
≪第189回 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会第8号 2015年6月10日議事録≫
○浜田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。本日、午前の質疑で、横畠内閣法制局長官は、昭和四十七年の政府見解の憲法解釈を変えた理由は安全保障環境が変わったからかと問われて、端的に言えばそのとおりと答弁されました。そして、安全保障環境が変われば、また憲法解釈が変わって、絞ることもあり得るというふうに答弁をされました。安全保障環境が変わったという理由で政府が憲法解釈を百八十度変えるやり方こそ立憲主義の否定だ、そして法的安定性を損なうんだと批判されているわけです。そのことを厳しくまず初めに指摘しておきたいと思います。そして、まず、政府見解、きのう出されたものについてお伺いしますが、この政府見解は「安全保障環境が根本的に変容し、」ということを言っておりますが、何をもって「根本的に変容」と言っているのか、そして、根本的に変容したのはいつからでしょうか。
○中谷国務大臣 昭和四十七年の見解を考えたわけでございますが、それからもう四十年以上たちました。冷戦も終えんをいたしました。また、グローバルなパワーバランスも変化をしております。また、東アジア、中東、ヨーロッパで不安定な要因も現実のものになってきております。具体的には、大量破壊兵器、また弾道ミサイル等の軍事技術が高度化、拡散化をいたしております。北朝鮮は、日本の大部分を射程におさめるノドンミサイルを配備しております。また、核開発も行っております。さらに、国際テロの脅威、海洋、宇宙、サイバー空間におけるリスクも深刻化をいたしております。脅威が世界のどの地域においても発生し、我が国に直接的な影響を及ぼし得る状況にもなってきているわけでございます。このような状況の中で、日本の安全を守る、国民の命と暮らしを守っていく。そういう意味におきまして、日本をしっかり守るために、どう考えるのか。また、日本が国際社会の中で一層大きな役割を果たすとともに、日米同盟も強化をし、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係も深めなければならない。このような日本を取り巻く環境が大きく変化をしたということでございます。
○宮本(徹)委員 だから、何をもってと。今いろいろなことを述べられましたけれども、だって、ソ連があった時代なんて、もっとたくさんのミサイルが向けられていたわけでしょう。私の子供のころなんて、核戦争で核の冬になったらどうなるのかというふうな「NHKスペシャル」なんかがやられていたわけですよ。それで、もっと大きな危機があったんじゃないかと私個人の実感としてあるわけですけれども、一体何をもって根本的な変容という、その根本的な変容の基準をしているのかということと、それがいつからか、明確に答えてください。
○中谷国務大臣 インターネットができ、また人工衛星ができ、どんどんどんどん科学技術が進歩発展をしてきております。それに伴って、やはり安全保障の分野におきましても非常に状況が変わってきているわけでございますので、私たちが目標といたしますのは、やはり国民の命や安全を守るために、あらゆる事態に切れ目のない対応、そして、法律の面においても、いざ発生してからでは遅いわけです。やはり、いかなる事態が発生しても国だけはしっかり守れるような、そういう法律をつくっておかなければならない。そういう見地で、状況の変化に対してしっかり国民を守っていける、そういう法制をつくることを目指しているわけでございます。
○宮本(徹)委員 インターネットだとか人工衛星が基準だということですか。二回も私の質問に対して答えたら、それが根本的変容の基準ということになっちゃいますよ。いろいろなことを並べて、何が基準なのかということを聞いて、そして、いつからか。いろいろなことが集まってと言うんだったら、それが根本的な変容というふうに決めたのはいつなんですか。
○中谷国務大臣 まず、憲法施行から六十七年になる今日までの間に、我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容をいたしました。特に、冷戦後四半世紀たちましたが、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、拡散、国際テロなどの脅威、アジア太平洋においての問題は緊張が生み出されているとともに、脅威が世界のどの地域においても発生して、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になってきている。近年ではさらに、海洋、宇宙、サイバー空間における自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散、深刻化をしているということです。やはりどの国も一国のみで平和を守ることはできずに、国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待しているというようなことで、こういった環境の変化が、常に変化が起こって蓄積をされている、そういう中でいかに日本の国を守ったらいいのか、そういうことを考えたわけでございます。
○宮本(徹)委員 だから、私が聞いたことに全然答えていないんですよ。根本的変容というのは、根本的というのは何なのかということと、いつからなのかというのを全然答えられないわけですよ。これで憲法解釈を変えよう、根拠にしようというのは、本当にこんなおかしな話はないということを私はまず初めに言っておきたいと思います。そしてもう一つ、この政府見解についてお伺いしたいと思いますが、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしてもその目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」ということが書かれているわけです。その例としてホルムズ海峡だとか何だとかということを挙げられていますけれども、国民の中では、それがどうして当てはまるのという疑問が広がっているわけですよね。ちょっとお聞きしたいんですけれども、この根本的な変容の中で、皆さんが言われている根本的変容の中で、実際、世界の中で、他国に対する武力攻撃で国の存立が脅かされるようなことがどこかの国であったことがあるんでしょうか。例があれば挙げてください。
○中谷国務大臣 一概には言えませんが、我が国の安全を考えてみますと、やはり日本の安全というものは、戦後ずっと平和で来られたわけでございまして、それは、それなりに国民も努力をし、また政府も努力をした結果でございます。やはり、そういうことがないように日々備えをしておくということが安全保障でございますので、そういう備えというものは、目には見えませんけれども、必要なわけでございます。
○宮本(徹)委員 いや、だから、そういう我が国の話を聞いているわけじゃないんです、私は。我が国にあったら、それこそ大変な事態なわけですよ。そういうことを聞いているわけじゃない。世界の中で、今安全保障環境が変わっているという話があったわけですけれども、他国に対する武力攻撃で国の存立が脅かされたようなことが、出来事があった国はあるのかということを聞いているわけですよ。
○中谷国務大臣 国際紛争は今でも起こっております、シリアとかウクライナとか。絶えず国際社会というのはそういう紛争、対立を繰り返しているわけでございますが、そういう中で、日本の安全、平和、これはしっかり守っていかなければならないということでございます。
○宮本(徹)委員 私が聞いているのはそういうことじゃないんですよね。紛争一般が起きているのは誰だって知っている話なわけですよ。そうじゃなくて、他国に対する武力攻撃によってある国の存在が脅かされるようなことが起きたことというのはありますかということを聞いているわけですよ、どこかの国で。自分の国が攻められたら、その国の存立が脅かされるのは当たり前ですよ。その国が攻められていないのに、他の国が攻められていることをもってその国が存立を脅かされるようなことがあったというのがこの論理なわけでしょう。そういう例が世界にあるんですかということを私は聞いているわけですよ。
○浜田委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長 速記を起こしてください。中谷防衛大臣。
○中谷国務大臣 先生から事前にいろいろと御通告をいただいておりますけれども、本件につきまして事前にお問い合わせがなかったものですから、しっかり調べましてお答えをさせていただきたいと思います。申しわけございません。
○宮本(徹)委員 いや、別にそんなに難しい話を聞いているわけじゃないんですよ。こういうことが、存立を脅かすようなことが起こり得るなんてことを言っているから、実際そんな例が世界にあるのかなと。このことについて物すごい国民は疑問を持っているから、私は代表して聞いているわけですよ。こんなことも出せずに……(発言する者あり)いや、一例も出せないという……。岸田さん、一例でも出せますか、岸田大臣。では、出せないということですから、後刻。
○岸田国務大臣 これまでの歴史の中で、他国に対する攻撃で自国に対してそうした危機が及ぶ、そういった例があるかという御質問でありますが、我が国以外の事例全てについて今確認するものがありません。先ほど防衛大臣からありましたように、改めて正確を期して御報告をいたします。
○宮本(徹)委員 まあ、私の思いつく限りはないと思うんですけれども、あればぜひ調べて出していただきたいと思います。なければ……(発言する者あり)理事会に提出していただくということで、理事会で御検討をよろしくお願いします。
○浜田委員長 理事会で協議します。
○宮本(徹)委員 よろしくお願いします。出せなければ、もうそれこそ立法事実がないということにもつながる話だ、憲法解釈の変更の根拠がないということにもなるんだということを厳しく指摘しておきたいというように思います。その上で、憲法と本法案の関係について次にお伺いしたいと思います。憲法九条は、世界に惨禍をもたらした侵略戦争の反省の上に立って、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇と武力の行使を放棄した。そして、その目的を達するために、戦力の不保持と交戦権の否認を明記しました。そして、徹底した平和主義を戦後日本は掲げたわけです。その後、アメリカの再軍備要求で自衛隊が発足することになりました。その際、政府は、戦力ではないと言うがために、自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力だから憲法に違反しない、こういう論を立てました。そして、自衛のための必要最小限を超える海外での武力行使はできない、集団的自衛権の行使はできない、歴代の総理も内閣法制局長官も表明してきたところであります。ところが、今回、安倍政権は、この数十年積み上げられてきた憲法解釈を覆して、これまでどの政権も憲法のもとでは絶対にできないとされてきた集団的自衛権が行使できる閣議決定を行い、そしてこの法案を押し通そうとしているわけであります。そして、そのことに対して、きょうも示されておりますけれども、多くの国民から批判の世論が示されております。そして、先週の憲法審査会でも、三人の憲法学者の方がそろって、立憲主義に反する、憲法違反だと指摘したわけであります。中谷大臣にお伺いしますけれども、他国への武力攻撃の発生で我が国が武力行使をするのは集団的自衛権の行使であります。限定容認と言おうが、歯どめをかけたと言おうが、これは憲法違反なのは明白なんじゃありませんか。
○中谷国務大臣 今回、三要件をもちまして我が国の自衛の措置をするわけでございますが、これは、国際法上、集団的自衛権の行使として認められる、他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではなくて、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどめるものでございます。この新三要件のもとで認められる武力行使のうち、国際法上は集団的自衛権として違法性が阻却されるものは、他国を防衛するための武力行使ではなく、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置にとどまるものでございます。
○宮本(徹)委員 これまでの論理は、憲法のもとでは、あくまで外国の武力攻撃、急迫不正の侵害があったときしか日本は武力攻撃で反撃はできないというのが論理であり、結論だったわけですよね。一九七二年、昭和四十七年の政府見解の論理を基本的に維持していると言いますが、全く維持していないわけでありますよ。中谷大臣にお伺いしますが、憲法九条のもとで、我が国が個別的自衛権が行使できて、そのための実力組織を持ち得るという政府の見解というのは、憲法九条のもとでは、我が国への武力攻撃抜きの実力行使、すなわち集団的自衛権の行使はできないという結論と一体不可分だったはずなんじゃないんですか。
○中谷国務大臣 それは昭和四十七年の政府見解で明らかにしたところでございますが、それから四十数年たちまして、我が国の安全保障の変化がございました。改めて、四十七年の政府見解における基本的な論理、これは、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されず、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対応するためにやむを得ない措置として必要最小限度の武力の行使は容認される、この政府見解の基本的な論理から考えまして、引き続き維持をさせた結果、現時点におきまして、昨年七月一日に閣議決定された武力行使の三要件、これに限って我が国の自衛の措置が容認されたということでございます。
○宮本(徹)委員 全然聞いていることに答えていないわけですけれども。憲法の要請から来ているわけですよ、一九七二年の見解というのは。憲法は、戦力は持っちゃいけないというふうに書いているわけですよ。戦力は持っちゃいけない。それに対して、政府は、ある意味ぎりぎりの政府なりの論立てとして、必要最小限の自衛のための実力組織を持ち得るというふうに出したわけですよ。それは武力攻撃があったときだけに反撃するためのものだけですよというものだったわけですよ。戦力は持っちゃいけない、ここから来ているわけですよね。ですから、憲法の要請からいえば、一九七二年の見解は、ばらばらにできるものじゃなくて、上から下まで一体不可分のものなんですよね。そこを分けちゃまずいですよ。憲法が変わっているわけじゃないんですから、戦力を持っちゃいけないというのはそのまま変わっているわけじゃないんですから、武力攻撃もしちゃいけないわけですよ。それでお聞きしますけれども、今回、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険といいますけれども、この明白な危険の状態というのは、我が国には武力攻撃は及んでいないわけですよ。それで、我が国に武力攻撃を行っていない国に対して、明白な危険だということで我が国が武力攻撃を行う、そうすると、その国との間で我が国が新たな戦争を発生させるということになるわけですよ。中谷大臣、これは誰がどう見ても、憲法九条一項の禁ずる、国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるのは明らかじゃないですか。
○中谷国務大臣 これは無条件というわけではございません。まず、我が国の存立が脅かされ、そして、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということで、ある事態が発生をし、そして、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでおいた場合、もし武力を用いた対処をしなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるという事態でございます。
○宮本(徹)委員 だから、そういう事態であったとしても、我が国は攻撃を受けていない、攻撃を受けていないわけですよ。攻撃を受けていない我が国が攻撃をしかけたら、それは戦争状態、武力紛争状態をつくるわけです、日本の側から、その国との間では。それは国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるじゃないですか、憲法九条一項が言っている。そう思わないですか。
○中谷国務大臣 それは憲法の基本的論理と三要件を考えるわけでございますが、最終的にはやはり、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、そして国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断するわけでございまして、先ほど申し上げましたけれども、何もしなければ我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況になったということでございます。
○宮本(徹)委員 だから、何度も言いますけれども、危険の状態でこちらから武力攻撃を行うということは、憲法九条一項の禁ずる国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるのは明白なわけですよ。同じ答弁しか返ってこないですから、次に行きますけれども。もう一つ聞きます。これまでの政府の見解というのは、憲法九条二項の戦力不保持、交戦権の否認のもとで、自衛隊というのは、我が国が直接武力攻撃を受けたときに、自衛のための必要最小限の実力組織だと、ある意味ぎりぎりの理屈で合憲と政府はしてきたわけであります。自国に武力攻撃がないもとで集団的自衛権の行使のための実力というのは、憲法九条二項に反する戦力に当たる、戦力にほかならないんじゃないですか。
○横畠政府特別補佐人 陸海空軍、戦力の不保持につきましては、憲法第九条第二項に明記されております。憲法で保有することを禁止している戦力につきましては、これまで、自衛のための必要最小限度の実力を超える実力であると解しております。今般、新三要件のもとでは、国際法上の集団的自衛権として違法性が阻却される武力行使のうち、一定の、我が国に深刻、重大な影響の及ぶもの、そういうものに限って行使を認めるということにしておりますけれども、それはまさに自衛のための必要最小限度の実力の行使でございまして、まさにこれまで自衛隊が憲法第九条二項で禁じられている戦力に当たらないと言っていた全く同じ理由をもちまして、憲法で禁じられている戦力には当たらないというふうに解されるところでございます。同じく交戦権についての御指摘がございましたけれども、ポイントは、これまで自衛権の行使に当たっては、我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使することは当然認められる、それは憲法第九条二項で否認している交戦権とは別のものであるというふうに説明をさせていただいております。今般の新三要件のもとでの武力の行使につきましても、詳しくはまた申しませんけれども、我が国を防衛するための必要最小限度の実力の行使の範囲にとどまるものでございますので、全くこれまでと同じように、この交戦権否認の規定に抵触するということにはならないと解しております。
○宮本(徹)委員 全く説明になっていないわけですよね。これまでは、武力攻撃を受けたときしか反撃しない、だから戦力じゃない、武力の行使じゃないというふうに説明してきたわけですよ。それ以上は必要最小限を超えるわけでしょう。何、首を振っているんですか。そうでしょうが。本当に、戦力でないという担保はまさにそこにあったわけですよ。自国に武力攻撃への反撃しか許されない、そこにあったわけですよ。歴代長官もそう言ってきた。法律に合わせて憲法解釈を変えていったら、どんな法案だって許されるということになりますよ。そして、はっきり言わせていただきますけれども、今回の新しい政府の解釈は、政府の自衛隊合憲の原理すら揺るがす状態になっているという自覚を持った方が法制局長官もいいと思いますよ。私たちは違憲という立場だからあれですけれども、政府の合憲の論理だって揺るがしている状態だということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。こんな立憲主義の否定は許されない。合理的な説明もできずに居直ることしかできないんだったら、もう法案は撤回しかないということを厳しく指摘しておきたいと思います。その上で、驚いたのは、きのうの政府見解の中で、集団的自衛権を合理化するこの議論の中で、閣議決定にもなかった最高裁の砂川判決をまたぞろ引用していることであります。午前中の質疑の中でも、菅官房長官が、最高裁は憲法の番人だ、その見解に基づいているものだということもおっしゃっておられました。そして、安倍総理も、G7の後の記者会見で、砂川判決を引用して安保法制は合憲と言ったと報道されております。そこで、私も改めて砂川判決を読んでみました。この砂川事件の裁判で問われたのは、駐留アメリカ軍が憲法九条二項で言う戦力に当たるかどうかということでありました。一審の地裁判決は、憲法九条二項の戦力に当たり違憲だというふうにしたわけであります。これに対して、最高裁の判決はどういう論理かといいますと、簡単に言えば、憲法九条二項が保持しないと言う戦力とは、我が国が主体となって指揮権、管理権を行使し得るものであって、外国の軍隊は該当しないというふうにしたわけですね。その上で、判決は、もう一つ、安保条約というのは高度の政治性を持っている、だから裁判所の司法審査権の対象外だとして、いわゆる憲法で言う統治行為論ですね、これでばっさりと一審の違憲判決を破棄した。この二つが大きな判決の中身となっているわけであります。ですから、私も改めて読みましたけれども、この最高裁判決は、駐留米軍が合憲かどうかの判断もしておりません、自衛隊が合憲かどうかの判断ももちろんしておりません、自衛権の範囲がどこまで認められるかということも議論をしておりません。ましてや、集団的自衛権についての判断は何も行っていないわけですよ。中谷大臣、この判決文の中から都合のいい部分だけ切り取って集団的自衛権を行使できる根拠として使うのはおよそ筋違いだと言わなければならないと思いますが、どうでしょうか。(発言する者あり)
○浜田委員長 やじに応えないように願います。答弁。
○横畠政府特別補佐人 砂川事件についての最高裁判決についてのお尋ねでございます。最高裁の裁判といいますのも、判例としての拘束力が法的に厳密にどこまで及ぶのかというその議論は当然あろうかと思いますけれども、それとは必ずしも一致しないかもしれませんけれども、最高裁判所がどのような指摘をしているかということは、これは大変大きな意味を持っているものと考えております。この昭和四十七年の政府見解の前提となりました、先ほどもお尋ねがございましたけれども、昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会におきます吉国法制局長官の答弁の中でも、「そこで国を守る権利と申しますか、自衛権は、砂川事件に関する最高裁判決でも、自衛権のあることについては承認をされた。」ということに言及しております。そういうことで、昭和四十七年の政府見解の、一から三まである、その一の、憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が…平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、…国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであつて、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。としておりますが、その部分は、まさにこの砂川事件の最高裁判決の示しました「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という判示と軌を一にするということを御説明させていただいているところでございます。
○宮本(徹)委員 集団的自衛権について何か言っていますか、砂川判決は。
○横畠政府特別補佐人 個別的自衛権、集団的自衛権という区別をして論じているものではございません。その判決の中では、「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない」ということを述べております。
○宮本(徹)委員 ですから、集団的自衛権について判断したものではないですよね。そこは確認したいんですけれども、よろしいですよね。
○横畠政府特別補佐人 個別、集団の区別をつけず、自衛権について広く言及しているということでございまして、むしろ昭和四十七年の政府見解におきましては、その次の段落におきまして、「しかしながら、だからといつて、」と言って、憲法九条のもとで許される武力の行使というのが制約されるのだ、そういう論理になっております。
○宮本(徹)委員 だから、集団的自衛権については何も触れていないですよね。
○横畠政府特別補佐人 集団的自衛権について触れているわけではございません。
○宮本(徹)委員 そうです。当然ですよ。だって、集団的自衛権のことを議論している判決でもなければ、もっと言えば、自衛隊の合憲性も何も問われていないんですよ。そういうのが砂川判決なわけですよ。しかも、この砂川判決以降も、政府は、憲法九条のもとでは集団的自衛権の行使は認められないという答弁を繰り返してきているわけですから、経過からいっても、この砂川判決を集団的自衛権の行使の根拠づけに使うというのは全く無理があるということを言わざるを得ないと思います。さらに言わせていただきたいですけれども、判決の組み立てからいえば、政府見解として引用されている部分は、はっきり言って、砂川判決でいえば傍論の部分ですよね。先ほど法制局長官も、拘束力がある部分なのかどうなのかという点はごにょごにょとおっしゃいましたけれども、判決を導き出す論理のところには、政府見解で引用されている部分は入っていないですよね。
○横畠政府特別補佐人 傍論という言葉は、厳密に言いますと、やはり裁判において結論を出すために直接必要な議論とは別であるということでございますけれども。ただ、最高裁判所大法廷がわざわざ我が国の自衛権を否定していないということについてまで言及しているということの意味は、やはり重く受けとめるべきと考えます。
○宮本(徹)委員 今、結論を出すのには必要ではないところだというふうにおっしゃいました。そうなんですよ。政府見解が引用しているところは、文字どおり傍論なわけですよ。政府の皆さんは、イラクの自衛隊派遣のときの判決を傍論だ、傍論だと言って無視している。その一方で、今法制局長官が認められたとおり、判決を導き出す結論には必要じゃない部分の傍論を使って集団的自衛権の根拠づけに使うというのは、これは二枚舌じゃないですか、御都合主義じゃないですか、どうなんですか。
○浜田委員長 内閣法制局長官。しっかり答えてください。
○横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解が政府の見解でございまして、砂川判決を前提として、さらに絞り込んで、この昭和四十七年の見解を出しております。その意味で、砂川判決において我が国の自衛権が否定されていないということは、根拠、前提の一部をなしていることは、そのとおりでございます。
○宮本(徹)委員 ですから、集団的自衛権は一切議論になっていない判決の、しかも傍論部分しか最高裁判決としては集団的自衛権の根拠として持ち出せないところに、いかにこの集団的自衛権の行使容認が憲法上根拠がないのかということを示していると言わなきゃいけないというふうに思います。そして、憲法判断の最高権威は最高裁だということで、与党の方がつくっているペーパーに書かれておりますが、大体、この最高裁の砂川判決がどうして統治行為論をとったのか、この歴史をしっかり見ておく必要があると思うんですよね。経過は、地裁判決が駐留米軍は憲法違反だと出すわけですよね。これに慌てた日米両政府の圧力で、高等裁判所もすっ飛ばして跳躍上告が行われた。そして、わずか九カ月後に最高裁が出したのがこの砂川判決であります。アメリカ政府が解禁した極秘電報によると、地裁判決の翌日、一九五九年三月三十一日、駐日アメリカ大使が藤山外務大臣に会って、日本政府が迅速な行動をとって地裁判決を正すことの重要性を強調して、直接最高裁に上告することが非常に重要だと言っている。これは公電文書として残っているわけですよね。そして、五九年八月三日の秘密公電では、田中最高裁長官がアメリカ大使館の首席公使と会って判決の日程の見通しなどを語ったということが、これも報告されております。そして、判決の翌日には、アメリカ大使がアメリカの国務長官宛てに、全員一致の最高裁判決が出たことは田中裁判長の手腕と政治力に負うことがすこぶる大きい、この裁判における裁判長の功績は、日本を世界の自由陣営に組み込むことによって、金字塔を打ち立てるものだ、こう賛美する電報を打っている。こうした経緯が、二〇〇八年から二〇一三年にかけてアメリカの国立公文書館で解禁された文書で明らかになったわけであります。文字どおり、司法の独立も国家の主権も損なわれる屈辱的な形で出されたのがこの砂川判決ですよ。この歴史の経過は、大臣、御存じですよね。
○中谷国務大臣 砂川判決、私は報道等で存じ上げております。先生の御指摘も踏まえまして、今後さらに勉強してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 だから、砂川判決を知っているのはそうですけれども……(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○宮本(徹)委員 砂川判決を知っているのはそうですけれども、こういう経過があったということも御存じだということでいいわけでしょうか。これは別に、マスコミに書かれている話ですよ。国会の中でも、私がここに来る前から議論されてきていることで、岸田大臣なんか、外務委員会で議論されているから御存じじゃないでしょうか。
○岸田国務大臣 今の委員の質問の中で、米国において公電が公開された等の趣旨の発言がありました。米国のこの公開文書について、我が国として何か論ずる立場にはありません。
我が国の記録、公にした文書の中には、御指摘のような点はないと承知をしております。
○宮本(徹)委員 いや、こんな、もう明らかになっているんですよ、アメリカの公文書館で明らかになっていることを隠す必要は全然ないわけですよ。何でそう隠すんですか。こういう形で判決が出されたことを隠さなきゃいけない、日本政府としての理由があるんですか。ないでしょう。こういう、歴史まで隠しながら、正当性が疑われる砂川判決を憲法九条の解釈を覆す根拠に使うなど、本当にとんでもない話だと私は言わなければなりません。では、理事会に出せるものがあったら出していただくということで、取り計らいをお願いいたします。
○浜田委員長 もう一度。
○宮本(徹)委員 この砂川判決の、アメリカからは、国立公文書館で、いろいろな経過が公電として解禁文書で出ているわけですよね。日本政府は、ないというのが今の岸田大臣の立場でしたけれども、探せば出てくるかもわかりませんから、もう一度探していただいて、資料を提出いただくということを……
○浜田委員長 理事会で協議させていただきます。
○宮本(徹)委員 よろしくお願いいたします。ちょっと時間が大分押してまいりましたけれども、次に、自衛隊法改正案九十五条の二について質問させていただきたいというふうに思います。今回、自衛隊法改正案九十五条の二は、自衛隊が武器を使用して防護する対象を外国軍隊にまで拡大するということになりました。法案では、防護する武器について、「アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織の部隊であつて自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事しているものの武器」ということが書かれております。ここで言う「我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)」とは具体的にどういう活動なのかという質問が、五月二十九日、本委員会で行われました。その答弁の中で、中谷大臣は、「我が国の防衛に資する活動として当たり得る活動といたしましては、例えば、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動、情報収集・警戒監視活動、自衛隊と米軍等が各種事態、状況のもとで連携して行う活動を想定した共同訓練、これが該当すると考えられます。」と答弁されておられました。そこで、きょうは具体的に聞いていきたいと思います。まず、共同訓練ですけれども、この「各種事態、状況のもとで連携して行う活動を想定した共同訓練、」というのはどういう訓練なのか。日米共同訓練以外に、例えばリムパックのような多国間の共同訓練も入るのか。リムパックは中国も参加していますから、中国も入るのか。あるいは、防衛省のレクでは災害対応の訓練も入ると聞きましたが、その点についてもお聞きしたいと思います。
○黒江政府参考人 条文の細部でございますので私の方から申し上げますけれども、今御指摘の「我が国の防衛に資する活動」という中で例示をいたしております共同訓練でございますけれども、これは、防衛大臣が、具体的に、個々の共同訓練に際しまして、要請があった場合に、当該共同訓練の目的、内容あるいは周囲の情勢等を踏まえまして、自衛官が警護を行う必要性があるかどうかということを個別具体的に判断して決めるということになります。その上で、一般論として申し上げますけれども、災害対処のための訓練というものと多国間の共同訓練という例示がございましたけれども、災害対処の訓練ということでありますれば、災害対処という行為自体が我が国の防衛に資する活動には必ずしも当たらないということがございますので、本条による警護は行わないということだと考えております。また、多国間の共同訓練ということでございます。通常、多国間で行われます共同訓練といいますものは、自衛隊と当該国との間でおのおのの戦術技量の向上というものを図りまして、まさしく我が国の防衛ということのために必要な能力の向上を目的として行うものでございます。ですので、多国間の訓練というのは当然この共同訓練の対象になります。他方、それでは、先ほど中国という個別の国名をお挙げになりましたけれども、我々は法案の中に特定の国名というものを挙げておるわけではございません。それで、一概に申し上げるわけにはいきませんけれども、自国の武器等の警護を依頼するということが前提になってございますので、当該国、すなわち警護の対象になる国につきましては、我が国と防衛上密接な関係にある、そういう国におのずから限られるというのが我々の考え方でございます。
○宮本(徹)委員 防衛省のレクで聞いたときは災害対処の訓練も入るというふうに聞きましたけれども、では、それはこの場で訂正されたということで確認したいと思います。それから、情報収集・警戒監視の活動ですけれども、アメリカ軍は情報収集・警戒監視の活動を地球規模で行っております。この九十五条の二で防護の対象となるのは、どういう事態のもとで、そして地理的にはどの範囲での活動か、この情報収集・監視活動についてお聞きしたいと思います。
○黒江政府参考人 これは、条文上、我が国の防衛に資する活動を現に自衛隊とともに行っておる、そういう要件がかぶってございます。そういう要件に当たるかどうかということで判断をするものでございまして、この法律が特定の地域を念頭に置いているわけではございません。
○宮本(徹)委員 ということは、地理的には無限定だということでよろしいんですか。
○黒江政府参考人 法の制度の考え方を申し上げますと、先ほど私が申し上げましたように、当該国から要請があり、それが我が国の防衛に資する活動であって、現に自衛隊とともに従事するということに当たるかどうかというものを個別具体的に防衛大臣が判断するということでございます。
○宮本(徹)委員 そういうのに当てはまった場合というのは、地理的には無限定なのかということをお聞きしているわけです。
○黒江政府参考人 我が国の防衛に資する活動に当たるかどうかということでございます。また、その活動がどこで行われるかということをあらかじめ特定するということはできないという意味で、私はお答えを申し上げております。
○宮本(徹)委員 ということは、地理的には言えない、制約があるとも言えないと。どこでも、アメリカ軍が、情報・警戒監視活動をやっている、それを一旦政府が、防衛に資する活動だ、この防衛に資するというのは大変広い概念ですけれども、そう判断したら、どこでだってアメリカ軍の防護ができるということになる、そういう理解でいいわけですね。
○黒江政府参考人 我が国の防衛に資する活動であるかどうかということの判断に係るわけでございますけれども、その際に、先ほど私申し上げましたのは、特定の地域ということで判断されるわけではないということでございます。他方、当然のことながら、先ほど、共同訓練あるいは警戒監視・情報収集といったようなことがございましたけれども、それに対しまして我々がどのくらいのことができるのか、あるいは警護の要請があったときに、我が方の能力が具体的にどこまでできるのかといったことは、個別具体的に勘案をした上で判断するということを申し上げておるわけでございます。そういう意味で、無限定であるかどうかということを一概に申し上げることは適切でないということでございます。
○宮本(徹)委員 法律上は事実上無限定だ、地理的に制約があるわけではないというのははっきりしたというように思います。それから、九十五条の二の五行目のところで、防護対象となる「武器等」とありますけれども、これはどういう種類の武器なんでしょうか。あらゆる対象の武器が入るということでしょうか。
○黒江政府参考人 九十五条の二の警護対象にございます「武器等」という言葉でございますが、現行の第九十五条にございます「武器等」と同様でございまして、具体的には、「武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料」をいうものでございます。
○宮本(徹)委員 では、何でも入るということでいいのかなというふうに思います。次に、九十五条の二の五行目の下のところですけれども、「武器等を職務上警護するに当たり、」というところについて聞きたいと思います。これは、九十五条の二の、その後ろにある二項のところで、「前項の警護は、合衆国軍隊等から要請があつた場合であつて、防衛大臣が必要と認めるときに限り、自衛官が行うものとする。」とあります。これは米軍などの要請を受けて、米軍などの艦船や部隊を守る任務を負った自衛隊の部隊を派遣するという理解でいいんでしょうか。
○黒江政府参考人 お尋ねの条文でございますけれども、合衆国軍隊等から要請があって防衛大臣が必要と認めるという場合には、具体的には、警護に当たる自衛官に対しましていわゆる警護任務を付与する、すなわち、大臣の命令行為があるということでございます。
○宮本(徹)委員 だから、命令を出して、米軍の艦船や部隊を守る任務を負った自衛隊の部隊を派遣するということでいいわけですね。
○黒江政府参考人 派遣するという言葉の意味、私、必ずしも正確に認識したかどうかはわかりませんけれども、例えば、先ほどの重要影響事態というような際に、お互いに後方支援活動を行っている、それを共同して行っているということが考えられるわけですけれども、それを行っている部隊同士でこれを防護するといった場合もありましょうし、先生御指摘のように、必要な警護部隊、警護任務を持った自衛官あるいはその部隊、艦船等が派遣されるといった例もあると思います。
○宮本(徹)委員 共同でやる場合もあれば、アメリカ軍の警護をする部隊を派遣する、アメリカ軍を警護する艦船を派遣するという説明でありました。そして、少し戻って、武器等防護の対象ですけれども、重要影響事態の場合ですけれども、中谷大臣は、五月二十九日の答弁の中では、「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動、」と言われたわけですけれども、この場合の武器等防護というのはどういう意味なんでしょうか。この輸送、補給等の活動の場合の武器等防護。前線でアメリカ軍が武力行使をしている、そのときに、それに対して、後方で輸送や補給に取り組んでいるアメリカ軍の輸送艦を自衛隊が警護するということでしょうか。そろそろ大臣、お答えください。
○中谷国務大臣 我が国の防衛に資する活動ということでございますが、しかし、これは自衛隊と連携をして現に従事している米軍等の武器等の防護でございます。前提としましては、武力行使に至らない侵害から防護するための極めて受動的、限定的な必要最小限の行為にとどめているわけでございます。
○宮本(徹)委員 いや、私が聞いているのはそういうことじゃなくて、大臣が二十九日に答弁された、重要影響事態で行われている輸送、補給の活動を武器等防護の対象だとおっしゃられたわけですよ。ですから、これはどういう意味なのかなと思っているんです。アメリカ軍が前線で武力行使をしている、その前線の部隊にアメリカ軍が輸送、補給をしている、その米軍の輸送艦を自衛隊が警護するという理解でいいんでしょうか。
○中谷国務大臣 申し上げたとおり、まず、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給活動でございますし、また、条文でも定めておりますが、現に戦闘行為が行われている現場で警護は行わないということを明記しておりまして、自衛隊による警護が米軍等による武力行使と一体化をしないということを担保した上で行われる輸送、補給等の後方支援活動でございます。
○宮本(徹)委員 いや、もう一度お聞きしますけれども、では、具体的にこういう場合も当てはまるということでいいわけですね。アメリカ軍が前線で武力行使しています、そこに後方支援として、アメリカ軍が兵たん活動で輸送、補給に取り組んでいる、そのアメリカ軍の輸送艦を自衛隊が警護するという場合も入るということでいいわけですね。
○黒江政府参考人 先ほど来、中谷防衛大臣からお答えをいたしておりますけれども、重要影響事態におきまして自衛隊が他国に対する後方支援を行う場所につきましては、これもこの委員会でさまざまな御議論がございましたけれども、安全かつ効果的に活動を実施できる区域という中でこれを行うわけでございますので、先生御指摘になられましたような、現に前線において戦闘行為が行われているような、そういう場所で行われるという例がこの中に含まれるということはございません。そういった趣旨も、この九十五条の二の文言の中に含まれておる、明示されておるということでございます。
○宮本(徹)委員 だから、前線での活動のことを言っているわけじゃなく、後方で輸送や補給に取り組んでいる、皆さんの好きな後方で取り組んでいるという場合の米軍の輸送艦を自衛隊が警護する場合はどうなんでしょうか、重要影響事態の場合。
○黒江政府参考人 御指摘の後方でということでございますが、自衛隊が活動を行います実施区域の中で行われる行動、これを共同して行っている、そういうものが対象になるということでございます。
○宮本(徹)委員 ということは、実施区域の中で米軍の輸送艦を自衛隊が警護するということはあるということですね。この輸送艦は、前線の米軍にもちろん、その先には届くということになるわけですけれども、後方地域では警護するということであります。それから、法案では「現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。」というふうにありますが、例えば米軍の空母というのは警護できるんでしょうか。戦闘現場に向かって戦闘機は飛び立っていく、でも空母自身は皆さんの言われる戦闘現場と呼ばれる地域にいない場合、この場合は空母の警護というのは可能なんでしょうか。
○黒江政府参考人 九十五条の二の条文に基づきます米軍等の武器等の防護の対象につきましては、先ほど私が申し上げたとおり、武器の範囲については、現行の九十五条に定められている範囲でございます。それにつきまして例外を特に設けておるわけではございません。ただ、他方で、先ほど来、我々としまして、この条文をつくる際に最も気を使いましたところの一つといたしまして、他国が行っております武力行使と一体化しないということを担保するために、さまざまな文言、あるいは私が先ほど来申し上げましたような考え方でこれに当たっておるわけでございますので、当然、さまざまな状況というのはあると思いますけれども、そういったことを、まさに、防衛大臣が、個別具体的に警護任務を付与する際に勘案をした上で適切な判断をするということでございます。
○宮本(徹)委員 いや、だから、武力行使と一体化しないのは当たり前の話なわけですけれども、ですから、私が言っておりますのは、具体例で聞いているわけですよ。戦闘現場に向かって戦闘機は飛び立っていく、だけれども空母自身は皆さんの言われる戦闘現場と呼ばれる地域にいない場合ですよ。これは武力行使と一体化していると判断するのか、あるいはしていないと判断するのか、どちらでしょうか。
○中谷国務大臣 現に戦闘行為が行われている現場で警護は行えないということを明記しておりまして、これによって、武力行使と一体化することをしないということを担保しているわけでございます。
○宮本(徹)委員 だから、聞いていることに答えていただけないんですけれども、空母自身は戦闘現場と言われる地域にいない場合ですよ。ただ、戦闘機は、そこから艦載機はミサイルや爆弾を積んで戦闘現場に行く、こういうことは大いにあり得るわけですよ。その場合は武力行使と一体化しないというケースに当たるのか、武力行使と一体化すると判断するのか、どちらなんでしょうかということをお伺いしているわけです。
○中谷国務大臣 条文で条件にいたしておりますけれども、自衛隊と共同して行動している場合という前提がついております。
○宮本(徹)委員 今よくわからなかったんですけれども、それは可能だということでいいわけですね。
○中谷国務大臣 自衛隊と連携をして我が国の防衛に資する活動を行っているという前提でございます。必ずしもそうするかどうかということにつきましては、状況に応じて大臣が判断することになります。
○宮本(徹)委員 つまり、政策的には具体的に判断するけれども、法律上は、今の例ですよね、空母自身は戦闘現場と呼ばれる地域にいないけれども戦闘現場に向かって戦闘機が飛び立つ、こういう場合の空母でもある、法理上は可能だという答弁がありました。これがどうして武力行使と一体化しないと言えるのか、私は全く理解できないですよ。非常に重大な答弁だというふうに思います。平時から、そして重要影響事態でも、この九十五条の二というのは、米軍を警護し、そして重要影響事態から進んで、武力攻撃事態や存立危機事態になった場合は今度は自衛権や集団的自衛権の行使として米軍の防護が続けられるということになっているんじゃないですかね。切れ目のない安全保障と言いますけれども、この法律の仕組みというのは、切れ目のない米軍防護になるんじゃないですか。
○中谷国務大臣 九十五条の二というのは、武器の使用でございます。自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等を、武力攻撃に至らない侵害から防護するための極めて受動かつ限定的な必要最小限の行為です。そして、条文上も、現に戦闘行為が行われていない現場で警護を行わないということを明記、また、自衛隊による警護が米軍等による武力行使と一体化しないことを担保するとともに、本条によりまして国または国に準ずる組織による戦闘行為に対処しない、することがないようにしております。これによって、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、武器の使用を契機として国または国に準ずる組織との戦闘行為に発展するということもないようにしていることでございまして、武力の行使に当たることはないということでございます。
○宮本(徹)委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、この九十五条の二の新設で米軍などを防護できるようになる、平時でも重要影響事態でもできるようになるというのは、集団的自衛権の裏口入学じゃないか、こう批判されてきたわけですよね。本当に、一体どこがどう違うのかと思いますよ。自衛隊が防護している、何らかの侵害があって自衛隊が武器を使用する、そうすると、今度は自衛隊にも攻撃が来る可能性があるわけですよ。そして、それに自衛隊がまた九十五条の本体の発動で反撃する。そうすると、そのまま戦闘状態に入れりということで、抜け出せなくなってしまうじゃありませんか。事実上の集団的自衛権がなし崩し的に発動されていくのではないかということを厳しく指摘して、質問を終わりたいと思います。
○浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。