外相答弁「存立危機」実例示せず 安保特で追及 6月19日
2015年6月19日 衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会提出資料
岸田文雄外相は19日の衆院安保法制特別委員会で、他国に対する武力攻撃の発生により、武力攻撃を受けていない別の国の存立が脅かされる、いわゆる「存立危機事態」の実例について、一例も示せませんでした。日本共産党の宮本徹議員の質問の中で明らかになりました。
政府は戦争法案により、「存立危機事態」で集団的自衛権行使を可能にして海外での武力行使に踏み出そうとしています。同事態の実例がないことが政府答弁で明らかになり、法案の必要性そのものが崩れた形です。
宮本氏は10日の同委員会で「存立危機事態」が世界で起きた例があるかと質問し、岸田外相は「改めて正確を期して報告する」と答弁し、調査していました。
「調べたが、事例はなかったということか」と宮本氏は追及。岸田外相は、「存立危機」を理由に集団的自衛権を行使した国が過去の国連への報告14件の中には存在せず、その他の事例についても「具体的な情報収集をしているわけではなく、例を挙げるのは大変困難だ」と述べ、一例も挙げませんでした。
宮本氏は、「世界のどこを探しても『存立危機事態』はないということだ」と指摘し、「安全保障環境の根本的変容」を集団的自衛権行使の根拠にするが、法案が必要だという「立法事実がない」と指摘。「集団的自衛権行使に道を開くために、空想的観念をつくりあげ、憲法解釈を百八十度変えることは許されない」と法案撤回を求めました。
以上2015年6月20日付 あかはた日刊紙より抜粋
≪第189回我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会 2015年6月19日議事録≫
○浜田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。いよいよ会期末まであとわずかとなりました。本委員会で審議すればするほど、国民の中では、今国会で成立はすべきじゃない、憲法違反だ、もうやめろという声が高まるもとでございます。まず初めにお伺いしたいのは、前回の宿題です。安全保障環境の根本的変容のもとで、他国が武力攻撃を受けたことによって武力攻撃を受けていない別の国の存立が根底から脅かされた世界の例があるのかと、私、前回聞きました。調べて回答するという御答弁でした。他国が武力攻撃を受けたことによって武力攻撃を受けていない別の国の存立が脅かされた例を挙げてください。
○岸田国務大臣 まず、今、自国の国民の命や暮らしを守るために必要な武力の行使として新三要件に該当する行為につきましては憲法上認められるべきではないか、こういった議論をお願いしています。そして、その中の一部が限定された集団的自衛権として説明される部分があるわけですが、国際的に認められている集団的自衛権のうちの一部限定的なものが我が国の国民の命や暮らしを守るために必要なのではないか、こういった議論をお願いしているわけです。こうした議論でありますので、国際的な集団的自衛権の定義ですとか評価に比べまして、我が国は極めて限定的に、厳格な基準を設けて、限定的に認めるべきではないか、こういった議論になります。よって、今の御質問につきまして、過去の例において、国際的に類を見ない厳格な基準に基づいて、その基準に基づいて具体的な情報収集をしているわけではありませんので、これを当てはめることは大変困難なものがあります。そして、過去の例を見ましても、集団的自衛権の行使につきましては、国際法上、国連に対しまして報告するとされています。この報告の例を見ましても、我が国が適用しているようなこうした厳格な基準に基づいて報告を行っている国はないわけであります。自国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、こうした厳密な、限定された理由をもって国連に報告している事例は存在しないと認識をしています。
○宮本(徹)委員 今の質問は、調べたけれどもなかった、存立危機事態に当たるような例は世界にはなかったということでよろしいんですか。
○岸田国務大臣 我が国は、国際的にも類を見ない大変厳格な基準を設けて、その条件のもとに、限定的な集団的自衛権が国民の命や暮らしを守るために必要ではないか、こういった議論をお願いしています。このような厳格な、限定された形で集団的自衛権を考えている国は他国にはありません。他国の過去の例を見ましても、これだけ厳格な形で集団的自衛権を考えてそして行使している、こういった例は存在しない。そして、我が国としましても、こうした厳格な形でその時々、情報収集したわけではありませんので、こうした例を挙げるということは大変困難である、こういった御説明をさせていただいております。
○宮本(徹)委員 今の話を聞くと、そういう角度で情報収集をやってきていないので大変だ大変だという話で、調べるというのが前回の答弁だったわけじゃないですか。国連に報告がないということは、今まで国連に報告された集団的自衛権の事例が十四ありますけれども、その中ではないということですよね、その十四件については。
○岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、集団的自衛権の行使につきましては国連に報告がされます。そうした報告例が十四あります。その十四の例を見る限り、我が国のように厳格な、厳密な条件をつけて集団的自衛権を行使している事例はないということを申し上げております。
○宮本(徹)委員 ですから、私が聞いているのは、実際存立危機事態という例があったのかというところを聞いているわけですよ。国連には報告がないんですよ、そういう形での。存立危機事態の例があるのかと言ったら、そういう角度での報告がないのははっきりしているわけですよね。(発言する者あり)そういう概念がないというんじゃなくて、存立危機事態が起き得ると言っているから、今回の法案を皆さんは出しているわけでしょう。だから、存立危機事態の例は今まで起きたことがあるんですかということを聞いているわけですよ。そういう立法事実がないんだったら、この法案を出す資格はないですよ。世界のどこを探しても存立危機事態なんて起きたことはないんじゃないですか。結局、集団的自衛権行使に道を開くために、頭の中で空想的観念をつくり上げて存立危機事態なんというのをやっているだけじゃないですか。こんなことで憲法の解釈を百八十度変えるなんて許されないですよ。法案を撤回してください。
○岸田国務大臣 世界各国におきましては、集団的自衛権を行使したということで国連に報告している事例が存在いたします。世界各国とも、国際法の判断に基づいて集団的自衛権を判断しているわけでありますが、そうした判断と比べて、我が国において国民の命と暮らしを守るために必要な武力の行使の範囲に含まれる限定的な集団的自衛権は、極めて限定的なものであるということを申し上げております。多くの国々の行使している集団的自衛権の範囲に比べて極めて限定的であるからして、今までの事例の中にこうした限定的な形で判断をしたりそして確認をした事例は存在しない、このように申し上げております。
○浜田委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長 速記を起こしてください。岸田外務大臣。
○岸田国務大臣 国際法上、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化される権利とされています。こういった考えに基づいて、国連には過去十四、集団的自衛権を行使したという例が報告をされています。しかし、その中に、我が国の適用しているような厳格な理由に基づいて報告がされているものはございません。
○宮本(徹)委員 十四の事例の中にはない、それははっきりしているわけですよ。十四の事例以外ないということでいいですよね。
○岸田国務大臣 我が国が国民の命や暮らしを守るために必要とする限定的な集団的自衛権につきましては、厳格な基準を設けています。こういった基準に基づいて集団的自衛権が行使されたというように説明されている事例は存在いたしません。
○宮本(徹)委員 はっきり言って、調べてくださいということを言って調べたけれども、なかったということなわけですよ。存立危機事態なんというのは、今まで世界の中で……(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○宮本(徹)委員 安全保障環境の根本的な変容の中で、他国が攻撃されたことをもって別の国の存立が脅かされるなんということは起きたことがないわけですよ。(発言する者あり)あるかもしれないなんて言わないでくださいよ、示していないんだから。あるんだったら示してくださいよ。一つもないわけですよ。(発言する者あり)
○浜田委員長 不規則発言はやめてください。まして、不規則発言には答えないように。
○宮本(徹)委員 結局、安全保障環境の根本的変容という問題も本委員会で議論されましたが、ホルムズ海峡の問題は、先日岸田大臣からも発言があったとおり、安全保障環境は前向きに変化している、存立危機事態など起こり得ないとなりました。それから、パワーバランスの変化ということを中谷大臣はおっしゃられましたけれども、民主党の長島議員から、旧ソ連があったときの新冷戦のときの方がよほど大きな脅威があった事態なんじゃないかということも明らかにされました。安全保障環境の根本的な変容で存立危機事態が起きるなんという話は一つも証明されていない。それどころか、そんなものはない、立法事実がないということがこの間明らかになってきていると思います。こういう事態の中で、会期を延長してこの法案を押し通すということは絶対に許されないということを申し上げておきたいと思います。次に、これも前回の続きですが、自衛隊が武器を使用して防護する対象を外国軍隊にまで拡大した自衛隊法改正案九十五条の二について質問いたします。六月十日の質疑で、政府の答弁ではこの武器等防護について、重要影響事態の際に、日米の部隊同士でこれを防護するといった場合もありますし、必要な警護部隊、警護任務を持った自衛官あるいはその部隊、艦船などが派遣されるといった例もあると思います、こういう御答弁でした。そして、政府の言う戦闘現場でなければ輸送艦も空母も防護し得る、そして、空母の艦載機が爆弾、ミサイルを搭載して戦闘現場に飛び立っていく場合も、空母が政府の言う戦闘現場にいなければ、自衛隊がこの空母を防護することが可能だという答弁でした。アメリカの艦船を警護する部隊をつくって、そして自衛隊の艦船を派遣していく、これがどうして専守防衛なんですか。専守防衛にいささかも変わりがないどころか、他国防衛そのものじゃありませんか。
○黒江政府参考人 現行の自衛隊法の九十五条によります武器の使用といいますものは、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するために認められておるというものでございます。他方、改正後の自衛隊法第九十五条の二は、この考え方を参考にいたしまして新設するというものでございます。すなわち、自衛隊と連携をしまして我が国の防衛に資する活動に現に従事をしている、こういう米軍等の部隊の武器等であれば我が国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当する、こういう評価ができるということで、これらを武力攻撃に至らない侵害から防護する、そういった極めて受動的かつ限定的な必要最小限の武器の使用を認めるという規定でございます。ここで申し上げております極めて受動的かつ限定的という点をやや具体的に申し上げますと、現行の九十五条による武器の使用につきましては、武器等の退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のない、やむを得ない場合でなければ武器を使用することはできない、また、防護の対象の武器等が破壊された場合であるとか、あるいは相手方が襲撃を中止し、または逃走した場合には武器の使用ができなくなる、さらには、正当防衛または緊急避難に当たる場合でなければ人に危害を与えてはならないということになってございます。これらの厳格な要件が満たされなければ武器は使用できないわけでございまして、こうした要件は、新設する第九十五条の二による武器の使用につきましても同様に満たされる必要があるわけでございます。したがいまして、第九十五条の二によります武器の使用は、現行の自衛隊法第九十五条による武器の使用と同様な、あくまでも極めて受動的かつ限定的なものとしまして、憲法九条が禁止をしております武力の行使には当たらないということでございます。
○宮本(徹)委員 全然聞いたことに答えていないんですよ。専守防衛にいささかも変わりないと言うけれども、米艦船を防護するために部隊をつくって出かけていく、これのどこが専守防衛なのか。我が国の防衛に資するといったって、我が国事態じゃないわけでしょうが、専守防衛から飛び出ているのは明確ですよ。(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に。
○宮本(徹)委員 そして、私も武力の行使と武器の使用の問題を改めて調べました。国会でもこの問題は議論が重ねられてきました。日本有事でない事態に海外で自衛官が武器を使うことが許されるのかと初めて問題になったのがPKO法案のときでした。このときの政府の見解は、PKOでは、もしものときの自己保存のときは自衛官が武器を使ってもいい、任務遂行だとか他国の部隊のためではなく、自己保存の自然的権利だと説明をされました。それはきょうお配りしているペーパーの一ページ目ですね。そして次に、一九九九年の周辺事態法のときに、このペーパーの裏のような政府見解が出されました。今度はアメリカ軍の支援を行う、そして、日本の領域外に出かけていって武器を使用するということになったので、武器の使用は自己保存のときに限られないという見解を出したわけであります。そして、その際に、先ほどお話があったとおり、自衛隊法九十五条での武器使用は、あくまで現場にある防護対象を防護するための受動的な武器使用だ、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するための極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為だから、憲法で禁止された武力の行使に当たらない、こういう見解を出したわけですね。経過はこういうことでよろしいですよね、大臣。
○中谷国務大臣 はい、そのとおりでございます。なお、今回の九十五条の二の武器使用も、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等を武力攻撃に至らない侵害から防護するための極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為だということで、認定をしたわけでございます。
○宮本(徹)委員 それで、この九九年の「自衛隊法九十五条に規定する武器の使用について」の見解というのは、今もこれは維持されているという理解でよろしいわけですね。
○黒江政府参考人 現在も同様に維持をされております。
○宮本(徹)委員 この見解は維持されているということでございました。ですけれども、この九十五条の解釈と、今度の九十五条の二でやろうとしていることは全く違うわけですよね。今までは、受動的な武器使用だ、あくまで現場にある、手元にある自衛隊の自分の武器を守る受動的なものだというふうに言ってきたわけですけれども、今度は、アメリカ軍の要請を受けて、そして専らアメリカ軍を警護する部隊をつくり領域外に出かけてアメリカ軍を防護する、これも入っているわけですよ。これのどこが受動的なんですか。極めて積極的、能動的な行動じゃないですか。
○黒江政府参考人 現在の九十五条につきましても、その運用に当たりましては、必要な自衛官、あるいはその自衛官により構成されます部隊に対しまして警護の命令といったものを出して運用しておるわけでございます。また、先ほど来のお尋ねでございますが、私ども申し上げておりますのは、あくまでも我が国の防衛に資する活動を自衛隊とともに行っている、そういう部隊が防護対象になる。こういった部隊の装備しております武器等につきましては、自衛隊の武器、すなわち防衛力を構成する重要な物的手段というものに匹敵する、そういう考え方でこの条文をつくっておるということでございます。したがいまして、現行の九十五条の考え方と、新設をいたします九十五条の二の規定の考え方というのは全く同じであるということでございます。
○宮本(徹)委員 そんな詭弁は誰も理解できないですよ。論理の飛躍があるわけです。何で、自衛隊の武器と、海外で、我が国防衛のためにも働いていない、防衛に資するという大変広い概念で動いている米軍の武器が同等なんですか。そんなものは誰も納得しないですよ。(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○宮本(徹)委員 はっきり言って、政府はこれまで、受動的だから憲法違反にならないと言ってきたわけですよ。今回は、繰り返して言いますけれども、アメリカ軍の艦船を防護するための部隊をつくるわけですよ。そういう答弁をしたわけですよ、前回。わざわざつくってそして出かけて、攻撃があったら反撃する。こんなもの、どこが受動的なんですか。積極的、能動的だと誰が考えたって思いますよ。そう思わないですか、大臣。
○中谷国務大臣 米軍等の部隊の武器等であっても、まず、我が国の防衛に資する活動に用いられるものであれば我が国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当するものと評価できると考えられるということで、これらを武力攻撃に至らない侵害から防護するために、現行の自衛隊法の九十五条による武器の使用と同様な、極めて受動的かつ限定的な必要最小限の武器使用を認めるということでございます。そして、もう一点。運用上、防衛大臣は、警護の要請を受けて、その都度、米軍等の部隊の活動の内容、目的、当該活動が行われる状況等を踏まえて警護の必要性について判断することとなっておりまして、こういった点におきまして慎重に運用していくわけでございますが、この法律の趣旨、先ほど御説明をした範囲内で実施するということでございます。
○宮本(徹)委員 全然、全く答弁になっていないですよ。これまでの政府見解は、受動的だと言っている。今度やる行動は、誰が見ても能動的、積極的に出かけて武器を防護するということになっているわけですよ。これまでの政府見解に反しております。この問題での明確な政府の統一見解を求めたいと思います、委員長。
○浜田委員長 理事会で協議します。
○宮本(徹)委員 続いて聞きますが、自衛隊が米軍の警護任務についたり、自衛隊と米軍が部隊同士で防護をするということになるわけですけれども、この際、武器の使用基準というのは自衛隊と米軍は同じなんでしょうか、それともばらばらになるんでしょうか。
○黒江政府参考人 自衛隊法の九十五条の二に基づきまして自衛隊が米軍を防護するといった場合の武器使用のあり方でございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、極めて限定的かつ受動的な要件に基づいて行われるというものでございます。また、先ほど大臣から御答弁がありましたけれども、これにつきましては、それぞれの行動につきまして、米軍から要請を受けて、これについて一つ一つ大臣が判断をした上で行うものでございます。したがいまして、当然のことながら、米軍との間では、自衛隊が行います武器使用の形態、要件といったものについては、事前にきちんと意思疎通を図った上で実施をするということでございます。
○宮本(徹)委員 一緒なのかどうなのかというのを聞いたわけですよ。意思疎通を図ってどうするのかということを聞いているわけですよ。アメリカには標準交戦規則が御存じのとおりあります。SROEですね。これによれば、共同の場合は他国の軍隊とのROEの共通化を進めるというふうに書いております。こういう道に踏み出していったら、ROEの共通化をアメリカに求められるんじゃないんですか、大臣。
○中谷国務大臣 あくまでも我が国の判断によりまして武器使用基準を実施するということでございます。
○宮本(徹)委員 いや、求められるかどうかというのを聞いたわけですが、日米ガイドラインはこう書いているわけですね。「平時から緊急事態までのあらゆる段階において自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を強化する。」とあります。ばらばらでやるとは書いていないわけですね。「政策面及び運用面の調整」の対象にはROEも入るんじゃないですか。
○黒江政府参考人 ただいま委員はガイドラインをお引きになられましたけれども、確かにそういう記述はございます。これは、同盟国であります米国との間で、平素から、政策調整を初めとしまして、意思疎通、共通化を図るというのは当然でございます。他方、同じガイドラインの中には、それぞれの国が憲法を初めとするそれぞれの法律に従って行動するということを認め合っておるわけでございます。これもガイドラインに明文で書いてあるわけでございます。したがいまして、相手方の法規範に基づく行動についてお互いを尊重する、そういう前提のもとで我々の同盟関係というのは成り立っておるということでございます。
○宮本(徹)委員 アメリカ軍の二〇〇五年版の標準交戦規則は、平時のセルフディフェンスを三つに分けて説明しております。固有の自衛の権利と国家自衛と集団自衛、三つあります。米国以外の部隊を防衛するのは集団自衛に分けられております。英語ではコレクティブセルフディフェンスと書かれておりまして、大統領または国防長官だけが許可できるとされております。ですから、自衛隊がやろうとしていることというのは、この米軍の標準交戦規則でいえば集団自衛に当たり、固有の自衛の権利には入っていないということは指摘しておきたいと思います。そして、米軍の標準交戦規則では、敵対的行動のみならず、敵対的意図に対してもセルフディフェンスはなし得るんだということを書いています。つまり、先制攻撃ができるということが書いてあるわけですよね。だから、米軍を防護するという道に踏み出すということは、こういうことの共通化まで求められていくという危険な道ですし、あるいは、一緒に行動しているときは、米軍はためらわずに先制攻撃をする、そこに巻き込まれる危険もある道だということを指摘しておきたいと思います。そこで聞きますが、自衛隊は二〇〇〇年に部隊行動基準を作成する訓令を出しまして、事実上の交戦規定が初めてつくられました。それでお伺いしたいんですけれども、日米新ガイドライン並びに仮にこの法改正が行われた場合、これに基づいて部隊行動基準は改定するんでしょうかどうでしょうか、お答えください。
○黒江政府参考人 お尋ねの部隊行動基準につきましては、これはまさに自衛隊の手のうちでございますので、個々具体的にその内容について、どのようなものを定めるのか等々につきましてお答えすることはできないということを御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、改定するのかどうか。全部明らかにしろなんて言っていないですよ。今回のガイドラインと法改正がもし行われた場合に、部隊行動基準を改定するのかどうかというのをお伺いしているんですよ。大臣、どうですか。
○黒江政府参考人 個別具体的なものに対しまして我々がどのような基準を設けるのかといったことも含めまして、これは我々の手のうちでございますので、これをお答えすることはできないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、できないとかなんとか言っていますけれども、日経新聞なんかの報道でも、ROEは今後改定することが報道されているじゃないですか。何でそのことも答えられないんですか、大臣。ROEを改定するんじゃないですか。
○中谷国務大臣 報道につきましてはいろいろな報道があるかもしれませんけれども、我が防衛省といたしましては、ROEについてお答えをするということにつきましては、これは控えておくべきことだというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 二〇一三年に安倍首相自身が、ROE改定は検討するということを国会で答弁されていますよ。何でそんなことも隠すのか。新ガイドラインで、緊密な日米が協議、運用面での的確な調整をやっていくということを言って、結局、アメリカの軍事作戦に自衛隊運用のルールまで合わせられていく。もし仮に今回、この部隊行動基準を改正していくということになったら、交戦権を否認している日本が海外に出かけて米軍防護をするための交戦規則を持つことになる。憲法を踏みにじる重大な事態になるわけですよ。だから私は聞いているわけですよ。委員長、自衛隊の現行の部隊行動基準の考え方、そして今後の部隊行動基準の考え方、これについて本委員会に資料提出を求めたいと思います。アメリカだって考え方の基本は出していますよ、全部は出していないですけれども。ROEを出しているわけですから、考え方は。これはぜひ出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○浜田委員長 理事会で協議します。宮本徹君、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。
○宮本(徹)委員 最後に砂川判決の問題もきょうはどうしてもやりたかったわけですけれども、時間がございません。この憲法違反の法案の撤回と、国会延期など断じて許されないということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
○浜田委員長 次回は、来る二十二日月曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。