2021年3月2日衆院予算委員会 緊急事態宣言「解除ありき」でなく、変異株など専門家の懸念ふまえ慎重に判断を

 日本共産党の宮本徹議員は2日、衆院予算委員会で、首都圏4都県で7日が期限となる新型コロナ対策の緊急事態宣言をめぐって、解除ありきではなく、専門家の感染再拡大の懸念を受け止めるべきだと追及しました。
 宮本氏は、2月末に6府県で宣言解除した際に正式な記者会見をしなかった菅首相に対し、感染再拡大の防止策を国民に語るべきだったとして「責任感が欠けている」と指摘。▽専門家らは新型コロナ変異株の拡大を懸念▽まだまだ感染者数が多い状況―を示し、このまま首都圏で宣言解除すれば「早期にリバウンド(再拡大)する危険が高いのではないか」とただしました。
 西村康稔経済再生担当相は「大きな流行にしないよう対応する」と答弁。宮本氏は緊急事態宣言の解除ありきではなく、「年末年始の感染者激増など、失敗を繰り返さないためにも専門家の意見をしっかり聞いて判断すべきだ」と強く迫りました。
 菅首相が「(解除の)基準は決めている」などと答えたのに対し、宮本氏は「その基準に変異株の影響を考慮すべきだ」と強調しました。
 宮本氏は、2021年度予算案について医療・保健所・検査支援や暮らし・営業支援などの予算が不十分すぎると指摘。深刻な医師不足にもかかわらず、23年度から大学医学部を定員削減するという国の方針に対し、「次のパンデミックで国民の命を守れるのか」とただしました。
 田村憲久厚労相は「(都市と地方部の医師数の)偏在を是正して確保していく」と強弁。宮本氏は「新型コロナの経験を生かすべきだ」として抜本的増員を求めました。

以上2021年3月3日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年3月2日 第204回衆院予算委員会18号 議事録≫

○金田委員長 これにて川内君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。六府県の宣言解除に当たって、総理は記者会見をされませんでした。その点について、厚労省のアドバイザリーボードの西浦先生は、昨日、こうツイートされているんですね。総理、聞いてください。「第四波・五波もこのリーダーとやらざるを得ないならば、対策のためにコミュニケーションに前向きにならないといけない。特にこの感染症では行動が鍵となる。」全くそのとおりだと思うんですよね。六府県の解除は条件付だったわけであります。総理には、やはり、リバウンドさせないための専門家の皆さんの提言を国民に語る責任が私はあったと思います。記者会見しなかったのは、責任感に欠けていたと思います。今後は、コロナ対策では、国民とのコミュニケーションに前向きになってください。これは私からのお願いです。その上で、首都圏の緊急事態宣言の解除をめぐる判断が迫っております。六府県の解除の際も、尾身会長始め専門家から、感染再拡大の懸念が強く表明されました。総理がどれだけ真剣にこうした懸念を受け止めているのか、今日は伺いたいと思います。一つは変異株であります。総理は、先日のぶら下がりでは、六府県の解除について、基準はクリアしているということをおっしゃったわけですけれども、諮問委員会の場では、ステージの考え方を出したときは変異株という問題はなかった、もう少し慎重にやった方がいい、こういう懸念が出たわけであります。昨日、神戸市が緊急の発表をしましたけれども、変異株の比率が週を追って増えております。四パー、一〇パー、一五パーと増え、直近は半数に近いという報道も出ているわけですね。これは、全国でこれから起きていくということになります。総理、変異株による感染が増える中、従前どおりの基準で判断していいんでしょうか。総理、総理の判断を聞いていますので。
○西村国務大臣 諮問委員会での議論も含めて、私の方からまずお答えさせていただきます。先般の、関西圏、中京圏、福岡を解除する際も、御指摘のように、専門家の皆さんからは、変異株に対する大変強い懸念がお示しになりました。その上で議論を重ねまして、最終的には、今御指摘ありましたように、いわば条件付で解除となって、モニタリング検査をしっかりやるとか、直ちに確保している病床を放すことはしないとか、幾つかの条件があったわけであります。したがって、私ども、首都圏の状況、感染状況や病床の状況も、今それぞれの都県と連携をして状況を確認、精査をしているところでありますけれども、当然、変異株の状況、それから、ワクチン接種のためには医療機関の負荷を下げなきゃいけないこと、こういったことも頭に置きながら判断をしていくことになります。今の基準、専門家のお示しいただいた基準と照らしながら、その上で、今申し上げたようなことも、変異株のことを頭に置きながら、専門家の御意見を聞いて、適切に判断をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 頭に置きながらというのは、当然頭に置かなきゃいけないわけですけれども、ただ、従前の基準で対応して本当にいいのかという問題があると思うんですよね。一日当たりの感染者数が、今、東京は二百数十人でありますけれども、同じ二百人でも、変異株の二百人とこれまでのウイルスの二百人とは全く違う意味があると思うんですよね。この点、やはり、従前どおりの基準でいいのかどうかというこの懸念もしっかり検討する必要があるんじゃないですか。これは総理に。総理です。何で西村大臣が答えるんですか。だって、総理が最後は判断するわけでしょう。
○西村国務大臣 まさに、緊急事態宣言の解除につきまして、既に専門家の皆さんからもこの基準がお示しをいただいております。その基準を照らしながらでありますが、これまでも総理からも御発言いただいておりますように、ステージ3になっていることをこれはまず確実に確認をしながら、更に改善をして、ステージ2に向かっていることを確実なものとするというような、これは専門家の御指摘もいただいております。繰り返しになりますが、変異株のこと、非常に脅威であります。早晩これは全て変異株に置き換わるということを頭に置きながら対応しなきゃいけない。そしてまた、ワクチン接種をお願いする医療機関の負荷も下げていかなきゃいけない。こういったことを頭に置いて、適切に判断をしていきたいというふうに考えております。
○宮本委員 それから、先ほど尾身会長も言及されておりましたけれども、東大の渡部教授の研究で、高齢者は感染者数などの情報が行動に影響を与える、だけれども、若い世代は緊急事態宣言の解除という国のはっきりした決定が行動に影響を与えるということが研究で言われているわけであります。今、感染減少のペースが鈍化してきている、リバウンドの懸念も示されている、そういう中で、宣言解除が若者の行動に影響を与える、こういう懸念について、総理はどう受け止められているんでしょうか。
○菅内閣総理大臣 まず、変異株の問題については、昨年、発生当時以来、そこはずっと注視をし続けています。そういう中で、若者対策ということでありますけれども、実は、東京でこれが拡大したのが、年末に忘年会の影響があって感染拡大したんじゃないかという専門家の皆さんからの御指摘であります。そういう中で、若者が感染予防に関心を持っていただくというのは極めて大事であって、例えばSNSの活用だとか、あるいは新宿、渋谷などの街頭ビジョンでのPRなど、若者につながりやすい方法に情報発信、そうしたものに努めることが大事だというように思います。また、変異株につきましても、申し上げましたように、強い危機感を持っておりまして、先週金曜日の対策本部において、今月から全ての都道府県でスクリーニングする、その検査を実施する監視体制を強化する、こうしたことをパッケージとして決定をして発表させていただいたところです。
○宮本委員 ですから、若い皆さんの行動が大事だ、その若い皆さんの行動に物すごい影響を与えてしまうのが緊急事態宣言の解除なわけです。変異株も広がりをかなり見せ始めているというのが今の状況なわけですね。しかも、いま一つの懸念は、まだ感染レベルがかなり一都三県では高いということなんですよね。東京の一日当たりの感染者数、七日間平均、昨日時点で二百六十九人ということになっています。第三波の入口、尾身会長が十一月九日に緊急の記者会見をやったときの一日当たりの平均は二百十一人ですから、そのときに比べてもかなり高い水準にまだあるのが今の東京の現状だというふうに思います。ですから、こういう中で解除に踏み切っていったら、早期にリバウンドする危険が極めて高いんじゃないですか。
○西村国務大臣 先般の諮問委員会でも、いわゆるリバウンドですね、感染の再拡大、これには万全を期すようにといういわば条件がついて、解除が関西圏、中京圏などで行われたわけであります。私どもも、このことを本当に頭に置いて幾つかのことを、例えば、高齢者施設で従事者の方を全員検査を行っていくこと、それから、繁華街でモニタリングの検査、これを進めていくこと、もう既にそれぞれの都道府県と調整に入っているところでありますし、さらには、積極的疫学調査をしっかりと行うクラスター対策、こういったことによって端緒をつかんで、もし再拡大の兆しがあれば、蔓延防止等重点措置、これも法律でお認めいただきましたので、この機動的な活用も含めてですね。必ず小さな流行は起こりますので、今後もなかなかこれはゼロにはできないものであります。必ず起こる。それを大きな流行にしないために、しっかりと対応を取っていきたいというふうに考えております。
○宮本委員 何か西村大臣の発言を聞いていると、もう解除ありきみたいな感じで、その後の話ばかりされるわけですけれども。この間、一年間を振り返ってみても、専門家の意見を聞かずに失敗したことはあったわけですよね。十一月、十二月もそういうことがありました。失敗を繰り返さないためにも、これは総理にお約束いただきたいんですけれども、解除ありきではなくて、専門家の皆さんの意見をしっかり聞いて、踏まえて判断する。これは解除ありきじゃないんだと、ここはお約束いただきたいと思います。いかがでしょうか。
〔委員長退席、山際委員長代理着席〕
○菅内閣総理大臣 まず、緊急事態宣言解除について、私が一存でできるという話でもありません。やはり、基準については、基本的対処方針、ここで定められています。感染状況や医療提供体制、公衆衛生体制の逼迫状況、こうしたことを踏まえた上で、専門家の皆さんの諮問委員会の意見を十分に踏まえた上で総合的に判断をさせていただく。まず、この基準がどうかということがやはり、決めておりますので、そこが一番大事なことだというふうに思います。
○宮本委員 基準のことをおっしゃるんですけれども、ただ、その基準について、変異株を考慮して判断しなきゃいけないんじゃないかというのが私が今日言っていることですし、専門家の皆さんからも声が上がっているわけですよ。ですから、基準だけじゃなく、やはり、変異株のこと、解除が与える影響、こういうものをしっかり踏まえて、解除ありきではなく、判断をしっかりしていただきたいと思います。その上で、来年度予算案ですが、コロナ対策、これでいいのかと。医療機関への支援、保健所の体制、高齢者施設等の頻回検査の支援、事業規模に応じた事業者への支援、暮らしの支援、この間、様々、私ども野党は提案をしてまいりました。政府の予算案は、全くこの点で不十分と言わなければなりません。抜本組替えが必要であります。一点、医療体制についてお伺いしたいと思います。第三波の中で、人工呼吸器があっても扱いに熟達した医師や看護師が足りないという深刻な問題に直面しました。専門医が足りない。さらに、その大本には医師が少ないという問題があります。人口十万人当たりの医師数をOECD並みにしようと思うと十三万人足りないぐらい、OECDの平均と日本は人口当たりの医師数も差があります。感染症に強い社会にするためには、しっかりと医師、看護師を増やしていく、専門医も増やしていく、このことが必要だと思います。ところが、昨年十一月、厚生労働省は、医学部の入学定員を二〇二三年度から段階的に減らす、この方針を出しました。総理、医師を減らして、次のパンデミックで国民の命を守れますか。
○田村国務大臣 これはもう委員御承知のとおり、二〇〇八年から順次、医師の定員枠といいますか、要は医学部の定員枠を増やしてまいりました。これは、要するに、その地域等々、医師が不足しているところで勤務していただくだとか、こういう診療科で働いていただくだとかというような、一定の条件をつけて枠を増やしてきたわけでありまして、これで今、毎年三千五百人から四千人ほど増加をいたしております。先ほどおっしゃったのは、需給分科会の方で出された資料ですけれども、一定の医師の労働時間、これを、仮定を置いた上でいつ需給が均衡するかというのを出しますと、二〇二九年というような、そういう一つ結果が出てまいります。医師を育てるといいますか、医学部はいろいろなことを、研修等々も含めて入れますと、大体八年から十年かかるということを考えますと、今言ったような二〇二三年というのは一つの大きな数字ではありますが、ただ、これは都道府県とも話していかなきゃなりません。あわせて、そのときに、医師全体ではなくて、地域偏在、診療科偏在、こういうものを勘案していかなきゃなりませんから、そういう意味では、この地域枠というものは一定程度残していかなければならないというふうに思っておりますし、それから、臨床の研修ですね、こういう研修に関しても、都道府県によって医師が多い少ないがありますから、この対応もします。診療科においても同じような枠をつくって対応します。つまり、何を言いたいかというと、それぞれ偏在がありますから、それをちゃんと是正して、呼吸器は呼吸器の専門医も必要でありましょう、しっかりと確保してまいるということでございますので、そのような形の中で今議論をさせていただいておるということであります。
○宮本委員 医師の需給の数というのは、感染症の今回の経験というのが議論されているわけじゃないわけですよ。そういう問題提起も厚労省からなされていないわけですよ。そういうのを、今回の経験を踏まえて、しっかり考えなきゃいけない。是非総理も、本当に、今回の経験をどう生かしていくのかというのを、厚労省任せじゃなく、考えていただきたいと思います。その上で、最後のテーマについて質問します。資料もお配りしておりますが、首都東京での米軍ヘリの低空飛行についてです。毎日新聞の公開した動画では、昨年十二月十四日、米軍ヘリ、シーホークが、蛇行しながら都心のビルの上をかすめるように飛んだり、三百メートル程度しか離れていない二つのマンションの間をすり抜けたりして飛んでおります。一歩間違えれば大惨事が起きる。取材班の確認だけでも、最低安全高度を守らない飛行がこの間計十七回。人口密集地の上空で危険な低空飛行が常態化している状況があります。自衛隊の元幹部の方はこの動画を見て、これは遊んでいる、チャレンジしている、東京でこんなでたらめをやっているのかと突きつけるべきだとコメントされておりました。ちょっと確認しますけれども、政府として米軍に事実を確認しましたか。
○岸国務大臣 今委員御指摘の動画については私も視聴いたしましたが、現在、事実関係について米側に確認中でございますので、米軍機の飛行について予断を持ってコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。その上で、米軍機の運用については、日米安保上の義務である我が国の防衛を全うするという観点からしても大変重要でございます。一方で、我が国の公共の安全に妥当な考慮が払われる、払って活動されることは当然の前提でございます。米軍機は全く自由に飛行していいというわけではなくて、日米地位協定十六条に基づいて、航空法等の我が国の国内法を遵守する義務を負っております。防衛省としては、引き続き、外務省と緊密に連携をして、米側に対して、安全面に最大限の配慮を求めるとともに、周辺住民に与える影響を最小限にとどめるように求めてまいりたいと考えております。
○宮本委員 防衛大臣も動画は見られたそうですけれども、何かそのことについてのコメントすらないわけでしょう。総理にも動画を見ていただきたいというふうに質問通告しておりましたけれども、総理も動画を御覧いただいたでしょうか。ビルのすれすれのところで飛んで、こんなものを日本国の首相として看過するわけには絶対にいかない問題だというふうに思いますよ。アメリカに抗議して、こういうのはやめるべきだというふうに言うべきだと思いますが、総理、動画を御覧になってどうですか。
○菅内閣総理大臣 御指摘でしたので、私も見ました。事実関係は、防衛省、外務省で確認中というふうに承知しています。 いずれにしろ、米軍機の飛行に当たっては、ルールを守って安全面に最大限配慮する、このことが重要だというふうに思っています。
○宮本委員 ああいう飛行でいいというふうにお思いですか。
○菅内閣総理大臣 ルールを守って安全、安心の飛行ということが大事だと思っています。
○宮本委員 御覧になってのとおり、百五十数メートルのビルすれすれの上を通過するというのをやっているわけですよね。飛行高度も全く守られていないわけであります。これはルール違反じゃないですか、ルールを守ってということを言いますけれども。これはやはり本当にアメリカに物を言えなきゃ駄目ですよ、総理。
○茂木国務大臣 なかなか動画だけで、確定的に何メートルのところを飛んでいるか、それを判断されるのは、宮本議員、難しいと思っておりまして、事実関係については、今、岸大臣の方からもありましたように……(発言する者あり)細かくありません。米側に対して、安全面に最大限配慮をし、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう、これまでも累次の機会、強く求めてまいりましたし、安全確保については最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきたいと思っております。
〔山際委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 日本の航空法では、建物の突端から三百メートル離れて飛ばなきゃいけないわけですよ。そして、日米合同委員会合意でも、在日米軍は、日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用しているというふうに言っているんですよ。明確な日米合同委員会違反ですよ。先ほど、動画を見て、動画だけじゃ分からないと言ったけれども、あの動画を見たら誰だって分かるじゃないですか。高さ二百メートルのところから見て、それよりも低いところにヘリが飛んでいるんだから。三百メートルより上を飛んでいるはずがないじゃないですか。誰だってそうでしょう。それについて抗議もできないというのは、こういう属国根性はやはり日本国の首相としてはまずいですよ。アメリカにきっぱり抗議してください。
○菅内閣総理大臣 まず、事実関係をしっかり確認した上で、その上でしっかり対応させます。
○宮本委員 じゃ、しっかり米軍に確認していただいて、しっかり対応するということですから、それは抗議するということも含まれているということでいいですね。そこだけ確認させてください。
○金田委員長 内閣総理大臣菅義偉君、時間が参りました。
○菅内閣総理大臣 ルールに基づいて飛行するのが当然のことでありますから、そこは事実関係に基づいてしっかり対応させます。
○宮本委員 直ちに事実を確認して、厳しく抗議を行うべきだということを申し上げまして、質問を終わります。
○金田委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。