2019年11月26日消費者特質問 悪質な引きこもり支援ビジネス「引き出し屋」について

 日本共産党の宮本徹議員は26日、衆院消費者問題に関する特別委員会で、引きこもり「自立支援」を掲げる悪質ビジネス「引き出し屋」問題をとりあげ、各地で違法な契約や行為が横行しているとして、行政の対応を求めました。
 宮本氏は、被害者が続出している「あけぼのばし自立研修センター」(東京都新宿区)で、不当に高額な契約、施設への強制連行、監禁などが行われていると指摘。成人である本人の同意がないのに、親が子の衣食住などについて民間施設に管理を委ねるという契約は「公序良俗に反する」と指摘。研修生の「独断での行動を原則的に制限する」といった契約もあり、「憲法が禁ずる『奴隷的拘束』にあたる」と批判しました。
 法務省の竹内務・大臣官房審議官は、個別の案件には答えられないとしながらも「憲法上、居住、移転の自由等が保障されており、正当な理由なく拘束されることはない」として、「これらの自由を不当に侵害する内容の契約は、公序良俗に反し無効となる」と答弁しました。
 宮本氏は、研修生が耐えきれずに施設から逃げ出した場合、契約金が返金されないことを追及。衛藤晟一・消費者相は、消費者契約法第10条は「消費者の利益を一方的に害する契約条項を無効としている」と答弁。「『引き出し屋』については、よく事実を調べて対応しなければならない」とのべました。

以上2019年11月27日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第200回2019年11月26日衆院消費者問題に関する特別委員会第4号議事録該当部分抜粋≫

○宮本委員 橋本副大臣にもきょうは来ていただきましたけれども、悪質な引きこもり自立支援ビジネス、いわゆる引き出し屋について質問したいと思います。私、先日、あけぼのばし自立研修センターの事例を伺ってまいりました。二十代のAさんの事例ですが、親御さんが、あけぼのばし自立研修センターの話を聞きに行くと、PRビデオと職員からの説得で六時間、何年もこのままの状態が続きますよ、戻ったらこのままですよと不安をあおられ、冷静に判断できない状態で、合計六百八十五万円という高額で契約に至りました。Aさんの連れ出しは、眠っていたところに急に屈強な男性三、四人が入ってきて、一方的に説明を始めた。Aさんは拒否したが、男性らは、自分の足で行くか強制力を使うかどちらかで、行かないという選択肢はないなどと数時間迫り続け、Aさんは恐怖を感じ、強制力を使うという言葉に、行政の手続か何かで従うしかないと思い込まされた。センターに着くと、携帯電話や所持金、交通系ICカードなどの貴重品を全て取り上げられ、逃げたり自由に連絡をとれないようにさせられた。寝泊まりする部屋にはベッド二つで、一つのベッドにはセンターの従業員がいて、ドアをあけると警備員が立っていて、ほぼ監禁状態。耐え切れず、衣類に隠していたキャッシュカードを使って長距離バスで実家に帰ったが、逃亡したとされてまた連れ戻された。このAさんの自立支援契約書というのを見させてもらいました。Aさんの親御さんと、あけぼのばし自立研修センターが結んでおります。第二条一項を見ますと、丙、すなわちAさんの衣食住を始めとする生活の基本的な事項について、適当であると判断される時期に至るまでは、原則的に乙、すなわち、あけぼのばし自立支援センターがこれを管理するものとするとあります。親が、成人である子の同意もなく、衣食住を始めとする生活の基本的な事項について、適当であると判断される時期に至るまでは民間施設に勝手に委ねちゃう、こういう契約は、私は、公序良俗に反して許されない、無効だと思います。まず、法務省、見解を聞きたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。個別の事案における契約の効力についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。その上で、一般論として、委員御指摘のような内容の契約が公序良俗に違反するかどうかについて申し上げますと、個々の契約が民法第九十条の定める公序良俗に反して無効とされるかどうかは、個別具体的な事情を踏まえて裁判所が判断することになります。そのため一概にお答えすることは困難でありますけれども、あくまで一般論として申し上げれば、まず、契約の効力は契約当事者間にのみ及ぶものであり、その契約の成立に関与していない者に対し、その意に反してその効力を生じさせることはできません。また、憲法上、居住、移転の自由等が保障されておりますので、正当な理由なくその意に反して拘束されることがないこととされておりますことからすれば、これらの自由を不当に侵害するような内容の契約は公序良俗に反し、無効となるものと考えられます。
○宮本委員 一般論ですが、明快な答弁だったと思うんですね。この憲法違反、民法違反、めちゃめちゃな、憲法上保障された自己決定権を侵害する契約がなされています。ほかの人の契約書、もっとひどいものがあるんですよね。乙が適当と認める事象以外において丙の独断での行動を原則的に制限する、こんなのもあります。こんなの、憲法が禁ずる奴隷的拘束に当たるものと言わなければなりません。さらに、Aさんの自立支援契約書を見ると、第三条の三で、丙、すなわちAさんの自発的意思により、乙、あけぼのばし自立研修センターによる本件業務の提供が困難となった場合には、乙、つまり、あけぼのばし自立研修センターは本契約を解約することができ、この場合は、乙は受領済みの契約金については返金の義務は負わないとあります。つまり、当事者の研修生が耐え切れなくなってすぐに施設から逃げ出したら、この事業者の側は契約を解除することができ、事業者側は契約金の返還の義務は負わない。こういう趣旨の条項は、私は、消費者の利益を一方的に害する条項の無効を定めた消費者契約法第十条に照らして無効だと考えますが、消費者庁の見解、伺いたいと思います。
○衛藤国務大臣 御指摘の条項は、最終的には、個別具体的な事案でございまして、司法の場において判断されるべきものであるというぐあいに思っております。一様に、そういうことで、一概に申し上げることはできませんけれども、一般論としては、先ほどもお話がございましたが、消費者契約法第十条は、消費者の権利を制限し、その利益を一方的に害する契約条項を無効とするものであります。契約時に消費者が支払った契約金の返還請求権を制限し、その利益を一方的に害する内容の条項に本条が適用されることはあり得るというぐあいに考えられます。私も、今、同時に、一億総活躍の中で、引きこもり問題について今検討しているところでございまして、そういうことを考えますと、こういう引き出しみたいなことは、どうあっているのか、よく実情を調べて対応しなければいけないというように思っております。
○宮本委員 もう明確に消費者契約法第十条違反ですし、大臣も対応を考えていただけるというのは大変ありがたいと思います。厚労省にも確認したいと思いますが、こうした人権無視の悪質な引き出し屋のやっていることは、厚労省の作成している、ひきこもりの評価・支援に関するガイドラインに明確にもとるんじゃないでしょうか。橋本副大臣、お願いします。
○橋本副大臣 お答えをいたします。確かに、今議員のお話しになったような事例というものについて、首をかしげたくなるなということは個人的な感想としては思いますが、ただ、当省として把握したものでもございませんので、個別の事案のよしあしについて決めつけるということは差し控えたいと思います。ただ、御指摘のあった、ひきこもりの評価・支援に関するガイドラインでは、例えば、その支援者の基本的な態度として、当事者の緊張した居心地の悪さや心細さを最初の壁として認識した上で初回面談に臨む必要があること、また、その際には、当事者の方に対してねぎらいの言葉をかけるべきであることとか、当事者が訪問を拒否している場合には、訪問以外の支援方法や家族への訪問を検討することなどを盛り込んでおるものでございまして、こうした姿勢に立って引きこもり支援というのをされるべきであるというふうに考えております。
○宮本委員 時間が来ておりますけれども、ちょっとさっきの、時間、大分とられましたので、最後、一問だけお願いしたいと思います。悪質な引き出し屋への注意喚起を強めるために、ネットで検索した際に、消費者庁の注意喚起がぜひ上位に表示されるように……
○土屋委員長 簡潔にお願いします。
○宮本委員 注意喚起を強化していただきたいと思うんですよね。というのも、今、引きこもり支援とやったら、このあけぼのばし自立支援センターが、広告で上にばあんと出てくる状態なんですよ。一方、消費者庁の注意の喚起の文章というのは出てまいりません。さらに、厚労省にもお願いしたいのは、やっぱりネットで検索したら、家族会や当事者団体、あるいは政府、自治体の取組が検索の上位に示されるようにしていただきたいと思います。いかがでしょうか。
○土屋委員長 もうその件に関しては、ちょっとお願いということで済ませていただくと。時間が過ぎておりますので、よろしくお願いします。
○宮本委員 ああ、そうですか。内閣府の答弁姿勢に断固抗議して、質問を終わります。