2021年4月7日 衆院厚生労働委員会 感染症対応に余力必須 病床削減法案撤回迫る

提出資料 文部科学省高等教育局医学教育課長通知 令和3年2月1日
提出資料 『病院羅針盤』2021年4月1日号
提出資料 OECD統計資料を基に宮本徹事務所作成
提出資料 厚生労働省医政局長通知 令和2年1月17日
提出資料 厚生労働省第4回地域医療構想に関するWG
提出資料 内閣府第32回社会保障WG

「病床削減推進法案」が7日の衆院厚生労働委員会で採決され、自民、公明、維新の会、国民民主各党の賛成多数で可決されました。日本共産党、立憲民主党は反対しました。共産党の宮本徹議員は質疑で、コロナ禍の教訓を踏まえて「医療提供体制は平時に一定の余力がないといけない」と強調し、436の公立・公的病院に対する再編統合の検討要請や同法案の撤回を迫りました。
厚労省の迫井正深医政局長は、2025年までの「地域医療構想」通りに病床削減などが行われた場合、看護師は18年比で1割=約5万人が減り、20年度の「病床機能再編支援」で合計約3200床が削減されると答弁。宮本氏は「病床削減すればマンパワーもなくなる。感染拡大時にどう対処するのか」と追及し、再編統合対象の病院名リストと通知について「撤回すべきだ」とただしました。田村憲久厚労相は「撤回は難しい」と繰り返しました。
宮本氏は、同委の参考人質疑で出された「日本の医師不足は13万人」との訴えをあげ、医師や看護師の需要と供給の厚労省推計には▽女性比率を低く固定化▽長時間労働が前提▽感染症対応を未想定―などの問題があると指摘。「女性医師の比率は32%で頭打ちにしている。ジェンダー平等は進まない」として需給推計のやり直しを求めました。
田村厚労相は「実態が大きく変われば計画の見直しは当然ある」と答え、宮本氏は「女性の医学部入学率は37%まで上がっている。実態からもおかしい」と追及しました。
宮本氏は反対討論で、最大の問題は全額国庫負担で病床削減を加速させることだと批判。医学部の定員削減方針を撤回し、医師・看護師の抜本的増員と確保に転換すべきだと主張しました。

以上2021年4月8日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年4月7日 第204回衆院厚生労働委員会第9号 議事録≫

○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。法案について質問しますが、まず無給医の問題です。コロナ患者の診療でも、大学病院で無給医の方々が診療に当たっているという報道がたくさん出ているわけです。今日は資料をお配りしておりますけれども、二〇一九年から文科省も無給医の実態調査を行って、昨年二月までには大学側から改善した、こういう報告があったわけですが、実際には解決していないわけであります。文科省も繰り返し通知を出していて、今日配っているように二月にも新たな通知を出したわけですが、なぜ何度も通知を出さざるを得ない事態になっているんでしょうか。
〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕
○川中政府参考人 お答えいたします。無給医問題につきましては、平成三十一年一月に国公私立全ての大学病院に対しまして、診療行為を行っているにもかかわらず給与が支給されない事案が生じないよう、自己点検を求めまして、昨年二月までに各大学で必要な改善の取組を行ったと承知してございます。また、新型コロナウイルス感染症対応では、大学院生等も診療に当たることから、診療に当たる大学院生等についても雇用契約を締結し、賃金を支払うよう、各大学病院に対して指導してきたところでございます。しかしながら、診療行為を行った大学院生に対しまして賃金の支払いがなされていないということで、今年一月に大学病院が労働基準監督署の是正勧告を受ける事案が報道されたことから、二月一日付で通知をするとともに、全国の病院長が参加いたします全国医学部長病院長会議において再度周知を行いました。文部科学省といたしましては、賃金の支払い等につきまして適切な労務管理が行われるよう、引き続き指導してまいります。
○宮本委員 周知は何回も何回もしたわけですけれども、なかなか解決していないわけですよね。これは、やはり労基署がこの無給医の問題で全国の大学病院に監督に入らなきゃいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○吉永政府参考人 お答え申し上げます。大学病院の医療現場で診療行為を行っているにもかかわらず給与していなかったいわゆる無給医の問題につきまして、今ほど文部科学省からも答弁ございましたけれども、各大学は不適切な取扱いを今後改めるというような調査結果が出ている中で、文部科学省において、各大学に対しまして適正な雇用、労務管理に取り組むよう通知を発出し、各大学の改善方策の履行状況の確認及び精査状況の確認を行った上で、本年二月にも改めて周知徹底を行っているという状況と承知してございます。給与が支払われていなかった医師がいたことは極めて遺憾でございますし、こうしたことがないよう、文部科学省において適切に対応いただいているところだというふうに考えてございます。厚生労働省といたしましては、労働者から労働基準法違反につきまして申告等があった場合につきましては、状況を確認した上で、適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
○宮本委員 労働者から訴えがあった場合は当然それは指導に入る、監督に入るのは当たり前の話なわけで、何回も何回も何回も通知を出して、大学自身が改善したという報告を出していたにもかかわらず、実態は直っていないわけですよ。今回また同じように通知を出したから、これは改善されますよという保証はどこにもないと思いますよ。それはやはり労基署がしかるべき役割を果たす必要があるんじゃないんですか。大臣、いかがですか。
○田村国務大臣 これはやはり、そのような事案があるということで相談若しくは申出があれば、これに関しては、もちろん場合にもよりますよ、だけれども、基本的には、そういう訴えがあればそれに対して適切に対応させていただき、指導、是正していくということであります。
○宮本委員 勇気がある方はこうやって申し出て訴えるわけですけれども、大学病院の中での大学院生の立場というのは強い立場じゃないわけですよね。ドクターが取れるのかどうかということを考えた場合に、なかなか自ら声を上げにくいということがあって、これはなかなか解決していないんだというふうに思うんですよね。ですから、そこは、やはり待ちじゃなくて、これだけ報道もあって、これだけ報道が出ているわけですよ、無給医、無給でやられているというのがあるわけですから、待つんじゃなくて、先に労基署として、どうですかと、ちゃんと調べに入るというのが必要なんじゃないですかということを申し上げているんです。
○田村国務大臣 通知を何度も出すという形で促してきているわけで、御承知のとおり、監督署自体は、警察権を持っている、非常に強い権限を持っているところであります。それが何の違法の蓋然性もなくどかどかどかどか入っていくというのは、これはやはり、権力といいますか力を持っている組織としては控えなければならない。しかし、一方で、違反の疑いがある場合にはその権限を使ってでも不正を正していかなきゃならないという形でありますから、私はやはり、そういうお訴えがある場合にしっかりと是正指導をしていくということが必要であろうというふうに思います。
○宮本委員 疑いが濃厚な場合は当然、告発があった場合は入るわけですけれども、別にそれ以外でも、労基署は定期監督もやっているわけじゃないですか。順繰りに回って監督しているわけですから、その一環として、じゃ、今、無給医の問題も報道でもあるからしっかり回りましょうということを私はやればいいということを提案をしているわけですよ。これ以上言ってもなかなか答弁が変わらないので、大変残念なわけでありますが。あわせて、無給医から有給にしたけれども、最低賃金ぎりぎりというものしか出していないケースもあるわけですよね。同一労働同一賃金の原則からしたらこれはおかしいと思いますので、その点は、是非、まともな賃金水準にするように啓発指導をしていただきたいと思いますが、その点はどうですか。
○田村国務大臣 当然、労働法制上、労働者に当たる場合、指揮監督等々、これは労働法上の指揮監督でありますが、そういう場合に関しては、これは均等・均衡待遇ということでございますので、正規でない場合であったとしても、職務等々含めて、人材活用の仕組みも含めてでありますけれども、当然、研修生でありますから、研修生といいますか、大学院生でありますから、そこは若干人材活用の仕組みが違うんだろうと思いますけれども、これにのっとった上で均等・均衡待遇をしていかなければならぬということでありますから、そこはしっかりと我々としては伝えてまいりたいというふうに思います。
○宮本委員 伝えていくということですから、何らかの通知を出していただけるということだと思います。次に、今日議論がありましたけれども、医師、看護師の宿日直の許可の問題についてお伺いしますが、二〇一九年七月一日に局長の通達で「医師、看護師等の宿日直許可基準について」が出されたわけですが、実際にどれぐらい守られているのか、実態というのはどうつかんでいるんでしょうか。
○吉永政府参考人 お答え申し上げます。委員御指摘のとおりでございますけれども、医師や看護師の宿日直業務につきまして、許可基準につきまして、令和元年の七月に新たに通知を発出いたしまして、従来のものよりも医療機関に特化したようなものを、宿日直中に従事できる業務の具体例などを示しながら、一つの診療機関の中でも診療科や職種ごとに許可が取得できることを明確化するなど、細目を示したところでございます。労働基準監督署に労働基準法に基づきます宿日直許可の申請があった場合につきましては、申請内容が許可基準に合致しているかにつきまして実地調査するなどによりまして確認を行った上で、許可基準に合致しない場合につきましては許可を行っていないというものでございます。厚生労働省におきましては、これまでも、都道府県の医師会等と連携しながら、全国で宿日直の取扱いも含めまして労働時間等の説明会を開催して、丁寧に説明を行っているところでございます。また、各都道府県に設置されました医療勤務環境改善支援センターにおきましては、労務管理の取組に関する各医療機関の導入状況に応じまして訪問等によります個別支援を行うなど、医療機関において適切な労務管理がなされるよう支援を行っているところでございまして、この中でも宿日直の取扱いにつきまして周知啓発を行っているところでございます。こうした状況でございますけれども、今後とも、宿日直に関しまして、働く方から労働基準関係法令の違反があるとして労働基準監督署に相談や申告があった場合につきましては、監督指導を実施して必要な指導を行ってまいりたいと考えてございます。
○宮本委員 実態をしっかりつかんでいっていただきたいと思うんですよね。この通達が出て以降も、二次救急を行う病院や、あるいは急性期病院が宿直許可を取っているケースというのは少なくないというのは聞いております。救急患者の受入れや重症患者の治療というのは二十四時間体制であって、これらに責任を持っている医師というのは、やはり宿直ではなく時間外労働にしっかりしていかなきゃいけないということだと思いますけれども、その点はそのとおりですよね。
○吉永政府参考人 委員御指摘のとおり、救急対応をしていらっしゃるドクターなどが宿日直対応ができるかというと、なかなか難しい面もあろうかと思いますが、宿日直の許可につきましては、診療科あるいは職種ごとに取ることが可能となってございます。そういう意味で、そういう救急を持った病院におきましても、他の診療科等で宿日直を行うということは可能であろうと思ってございます。いずれにいたしましても、宿日直が本来の趣旨を満たした形で適切に活用されるような形で許可を行って、また、必要な指導も行ってまいりたいと考えてございます。
○宮本委員 しっかり現場の実態をつかんで対応していただきたいと思います。それからあと、次ですけれども、前回の質疑で、今回、千八百六十時間までの長時間残業を容認する、こういうことになれば、医療機関の三六協定がそこまでの長時間残業があるのを追認していく、現状を追認していく、こういう方向で変わる危険があるということを述べました。まさにそのことを示す調査研究の結果が、今日資料をお配りしておりますけれども、「病院羅針盤」の今年の四月一日号に出ました。前回紹介した三隅さんという方は、今度、大学が変わって、宇部フロンティア大学というところに変わられたそうですけれども、国立病院機構とJCHOと労災病院の二百三十病院の三六協定について、二〇一七年と二〇二〇年を比較したら、年九百六十時間以上の残業、過労死ライン以上を認める三六協定が、それまでの六・一%から三〇・九%に増えていたということであります。まさに私が懸念していることが起きているわけですが、この点について大臣の所見はあるでしょうか。
〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕
○田村国務大臣 国立病院機構におきましても、時短をしっかりやっていただかなきゃならぬということで、タスクシフト・シェアリング等々を進めていただいております。そういう意味では、労働時間を短縮する方向で御努力をいただかなければならないということは、これは当然のことであります。ちなみに、今委員おっしゃられました調査でありますが、私ども、これは詳細を把握しておりませんので、これ自体の数字についてはちょっとコメントのしようがないということでございますが、いずれにいたしましても、この法律の趣旨というものは、御承知のとおり、勤務医も含め、労働時間を短縮していくためのものであり、上限設定も、別に上限全部そこまでやってくださいというわけじゃなくて、それ以内に収めてなるべく短くしてくださいということでございますので、これからもそのような形で各医療機関に対してはしっかりと我々としてはお伝えをさせていただきたいというふうに考えております。
○宮本委員 詳細を把握していないと言いましたけれども、私、通告でちゃんと、この「病院羅針盤」のここに出ていますよと。今日雑誌もありますけれども、二百三十病院全部、詳細に情報開示して、先生がどれだけ三六協定の時間が延びているのかというのをやられていますので、そういう答弁はないかなと思いましたけれども、いずれにしても、やはり、千八百六十時間までいいですよというのは、本当に現状をどんどんどんどん追認していくことになりかねないと大変危惧しております。先ほどタスクシフトというお話もありましたけれども、医師の負担軽減を進めていかなきゃいけない。同時に、前回から申し上げていますけれども、やはり私は、医師をもっとしっかり増やしていく、これが欠かせないと思います。先日、参考人質疑がありました。二〇二三年度からの医学部定員削減をしていいのかと本田公述人がおっしゃっておられました。十三万人不足というので、ここにいた委員の方はみんな十三万人というのが頭にこびりつくぐらい何回も強調がありました。 また、医療法人協会の加納会長からは、医師不足を実感しているのが病院の現場、需給のもう一度の再検討が必要、こういう発言がありました。また、医師会の今村副会長からも、需給推計について、仮定が間違っていれば違った数字になるということはあると思います、しっかりとした現場のデータに基づいて折々にきちんと議論をしていって、それを修正していくということが重要だという発言がありました。医師不足だ、需給推計をちゃんと実態に合わせて見直してほしい、こういう相次いでの発言について、大臣の受け止めをお伺いしたいと思います。
○田村国務大臣 これは、医師の需給推計検討会の中の分科会で、専門家の方々にいろいろと推計いただいたわけであります。OECD諸国と平均を比べて少ないという話もございましたが、二〇二七年には同レベルになり、二九年には言うなれば供給が需要を上回るというような推計になっております。もちろん、先ほども中島議員と議論させていただいた中で、医師の数だけで全てというわけではなくて、診療科の偏在でありますとか地域の偏在をどう解消するか、こういうことも進めていかなきゃいけませんし、勤務医と開業医、こういうバランスもあると思います。勤務医の方々により残っていただくためには、報酬の話もございましたけれども、やはり労働時間というもの、今のような過重な労働時間ですと、例えば救急でありますとか外科でありますとか、いろいろな部分、産婦人科はちょっとまた違った理由かも分かりませんが、そういうものに対して、どうしても勤務医として残っていただけないというようなことがございます。そういうことも含めて、今般、労働時間等々をしっかりと上限を定める上、今までは上限がないような三六協定特別条項が結べたわけでありますから、そうではなくて、上限をしっかり定めた上で、更にそこから減らしていくというようなことをしっかり我々は念頭に置きながら、この医師の需給というもの、しっかりと質のいい医療提供ができるように我々としては進めてまいりたい。ただ、まだこれは増えていますから、三千五百人から四千人毎年医師が増えているということもどうか御理解をいただき、以前よりも枠を増やしたというのが今続いている中において、それをどうしていくのかという議論であるということをどうか御理解をいただきたいというふうに思います。
○宮本委員 その増加のペースを再来年から落としていいのか、そこへの懸念の声が相次いで医療関係者、病院関係者から上がっているということなんですね。しかも、この需給推計のパラメーター自体がおかしいというのを私は何度も申し上げているわけです。女性については三二%で頭打ちということで需給推計のパラメーターを使っているわけですけれども、資料の三ページ目を見ていただきたいんですけれども、これはOECDの統計から出しましたけれども、三十五歳までの医師に占める女性医師の比率で、大半の国は、三十五歳以下で見ると、男性、女性で見れば、医師は女性の方が多いんですね。ほとんどの国が女性の方が多いです。ほんの数か国だけですよ、半分を切っているのは。その中でも最低なのは日本の三三・六四%ということです。三割台は、あと、韓国の三七・五八。韓国は伸び続けていますよね。少し前まで日本より比率は少なかったですけれども、伸び続けているということなんですよね。なぜ日本は女性医師が少ないのか、世界ではなぜ女性の医師が増えているのか、この辺については大臣はどういう認識をお持ちなんでしょうか。
○田村国務大臣 世界で女性の医師が増えている国がある分析というのは私もなかなかやっておりませんので、お答えしづらいんですが、日本で女性医師が少ないというのは、日本の国の中で管理職が少ないというのと似通った部分だと思います。キャリア形成していくのに、長時間労働を前提に働かないとキャリアというものを積んでいけない、そういう社会、これは一般的に日本の、今の新興のITなんかは別なのかも分かりませんけれども、伝統的な企業はこういう傾向が、全てとは言いません、傾向があるんだというふうに思います。でありますから、医師の場合も同じように、長時間労働ということを前提に、特に若いときにはそういうもので今までずっと続けてきている。すると、女性は両立支援できない。子供を産み育てようという選択をされる女性にとっては非常に厳しい選択になるわけでありますし、ほかにも、女性は男性と違って、特有の生理的ないろいろな症状というか現象があります。男性よりもそういう意味では、長時間労働に対してはつらいお立場があるんだというふうに思います。そういうことも含めて、まずは長時間労働というものを、これは医療の世界も、それからそれ以外の社会においても実現していかないことには女性の活躍というものが進んでいかないということで、今般は医療でありますけれども、全体として、労働時間短縮、この改革というものはそういうような目的も一つ大きくあるわけでございまして、しっかりと、この法律を通す中において、女性の医師等々が活躍をいただけるような環境をつくってまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 医療現場の長時間労働解消というのは、一つ大きな、やらなきゃいけないといいますか、女性の比率が上がっていく上でも非常に大事なことだと思います。医療現場全体の労働時間が本当は短くなっていかなきゃいけないんですよね。女性医師というのは、御存じだと思いますけれども、パートナーはかなりの比率で男性の医師です。家に帰ってこないわけですよね。ワンオペ育児をやっている人が本当に多いですよ。私も知り合いの女性の医者なんかに話をお伺いしても、そういう状況なわけですよね。ワンオペ育児しながらも、自分も医者として頑張りたいけれども、子供もお受験も含めてちゃんとやりたい、こういう人が多いという話も聞いているわけですよね。そういうことから考えても、また医師の需給推計の話に戻りますけれども、医師の需給推計も、結局、九百六十時間までは残業していいですよというのが前提のですよね、あるいは七百二十時間のケースもありますけれども、いずれにしても長時間残業が前提で需給推計をやっているんですよ。それで、医師数を合わせていこう、医学部の定員も減らしていこう、こういうことをやっていたら、お医者さんの世界でのジェンダー平等というのもなかなか進んでいかないというふうに思いますよ。田村大臣としては、当然、お医者さんの世界でも、ジェンダー平等、諸外国と同じようにフィフティー・フィフティー、これは普通そういうふうになっていくべきものなんだろうな、そういうお考えはあるわけですよね。
○田村国務大臣 医療の世界だけではなくて、日本の国全体、そもそも、男性、女性ということを考えた場合に、同じように社会で同じようなポジションで活躍いただけるような、そんな環境をつくらなきゃならないというふうに思いますが、国全体のマクロの経済を考えても、これだけこれから生産年齢人口が減っていく中において、女性も活躍される意欲のある方々にはより活躍できる環境をつくっていかなければ、日本の国自体がやはり世界的に埋没していくと私は思っております。でありますから、もちろん医療の世界もそうでありますが、他の世界においても、少なくとも男性と同等程度に活躍できるような場、そして活躍できるような方々、人数、そういうものがどんどんどんどん社会の中で頑張っていただけるような社会をつくっていく、環境をつくっていくというのが厚生労働省の大きな役割の一つだというふうに考えております。
○宮本委員 大臣がそういう立場に立たれているのであれば、需給推計の問題に戻りますけれども、やはり、女性のパーセントを低いところで固定化させてしまうものを前提にした需給推計でいいんですか。長時間残業が前提の需給推計でいいんですか。ここはもう少し、あるべき姿に向かっての需給推計というのをもう一度やるように、大臣としての考え方を是非指示をしていただきたいと思うんですよ、ここは。私はいろいろな数値を出してもらって自分で計算しようと思ったんですけれども、どうしても出してもらえない数値もあるということが分かりまして、労働時間がどれぐらい短くなるのかという計算をする際に、実は、一万人ぐらいのお医者さんの労働時間がどれぐらい実際に短くなるのかというのは、あの計算に、需給推計の中に入れ込んでいるというんですね。それは、一万人分は出せない、そういう前提でないので出せないと。まあ、出してもらっても、一万人分は私はとてもできないですから。そうすると、やはりこれは、本来、もうちょっとあるべきパラメーターを使っての需給推計というのを、是非、大臣、御指示いただきたいんですけれども。
○田村国務大臣 私の思いといいますか、厚生労働省の思いもそうなんでしょうけれども、それはそれでありますが、いろいろなことを推計するのに、実態として思いの数字を入れるというわけにはいかないわけでありまして、そこは中立公正に専門家の方々が分科会で御判断をいただく中においてのやはり推計を使わないと、大臣の思いで全ての政策が決まっていったのでは、これは国民の皆様方は安心できないということでありますから、そこは専門的知見を入れさせていただく。ただ、実態として本当に大きく変わってくるということになれば、これは政策に大きな影響が出てまいりますので、そのときには、実態が変わってくればまた計画の見直しということは当然あるわけでございまして、そういうような中において、我々としては、実態としてしっかりと困らないような対応をとっていくということであります。
○宮本委員 実態でいっても、女性は、先日もお話ししましたけれども、医学部の入学率は今三七パーまで上がっているんですよ、直近でいえば。三二パーを使い続ける、未来にわたって。実態からしてもおかしいですよということを申し上げているわけですよ。首をかしげる話じゃないと思いますよ、これは。お分かりなんだから、是非直していただきたいと思います。それから、次の問題に行きますが、最大の今回の法案の問題は病床削減の問題であります。今回のコロナ禍でも、コロナ患者を受け入れるために一般病床を減らせば、本当に手術の数も抑制しなきゃいけない、救急車で搬送しようと思っても、一時間、二時間、あるいはもっと多くの時間、搬送先が見つからない、こういうことがあったわけですよね。あるいは、専門科の外来もなかなか予約が取れない。私の地元でも、健診で便の潜血があった、でも、専門科の外来がなかなか取れなかった、やっと取れたところが、たまたま身内の不幸があって更に延びましたら、また取りにくくて、取れて行ったら、大腸がんでかなり進行していた、こういうこともあるわけですよね。やはり、コロナ患者が増えれば、感染症が増えれば、一般医療をなかなか制約するということになるわけであります。そうすると、やはり今回の経験を踏まえれば、感染症のときに国民の命を守ろうと思ったら、平時にやはり一定の余力がなきゃいけない、医療提供体制に余力がなきゃいけないということだと思うんですよ。その認識が大臣にあるのか、この点をお伺いしたいと思います。
○田村国務大臣 委員がおっしゃっておられる余力というのがどういうものなのか、ちょっとよく分からないんですが、今般、地域医療計画を、五事業を六事業に見直して、感染症が拡大したときの対応も計画の中に盛り込んでいただくというのは、まさに、感染症が拡大したときに、ベッドだけじゃなくて、どう人員を配置するか、これがやりくりできなければ対応できないわけでありますから、そういうことも念頭に置きながらお作りをいただくということになろうと思います。一方で、過剰な余裕があった場合に何が起こるかというと、当然、平時の医療において診療報酬が得られなくなるわけでありますから、それは医療機関として成り立たなくなるわけであります。そういうことも踏まえた上で、それぞれの地域でこれは検討いただくということでございますから、我々としては、その地域で十分に成り立ち得る医療ということであれば、それはそのような地域医療計画をお出しをいただければいいわけでございますので、いずれにいたしましても、それぞれの二次医療圏での最適な答えというものを導き出していただきながら申請をいただければありがたいというふうに思います。
○宮本委員 よく、感染拡大時には機動的に対処しますということを言われるわけですけれども、機動的に対処しようと思ったら、どこかに余力がない限りは機動的に対処できないじゃないですか。ぎりぎり、かつかつでやっていたら、今の方針でいえば、病床を削減して、病床を削減すれば人も減るわけですから、そういうことをやっていったら、今まで以上に、いざパンデミックが起きたときには一般医療を縮小せざるを得なくなるわけですよね。では、機動的に対処するために一体どこに余力をつくろうというお考えなんですか。
○田村国務大臣 いろいろなこと、一つが解ではないと思います。長時間労働是正もそうでありまして、なるべく労働時間を減らしていけばその分の余力が生まれるわけで、緊急時に対しては、若干労働時間が延びるかも分かりませんが、対応できますし、そのためには、タスクシフト、タスクシェアリング、看護師も更に今よりも、特定行為等々、いろいろな役割を担っていただき、その看護師が担っていただいている役割を他の職種が担っていただくということも一つでありましょう。それから、外来機能の明確化というのも、地域によっては、今、病院等々で一般外来、初診外来を受けていただいておる。そこの人員をもう少し、入院、手術、いろいろなところに回していただく中において、外来機能の明確化、連携という形の中で余力を生じさせていく、こういうことも一つであろうと思います。いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますとおり、必要以上の余力というものを持った場合には、当然これは運営ができないという話になってまいりますし、もしそれで無理に需要をつくるなんというような話が、以前はありました、今はもう多分ないと思いますが、そういうことになれば、それはそのまま保険料等々に跳ね返ってくるわけでございますので、そういうような面から考えても、合理的な最適な医療というものをそれぞれの二次医療圏でお考えいただく中において、今回の、特に勤務医に関しては長時間労働是正というものをその中にしっかり組み込み、言われておられます女性の活躍推進というものもその中にしっかりと組み込んでいく必要があろうというふうに思っております。
○宮本委員 必要以上の余力というのは何を指しているのかよく分からないんですけれども、今は最低限の余力も足りないというのが第三波で東京が体験したことでもありますし、恐らく今大阪が直面している問題だというふうに思うんですよね。なおかつ、地域医療構想で病床を削減していく、病床を急性期から回復期などに転換していくということをやれば、当然これに合わせて人も減っていくわけですよ、今の仕組みでいけば。ちょっと数を教えてほしいんですけれども、今日は資料もお配りしておりますけれども、地域医療構想における二〇二五年の病床の必要量に合わせて病床転換が仮になされた場合、平成二十八年度の病床機能報告の値でいいんですけれども、病床当たりの看護師数の中央値を機械的に当てはめれば、二〇一八年度病床機能報告時と比べて、二〇二五年には対応する看護師さんの数はどれぐらい減りますか。
○迫井政府参考人 御答弁申し上げます。議員御指摘の、二〇二五年における病床の必要量の推計に合わせて病床機能の転換を進めた場合の看護師数への影響、これにつきまして、病床機能報告において同一の機能を報告する病床の中でも、機能によりましては、医療機関によって看護師の配置量が違う、様々であるということと、急性期病床を担う病床から回復期を担う病床に転換する場合の配置変更について、実情に応じて様々でございますので、一概に評価、計算することはできないものと考えておりますけれども、議員御指定のとおり、二〇一六年、平成二十八年病床機能報告における病床機能別の病床一床当たり、これは議員配付の資料にあります看護師数の中央値、高度急性期〇・七六人、急性期〇・五三人、回復期〇・三六人、慢性期〇・一九人を用いまして機械的に当てはめますと、病床機能報告における二〇一八年七月時点の病床機能別の病床数に乗じた場合、合計約五十五万人、都道府県において算出した二〇二五年における病床必要量の推計に乗じた場合、合計数は約五十万人となり、後者の方が五万人少ない結果となってございます。
○宮本委員 五十五万人が五十万人ということで、一割ぐらい、看護師さん五万人が減るという話なわけですよね。ですから、今日の朝からの議論でも、感染症対策のときに、ベッドだけじゃなくてマンパワーが大事だと。マンパワーの余力というのは、急性期から回復期や、あるいは慢性期だ、こうなれば、当然、配置基準が看護師さんは違うわけですからマンパワーがなくなっていくわけですよ。そういうことを進めていって、いざパンデミックのときに大丈夫なのかと思います。あともう一点、数字を教えていただきたいんですけれども、二〇二〇年度の病床機能再編支援補助金のうち、個々の病院において病床数を適正化する取組に対する支援が百四十医療機関に対して五十一億円、こういう答弁がありましたけれども、これにより病床は何床削減されるのか。うち、公的・公立病院は何床か。また、複数の病院を統合する取組に対する支援、十二医療機関に対して十億円という答弁がありましたが、この十二医療機関が関わる統合計画では、統合前の病床は総計何床で、統合後の病床は総計何床になる計画でしょうか。
○迫井政府参考人 御答弁申し上げます。令和二年度の病床機能再編支援事業に関しまして、個々の病院において病床数を適正化する取組に対する支援について支給対象となった病床数、これは二千六百九十八床、そのうち公立・公的医療機関は九百八十二床でございます。それから、複数の病院を統合する取組に対する支援について申請のあった関係医療機関における統合前の総病床数は二千二百四十八床、統合後の総病床数は千七百六十二床、そのうち公立・公的医療機関は千六十五床から千六十八床でございます。
○宮本委員 病床を公的・公立病院だけでも九百八十二床、全体で二千六百九十八床が病床削減の方では減る、統合の方でも全体で五百床ぐらい減るということが二〇二〇年度の補助金でなされたわけですね。二一年度の予算、百九十五億円ついておりますが、これでは最大何床、病床削減が可能なんでしょうか。
○迫井政府参考人 御答弁申し上げます。病床機能再編支援事業、これは、議員御指摘の点、御存じの点だろうと思いますが、個々の病院における病床数を適正化する取組に対する支援と、複数の病院を統合する取組に対する支援、双方を申請することが可能であるということでございます。それから、病床数の適正化に対する支援のほかにも、医療機関の統合の際に課題となる借入資金に対する支援を含んでおります。それから、これも御案内だと思いますが、病床稼働率に応じて支給の単価が変動するということがございますので、病床機能の再編や医療機関の統合に伴って支給対象となる病床数の最大値、これをお示しすることは困難であるというふうに理解いたしております。
○宮本委員 普通に考えれば、六十億で三千床ぐらい削っているわけですから、二百億ならその三倍ぐらいは削減されるんじゃないかなというふうに思いますが、それだけ病床が減れば、それだけマンパワーも減っていくことになるわけですよね。それで、最後ですけれども、やはり、公的・公立病院の四百三十六の再編統合、再検証を求めるリスト、これ、大臣は単なる参考資料だということを言ってきました。ですけれども、長妻さんから何度も繰り返しありましたように、これは通知とセットになっているわけですね。私も改めて今日資料でお配りしておりますけれども、資料の四ページ目から五、六とありますけれども、これはもう明確に、「都道府県から要請を受けた再検証対象医療機関は、以下1~3について検討を行い、その結果を反映した具体的対応方針について、地域医療構想調整会議において、再検証を経た上で合意を得ること。」ということが書いてあって、1、2、3の中で機能縮小や機能廃止、こういうことが書かれているわけですよ。これは単なる参考資料じゃないですよ。これは参考資料だなんて、そんな居直りをせずに、いいかげんな曖昧なことを言わずに、これは単なる参考資料だというなら、これは撤回してくださいよ。これは撤回しないと、今、時間が終了いたしましたって来ちゃったんだけれども、終わるわけにいかないというのが私の心情ですよ。撤回してください。
○とかしき委員長 田村厚生労働大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔な答弁をお願いいたします。
○田村国務大臣 撤回しろと言われてもなかなか難しいわけでありまして、あくまでもこれは機械的に計算したものでございますので、ちょっと今その前文のところが見当たりませんけれども、前提は、こういうものがないと、逆に言うと客観的な指標がないわけで、自分のところの地域でどう考えていくかというのが分からないわけであります。そういう意味では、参考資料としてこういう機械的に計算したものをお出しをさせていただいて、地域の実情、それぞれ診療の状況も違うでありましょうから、そういうものを判断した上でそれぞれでお作りをいただきたいということでございますから、あくまでもこれは参考資料ということでございますので、有効に活用いただければありがたいというふうに思います。
○宮本委員 全く納得できない答弁であります。パンデミックのこと、今回の経験を踏まえたら、公的・公立病院はしっかりとその役割をこれからも果たしていただかなければならないということがはっきりしたんですよ。そのことを考慮にも入れずに公的・公立病院を名指しで縮小していく、そのための法案は認められないということを申し上げまして、質問を終わります。