2023年4月12日 衆院厚生労働委員会 子ども医療費 政府を追及 宮本議員 “有料化”押し付けるな 健康保険法等改定案 衆院委で可決
配付資料 出典:国立国際医療センター AМR臨床レファレンスセンターHP
配付資料 出典:飯塚敏晃、重岡仁“Is Zero a Special Price Evidence from Child Health Care-American Economic Association”,September24,2020,SSRN
75歳以上の医療保険料引き上げなどを盛り込んだ健康保険法等改定案が12日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明、国民の賛成多数で可決されました。日本共産党、立民、維新は反対しました。
日本共産党の宮本徹議員は質疑で、岸田政権が少子化対策の「たたき台」で、子どもの医療費有料化を自治体に求めていく方針を示していることを追及。加藤勝信厚労相が子どもの医療費無料化で「不適切な抗生物質の投与が増える」と述べてきましたが、佐原康之健康局長は、子どもの抗菌薬使用量は2015年に比べ19年は23%、20年は52%減少していると答弁しました。宮本氏は、無料化が進むなかで「小児における抗生物質の使用量は減ってきている」と述べ、過去のデータを根拠にすべきでないと批判しました。
加藤厚労相は、子どもの医療費無料化で「比較的健康な子どもの受診が増える」とも述べています。宮本氏は、それを根拠とする論文によれば、自己負担があった場合、月三回以上の受診について、「健康」とされるグループに比べ「病気」とされるグループの方が受診の減少幅が大きいと指摘。自己負担が、必要な治療の抑制につながることを直視すべきだと主張しました。
加藤厚労相は、「比較的健康」な子どもの受診を減らすことで症状の重い患者に医療資源(人材・物資)を分け充てる効果があるとの報告に言及。宮本氏は「安心して医療にかかれるようにすることで健康と命を守っていく方がはるかに大事だ」と強調しました。
以上2023年4月13日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2023年4月12日 第211国会衆院厚生労働委員会第8号議事録 1回目質疑部分抜粋≫
○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日も、子供の医療費についてお伺いいたします。今、全国三分の二の自治体が子供の医療費は無料にしております。一方、三分の一の自治体が、一回当たり二百円だとか五百円だとか、こういう負担を取っているということです。この間、加藤大臣は、子供の医療費無料化について、不適切な抗生物質の利用などの増加が懸念される、比較的健康な子供の外来を増やす、そういった課題が実証研究で示されていると述べて否定的な姿勢を示されております。その考えだと思いますけれども、岸田政権の少子化対策のたたき台の中にも、子供医療費を有料化しよう、こういう方向に向けた文言が盛り込まれております。こう書いているわけですね。「適正な抗菌薬使用などを含め、こどもにとってより良い医療の在り方について、今後、国と地方の協議の場などにおいて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる。」と。これは、この間の大臣の答弁と重ねてみれば、このたたき台の文言は、地方自治体に対して子供の医療費有料化を求めていくものであるというふうに思えます。私は、子供の医療費について有料化を求めるというのは反対でございます。そこで、先週、私は、加藤大臣が紹介された実証研究のデータというのは、二〇〇五年から二〇一五年までのものだ、二〇一五年以降は抗生物質の適正使用の取組が進んでいる、こう指摘しましたが、大臣からは、それは推測ではないかと言われました。そこで、改めてお伺いしたいと思います。これは参考人で結構ですので。二〇一五年に比べて、抗菌薬の使用量、販売量はどれだけ減少しているでしょうか。二〇一九年と二〇二二年の値を教えてください。
〔委員長退席、田畑委員長代理着席〕
○佐原政府参考人 お答えいたします。これは、国立国際医療研究センター、AMR臨床リファレンスセンターの全国抗菌薬販売量サーベイランスによりますと、ヒト抗菌薬の販売量は、二〇一五年が十四・六八DID、DIDというのは、人口千人当たりの一日の量ということでありますが、二〇一五年が十四・六八と比較しますと、二〇一九年は十三・二八DIDで約一〇%の減少、二〇二二年は十・二二DIDで約三〇%の減少率と、それぞれ減少しているところでございます。
○宮本(徹)委員 今、全体の数字を述べてもらいましたけれども、小児医療ではどれだけ減少しているでしょうか。
○佐原政府参考人 お答えいたします。AMR臨床リファレンスセンターでは、匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース、いわゆるNDBに基づいた抗菌薬使用量の動向調査を行っておりまして、本調査に基づきますと、十五歳未満の抗菌薬の使用量は、二〇一五年が一六・七三DIDでありまして、これと比較しまして、二〇一九年は一二・七五DIDで約二三%の減少率、そして二〇二〇年は七・九六DIDで約五二%の減少率と、それぞれ減少しております。なお、二〇二〇年以降の抗菌薬使用量及び販売量については、新型コロナの流行の影響も想定されることから、今後の推移について注視が必要と考えております。
○宮本(徹)委員 コロナの影響もあるので、あえてコロナの前の年の二〇一九年も今日は紹介していただきましたけれども、紛れもなく、二〇一九年までの傾向を見ても、抗菌薬の使用、抗生物質の使用は減っている、とりわけ小児の分野で顕著に減っているということでございます。ですから、私が先週述べたことは、推測ではなく、厳然たる事実だということをまず初めに申し上げておきたいと思います。その上で、小児医療において抗菌薬の適正使用の取組、どう進んでいるのか、紹介していただけますか。
○佐原政府参考人 お答えいたします。薬剤耐性対策につきましては、政府として二〇一六年に薬剤耐性対策アクションプランを策定いたしまして、これは二〇二三年四月七日に新たな五か年計画で改定しているところでございます。厚生労働省では、委託事業として、国立国際医療研究センターのAMR臨床リファレンスセンターにおきまして、小児に特化した抗菌薬の適正使用等に関するAMR対策等の研修会を開催するとともに、教育ツールを作成しております。それから、小児医療においては、厚生労働省では、生後三か月以上から学童期未満の乳幼児編を追加した抗微生物薬適正使用の手引き第二版を二〇一九年に策定し、また、診療報酬におきまして、抗菌薬の適正使用を進めるため、小児抗菌薬適正使用支援加算等により、適正使用の取組を評価しております。さらに、二〇二四年度から始まる次期医療費適正化計画における新たな目標として、小児医療において診療することが多い急性気道感染症、急性下痢症に対する抗菌薬など、効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療の適正化を位置づけ、都道府県が地域の保険者、医療関係者等と協力して取り組むこととしております。
○宮本(徹)委員 今紹介してもらいましたけれども、政府も自治体も医師も国民も努力して、不適切な抗生物質の使用というのは減らしてきている。二〇一五年以降、子供の医療費を無料化にした自治体は広がりましたけれども、その中でも、実際は小児における抗生物質の使用量というのは減ってきているわけですね。四月七日、先週金曜日ですけれども、新たな薬剤耐性対策アクションプランが策定されましたが、この中では、不適切な抗生物質の利用を減らすために医療費の自己負担を設ける、このような方針はあるんでしょうか。
○佐原政府参考人 お答えいたします。御指摘のAMRアクションプランにおきましては、医療費の自己負担に関する記載はないと承知しております。
○宮本(徹)委員 そういうことなんですよね。ですから、子供の医療費有料化によって不適切な抗菌薬を減らそうなんて、そういう邪道な方針は元々政府は考えていなかったわけですよ。ところが、ここになって突然、ある論文に依拠して出てきているわけでございます。私は、やはりこれまでどおり、医師などへの普及啓発、教育活動だとかこういうことを通じて、不適切な抗菌薬の使用は減らしていくというのが王道だと思いますよ。これを自己負担によって減らそうということをやったら、自己負担を設ければ必要な医療までアクセスできない方が生まれてしまうわけですから、こういうやり方はやるべきではないと思います。それでは、配付資料の裏面に、政府がこの間、答弁で紹介しております東大の飯塚先生と重岡先生の論文、一ページだけ今日は掲載をさせていただいております。この中で、確かにレセプトデータでは、不適切な抗生物質の使用が、二百円の自己負担を課すことによって一八・三%減少するということにはなっているわけですが、これは二〇一五年までのデータでございます。大臣の認識をお伺いしたいと思いますが、今ほど来の数字を踏まえて、二〇二三年の現状において、この二〇一五年までの結果というのは当てはまるとお考えでしょうか。
○加藤国務大臣 いや、まさに、こうやってAMRに対する対策を取ってきて、その効果が出てきているということ。ただ、二〇〇五年から二〇一五年をベースにしたときには、そうした医療費の無償化というものが、抗生物質の使用など、文章上は価値の低いという言い方をされていますが、価値の低い医療を増やしてきた、これは実証として出てきているわけでありますから、その点は十分留意する必要がある。ただ、それに対してどう対応していくのかという意味において、AMRに関しては、本件、子供医療だけじゃなくて大人医療全般も含めて、また、今度のG7の保健大臣会合でも一つのテーマになると思いますが、これは国際的にも取り組むべきものとして取り組んできたということで、そしてその効果がこうして表れてきているというのは、様々な皆さんの努力のおかげだというふうに思います。その上で、じゃ、飯塚論文に言う価値の低い医療がどうなのかということに関しては、これはどういうふうに減ってきたのかも分かりませんから、少なくとも、直ちに、全体が減ったから、それがなくなったということにはつながらないし、また、抗生物質以外にも様々なそうしたことが指摘されている医療もございます。そういったことも含めてよく見ていく必要があるということと、それから、やはり大事なことは、こうした医療に医療資源が使われるということは、逆に、本来必要なところの医療資源というものがそちらに使われなくなってしまうという、医療資源そのものをどう使っていくのか、こういった視点にものっとって議論していく必要があるというふうに思います。
〔田畑委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本(徹)委員 さすがに大臣も、この二〇一五年までのデータがそのまま当てはまるとは言えないと思うんですよね。私も、念のため論文の執筆者に今回確認して、質問をしております。こうおっしゃっていました。我々の論文で使用したレセプトデータは二〇〇五年から二〇一五年ですので、その後については論文から直接言えることはありません、こういうふうに伺っておりますので。ですから、この間、何度も大臣が述べられている、不適切な抗生物質の使用が増えるというのは、それは二〇一五年までのデータの話ですから、今についてそれが当てはまるかどうかというのは、それは直接言えることではないんだという立場に立っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。その上で、もう一点、大臣は、子供の医療費無料化では比較的健康な子供の外来を増やす、こう述べられてきたわけですけれども、これも同じページに論文の表が出ておりますが、ヘルスとシックというふうに分けておりますが、この論文の、ヘルス、シック、健康、病気のデータの区分からすると、比較的健康な子供とは受診の時点で健康な子供という意味ではない、こういうことでよろしいですね。
○伊原政府参考人 お答えいたします。御指摘の論文では、地方自治体による子供医療費への助成の内容に変化がない六か月間における総医療費の実績に基づきまして、三つのグループに子供たちを分けて、総医療費が最も低いグループを健康、最も高いグループを病気としていると承知しております。大臣が先日答弁をいたしました比較的健康な子供は、このグループでいうと、健康の区分に該当した方のことだと承知しております。
○宮本(徹)委員 今答弁あったとおり、比較的健康と言っているんですけれども、しかも、この論文も、ヘルスとシック、健康、病気と書いていますけれども、これは、皆さん、症状があって医療機関に基本的に受診された方々の区分けなんですよね。ですから、健康というふうに、あるいは比較的健康と大臣がおっしゃっている方々も、皆さん、病気ないしけがで医療機関にかかっている子供なんですよ。何か、比較的健康な子供と言うと、病気でない人がかかっているかのように聞こえるわけですよね。そういう誤解を広げる言葉遣いは、私はこういう場ではやめた方がいいと思います。そして、このヘルスのグループ、あるいはシックのグループも、受診の結果かかった医療費で分けているということなんですよね。受診の結果、それほどたくさんの治療は必要じゃなかった方がヘルスになって、たくさんかかった方がシックということですから。ただ、これは、親御さんの立場からすると、受診の前に熱がある、心配だと連れていくわけですよね。もしかしたら、それはただの風邪かも分からない。しかし、大きな病気が潜んでいるかも分からない。それは我々は素人だから分からないわけですよね。だから医療機関にかかるわけですよ。そういうことを考えると、受診の結果で区分けした資料をそのまま私たちが受け止めていいのかなというと、私は違うんじゃないかと思います。そして、この論文は、少額の自己負担、一回二百円があった場合、どれだけ受診が減少するのかというのが、レセプトデータに基づいて算出しているわけですけれども、月三回以上の受診数の減少率に着目すると、ヘルスとされているグループが大きいわけですけれども、受診の減少幅、これに着目すると、シックのグループの方が大きいんじゃないですか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。御指摘の論文では、一か月に一回以上外来を受診する割合について、外来を受診した際の自己負担なしのケースと一回二百円を負担しているケースを比較した場合、結果としまして、一回二百円を負担するケースの方が、健康なグループでは一六・七%減少、病気のグループでは二・五%減少と、減少率は健康なグループの方が大きくなっております。そこについての論文の評価は、自己負担なしのケースと大きな違いはなく、統計学的にその差は小さいというふうに述べられています。それから、もう一つ、表の中には、一か月に三回以上外来を受診する割合についても見ておりまして、この場合は、一回二百円を負担するケースの方が、健康なグループでは二七・九%の減少、病気のグループでは一二・三%となっておりまして、減少率は健康なグループの方が大きくなってございます。先生の方から減少幅という御指摘ございますけれども、その比較は、病気の方が減少幅で見ますと若干多くなっておりますが、これは、元々、健康なグループの受診数が病気のグループの受診数の三分の一以下であるということがございまして、その絶対値を比較することには慎重に考える必要がある、このように考えております。
○宮本(徹)委員 その最後の言い方がよく分からないですね。絶対的な幅は病気のグループの受診の方が減るわけですよ、絶対的な幅は。この三回以上の受診ということを見ても、有料と無料化というので見れば、病気の方々が〇・〇二のマイナス、ヘルスの方が〇・〇一四のマイナスということですから、減少幅でいえば、病気、シックのグループの方が大きいわけですよね。私は、多く何度も何度もかからなきゃいけない、三回以上です、これは、何度もかからなきゃいけない、しかも医療費がかかる方々ですよ。そういう方々が、少額の負担によっても受診を我慢せざるを得なくなっちゃう、ここに私は注目しなきゃいけないと思うんですよね。ここはもう大臣にお伺いしたいと思いますけれども、子供の医療費無料化について評価する際は、ヘルスとされているグループにおいてもシックとされているグループにおいても、自己負担を設けることによって、受診の減少をもたらしています。これ自体、私は、やはり負担というのは大きな問題があると思っています。必要な治療の抑制につながっていると思います。こういう点をしっかり見ていかなきゃいけないんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 先ほどの幅ということを言い出すと、集団の人数が多い方へ、率が少なくたって、数が増えるということになりますから、統計を見るときに、やはりそれぞれの集団の規模ごとの特性を踏まえて考えれば、率に着目するという方が合理的だし、この論文の方もそれにのっとって議論し、そして、それについてそれぞれ優位性がある等々統計的な処理をされ、そして、特に一回以上の場合においての判断については、先ほど局長からも答弁がありましたように、自己負担なしのケースと大きな違いはなく、経済学的にはその差は小さい、経済学的というか統計学的というのか、そこは分かりませんが、こういう判断をされているということですから、むしろ、こういったデータも見ながら、私は議論していく必要があると思います。それから、大事なことは、先ほど少し申し上げましたけれども、結果的に、限られた医療資源をどう有効的に使っていくのかという中において、医療費が無償の場合と比較して、一般的に、子供の受診を減らし、特に相対的に医療費が少ないグループの子供の受診を減らすことによって、症状の重い患者あるいは重い子供さんの患者に医療資源をより割り当てる効果がある、こういった報告、このことはしっかり受け止めながら議論していく必要があるんだろうというふうに思います。
○宮本(徹)委員 いや、私、それは多分、多くの保護者の皆さんの実感と違うと思いますよ。子供の受診を医療資源を理由に減らさなきゃいけない、そんな状況というのは、今、日本社会の中で生まれているんですか。小児科医のところは、もう本当に全く小児科医がいなくて、ぱんぱんに腫れちゃって、子供の受診を、比較的重くないだろうと思われる方は受診を抑制しなきゃいけないような事態が日本社会で生まれているんでしょうかね。私は、そんなこと、とても生まれていないと思いますよ。それよりも、本当に、熱発であっても大きな病気が潜んでいるかも分からない、だからこそ安心して医療にかかれるようにする、そのことによって健康と命をしっかり守っていく、このことの方がはるかに大事なことだと私は思いますよ。(加藤国務大臣「同じことを言っています」と呼ぶ)同じことを言っていないですよ。全く違うことを言っているから、私は申し上げているわけでございます。大臣、反論したそうですけれども、私の質疑時間が終了しましたという紙が来てしまいましたので、またこの議論については引き続きやりたいと思います。終わります。
≪2023年4月12日 第211国会衆院厚生労働委員会第8号議事録 討論部分抜粋≫
○三ッ林委員長 これより討論に入ります。討論の申出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。
○中島委員 私は、立憲民主党・無所属を代表し、政府提出の全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。本年二月、出生数八十万人割れという衝撃的なニュースがありました。政府予想よりもはるかに速いスピードで少子化が進んでおります。また、人口構造、社会構造、疾病構造の三つの変化により日常からの予防医療や医療相談が重視され、医療と介護をつなぐ家庭医、プライマリーケア医の充実が求められております。そして、コロナ禍では、国民皆保険を標榜する我が国において決してあってはならない自宅放置死が発生してしまいました。少子高齢化、人口減少対策、そして医療提供体制の改革が急務であることは誰の目にも明らかであります。しかし、本法案の内容は、技術的な改正が大半を占めております。どこが全世代対応の社会保障制度構築なのでしょうか。明らかな誇大広告、看板倒れではありませんか。そして、本法案のかかりつけ医機能の法整備ですが、質疑を重ねても、今と何が変わるのか全く見えてきません。コロナ禍で浮き彫りとなった課題、かかりつけ医と思っていた医師に、あなたのかかりつけ医ではないと診療を拒否された、国民の不満、不安を解消するものには全くなっておりません。単なる外来機能報告制度の拡充をかかりつけ医機能の報告と言い換えた、看板に偽りのある羊頭狗肉です。かかりつけ医に相談したい国民に更なる混乱をもたらす、誤解を生む法整備と評価せざるを得ません。かかりつけ医の定義を定め、かかりつけ医機能の大まかな内容を示した上で、法案を再提出すべきです。そして、出産に対する医療保険適用導入検討という突然の大きな方針転換。出産費用への医療保険適用は、井坂委員を始め、多くの委員が訴えておられました。しかし、岸田総理は、本法案の本会議質疑でも慎重な姿勢を崩しませんでした。本法案審議中の突然の公表。ならば、なぜ本法案にその内容が盛り込まれていないのか。政府は速やかに法案に盛り込んで再提出すべきです。よって、本法案には反対であります。最後に、出産費用の無償化を始めとする社会全体での切れ目のない子育て支援と地域におけるプライマリーケアを実現し、地域包括ケアシステムの中核となって医療、介護の連携を図り、国民一人一人に寄り添う国民本位の医療制度の構築を強く訴え、私の討論は終わります。(拍手)
○三ッ林委員長 次に、吉田とも代君。
○吉田(と)委員 私は、日本維新の会を代表し、政府提出の全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。まず、かかりつけ医機能の法整備を行うならば、かかりつけ医を定義すべきです。日本維新の会は、かかりつけ医機能を有する病院又は診療所の医師をかかりつけ医と定義し、国民が自らのかかりつけ医を主体的に選ぶことができる制度を構築し、同時に、かかりつけ医の質を向上させる教育及びかかりつけ医の研修の在り方が検討されなければならないと考えています。しかし、本法案のままでは、かかりつけ医機能を持つとされた医療機関の医師に、たまたま治療を受けた患者は、自らのかかりつけ医がその医師だと誤解することにもなりかねません。国民の誤解を招きかねない法整備は避けるべきです。次に、出産育児一時金の増額及び出産費用の見える化について申し上げます。我々日本維新の会は、通常分娩を公的医療保険の対象となる医療に位置づけ、自己負担分については妊婦健診と併せてクーポンで支給し、実質自己負担をゼロにするということを主張し続けてまいりました。これに対し、政府は、この四月から出産育児一時金を増額し、便乗値上げには、出産費用の見える化の強化で対応するとされています。しかし、既に、医療機関の便乗値上げ実施が報じられています。本法案の内容では、出産、子育て世帯への確実な支援とはなりません。そして、本法案審議中の三月三十一日、通常分娩への保険適用を含めた検討が公表されました。そもそも、なぜ本法案にその検討内容が盛り込まれていないのか、対応が後手に回っていると言わざるを得ません。以上の内容を主な反対理由とし、本法案への反対討論とします。(拍手)
○三ッ林委員長 次に、佐藤英道君。
○佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道です。自由民主党・無所属の会及び公明党を代表し、ただいま議論となりました全世代型社会保障法案について、賛成の立場から討論をいたします。人生百年時代を迎える中、我が国の最大かつ喫緊の課題は、少子高齢化、人口減少であります。大胆な少子化対策によって人口減少の流れを変えると同時に、これからも続く超高齢社会に備えて、社会保障制度の持続可能性を高める対応を強化していかなければなりません。こうしたことを踏まえ、全世代型社会保障法案に賛成する理由を申し述べます。第一に、昨年の出生数が八十万人を下回り、想定を上回るペースで出生数が減少するという危機的な状況から脱却するために、出産育児一時金に係る費用の一部を後期高齢者医療制度が支援する仕組みの導入等を通じて、子供、子育て支援を拡充し、子供を産み育てたいと希望する全ての人が安心して子育てができる環境を整備することが必要であります。第二に、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、増加する高齢者医療費について、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合う仕組みを構築するために、後期高齢者が負担する保険料率の設定方法を見直すことを通じて、給付と負担のバランスを確保しつつ、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保することが必要であります。第三に、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中で、地域によって異なる医療や介護ニーズや活用可能な資源の状況を踏まえつつ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備や医療・介護分野におけるDXの推進を図るとともに、地域医療連携推進法人制度の見直し等の医療法人制度改革等を通じて、医療、介護の連携機能や提供体制等の基盤強化を図ることが必要です。以上、本法案に賛成する主な理由を申し述べました。全ての世代が能力に応じて社会保障制度を支える仕組みを構築するとともに、個人のニーズに応じた良質な医療・介護サービスを効率的に提供し、将来にわたって持続可能な社会保障制度を構築することが急務であります。この法案は、全世代型社会保障を構築するに当たり必要不可欠であり、目指すべき社会の実現に向けた全世代型社会保障法案を速やかに成立させることを議員各位にお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。以上です。(拍手)
○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党を代表して、健康保険法等改正案への反対討論を行います。本法案の審議のさなかに、突然、政府は、出産の保険適用について、二〇二六年度をめどに検討を進めると表明しました。本法案は、出産一時金の費用を七十五歳以上の高齢者に新たに求めるものです。法の附則では二〇二四、二五年度は本則の負担の半分とされ、本則の実施は二〇二六年度です。つまり、本改正案の本則部分は実施されない場合もあるわけです。このような法案の採決など、立法府として許されません。本法案に反対する理由を述べます。第一の理由は、高齢者負担率の引上げと新たな出産一時金の負担により、七十五歳以上の高齢者の保険料を引き上げるからであります。出産一時金の負担を後期高齢者医療制度に求めるのは筋違いです。現役世代の負担軽減というのであれば、この間、引き下げられた後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率を元に戻すべきです。負担増となるのは月収十二万七千五百円以上の方です。低所得者世帯にまで保険料の負担を増やすのは大問題です。年収二百万円以上の方は、昨年十月から医療費の窓口負担の二倍化で、受診抑制が起きています。その影響を政府として把握もできていないのに保険料を増やすのは、国民の健康を守る上で無責任であります。反対の第二の理由は、国庫負担の削減です。本法案は、協会けんぽの国庫負担一千二百九十億円を削減するなど、差引き九百十億円もの国庫負担を削減します。本改正案で協会けんぽや共済組合の負担も増えます。現役世代の負担軽減は、看板に偽りありです。第三に、都道府県の保険料の水準の平準化の名の下に、自治体が独自に行っている国民健康保険料軽減をやめさせようとしていることです。高過ぎる国民健康保険料は、引下げこそ必要です。第四に、医療費適正化の名で、個々の患者にとって必要な医療が抑制される危険があることです。最後に、安心の医療制度のために、国庫負担を大幅に増やすことこそ必要であります。そのために、大軍拡はやめ、大企業、富裕層優遇税制を正す大改革をすることを求め、反対討論とします。(拍手)
○三ッ林委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。