7月1日安保法制特別委員会で参考人に質問しました
存立危機「概念に無理」 戦争法案で参考人
戦争法案を審議している衆院安保法制特別委員会は1日、柳沢協二・元内閣官房副長官補ら自衛隊の実務や現場の実態に詳しい識者5氏を招き、2回目の参考人質疑を行いました。日本共産党からは宮本徹議員が質問に立ちました。2004~09年に官邸でイラク、インド洋派兵などの実務を担った柳沢氏は、集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」について「概念自体に無理がある」と指摘し、憲法解釈変更の根幹をなす概念が成り立たないと批判しました。
宮本徹議員が質問
6月4日の衆院憲法審査会での憲法学者3氏による「違憲」判定、22日の同特別委員会での元内閣法制局長官からの「違憲」批判に続き、第1次安倍政権で自衛隊の実務を取り仕切っていた元高官からも法案の欠陥が指摘された形です。
柳沢氏は、他国に対する武力攻撃の発生で日本の存立が脅かされる「存立危機事態」の認定について、「事実」ではなく「一種の価値判断」であり、「因果関係を通じて一義的な定義ができない概念だ」と指摘。「もともと説明できない概念をつくった印象だ」と述べ、自衛権行使の要件にならないと批判しました。
世界各地で紛争処理にあたった経験をもつ伊勢崎賢治・東京外国語大大学院教授は、国連平和維持活動(PKO)の現場で参加部隊が住民保護任務で武装勢力と交戦を繰り返している実態を紹介。「住民と戦闘員の区別がつかない。(自衛隊が)誤射する場合がある」と警告しました。
伊勢崎氏は、法案のPKO任務拡大により「(これまで犠牲者がなかったという)奇跡で済む可能性は非常に薄くなる」と指摘しました。柳沢氏も「常識的に犠牲者が出ることは覚悟しなければならない」と述べ、戦死者は不可避との考えを示しました。
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、自民党議員の言論弾圧発言について、「憲法21条の表現の自由の保障に真っ向から反する」と厳しく非難。安倍政権について「これほどマスコミに過敏反応する政権はない。萎縮効果を生んでいる」と危機感をあらわにしました。
以上2015年7月2日付あかはた日刊紙1面より抜粋
日本共産党の宮本徹議員は1日の衆院安保法制特別委員会での参考人質疑で、イラク派兵時に内閣官房副長官補だった柳沢協二氏に、戦争法案で自衛隊がいっそう米軍に従属し、一体化が加速する実態について質問しました。
柳沢氏は、現代の戦争は自衛隊が米軍と情報共有しなければたたかえなくなっていると指摘。戦争法案では、日本有事以外のあらゆる事態で「運用上の一体化が進む」と指摘。その際「情報を持ち主導権を握っているほうが主従関係で言えば主に決まっている」と語り、自衛隊は米軍への従属を深めると指摘しました。
また戦争法案が、自衛隊が従来活動を禁止されていた「戦闘地域」まで行って活動するとしていることについて、「自衛隊が補給活動で入っていくとき、どのルートを通るのか、戦闘を統制している師団なりの部隊のコントロールのもとで動かなければ危ない。同士打ちの危険もある」と強調し、ここでも米軍の戦闘部隊の指揮下に入らざるを得なくなると述べました。
宮本氏は、戦争法案が戦闘に発進準備中の航空機への給油を認めることについても質問しました。
柳沢氏は、発進準備中の航空機への給油は整備やミサイル補充なども含まれると述べ、「そこまでいくと、(戦闘に)発進するわけですから、『武力行使の一体化』は避けられるということはとても言えない」と語りました。
以上2015年7月2日付あかはた日刊紙2面より抜粋
≪第189回我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会第16号 2015年7月1日議事録≫
○浜田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、五人の参考人の皆様、お忙しい中、本当にありがとうございます。まず、私は、伊勢崎参考人にお伺いしたいと思います。きょう、国連PKOを取り巻く環境は激変しているということが大変よくわかりました。今回のPKO法改正の中で自衛隊の任務が拡大され、駆けつけ警護、そして安全確保業務というのが拡大されます。その中で任務遂行のための武器使用まで可能になるということになっておりますが、こういう法改正がやられた場合、自衛隊員が殺してしまう危険、殺される危険、こういうことについてどうお考えでしょうか。
○伊勢崎参考人 カンボジア以来、いわゆる国連PKOでずっと自衛隊が頑張ってきましたけれども、一発も撃たずに済んできました。事故は起きていません。これをどう捉えるかの話なんですけれども、政府の管制能力がしっかりしていてそれを未然に防いだという言い方もできると思いますけれども、現場の感覚ではちょっと違います。僕は、さっき冒頭で陳述したように、自衛隊は撃てないんですね。それを一番わかっていたのは自衛隊員なんです。つまり、撃てる環境の法整備をして送っていないので、撃てないことがわかっているのは自衛隊員なわけですね、どんな危険な目に遭おうとも。ですから、今まで無事故で済んだのは、これはひとえに、現場に送られた自衛隊員の工夫と、薄氷を踏むような思いでの任務遂行の態度で乗り切ってきたんだと思います。今までが事故が起きていないのは奇跡です。これは僕は、自衛隊に限らず、国連PKOその他、NATOの現場にも、アフガニスタンみたいなところにおいて多国籍軍と一緒に活動し、その一部を統括する任務も負ってきましたので、これははっきり現場感覚的にまず言えますけれども、自衛隊が今まで無事故で済んだのは、これは奇跡と捉えた方がよろしいと思います。今回の安保法制でその任務が拡大するわけですから、奇跡で済む可能性は非常に薄くなる。これからは多分、冒頭の陳述で僕が言ったような、根本的な法的な枠組みを考えてあげないと事故は起こります。そのときに我々はどうするかということであります。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。続きまして、柳澤参考人にお伺いします。きょう、柳澤さん、存立危機事態の問題について、ファクトではなく価値判断の問題になっているという御発言がありました。ネットを見ていましたら、ダイヤモンド・オンラインでは、柳澤さんは、今までの憲法解釈や法律によれば、我が国に対する武力攻撃があった場合にはという非常にわかりやすい基準があったが、今度はそれがないと指摘されて、もともと日本が攻撃を受けていないのに存立危機事態になるということはあり得ないので、政府は基準を示せない、こう言われておりますが、この点について説明していただけるでしょうか。
○柳澤参考人 まさに今委員がお読みいただいた部分そのままでありまして、やはり他国への武力攻撃があってというのはファクトとしてわかるとしても、それがどういう因果関係を通じて我が国の存立を脅かすようになるのかというのは一義的な定義ができないんだ、私はもともとそういう概念なんだろうと思うんですね。そして、先ほども申し上げましたけれども、今までの国民の自衛隊に対する支持、憲法九条との関係での支持のあり方というのは、まさに我が国が攻撃を受けた場合で、四十七年政府見解にありますように、そのときは国民の権利が根底から脅かされるということになるから、そこは自衛のための武力行使はできる、しかし、我が国が攻撃を受けていなければそうはならないので集団的自衛権は行使できないという政府の理解と国民の理解がまさに合っていた部分だと思うんですね。そういうことを前提に自衛隊への支持も非常に高くいただいていたということだと思いますから、それを外したときに、私もいまだに、だから具体例で言うしかない、例えばという話をするしかない、しかし、どの例えばをとってみても、さっきも申し上げたように、存立が脅かされるというところまでいく因果関係が納得できない。少なくとも私はわからないし、近場で起きたことでしたら、それは個別的自衛権のお話になってしまうのではないか、そこの区別がつかないということで。そうすると、結局、存立危機事態なる概念そのものがやはり非常に、そういう概念を立てていくこと自体に無理があるんじゃないか。むしろ安保条約を改定して憲法を変えて集団的自衛権を使うんですという話の方がまだ議論がかみ合ってわかりやすいのだけれども、そこを何とかかみ合わせようとしている。私は、官僚としてはとてもそこまでかみ合わせるのは無理だなと思いますし、だから、もともと説明できない概念をおつくりになったんじゃないかというのが私の印象であります。
○宮本(徹)委員 存立危機事態という概念自体に無理があるということで、大変よくわかりました。続きまして柳澤さんにお伺いしますが、新ガイドラインについて、毎日新聞の記事の中で柳澤さんはこうおっしゃっています。日本有事や朝鮮半島有事は安保条約の五条、六条を根拠としていたが、今回の地球規模での協力は安保条約上の根拠がないと指摘されて、さらに、関係法律が成立した場合、自衛隊が米軍に従属化していくようになる、こう述べられているのを見ました。自衛隊が米軍に従属化していくというのは、具体的にはどういうことでしょうか。
○柳澤参考人 その点について申しますと、今度のガイドラインでも宇宙、サイバー防衛というような新たな項目が言われておりますけれども、従来から、アメリカのネットワークの中に自衛隊も全体としてリンケージをしていく、そして、そうしなければ現代の戦争は実は戦えなくなってきているわけですね。ですから、私も現役のころから、そういう流れはそれはそれとして、しかし、日本有事を前提とした日米共同訓練でそういうものを実証しながら運用上の一体化を高めていく、そういうトレンドにある、それをまた推進してきたわけですけれども、それが今度は日本有事だけではなくてやっていくことになると、結局、どこに必要な事態がある、あるいは米艦防護、アセット防護にしても、どこから脅威が来ている、どの船のどのミサイルで対応するのが適当だといういわゆるウエポンアサインメントの話にしても、それはアメリカの情報ネットワークの中で、アメリカのネットワークの一環として動かざるを得ない。それは現実としてそうなので、そこは仕方がないんだけれども、日本防衛ならばいいけれども、そうでない場面でもそういうことになっていくという意味でオペレーション上の一体化が進む。それは言いかえれば、情報を持って主導権を持っている方が主従関係からいえば主に決まっているわけですから、言い方をかえれば、より従属を深めていくというふうに評価できるということを申し上げたと思います。
○宮本(徹)委員 情報を持っているアメリカが主になって、その中で動いていくということになるというお話でしたが、今回、自衛隊法改正案の九十五条の二で、米軍などの武器防護を対象に加えるということになりました。これによって平時でも重要影響事態でも米艦防護のために自衛隊は武器の使用ができるということを政府も答弁されているわけですが、柳澤さんの書かれたものを見ますと、これで米海軍と海上自衛隊が同じROE、交戦規定を持つと指摘されております。この場合の指揮というのは、先ほど情報はアメリカから来るというお話でしたけれども、指揮というのは具体的にはどうなるんでしょうか。米軍の現場の指揮官の判断で自衛隊が戦闘状態に入って、事実上の集団的自衛権の行使になっていくということなんでしょうか。
○柳澤参考人 結局、艦隊を組む、艦隊を組んでいなくても同じ作戦目的で、同じネットワークの中で行動している友軍同士の相互のアセット防護の関係ということでいえば、より広域の脅威情報を持っている者からの情報に基づいて、そしてトータルとしてアセット防護をし合うわけですから、そこは、指揮中枢艦となるような船の、それを法律的な指揮と呼ぶかどうかは別として、ネットワーク上のまさに統制といったらいいのか、あるいは運用調整といってもいいんですが、いずれにしても、そういうデータをもとに、それに従って反撃の武器を使用するということが求められる。そして、その限りで、米海軍はユニットセルフディフェンスという概念で、平時からそういう形でやっているというふうにも聞いておりますが、そういうネットワークの中に平時から自衛隊も入っていくことができる。今までは、日本有事であれば米艦の防護というのは個別的自衛権の範囲でできるという政府の見解が中曽根内閣のときにございましたけれども、それが平時からできるようになる。それをいいことと言うか悪いことと言うかという問題はあるけれども、しかし、それはやはり事態の拡大を政治がどのようにコントロールできるのかということとセットで議論されなければ、本来、危うい話になるのではないかということだと思います。
○宮本(徹)委員 ユニットセルフディフェンスというのは日本語にすれば部隊自衛ということになるのかと思いますけれども、事態の推移が、政治がコントロールできないまま、この九十五条の二によってどんどん進んでいくということははっきりしているというふうに思います。それで、引き続き柳澤さんにお伺いしますが、テロ特措法やイラク特措法にあった非戦闘地域という概念は憲法上のつじつま合わせだけではなかった、実質的に自衛隊を戦闘部隊の指揮下に入れず、直接の戦闘に巻き込ませないという意味があった、新たにつくる恒久法では戦闘を行っている部隊の指揮下に入ることになる、朝日のインタビューで柳澤さんはこう指摘されておりましたが、この戦闘部隊の指揮下に入るというのはどういうことでしょうか。
○柳澤参考人 指揮下に入るというのは、ですからこれも、法律的に指揮下に入るかどうか。国連PKOなんかでは指図という言葉を使ったりしていますが。つまり、従来の私どものイメージで言う非戦闘地域ではないところで活動しようとすれば、それはつまりその地域で戦闘を統制している師団なりの部隊がいるわけですから、そこに補給活動で入っていこうとしたら、それは、いつ、どのルートを通っていくのかというようなことについて司令部のコントロールのもとで動かなければ、かえって危ないわけですね。同士打ちの危険もあるし。状況によれば、途中で脅威情報を与えてくれて、とめることもできるかもしれないし、あるいは救援してくれることもできるかもしれないという意味で、それぐらい密接なコントロールのもとに入るという意味で、象徴的に例えばそれを指揮下に入ると言うこともあるかもしれないということで私は申し上げたところであります。
○宮本(徹)委員 密接なコントロール下に入るということで、後方支援がアメリカ軍の武力行使と一体化するというのが非常によくわかったお話だったと思います。それで、柳澤さんは、イラク特措法のとき以上のことをやれば必ず戦死者が出るとこの間いろいろなところでおっしゃっていますが、この法案で戦死者が出るというのはどういうことなんでしょうか。
○柳澤参考人 まさに法律の話ですから、それは政府の運用によって犠牲のないような運用をしていただきたいとは思うんですけれども、法律の議論ですから、法律の一番外側のところを全部使った場合にどうなるかということを考えなければいけない。そして、私の実感は、さっき伊勢崎参考人は奇跡だとおっしゃいました。私はあえて奇跡とまでは言いません。今まで犠牲者が出ていなかったのは非常にラッキーな要素もあったというふうに受けとめています。けれども、それは、背景にあったのは、こちらから進んで一発の弾も撃っていないわけですね。だから、イラクでいえばサマーワで一発撃ったら何発返ってくるんだという世界であるわけなので、そこを非常に抑制的にして、それは現場は非常な御苦労があったと思いますけれども、それがあるがゆえにむしろ敵視されずに来た、現地の住民たちから。それが結果として、それにプラス、ラッキーな要素もあって犠牲者が出ずに済んでいるというふうに私は実感として受けとめております。ですから、今度は進んで武器を使う任務を与えていくということであれば、それは常識的に犠牲者が出るということは当然覚悟しなければいけない。もちろん、折木さんがおっしゃったように、最大限の訓練やら努力はされると思いますけれども、しかし、相手がその気で攻撃してくるものを、基本的には第一撃を防ぐ手だてというのは非常に難しいわけですから、つまり、こちらから進んで銃を使うような任務を与えれば、それ相応のリスク、犠牲を当然覚悟しなければいけない。私はそのように自分の実感として確信しております。
○宮本(徹)委員 引き続き柳澤参考人にお伺いしますが、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備について、これまでの周辺事態法などでは除外されるということになっていたわけですが、今回の法改正ではできるということになりました。戦闘に向けて発進準備中の米軍機への給油というのは、当然、米軍の発進準備命令があるもとでやるということになると思うんですが、これは米軍の指揮下でやるということになるんでしょうか。
○柳澤参考人 九七年ガイドラインや周辺事態法のときもその問題意識の議論はありました。私の認識は、発進準備中の航空機に給油をする、あるいは、本当に急ぐ場合はエンジンをとめずにそのまま給油するような作業もあります。そして当然メンテナンスの役務の提供も含まれているわけですから、つまり、撃ち尽くしたミサイルを補充するとか、そういう仕事も入ってくることになる。そして、飛行機の主要な部分の点検もやるような地上での仕事、一連の仕事がやれるということになるんだと思うんですけれども、九七年のときの認識はそういうことはやはり、では、それで飛んでいってボタンを押してミサイルが出なかったら誰が責任をとるんだということになるので、通常は必ず整備小隊とセットで戦闘機は動くんだろうと思いますね。そういう意味で、通常はニーズはまずないだろうと私は思っておりました。そして、そこまでやるとすれば、指揮下は、どっちの指揮というのは、それは我が方が指揮しちゃうかもしれませんけれども、いずれにしても、そこまでいくとさすがに、そこから発進していくわけですから、武力行使との一体化は避けられるということはとても言えない。 当時、そういう認識もありましたけれども、整理としては、さっき申し上げたような理由で、基本的にニーズはなかろうということで除外したということ。今回はどうも、ニーズの話とそれから憲法解釈の話と、もう一回ちゃんと議論し直す必要があるんじゃないかなと思っております。
○宮本(徹)委員 時間が来ましたのでこれで質問を終わりますが、本法案の危険性がきょうの質疑を通じてもいよいよますます明らかになったというふうに思いますので、本法案の撤回を求めてさらに議論していきたいと思います。終わります。ありがとうございました。
○浜田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。