2023年11月10日 衆院厚生労働委員会 大麻取締法参考人質疑 懲罰ではなく早期治療こそ 参考人が訴え

 大麻取締法等改正案の参考人質疑が10日、衆院厚生労働委員会で行われました。同改定案は、大麻草からつくられる医薬品の使用を解禁するとともに、大麻の使用罪を設けるものです。
薬物問題の当事者や家族への支援などを行う一般社団法人ARTSの田中紀子代表理事は、刑罰中心の日本の薬物政策は当事者への誤解やいわれなき偏見を生み、当事者の居場所を奪い、さらし者にし、人間扱いせず再起すら許してこなかったと告発。「大切なのは、薬物乱用者に対する『犯罪者』というスティグマ=負の烙印(烙印)を軽減させ、早めに医療サービスへアクセスさせることだ」と強調しました。
田中氏は、依存症者の背景には「もう十分厳しい環境にさらされた経験がある」と語り、依存症者には厳しさではなく「社会の優しさと希望で変われる」と訴えました。
日本共産党の宮本徹議員は、依存症当事者家族の一番の困りごとは何かとただしました。
田中氏は、相談の電話が盗聴されるのではないか。すぐに通報されるのではないかと不安で何年も相談できなかった人がいると紹介。保護司が親の育て方や教育、愛情不足の問題にする替え家族を責め、医療につながることが困難なケースもあると述べました。

以上2023年11月11日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年11月10日 第212国会衆院厚生労働委員会第3号議事録≫

○田畑委員長 引き続き、内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学法学部教授太田達也君、地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立精神医療センター副院長小林桜児君、Asabis株式会社代表取締役中澤亮太君、公益社団法人日本てんかん協会理事・事務局長田所裕二君、一般社団法人ARTS代表理事田中紀子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用のところ本委員会に御出席をくださりまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず太田参考人にお願いいたします。

○太田参考人 慶應義塾大学の太田達也と申します。本日、このような意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。私は、刑事政策と被害者学を専攻領域とし、犯罪者に対する刑罰制度や、仮釈放、保護観察といった処遇制度のほか、犯罪被害者の支援制度を法制度の観点から研究する一方、法務省や警察庁、厚生労働省、地方自治体における立法や施策の検討にも関わってきております。本日は、そうした研究や立法作業の経験を踏まえて、若干の意見を申し述べさせていただきます。近年、大麻取締法違反による検挙人員が急増し、特に少年や二十代といった若者の検挙人員の増加が著しいことから、若年層に大麻乱用が蔓延し始めていることがうかがえます。政府の調査によりますと、若者の大麻の危険性に対する認識は極めて低く、これには、大麻は海外でも合法化している国があるから健康に害がないとか、日本では大麻の使用は禁止されていないといった誤った情報がSNSなどインターネット上で流布されていることが背景にあります。しかし、カナダやアメリカの二十三州のように嗜好用大麻の合法化を行った国や州でも、大麻が安全であるから合法化したわけでは全くありません。むしろその逆で、大麻が有害であることを前提としているからこそ、厳しい統制下で流通させることで若者に大麻を入手させないようにするための施策として行われたものであります。大麻など違法薬物の生涯経験率が極めて低い日本と異なり、これらの国や州では、若者の間での大麻の乱用が極めて深刻になっています。そこで、やむを得ず、嗜好用大麻の一部を合法化し、大麻の流通や使用を一定の制限下で認め、若者の大麻乱用を防ごうというのですが、近年の薬物乱用の調査結果を見ても、こうした施策が成功しているとはとても思えません。しかも、大麻が自由化されたわけでは全くなく、販売や所持、使用場所、栽培等について厳しい規制と違反に対する処罰規定があり、一定の年齢以下の若者の所持は犯罪として禁止され、若者への販売や譲渡しも、例えばカナダでは十四年以下の拘禁刑とされるなど、犯罪とされています。これが、日本で大麻の合法化と言われる国の実態です。大麻の有害性に関する検証が十分でないとする医学的な見解もありますが、これは、大麻の使用経験者の大半が他の薬物も乱用しているため、大麻単独の有害性を検証し難いという事情があるようでありますが、そのこと自体、大麻の使用が他の薬物乱用につながるゲートウェードラッグとしての問題性を物語っているようにも思われます。さらに、法務省が国立精神・神経医療研究センターと共同で行った調査によりますと、覚醒剤事犯の受刑者が最初に乱用した薬物が大麻である者が多いとの結果が出ています。日本の場合、覚醒剤取締法違反の初犯者は全部執行猶予となる者がほとんどであるため、刑事施設に収容されている覚醒剤の受刑者は、薬物の再乱用に至った、薬物依存が相当深刻な者でありますが、その多くが覚醒剤の乱用を始める前に大麻を乱用していたという調査結果は、無視するには余りにも深刻な事実であると思われます。だからこそ、我が国でも、大麻の輸出入や施用、受施用を全面的に禁止し、大麻の所持、栽培、譲受け、譲渡し、研究のための使用も免許を受けた大麻取扱者でなければできないこととされてきたのであります。従来の大麻取締法にはいわゆる使用罪はありませんが、これは、同法が大麻草の栽培という農業目的のために立法されたことが関係しているものと考えております。研究者の間でもほとんど知られておりませんが、戦後の一時期、大麻の使用罪があった時期がございます。昭和二十一年の麻薬取締規則では、大麻草は麻薬とされ、麻薬取扱者以外、製剤、販売等のほか、使用が犯罪として禁じられ、刑罰も法定されていました。しかし、同規則によって大麻の繊維を取る農業に支障が出たことから、大麻を他の薬物から独立させた大麻取締規則が制定され、さらに、その後の大麻取締法においても、使用自体を禁止する規定が置かれなかったため、使用罪が抜け落ちてしまいました。その理由は、大麻取締法の立法経緯を見る限り、当時、大麻の乱用という問題もその認識もなく、また大麻の医学的利用もなかった日本が、農業としての大麻草の栽培と管理を規制するために制定したという事情が関係しているものと思われます。当時の国会での立法趣旨説明や答弁からも、大麻草は麻薬と同様な害悪を持っているが、他の麻薬と違って、取締りの対象は医療関係者ではなく農業従事者であることから、別個の法律を作って免許制の下で不正取引や不正使用を取り締まればよいという発想がうかがえます。しかし、使用罪がないからといって、使用が認められているわけでは決してありません。大麻の使用の前にはほとんどと言ってよいほど所持や譲受けという行為があるわけであり、大麻を所持することさえも禁止し、人への譲渡しも譲受けも犯罪として処罰の対象としているのは、ほかならぬ大麻の使用を防ぐためだからであります。所持罪や譲渡し罪、譲受け罪を設けることによって使用を禁止してきていると言っても過言ではありません。日本では大麻の使用に関する罰則がないことから、大麻の使用が法的に許されているという理解は、正確ではなく、危険でもあります。近年の大麻の乱用が深刻な若者の間に、大麻の使用罪がないのは使用が許されているからであるかのような誤解があり、それが大麻の乱用に拍車をかけている面があるとすれば、こういった誤った認識を正す上でもきちんと法規制をすべきであります。大麻とその有害成分であるTHC、すなわちテトラヒドロカンナビノールを麻薬に指定することで、所持などとともに施用も禁止の対象であることを立法で示すことには、薬物乱用の防止という点でも重要であると考えます。また、施用罪がないことで、違法薬物検査で大麻の陽性反応が出てもそれだけでは検挙ができないなど、僅かではありますが、違法薬物の規制に抜け穴が残ってしまっています。さらに、近年は、大麻から抽出した成分を濃縮したTHC濃度が高い大麻リキッドやワックスが市場に出回り、若者の間でも乱用されるようになっています。こうした、大麻草の植物としての特性を残していない有害性の格段に高い大麻製品の施用も併せて規制し、乱用につながらないようにする必要が高くなっています。そもそも、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノールは、化学的に合成されたものは、これまでも既に麻薬及び向精神薬取締法において麻薬として規制され、所持、譲渡し、譲受け、施用が全て犯罪として規制されています。それと化学的に全く同じ大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノールや、それを含む大麻を同様に規制しないというのは、合理性を欠きます。大麻の使用を犯罪化すると、大麻に対する社会の偏見や依存者の差別が助長され、大麻の乱用者を治療から遠ざけてしまうことを危惧する向きがあります。しかし、さきに述べたように、これまでも大麻の所持や譲受けなどが全て犯罪とされてきている以上、事は使用罪の有無に限りません。それでは、大麻の所持や譲受けも、さらには覚醒剤やヘロインなどの所持や使用も、薬物対する偏見や差別解消のために全て合法化すべきということになるのでしょうか。薬物依存のある人の治療の促進や、差別や偏見の解消は犯罪化とは別の問題であり、安心して治療を受けられる環境の整備や、児童生徒等に対する適切な薬物乱用防止教育、それに国民に対する正しい啓発と広報において取り組まなければならない問題であると考えます。さらに、薬物の乱用に至る背景には、乱用者が、小児期逆境体験を生むような悪質な家庭環境、不良交友、孤立、孤独、社会的差別、偏見、DV、いじめ、性暴力等の問題を抱えている場合があります。そうした者にとって違法薬物の使用は逆境から逃れるための苦しい選択であり、誰にも相談できずに孤立し、苦しんでいるという深刻な現実があります。だとすれば、有害性の高い薬物の所持や施用等は規制した上で、薬物乱用に対する治療環境を整備するとともに、個人が抱えるそうした逆境や問題に対して適切に対応できる体制づくりと、その広報、教育が重要であると考えます。違法薬物を全て合法化すれば問題が解決するかのような見解は、正鵠を失したものだと言わざるを得ません。今回の、大麻の有害成分であるTHCとそれを含む大麻を麻薬に指定し、施用も含めて犯罪として禁止するとともに、大麻から抽出した成分を用いた医薬品を活用することができる道を開き、大麻取締法は大麻草の栽培や研究に特化した法律として合理的な規制の下での栽培を認め、法律に反した栽培や流通に対して刑事規制を加える大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正は、正当かつ合理的なものであると考えます。私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○田畑委員長 ありがとうございました。次に、小林参考人にお願いいたします。
○小林参考人 本日は、貴重な機会を与えていただいて、ありがとうございます。私は、神奈川県立精神医療センターから来ました、精神科医の小林と申します。私は、精神科医になって二十三年になるんですが、そのうち四年間を除いて十九年間ずっと依存症の臨床に従事してきた、精神科医の中では比較的変わり種と言われております。そういった意味では、本当に依存症の臨床現場で今どういった状況なのかということを医師の立場から皆様にお話しさせていただければと思います。先ほどの太田参考人からももちろんお話がありましたけれども、大麻の検挙者数は本当に年々増えておりまして、私が精神科医になったばかりの頃で依存症の専門病院に赴任した際には、大麻だけの依存症の患者さんというのはほとんどいなかった。それが、ここ五年ぐらい、本当に大麻だけの依存症の患者さんで受診する方が非常に増えてきているんですね。皆さん御存じのように、統計を見れば分かるんですが、覚醒剤の検挙者数は逆にどんどん減っていて、直近のデータですと、年間で覚醒剤が六千人ぐらい、大麻が五千人ですので、恐らく、数年以内にはもしかすると、検挙者数だけを見れば、大麻がもう薬物のトップになってしまうのではないかという、私が最初に精神科医になった頃にはちょっとあり得ない事態が現在進行中ではないかなというのを、ちょっと現場では危惧しております。これはあくまで検挙者の話なんですけれども、特に、その検挙者数の中でも年齢層を見てみますと、若年の三十歳未満の検挙者数が約七割を占めているというところが覚醒剤とは非常に対照的で、覚醒剤は年々高齢化しているんですね。だから、昔乱用を始めた人がそのまま高齢化しているんですけれども、大麻は若い人がやはり使用して検挙されている。私は医師の立場から様々な医学論文ももちろんチェックしているんですけれども、世界的な海外のデータを見ましても、やはり、若年から、十代、二十代から週に一回とか毎日とか習慣的に大麻を使用していると、将来的に、例えば依存症を発症する可能性、そういった若年の習慣使用者の三分の一が依存症を発症するとか、あるいは、将来、統合失調症を発症するリスクが三倍になるとか、うつ病も一・三倍、自殺のリスクも三倍。あるいは、若年から大麻を習慣的に吸い始めると、四十五歳の時点でIQ検査を比較してみると、大麻を使用する前のIQと比べて四十五歳になったときのIQの点数が、全く大麻を使用しなかった人と比べて平均で五・五点下がっている、IQの低下が中年期に見られるというデータもございます。実際に脳の画像を見ても、記憶をつかさどる海馬が萎縮しているという論文もあります。そういった意味で、大麻が医学的に危険性があるということは様々な権威のある医学論文にも書かれていますが、残念ながら、もちろん、大麻の使用罪に反対される方々に関しては、そういった医学的なエビデンスに疑義を挟む方もいらっしゃることは当然なんですけれども、少なくとも、一般的に権威のあると言われている医学論文でそこまで書かれているということであれば、我々もそのリスクはやはり無視できないというふうに考えています。また、これはアメリカのデータなんですけれども、大麻が合法化されている州では交通事故の死者数が一六%増加しているというデータもございます。これは、アルコールと同じように大麻もやはり、大麻を吸った状態で運転すると、いわば飲酒運転と同じようなリスクがあるんだということがそこからお分かりいただけるかなと思います。では、なぜ欧米では、こういった合法化とか、嗜好に関しては違法にしないという政策が取られているかといいますと、もうデータを見れば一目瞭然で、生涯経験率が、アメリカの場合、四四%とか、ドイツもたしか二三%ぐらいだと思いますけれども、フランスも四〇%ぐらい。だから、欧米では、ほぼ二〇%から四〇%の国民が生涯のうちに一回は大麻を吸ったことがあるよという、そういう国なんですね。では、比較して日本はどれだけか、日本国民で一度でも大麻を吸ったことがある人がどれだけいるかというと、一・四%なんですよ。ほぼ二十倍から四十倍の差があるんですね。さらにまた、若年で考えてみますと、高校生では、アメリカの高校生は大体二七%ぐらい。でも、日本だと大体〇・三とかそんなものですね。だから、アメリカの高校生だと、高校に行って、四人に一人が、俺は大麻を吸ったことがあるよという人たちなわけですね。そういう国と日本で、ほとんど大麻を吸ったことがあるということがない国とが果たして本当に同じ政策を取るべきなのかということは、医師の立場からでは非常に疑問に感じます。先ほど、大麻がうつのリスクがあると言いました。アメリカのうつ病に費やしている医療費というのは十四兆円。私、調べてみたら、厚労省のデータを見ると、日本でうつ病に費やしている医療費というのは三千五百億円。約四十倍の違いがあります。アメリカと日本の人口の差はせいぜい二倍ぐらいですよね。それぐらいめちゃめちゃアメリカというのは精神障害も持っているし、薬物依存研究部という巨大な組織がアメリカにあるんですけれども、日本の薬物依存研究部との規模の違いを調べていただくと、日本は当然、千人なんという職員はいませんので、アメリカの問題の大きさというのはそこでお分かりいただけるかと思います。当院のデータを皆さんに御紹介しますと、初診で大麻だけで来る患者さんは結構いらっしゃるんですけれども、大体一回から二回で受診を終わっちゃう人が多いんですね。なぜかといいますと、先ほどお話ししましたように、若年から習慣的に使用すると、その後、十年、二十年と使っているうちに統合失調症とかうつ病とか様々なリスクがあるとお話ししましたけれども、若いうちはそんなに害がないんですよ。これが、大麻はそんなに害がないと言っている方々の確かに主張のポイントになっておりまして、すぐに害が出るわけじゃないんです。だけれども、それを習慣的に使っているうちに、その後に害が出て、その頃にはもう手遅れなんですね。ああ、やっぱりやめておけばよかったと言っても、十年後、二十年後に、戻ることはできません。そういった意味で、私たち、何とか、若い人が親御さんに連れてこられて病院に来るわけですけれども、本人は何も困っていない。むしろ、大麻によって、自分はこんなに不眠に苦しんでいるのに、大麻のおかげで眠れるようになった、自分はいろいろな職場のプレッシャーがあるのに、大麻のリラックス効果によって職場でリラックスして仕事ができるようになった、そういった意味で大麻のいい面はいっぱいあるんですけれども、大麻の害なんて別にないよ、別に今、幻聴も何も聞こえないし、別にうつも全然ないし、むしろ今、自分から大麻を奪われる方がはるかにうつになってつらいんだ、そういう若者はいっぱいいるわけです。そういう方に対して、私たち医者が、正攻法で、いや、二十年後、三十年後にあなたに害があるからやめるべきだと言ったところで、そんなの、治療は必要ないよと言われて、お断りされちゃいます。ですので、二人に一人の初診の患者さんが、結局、医療の現場から今いなくなってしまう現状があるわけですね。そういった意味で、彼らの動機づけ、やっぱり薬物はやめた方がよさそうだなというふうに思ってもらうためには、これは別に大麻に限らず、アルコール、薬物、ギャンブル、何でもそうなんですけれども、何かしらそれに伴って困ったことがなければ、そして、メリットとデメリットを自分の頭の中で考えて、これはいまいちメリットよりもデメリットが上回るなというふうな考え方にならなければ、行動を変えようというふうには思わないんですね。皆様も、何か自分でやめた方がいい習慣というのをお持ちかもしれないんですけれども、やはり、何かデメリットを言われないと、例えば健康診断で何か太り過ぎですよと言われたから少しダイエットをしようかと皆さんも当然お考えになると思うんですけれども、何も問題がなければ、わざわざ自分のそれまでの習慣を変えようとは思わないはずです。そういった意味で、私は、大麻の使用罪が依存症を治すと主張するつもりは全くございません。むしろ、先ほど太田参考人からもお話がありましたけれども、当院のデータでも、大体、薬物依存症の患者さんの九割以上が十五歳までに何らかの、小児期逆境体験と言われる虐待やネグレクトや、あるいは教育虐待とか、恵まれた家庭でも非常に受験のプレッシャーにさらされているとか、家庭内で心理的に孤立していて自分の気持ちを分かってくれる人がいないとか、そういった悩みを平均で大体三、四個抱えているんですね。そういったしんどい状況を生き延びるために薬物の力をかりて何とか生き延びているという患者さんが多い中で、実際それによって短期的に救われているんだったら、やめる理由がないじゃないですか。でも、十年後、二十年後、日本の将来を担う若者たちがそのときになっていろいろな精神障害を発症したときに我々は手の打ちようがないわけですから、早い段階でこれはやめた方がいいかもしれないと思ってもらうための動機づけの一助として使用罪は私は役に立つと思いますし、実際に私は多くの覚醒剤の患者さんや大麻の患者さんを診ていますけれども、やはり、そういった司法対応になったことがきっかけに、もう二度とあんな思いはしたくないからとか、ああいうリスクがあるんだったらちょっとやめておこうかなと思って病院に来ましたという人はいるんですね。実際に、そういった司法対応がなければなかなかやめられなかった、そういった患者さんも私は診てきていますので。何度も言いますけれども、彼らを犯罪者としてつるし上げて、マスコミの前で土下座させることが治療に役立つとはこれっぽっちも思っていません。それは絶対にやめるべきだと思います。そういった意味では、まだまだ日本はアメリカと比べるとやはり牧歌的で非常に乱用者が少ないので、そういったまだまだ古い見方が蔓延しているんだと思うんですが、これからもっと薬物依存症の背景にあるそういった子供から抱えた生きづらさについてきちんと広報をして、マスコミの方々も、これは犯罪者なんじゃなくて、リハビリが必要な精神障害者なんだというふうな観点を強調した上で、それでも私は、司法というおせっかいが患者さんの回復に役立つというふうに思っています。これまでの地域の共同体が崩壊して、個人社会が今蔓延している中、司法がむしろ、かつての長屋の隣のおじちゃん、おばちゃんが果たしていたようなおせっかいの役割を果たす面は大きくなっているというふうに思います。それは様々な保健、福祉、医療と同じことなんですけれども。そういった意味で、医療の現場ではなかなか大麻に関してやめたいと思う若者が少ない、そういう現状がある。彼らに早くやめてもらうためにはそういった司法というプレッシャーも一部役に立つことがある。それだけではありません、もちろん早い段階での教育も必要なんですが、そういった側面もあるということを皆様にお伝えして、私のお話を終わりにしたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○田畑委員長 ありがとうございました。次に、中澤参考人にお願いいたします。
○中澤参考人 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。Asabis株式会社代表取締役の中澤と申します。私どもは、CBDに関するコミュニティーを二〇二〇年頃から運営をしておりまして、現在は、そのコミュニティーを核として、CBD、ヘンプに関する展示会を主催したりだとか、メディア、プラットフォームの運営をしているものでございます。特定のCBD製品、ヘンプ製品を作ったり販売したりということをしているわけではないんですけれども、インフラとして、CBD、ヘンプ産業全体を盛り上げるような、事業者の助けになったり消費者の助けになるような仕組みの構築を目指して事業を推進している会社でございます。先週には、CBDジャーニー・アンド・カナコンと題しまして、渋谷駅直結の会場にて、展示会とカンファレンスが一体になったようなイベントを主催いたしまして、約百社以上の企業の出展や協賛、各国大使館との連携、そして二千六百名ほどの来場者の方々にお越しいただきまして、法改正が直前に迫る中での熱気にあふれたイベントとなりました。今回、法改正について思うところを話してくれと二日ほど前に急遽御依頼いただきまして、私どものような事業者かつプラットフォームのような目線から、何点かお話しさせていただければなというふうに思っております。まず、前提として、CBDについて簡単に御説明させていただきますと、大麻草に含まれるカンナビジオールという成分の略称でございまして、従前から欧米では医薬品、食品として幅広く活用されているところでございます。世界保健機構、WHOの報告としても、依存性や乱用の可能性が低いということで、国際的な薬物条約の規制対象外であることが確認されております。日本においても、数年ほど前から、健康食品業界や美容業界を始めとして注目を集め始めておりまして、ドラッグストアやコスメショップ等でも一般に流通しているものでございます。現在、CBDオイル、ドリンク、チョコレート、コスメといったように様々なラインナップの商品が日々生まれているような状況でございます。今回の法改正全般に関しまして、CBD産業に興味を持つ大手企業、海外企業の方々は、おおむねポジティブな動きとして捉えている方々が多いというふうに認識しております。これまでは、日本特有の部位規制、つまり成熟した茎や種から取ったCBDのみを認める、逆に、葉っぱ、花から取ったようなCBDは認めないというような規制があったりだとか、あと、THCの基準値が設定されていない、つまり、〇・何%まではオーケーというようなカットオフ値、ゼロ基準というのが設定されていないというような、ルールが若干曖昧で、国際基準からずれたような状況がございました。そうしたところで、どうしても参入のリスクを排除し切れないということで、大手企業の方々も、CBD産業の参入に二の足を踏んでいたりだとか、海外企業に関しましても、日本向けの特別なカスタマイズに対応できるような企業しか参入ができないような状況でございました。今後、法改正後にその辺りの基準が明確になることによって、投資や参入や研究を見据えているというような声もよく伺うところでございます。先日の私どもの主催した展示会におきましても、スイス、リトアニア、アメリカ、タイ、中国等の日本進出前の企業も含めまして、数多くの国外企業から出展をいただきました。日本市場への進出に大変意欲的でございましたし、出展企業だけでなくて来場者の方々の中にも、大手企業ですとか海外企業の方々も多数いらっしゃったというような状況でございます。日本の現在のCBD市場は、先ほど申し上げたような規制の状況のため、大きく強力なプレーヤーがいるという状況ではなくて、割と横並びで中小零細企業が多くひしめいているような状況になっております。今回の法改正を受けて、大手企業、強力な海外企業というのが参入をしてくることで、市場全体の底上げですとか、盛り上がり、健全化というのを後押しするものであるというふうに考えております。また、部位規制がなくなるという点に関しましては、今後、CBD原料の生産コストが低くなる可能性がありましたり、もしかすると大麻草の形状を有するものとして分類されると駄目になるかもしれないんですけれども、例えば、葉っぱや花からできたような大麻草のお茶のような新たなプロダクトラインナップの可能性の幅も広がってくるのではないかというふうに期待をしております。また、THCの基準値設定に関しましては、こちら、具体的な数値は恐らくこれから議論されて定められていくというふうに認識しておりますけれども、私どもプラットフォーム的な立場としては、欧米で医療大麻としても活用されているTHCという成分に関して、一律で有害なものとして完全に禁止するというのではなくて、きちんとしたルールの下で活用する方向を模索することが重要なのではないかというふうに考えております。微量のTHCに関しては、特に幻覚作用もなく乱用のおそれがないという論文もありますので、今後、政令で定めるTHCの閾値を、日本のガラパゴス的な基準にするのではなくて、欧米の国際基準とそごのないようなものにすることで、日本が今後、CBD、ヘンプ領域においてグローバルスタンダードに追いついて、医療、研究、栽培、経済等の様々な面での可能性を伸ばしていくことにつながるのではないかというふうに考えております。また、今回の法改正で、エピディオレックスを中心とした大麻草から製造された医薬品が承認されるということで、それにより助けられる患者さんも多数いらっしゃると思いますので、大変喜ばしいことかと思っております。一方で、食品として現在流通しているCBDに関しまして、矢野経済研究所さんで、二〇二五年には八百二十九億円の市場になるという予測もありますように、市場の成長率としても大きいものを見せておりますし、かつ、現在、ドラッグストアやデパート等でも広く普及しているものでございますので、これらの状況ですとかCBDの安全性というところを考慮いただいて、医薬品として全面的に規制するのではなくて、食品としても流通が許されるような状況を、事業者の目線としては望んでいるところでございます。また、これにつきましても、今後、政令やガイドラインの中で議論されていく点かもしれませんけれども、現在の日本の市場に出回っているCBD製品の成分の表示、これが正しいかどうか怪しいという問題が発生していると認識しております、一部ですね。CBDは、第三者検査機関が分析をして、その結果をCOAと呼ばれる、サーティフィケート・オブ・アナリシスの略なんですけれども、成分分析表を、原料の段階であったり製品製造の段階、それぞれの段階において出すのが望ましいとされておりますけれども、それらを偽造したりだとか、あと、複数の別の製造ロットで使い回したりしているところも一部伺います。現在、様々なCBD関連の協会が生まれておりますけれども、それぞれで独自の認証制度を実施しているものの、まだ業界全体のスタンダードとなるようなルールが生まれていないような状況だと認識しております。誤解されやすい成分や業界であるからこそ、原料や製品の安全性を担保するための共通のスタンダードを関係者一同で議論した上で定めていくことが求められるのではないかというふうに考えております。また、これらの土台となる成分検査についてですけれども、現状の日本の市場が黎明期であるということもあって、国内の検査体制や人材だけでは限界が現状ではあるのかなというふうに認識しております。そのため、海外の最先端のラボ等からの協力や知見も取り入れながら、検査体制の運用ですとか、ルールや基準を設定していくことが重要であるというふうに考えております。私自身、こうした課題意識から、アメリカのラボと連携を取っておりまして、日本進出の支援をしているところなんですけれども、彼らが主張するには、悪貨が良貨を駆逐するというような状況がアメリカでは発生しておりまして、いわゆる成分分析表の製造工場と言われてしまうような、ある種クライアントの思うとおりに検査結果を安い価格で出してしまうというような検査機関も一部横行してしまっているということでございます。また、用語的に少し専門的になってしまうんですけれども、GC・MSという専用の分析機器で実施しないと正確な検査ができないというようなケースに関しましても、一律でHPLCという機器のみで検査をしてしまっているというような検査機関も多い状況というふうに伺っております。こうしたアメリカと同じ失敗を日本で繰り返すべきではないというふうに考えております。検査のテクノロジーも日々進化していくものでございますので、ルールについてはアップデートしていけるように一定の柔軟性を持たせるべきだというふうに思っておりますけれども、品質の高い検査ラボが駆逐されて市場全体がグレーな製品であふれてしまうことのないように、一定の基準やガイドラインを設定していくことが重要であるというふうに考えております。まとめますと、今回の法改正につきまして、私どもプラットフォーム的な事業者の立場としては、関係各所の御尽力によって、おおむねポジティブで、あるべき方向に進んでいるというふうに認識しております。一方で、今後議論が進んでいく運用やガイドラインの部分につきまして、必要以上の厳しい規制ですとか、あるいはその逆の全くルールを定めないというようなことが起きないように、健全に産業が発展していくような議論が進んでいくことを望んでおります。以上でございます。(拍手)

○田畑委員長 ありがとうございました。次に、田所参考人にお願いいたします。
○田所参考人 公益社団法人日本てんかん協会の田所と申します。貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。私は、本日は、大麻全般ですとか、今お話がありましたCBD全般のお話ということではなくて、今お手元に資料を配っていただいていると思いますけれども、抗てんかん薬というかなり狭い範囲の話になりますけれども、今回の大麻取締法の改正に関連する薬ということで、限定の発言でありますけれども、時間を少しいただきます。資料のタイトルに書きましたエピディオレックス、商品名なんですけれども、この薬を何とか日本でも使えるようにしてもらいたいということで活動してきました。二〇一八年に、私どもの国際組織、国際てんかん協会というところから、アメリカで新しい難治てんかんの薬が発売されたという情報がありまして、その情報を持って厚生労働省に相談をしたところ、これには大麻成分が含まれているので現状では治験も難しいのではないかという話をいただきました。そこで、資料にありますけれども、この薬の適応の対象になっているドラベ症候群というてんかんの中でも難治の領域があるんですけれども、その患者家族会と、私どもと常に活動しています日本てんかん学会、さらに日本小児神経学会、この四つの団体で何とかこの薬が使えるようにできないかということで、厚生労働省と協議を始めました。今回、この四団体の共通の思いとしては、最初に言いましたエピディオレックスを国内で使いたい、日本に生まれたことが不幸だということにはならないように、世界レベルのてんかん診療が日本で行われるようにと。ただ、この薬の中に大麻成分が含まれているために大麻取締法を見直してもらわないといけないという課題が出てきたということで、共通の行動目標としては、ドラッグラグを解消してもらおう、欧米やアジアで使われ始めていた薬を日本でも使いたいということと、難治てんかんの克服を進めていきたいということの二つの点で、四団体で協働活動を始めました。てんかんについて少し御説明しますと、てんかんは脳神経の病気でして、慢性の疾患です。何らかの理由で、脳のどこかで、電気の異常興奮といいますか、興奮が生まれることで、てんかん発作と言われる様々な症状、勝手に体が動いてしまうとか、いろいろなことを感じるとか、よく泡を吹いて倒れると言われていましたけれども、大きな発作としては、けいれんをして体が硬直して倒れてしまうみたいなものから、ぴくぴくと体を動かすような、様々な症状が出てくるんですけれども、そういった様々な症状、てんかん発作のある方々を総称して、てんかんといっているわけです。全世界的に大体人口比〇・八%ぐらいの有病率と言われていて、日本では約百万人、世界では、先ほどの私どもの国際組織では、五千万人の方がてんかんを有しているだろうと言われています。そのうちの約七割強ぐらいが現在の薬物療法中心で発作症状が軽減できる、残りの三割から二割五分ぐらいの方々が難治てんかん、今で言う薬物抵抗性てんかんということで、発作が最低でも年に一回、このドラベ症候群もちょうど出てきますけれども、日に何十回と起こすお子さんまでいるというような難治の方々が残されている。その難治の治療に関しても、日本では、二〇〇六年以降、大分、国際的な薬が認められるようになってきましたので、一時的にはドラッグラグの解消にもつながったところはありますけれども、まだまだ、お手元の資料で見ていただいても分かるように、六剤から七剤ぐらいの薬が日本では使われないという現状にあります。その中で、CBDと書かれている、カンナビジオールを主成分といいますか由来するエピディオレックスというのが今回アメリカで発売され、その後ヨーロッパ、アジアと広がってきていますので、日本でもそれが使えないかというような状況にあります。てんかん症候群という、先ほどの難治てんかんの種類ですけれども、お手元の資料を見ていただければ、一部ですけれども、厚労省のホームページから抜粋するだけでも、小児期を中心に慢性特定疾患の中にこれぐらいの種類がありまして、特に今回は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、さらに、結節性硬化症の中でてんかん発作を有する方々、トータルすると一万二千人ぐらい推定されるんですけれども、が対象になる薬ではないかということです。ドラベ症候群に関しては、資料を見ていただければと思いますけれども、一歳前ぐらいからの症状が多く出ていて、けいれんですとか様々な障害を伴うことが多いですし、一度発作が起こると、重積といって、発作が繰り返してしまうというリスクが高い病気です。急性脳症になったり突然死の対象になったりということで、ドラベ症候群の患者家族会の中だけでも年間に数名の方が亡くなってしまうというような現状にあります。さらに、薬をどれぐらい飲んでいるのかという、ドラベの中の調査をしてみても、二剤から多くて六剤ぐらいの薬を飲んでも発作が止まらない、平均的に三剤から四剤ぐらいを毎日飲み続けているという現状にあります。それでも、会員さんの調査をしていただくと、年間で、多い方ですと百回を超えるような発作が起きているようなお子さんたちがまだまだいて、現状では改善ができないので、新しい薬に期待をしているという現状があります。発作が起きないようにするためにということで新しい薬を求めているわけですけれども、その中で、CBDという、カンナビジオールを使うエピディオレックスがあるわけですけれども、これが二〇一八年に、先ほど言いました、アメリカで発売がされ、やっと学会等でもその効果等についての報告が今出始めています。まだまだ十分なデータが出てきてはいませんけれども、日本の学会の中でも、海外の報告を見ながら、この薬には大変期待は持っております。ただ、全く副作用がないわけでもないですし、依存的なものがどうなのかというのもこれからまだまだ情報が出てくるんだとは思いますけれども、現状では精神症状や依存性は少ないということで、てんかんに効果があると。一部、肝機能障害等の注意というのはありますけれども、そういった部分で大変期待している薬ではあります。ただ、不安を持っているのは、先ほどの中澤参考人の話でもありましたけれども、どうしてもCBDという言葉が独り歩きしていて、私たちはエピディオレックスという製剤を、医薬品を日本でということで活動しているんですけれども、CBD全般的な広まりを求めている方々に利用されているようなところがありまして、CBDの食品系のものにも、てんかんに効くよというようなうたい文句をされて、わらをもすがる思いの親御さんたちはそれに救いを求めてしまうというような実情も現在あります。その辺も厚労省に今相談をしながら、規制ができるのかどうかは分からないですけれども、紛らわしいことのないように、私たちはやはり薬を求めていくという活動を進めている点を十分にメディア等にも今お話をしているところです。よく、医療大麻の推進ですとか、CBD全般がてんかんにいいんだとかという情報は今出てきていますので、その辺りとは全く違いますよと、私たちは、海外で使われている薬を日本でも使えるように、難治で苦しんでいる子供たちを少しでも生活しやすいようにしていきたいということで求めています。経過としては、資料の後半の方にありますけれども、二度、厚生労働大臣宛てに、治験を進めてほしいということと、薬を使えるようにしてほしいということで、今回の法改正の中にも入れていただいているという状況です。まとめになりますけれども、基本的に私たちも、依存性など人体に影響のある、可能性のあるものについては、科学的な根拠が前提で、それがなければ使用制限されるべきであろうというのは基本的な部分では持っています。ただ、その中で、そういった成分であったとしても、治療効果が評価できるというものが国のルールの中で証明されたものであれば、医薬品として使われるということが保障されるのであれば、是非必要な人に届けてもらいたいというような思いでおります。他方、これからの課題になってくると思いますけれども、この薬が承認されたときに、販売される、処方されるというときに、ほかの発達障害ですとか抗精神病薬の一部のように、処方できるお医者さんですとか薬局に対する制限といいますか、多分、登録制みたいなものになると思うんですけれども、そういったものは今後この薬にも適用されてくるんだとは思うんですけれども、当然それは必要なことだとは思いますけれども、今のてんかんの診療現状を考えると、まだまだ専門の先生方が、首都圏とか大都市圏中心で、地方には少なかったりとかありますので、何らか運用上の柔軟な対応をしていただいて、どこどこの県に住んでいるのでこの薬は使えませんよ、責任ある方が、登録のお医者さんがいませんよというようなことのないような、どこに住んでいても安心して必要な薬が届けられるような運用というのも今後検討していっていただければありがたいかなと思います。限られた時間ですので、その後の方に、私どものてんかん協会の活動の内容などを記してありますので、またお時間のあるときに見ていただければと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○田畑委員長 ありがとうございました。次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 一般社団法人ARTS代表の田中紀子です。ARTSは、薬物ほか依存症問題の啓発や社会提言を行い、依存症問題に苦しむ当事者や家族の方々の支援をしている団体です。私は、こういった場に立つことも二回目ですし、割といろいろなことに緊張しないタイプなんですけれども、今日は、本当に大きな悲しみというか、なかなかやはり現場の声は届かないんだなということと、本当に小さな、現場で困っている当事者や家族という立場の人間の意見はなかなか反映されないなという悲しみ、そして、でも、だからこそ、この機会を与えていただいて、その声を届けなきゃいけないという責任感で今ちょっと緊張しております。先生方のお手元に私どもの資料をお配りしております。どうかお手に取って御覧いただけたらというふうに思います。
〔委員長退席、三谷委員長代理着席〕
今日は、限られたお時間ですので、三つのポイントに絞ってお話しさせていただきたいと思います。まず第一に、偏見を生み出している我が国の薬物政策についてです。我が国の薬物問題は、刑罰中心の政策、間違った啓発の在り方、それに伴うメディアの過剰反応により、多くの誤解や偏見を生み出し、当事者や家族に苦しみを与えています。まずは、お手元の資料の図一を御覧ください。この図を見て、先生方、どう思われるでしょうか。これは、各自治体が薬物乱用防止キャンペーンの一環として子供たちに描かせ、賞を受賞した作品です。ここには、薬物問題に苦しむ当事者や家族に対する人権への配慮どころか、人間としてすら描かれていません。子供たちに長年こういう教育を続けた結果、大人になって審査員の立場になっても、このような啓発に何も疑問を持てないのです。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。図二の厚労省の薬物乱用のパンフレットを御覧ください。驚くことに、麻薬・覚醒剤乱用防止運動のキャッチコピーは、「薬物の乱用は、あなたとあなたの周りの社会を壊します!」となっています。これでは、まるで薬物乱用者自身が社会の破壊者のようです。さらに、このパンフレットの六ページ目にはこんな記載がございます。図三を御覧ください。薬物乱用により凶悪な事件を起こしますとありますが、本当にそうでしょうか。警察庁が発表している年間の犯罪という統計をグラフにしてみました。図四を御覧ください。このように、実は、薬物の作用で起きている犯罪は、異常酩酊及び精神障害又はその疑い、パチンコ依存、ギャンブル依存と比較しても最も少なく、突出しているのは実はギャンブルによる犯罪です。ギャンブル依存とパチンコ依存を合わせると、どれだけ多くの犯罪が起きているかという数字がお分かりいただけるかと思います。では、犯罪の種別で動機を見ていくと、どうでしょうか。異常酩酊の方にはほかの精神障害も含まれておりますので、これを除き、ギャンブル及びパチンコ依存と薬物の作用で比較してみたいと思います。殺人、強盗、放火、強制性交等といった凶悪犯でも、ギャンブルとパチンコ依存の方が犯罪が多いのです。粗暴犯も同様です。窃盗犯や、詐欺や横領といった知能犯に至っては、比較にもならないほどです。ちなみに、これらの薬物の作用は、大麻だけでなく、覚醒剤ほかのハードドラッグや、処方薬や市販薬も含めた数字です。このように、薬物乱用者は、凶悪犯といういわれなき偏見、そういった啓発をされ、社会で居場所を奪われてきました。それは、アルコール、ギャンブルが、一部を除いて、手を出しただけでは犯罪にならないという違いがあるからです。では、法律に反して未成年者がアルコールやギャンブルに手を出した場合に、一々逮捕されているでしょうか。アルコールやギャンブルに手を出したという微罪で逮捕という処分が下れば余りにも失うものが大きい、それは誰でも理解できることです。だからこそ、これまで、そういった青少年には、生活習慣の見直しや、背景にある生きづらさ、又は家庭や学校という環境要因の見直しがなされてきました。大麻も全く同じです。アルコールやギャンブルでも、習慣から依存症になれば、精神に異常を来し、事件や事故が起こるのです。一度でも手を出せばリスクを背負うのは、大麻と全く変わりありません。にもかかわらず日本では、薬物乱用者に対し、刑罰を科し、懲らしめ、さらしものにし、社会の厄介者として人間扱いすらせず、再起すら許してきませんでした。これ以上、犯罪者というスティグマを増やすべきではありません。ちなみに、申し上げますが、私たちが求めている非犯罪化ということは、合法化とは全く別です。薬物全てを合法化しろなんということを求めているのではありません。そこのところ、誤解なきようお願いいたします。次に、世界の薬物政策はどうでしょうか。まず、アメリカですが、二〇二二年十月六日、バイデン大統領は、大麻の単純所持で有罪者全員に恩赦を与えました。日本と同じく刑罰で大麻を取り締まってきたアメリカの薬物対策に対して、アメリカの大麻に対するアプローチは失敗であり、余りにも多くの人の人生を狂わせてきました、大麻所持の犯罪歴は雇用や住宅、教育の機会にも無用な障害をもたらしている、この過ちを正すときが来たのですと述べました。また、二〇二三年六月二十三日、国連人権高等弁務官事務所は、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらしますと声明を発表しました。このように、世界では、薬物乱用者を犯罪者として汚名を着せ、懲らしめるのではなく、非犯罪化へとかじを切り、薬物を使わざるを得ない状況の人々を医療サービスへつなげる方向に進んでいます。こういうことを伝えると、先ほどの委員の発言にもありましたが、日本は海外ほど薬物問題はない、日本の政策こそ成功しているという声が上がりますが、本当にそうでしょうか。図九を御覧ください。確かに大麻の検挙数は増えていますが、だからといって、覚醒剤等のよりハードドラッグが増えているわけではありません。むしろ薬物事犯自体は減っています。これは、大麻はハードドラッグのゲートウェーという仮説を否定しております。そして、図十を御覧ください。これは、薬物依存症治療の第一人者である松本俊彦先生からお借りしてきたデータですが、二〇一四年に危険ドラッグが流行しましたが、取締りが強化されると、結局、合法薬物である処方薬や市販薬の乱用が増えました。薬物にもはやり廃りがあるのです。大麻の取締りが強化されれば、同様のことが起きるでしょう。そして、松本先生によれば、大麻の害よりも、処方薬、市販薬の方がよほど依存症は難治性になるとのことでした。大麻の捜査を強化すれば、大麻使用罪を作れば、難治性になっていく、処方薬や市販薬に流れていく青少年が増えていくことが懸念されます。つまり、海外と逮捕者数が違っていても、問題の本質は同じです。大切なのは、薬物乱用者に対する犯罪者というスティグマを軽減させ、早めに医療サービスへアクセスさせることです。先ほど委員たちの間でも、このことは皆さんおっしゃっておりました。最初はいいけれども、そのうちいろいろ重大な問題を引き起こす、そのとおりです。アルコールでもギャンブルでも何でもそうですが、早期に相談、早期治療が大切なんです。だからこそ、早期治療を実現するためには、相談したら逮捕されるかもしれない、そういう懸念があっては、誰が早期に相談ができるでしょうか。そこのところの弊害について、よくお考えいただきたいと思います。最後に、捜査機関と報道の在り方についてです。最も望むことは、捜査機関が大麻の個人使用のような微罪の逮捕者を、報道機関に個人情報を提供することをやめていただきたいということです。先日、大麻所持で逮捕された芸能人は、逮捕の前から自宅等を報道機関に張られていました。これは捜査機関と報道機関の情報漏えいと思われ、人権が侵害されています。また、日大の大麻所持事件では、僅か〇・〇一九グラムの大麻片を持っていただけで、連日繰り返し学生の実名報道がなされ、教育の機会も奪われました。一方、島根県警では、自宅で大麻を所持していたとして、県内の警察署勤務の男性巡査長を大麻取締法違反の疑いで書類送検し、懲戒免職処分にしましたが、県警は、証拠隠滅や逃亡のおそれがないなど総合的な判断として逮捕せず、プライバシー保護を理由に名前や勤務場所も公表しませんでした。私たちはこのことを責めているのではなく、全国的にこの島根県警の取組が広まってほしいと願っています。この事件は、所持量が少量だったこともあり、後に不起訴処分になっております。大麻を個人で使用、所持したという微罪でデジタルタトゥーが残り、若者の将来が奪われてしまうべきではありません。島根県警のように、現在でも実名公表を控える捜査機関も既にあります。報道の自由も大切ですが、この国の未来を考えれば、何よりも若者の再起に配慮することが優先すべきだと考えます。また、このような実名報道のおかげで、当事者だけではなく家族が職を奪われたこともございます。暴力団との関係を疑われると上司に暗に圧力をかけられ、退職を余儀なくされてしまいました。この会社は公共事業の入札を行っている会社でした。そのため、このようなことが起こってしまいました。また、大麻と覚醒剤の使用と所持で逮捕経験のある俳優の高知東生さんは、SNSで、事件から七年たった今も駐車場すら借りられないとおっしゃっています。こういった、逮捕の後、再起を目指す人たちのフォローが何もないまま、また更に刑罰を増やすことに私どもは大変心配しております。このように、困っている御家族まで社会から疎外し、薬物乱用者の再起を阻んでしまう、さらしもののような報道の在り方には問題があり、今回の改正では配慮を求めます。長年行われた「ダメ。ゼッタイ。」運動は、薬物が駄目なのではなく、薬物乱用者が駄目という烙印を押してきました。依存症者は、社会や他人の厳しさでは変われません。依存症の背景には、もう十分厳しい環境にさらされた経験があります。逆境体験があるんです。政治家の先生方、官僚の皆様、そして学者の先生やお医者様、立派な大学を卒業された皆様が頭で考えた政策だけでなく、社会から取り残された当事者や家族の声を取り入れた改正を望みます。大麻のあり方検討会では、薬物問題を抱えた家族はメンバーにすら入れていただくことができませんでした。メンバーの選定にも恣意的なものを感じています。どうか、大麻使用という微罪で、これ以上若者の未来を奪わないでください。問題を抱えた青少年、そして依存症者は、厳しさで変わるのではなく、社会の優しさと希望で変われるのです。以上です。(拍手)
〔三谷委員長代理退席、委員長着席〕

○田畑委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。仁木博文君。
○仁木委員 自由民主党・無所属の会、順番が変わりましたが、仁木博文と申します。今日は、参考人の皆様方、本当に現場の方の御意見、ありがとうございました。今回の法改正というのは、ブレーキとアクセルというか、緩和といわゆる規制の両方を盛り込んだものだと思いますが、まず、今回の薬の部分、田所先生の方にお聞きしたいと思います。エピディオレックスを使用すれば、ドラベ症候群あるいはレノックス症候群みたいに難治性のてんかんに対して効くかもしれないということでございますけれども、先行して上市されているアメリカにおいて、例えば論文等々で、それは何かエビデンスがあるというふうなことは先生は御承知でしょうか。
○田所参考人 ありがとうございます。先ほども話しましたけれども、二〇一八年にアメリカで発売が始まって、二〇二〇年頃からやっとアメリカのてんかんの学会で報告が出るようになりました。まだ実際には件数が少ないですので明確なものは言えませんけれども、国内で漏れ伝わる中では、難治てんかんには期待ができる薬の一つではないかというふうには言われております。まだこれからデータを整理していくことになると思います。
○仁木委員 先生、それでしたら、今、てんかんの患者さん、結構いらっしゃいますね。百万人という先生の資料もありました。そうすると、難治性のてんかん以外の方々も、従来の抗てんかん薬以外で、CBDが含まれたエピディオレックスの承認が得られた暁には、今、抗てんかん薬を飲まれている、結構複合で飲まれている方も多いわけですけれども、そういう方々もこのエピディオレックスを使用できる、あるいは、治療のプロトコールが処方において変わるというようなことがあると先生はお考えでしょうか。
○田所参考人 現状ではそれはないと思っております。難治てんかん、特に今示しています三種類のものが中心で今後進んでいって、将来的にはもう少し広がる可能性はあるかもしれませんけれども、現状では全般に広がるということはないと思っております。
○仁木委員 私も、CBDの使用を推進するというか、その議連の方に入っています。先般も、イギリスのGWファーマという、エピディオレックスを製造している方々の方と意見交換をしましたが、今、PMDAで承認して、それを使えるようになると、もしかしたら、原材料の大麻草の栽培というのが我が国においてもより必要になってくるかもしれない、そういうことを言われておりました。今、国内は二十八件、約三十件弱の農家の方しか大麻草の栽培が許されていないというか、そういう状況でございます。そうすると、先生は、医療の分野ではそれは余り増えないというふうな形、いわゆる今の二十八件では足りないというふうな感じですかね。その辺は御理解いただけますか。
○田所参考人 GW社と十分に話しているわけではないですけれども、現在のところでは、海外からの輸入というところで賄うというふうに聞いておりましたので、国内で増やしていくという議論は、まだ残念ながらしておりません。
○仁木委員 私は、逆に今日、中澤さん、あるいは小林先生も依存症の治療ということで御陳述いただきましたが、まさに使用する、CBDオンリーというか、THCの少ない部分に関しては使用されるような、商業ベースでほかの商品も出てくるかもしれないということも想定されます。そういう中で、規制をやっていくときの検査体制も言われていました。そして、一方で、性善説に立っての測定方法であるとかそういったチェック体制があるわけですけれども、もし仮に何か間違ってそういったことになったときに、場合によっては、例えば、小林先生が依存症の治療をしている現場でいるわけですけれども、大麻の依存症の方が増えているということを御陳述いただきましたが、例えば、先生、私は今認識していないのですが、アルコール依存症の場合でしたらアルコール依存症の治療薬というのが開発されていますけれども、大麻依存症に関しての治療薬であるとかそういうのは、将来的にできるというか、そういうことはどういうふうにお考えでしょうか。
○小林参考人 現時点で、薬物依存症に関して適応のある、いわゆる治療薬というのはございません。全てやはり対症療法ですね。薬物によって二次的に引き起こされたうつ状態や不眠に対して対症療法的に治療を行っているのみで、いわゆる依存症の主たる症状である、コントロールができない、節度ある使用ができない、あるいはそもそも使用の欲求を抑えることができないということに対して特効性のある薬物はございませんので、恐らく大麻に関しても、今後も、すぐに、短い期間でそういった特効薬が生まれる可能性は皆無に近いと思います。
○仁木委員 そうしますと、アルコールの場合は依存症に対する治療薬があるのは先生御案内だと思います、最近できましたが、そうすると、やはり、レギュレーションの部分、厳しくTHCの濃度をチェックしていって、そういうTHC濃度が基準値を超える、カットオフ値を超えるようなものが流通しないようなこともこれから大切だと思います。そういう意味で、太田参考人にお聞きしたいんですけれども、今後、商業ベースも加わってくると、先ほど、治療薬、エピディオレックスの原材料も将来的には日本で作られるようになると思いますので、大麻草もある限られたところで作られる体制ができると思いますが、より大麻草を作っているところが分かるような形になると思うんですけれども、今まで、この三十件弱の農家の方というのはかなり厳しい環境でやっているわけですけれども、その辺は、法の実践というか、法を実行していく上で、何か本当に問題点というか。特に私が一番懸念していますのは、将来的にこのことが広まっていく過程において、特にこの法律が施行されたときに、あるいはこの法案が通ったときに、ミスリードというか、間違ったメッセージになる可能性がありますので、この辺のレギュレーションはしっかりやっていかなきゃいけないと思っています。何か農家の人の今の現状、大麻のこともよく御存じだと思いますので、そういった流れ、今でしたら大麻法における大麻がそういった対象のものになりますので、そういう流れのものの中で、生産体制に関して何か予想できるような問題点なり、あるいは、政府が取り締まっていくというか規制していく上での何かお考えとかがありましたら、教えていただきたいと思います。
○太田参考人 御質問ありがとうございます。今後、大麻関連の医薬品ですとか製品なんかが日本で普及するようになると、大麻農家の方がそういったものを踏まえて大麻草を栽培することも増える可能性もあります。ただ、現在の場合に、大麻農家の方は非常に厳しい管理の下での栽培と流通を求められておりまして、中には、法律上大麻に該当しない、要するに、成熟した茎は大麻に法律上該当しないにもかかわらず、その流通管理にも非常に厳しい制約が課せられていて、非常に不安になっているというふうに伺っております。今後、医薬品とか研究の場合には、かなり高濃度のものを含んだような大麻草の栽培も行われるようになるかと思います。そうした場合に、今後は恐らく、法律の構造も今そうなっておりますけれども、いわゆる繊維を採取するような大麻草の、いわゆる現在の農家さんの場合には、規制を合理的なものに変えていくということが必要であり、かつ、繊維を取るためにはTHCが含まれている必要は全くありませんので、現在の「とちぎしろ」のような品種のものを広く普及させて、そういった種子の管理を徹底した上で安全な大麻草を栽培して、そこからの大麻の繊維の採取だとかということについては規制をある程度緩和したものにしていく。一方、研究目的とか医薬品の場合には、反対に非常に高濃度のものが必要になる場合もありますので、こちらの方の種子の管理や栽培はかなり厳しい管理の下にしないと、それがほかに漏れてしまっては大変ですので。そういった二重構造といいますか、目的と大麻草の内容に分けて、規制を合理化する面、緩和する面と、それから一定の厳しい管理の下で栽培、流通していく、この二つが必要ではないかというふうに考えております。
○仁木委員 いずれにしましても、今回の法改正で、いろいろな方々が大麻というかCBDの活用を望んでいらっしゃったり、あるいは依存症のことを危惧されていたりという形で、いろいろな形の法整備が行われると思います。そういう意味で、今後とも、私は、立法化を経た上での新しい体制づくりに向けて、いただいた御意見も参考にして、またこちらの立法府の方でも頑張っていきたいと思っております。今日はありがとうございました。

○田畑委員長 次に、中島克仁君。
○中島(克)委員 立憲民主党の中島克仁でございます。本日、大麻取締法等改正案の参考人質疑で、五人の参考人の皆様には、大変お忙しい中御出席をいただきましたこと、改めて心から感謝を申し上げます。それぞれのお立場での陳述、大変勉強になりました。限られた時間でございますから、全ての参考人に御質問できるか、ちょっと微妙でございますが、よろしくお願いしたいと思います。今回の法案、大きく二点。大麻草から製造された医薬品、抗てんかん薬でございますが、この使用を可能にすること、これが一点目。そして二点目が、大麻草の使用罪の規定を設ける。この一点目に関しては、私も医者でありますけれども、難治性のてんかん、田所先生には我々は部会にも来ていただき、その重要性、必要性と、てんかんの治療の選択肢を増やすということ、非常に大事なことという観点。一方で、使用罪を適用すること。今日、田中参考人からも先ほど陳述いただきましたが、様々な御意見があるということは我々も非常に受け止めているところでございます。改めて、その観点から、先ほど田中参考人からも話がございました、太田参考人、そして小林参考人、田中参考人、それぞれにお尋ねをしたいと思いますが、我が国の薬物乱用対策、これは、違法薬物に手を出さないという一次予防に重きが置かれてきた。その結果、先ほど田中参考人からも少し触れられておりましたが、薬物依存症者に対する差別のようなものが助長されているのではないかという指摘があることも事実だと思います。今後の対策に当たっては、一次予防軸足のみならず、違法薬物を使用してしまった方々の早期発見、早期介入、加えて薬物依存者に対しましての再発防止、社会復帰を支援していく三次予防、これをやはり徹底していく。これまでできていなかったかどうかも含めて、なぜできていなかったのか、そしてその重要性について、それぞれ三人の方にお答えいただきたいと思います。
○太田参考人 日本でも、大麻を含めて、違法薬物については、規制薬物については違法とされて、いろいろな、所持とか、それから譲渡し、譲受け等は犯罪として規制されているわけではありますけれども、私も、ただ犯罪化して刑罰を適用すれば薬物乱用の問題が解決できるとは思っておりません。ただ、人体に非常に有害なものは違法であると規定した上で、社会の中では、まず、そもそもそういった者に対する治療の体制をきちんと整える、患者の方が安心して治療を受けられる環境を整えるという点、社会の中での二次予防、それから三次予防も重要だと思いますし、それから、犯罪である以上、検挙されて刑事手続に乗った者に対しても、現時点はもちろん違法であるので訴追される者が多いんですけれども、ただ、現在も、厳罰と言われているような風潮がありますけれども、今、例えば大麻についても、覚醒剤についても、それから麻薬についても、初犯の場合はほとんどが全部執行猶予になっております。ですから、これを刑事政策的には、ダイバージョンといって、犯罪ではあるけれども、刑事手続に乗っても最終的に刑罰を科さずに、若しくは実刑を科さずにその手続から外すというダイバージョンというものが行われておりまして、ある意味では、薬物犯罪については事実上の非刑罰化が行われているようなものであります。ただ、問題は、刑罰を科したところから、若しくは執行猶予にしたところから治療とか処遇、支援につながっていない、これが非常に大きな問題だと思います。我が国の場合、覚醒剤もそうですけれども、ほとんど起訴されます。大麻の場合は起訴猶予率が三〇%ぐらいありますので起訴率はもうちょっと低いんですが、起訴猶予になった場合も、起訴猶予にして終わりで、そこから治療につながらない、若しくは処遇につながらない。それから、起訴された場合でも、全部執行猶予、しかも保護観察のつかない単純執行猶予になって、そこからの治療につながらない、ここが大きな問題だ。要するに、刑事手続に乗った者を治療につなげるという二次予防的な発想がないということが問題だと思っております。
○小林参考人 昨今、本当にマスコミの報道を通して、依存症に関する意識は随分高まっていると思います。それは、通常のアルコール、薬物のみならず、ネットゲームとか、様々な問題で依存症の問題があるんじゃないかということが随分と意識されるようになっておりますので、そういった意味では、我々医療現場にとってうれしい反面、御家族も本人も、自分が依存症なんじゃないか、家族が依存症なんじゃないかと早めに気づいて医療につなげていただく分、余り困っていない、つまり、むしろ、依存症によってメリットがあって生活がうまく回っている初期段階で医療機関につながる患者さんが増えておりまして、そういった患者さんをどのような形で、断酒、断薬、断ギャンブル等、依存症的な行動をやめる方向に動機づけるかということに関しては、むしろ新しい問題に直面しております。困っていない人の行動を変えることというのは非常に難しいんですね。当院で、治療を始めてから三年後、どれぐらい依存症をやめられているかという三年予後を調査したことがございます。これは、精神神経学会でももう既に雑誌に論文を発表しておりますので御参照いただきたいんですが、実は、アルコールが三年後に断酒できている人というのは大体一四%ぐらい、市販薬、処方薬は二〇%、違法薬物は四六%がやめられているんです。こういった意味では、この数字を見ていただいても、アクセスのしやすさ、そして、その使用に伴う様々なデメリットの大きさ、これが実はこういった三年予後に反映されているというふうに考えています。何度も言いますが、刑罰そのものが別に依存症を治すわけではありません。また、そういったスティグマ化が患者さんの回復を促すわけでもありません。むしろ、そういった様々な人が、本人が困っていない段階で早くに早期発見、早期治療につなげるためには、早期に本人が何らかの困り感を体験できるような様々なおせっかいのシステムが、それは司法のみならず、様々な保健制度でもそうですけれども、教育現場でもそうですが、より早く、そういった逆境体験を抱えていたり地域で困っている人を早期発見できるような、そういったシステム、そして国民全体に対する啓蒙がやはり不可欠だと思いますし、今回、使用罪に関して、賛否両論、かなり議論が盛り上がっているところがございます。私は、それはいいことだと思います。むしろ、使用罪に反対される方々の議論を通して、実は、やはり司法だけではどうにもならないんだということを皆さんが知るきっかけになっていると思いますので。ただ、やはり臨床医の現場の意見としては、白黒で簡単に決められないんだと。じゃ、司法を全部排除して、司法の役割を全部否定すればそれでいいのかというわけではないんだという、この難しいグレーな部分を是非御理解いただきたいと思います。
○田中参考人 ありがとうございます。依存症問題は、また薬物乱用の問題というのは、医療で解決できる部分はごく僅かです。ほとんどは、まず家族の相談から始まって、家族が家族会や自助グループなどにつながって、何とか本人を治療に結びつけようとして努力しています。でも、この家族の第一歩というのが、犯罪化されているとなかなか結びつかないという現実があります。先ほど、早いうちに来てやる気がないみたいなお話がありましたが、私たちのところに来る方は、むしろ、どこに相談していいか分からなかった、ずっと自分たちで抱え込んでいて悪化させてしまったという方々ばかりです。一次予防と三次予防が矛盾するものではありません。一次予防はもちろん必要なことだとは思いますけれども、やはりこれからは、薬物依存症者の人権を否定するような、そういった啓発をやめていただくこと、そして三次予防を強化していただくということが大切かと思っております。
○中島(克)委員 ありがとうございます。もう限られた時間なので。先ほど田中委員、陳述の中で、規制の強化がなると、市販薬への移行、これはオーバードーズにつながる話だと思いますが、このオーバードーズ、若い女性が八割、若年化も、調べによると十二歳が最低年齢だったと言われております。このオーバードーズ、これは小林参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどの田中参考人の、規制を強化することでこのオーバードーズの問題が更に大きくなる可能性、また、対処方法、今後の対策の在り方、一言お願いしたいと思います。
○小林参考人 元々、こういった法で規制されていないものを求めて、依存症の患者さんは様々な、自分の不眠とか苦痛を和らげるために過量服薬に及びます。大麻が使用罪ができたからといって、元々処方薬、市販薬を乱用していた方が急増するかといいますと、どちらかというと大麻の使用者で多いのは男性です。一方で、処方薬、市販薬で多いのは女性です。ですから、患者さんのポピュレーションがちょっとずれます。ですので、それが著しく急激に市販薬、処方薬の乱用者を増やすということはないと思いますし、処方薬、市販薬の乱用者が増えている現実は、大麻の問題よりも、むしろやはり若年女性が置かれている今の現代日本社会の様々な多様な問題を反映しているというふうに考えた方が私は正確だと考えます。
○中島(克)委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

○田畑委員長 次に、一谷勇一郎君。
○一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いいたします。参考人の先生方の質問を聞いて、私の考えも少し変わってきたところもありまして、やはり現場の皆さんの声を聞くのは非常に重要だなというふうに感じております。午後からも質疑をさせていただきますので、是非参考にさせていただきたいと思います。まず中澤さんにお聞きしたいんですが、先ほどもCBDの市場が八百二十九億円の市場になるというふうにお聞きをしました。二〇一九年では四十七億円市場ですので、約十七倍から十八倍になるということなんですが、どんな市場というのは先ほどお聞きしたんですが、なぜこれほど急激に成長していくかというような、要因があればお聞きできたらと思います。
○中澤参考人 御質問ありがとうございます。要因はいろいろあるかと思うんですけれども、そもそも、CBDという市場がこれまでなかったところにでき上がってきたというところがあるのと、あとは、CBDに関する諸外国での活用というところがどんどん広まってきまして、それが日本が対応する形で広まってきているというところで、なので、日本だけではなくて世界的に広まってきているものだというふうに認識しております。
○一谷委員 ありがとうございます。そこで、CBDの効果として、リラックスやストレス解消、また肩凝りに効果があるとか、眠れないときに寝られるというような言葉がすごく、ネットを見たりしても出てくるなと思うんですね。そうなってくると、産後ケアであったり、フィットネスであったり、整骨院であったりというところでそういった商品を取り扱うような、サプリメントであったりとか健康食品というのは増えてくると思うんですが、安易に海外から輸入してきてそれにTHCが含まれていて、抜き打ち検査で厚生労働省がやられて、含まれていますよというのも出ているんですが、やはり違法状況というふうになってくると思うんです。まず、やはり、こういった状況をどうやって抑えていったらいいかというところと、先ほど中澤先生がおっしゃっていただいたように、やはり、ある一定、業界を健全に成長させていくためには、過大広告は止めていかなければならないんじゃないかなと思うんですね。私も見ていると、先ほどおっしゃっていただいたように、一般社団、NPOが何か認証していますよみたいな感じで、一般の方が一般社団とかNPOと聞くと、何か公的なもので、すごく安心感を得てしまって、それを使ってしまう。先ほど田所先生もCBDはてんかんに効くということが、ちょっと危惧されていましたが、その辺のお話、考えをお聞かせください。
○中澤参考人 御質問ありがとうございます。御質問いただいたとおり、本当に業界団体が今ばらばらになっているような状況で、特にCBD業界に関する共通の画一的な、これを守っていきましょうというルールというのがまだこれからできていくというような状況だと思っています。それら本当にいろいろな論点がありまして、成分の表示という先ほどお話ししたようなところだったり、先ほどてんかんのお話もありましたけれども、薬機法だったり、広告のところで、薬品としてはまた別で、食品的な言い方をしなきゃいけないだったり、そういうところをちゃんとやり切れていない。業界が黎明期ということもあって、大手企業もこれからというところなので、そこはまだまだ未熟な産業であると認識しておりますので、その辺りを関係者一同、議論をして、論点を洗い出した上でルールというのを定めていく、それを遵守していくというところが重要なのかなというふうに思っております。
○一谷委員 そこで、もう一つ中澤さんにお聞きしたいんですけれども、検査機関というのが重要だというふうにおっしゃっていたと思うんですが、これは国内、国外のレベルの差みたいなのはあるんですかね。お願いします。
○中澤参考人 ありがとうございます。私の認識しているところですと、やはり、そもそも日本でTHCの検査をできるというところが大分限られているというところで、単純に経験の歴が全然違うというところがあるのと、あとは、同じ検査様式、検査機器を使っていたとしても、科学者のレベルによって出てくるデータが違ったりということがあったりします。あとは、検査方式の基準とかガイドラインというのも、各ラボで日々進化、テクノロジーも進化していくところですので、そこが日本ではまだ実際に限られた人たちしかやれていないというところで、ちょっと、どれぐらい遅れているかというところは何とも言えないところはあるんですけれども、日本独自で国際基準のところに持っていくというところは大分厳しいものがあると思っておりますので、最先端の知見というのを取り入れるのは非常に重要なのかなというふうに考えております。
○一谷委員 ありがとうございます。それでは、質問のちょっと視点を変えさせていただいて、田所先生に御質問させていただきたいと思うんですが、私は、実は、てんかんの薬というのは非常に重要で必要だと思っているんですが、その薬を処方するドクターはある一定やはり研修を受けられた方がいいのではないかなというふうな視点に立っています。ADHDや統合失調症の薬のように研修を一定受けた方がいいのではないかなというふうに思っていまして、午後からの質疑もそれをさせていただこうと思うんですが、田所先生のお話を聞いて、確かに過疎であったりとかドクターがいないところは検査できないなということで、今ぱっと思ったんですが、これはオンライン診療という手もあるのではないかなと思うんですが、オンライン診療でもできるようなものなのかというところを御意見をお伺いできたらと思います。
○田所参考人 てんかんの領域というのが、面白いと言うのはおかしいんですけれども、てんかん科というのが残念ながら東北大学以外ありませんで、小児の場合は小児神経、成人になると精神神経、脳神経内科、脳神経外科という大体四つの領域が合わさって、その中でてんかんに関心のある先生方が診療されるのが専門医としては多いんですけれども、ただ、今言いました四つの領域以外でも、てんかんの学会には参加していない、専門医ではないけれどもてんかんのことは十分に治療できるという先生方も全国にいらっしゃいます。そういう意味では、余りてんかんだけに特化をしないで、てんかん学会なんかが中心になりながら、国と連携しながら、全国に、今先生がおっしゃったように、この薬の特徴ですとか注意点であるとかというものの研修をしていくというのは重要なことだとは思います。
○一谷委員 続いて田所先生にお伺いしたいんですが、てんかん薬というのを使うことも大事なんですけれども、やはり周りの、そのケアを、フォローをしている方々の生活、そしてその負担というのもかなりあると思うんですね。私は、今回の法改定とは少し射程が違うかも分からないですけれども、そういったところも整備していくということも大事じゃないかなと思うんですが、その辺りの御意見を少しお伺いできたらと思います。
○田所参考人 ありがとうございます。先ほど触れました、てんかん診療自体が全国的にまだ地域偏重というんですかね、あります。あわせて、てんかんに関してそれを相談をする機関というのがほぼない状態です、医療機関以外は。そういうことで、国の方にお願いをして、全国のてんかん診療の整備事業というのを進めていただいていて、今、約三十都道府県で拠点をつくってという事業が進んでいるんですけれども、その中に、私たちの活動でもそうですけれども、ソーシャルの部分も含めて生活支援をどういうふうにサポートするかというものを少しずつ今広めているところですので、そういったものを全国にもう少し充実させられると、こういった新しい薬が使われるときにもサポートがしやすくなってくるかなとは思っています。
○一谷委員 ありがとうございます。私も福祉の業界に二十年以上おりますので、やはり周りの家族の方のサポートというのも非常に重要だというふうに考えていますので、ここも、今回の法改定の射程外かも分からないですが、議論をしっかり進めていきたいと思います。それでは、小林先生にお伺いをしたいんですけれども、CBDの市場がこれだけ大きくなってきて、ちょっと広告も過大になってくると、それを常に使っている若者が、もっと効果があるのではないかということで大麻を使い出すというふうな感じになるんじゃないかなというふうに、私は今、意見を聞いていて思ったんですけれども、そういったリスクを抑えていくためにもどういった取組が必要かということと、やはりそういったことは想像されるのではないかなというような点について御意見をお願いいたします。
○小林参考人 実際、私の患者さんでも、CBDだったら捕まらないんですよねとか、CBDは効果ありますよねということを言い出している患者さんはもう既におります。CBDを使っているうちに、より効果の強いものを期待する可能性もあります。そういった意味では、やはりTHCを含有している通常の大麻の方がより社会的な、法的なハードルが高いというふうにした方がぎりぎりCBDのレベルでとどまる可能性がありますし、同じ過量服薬、乱用のリスクがあるにしても、やはりエビデンスの面で、長期的、大量に使用したときの害が大きいものに対するハードルを高くする。低めの方にまだ誘導する方が、実際、中長期的な、社会的な影響も少なくて済むのではないかなと。ただ、今後CBDが普及してくると、今後CBDの乱用者というのが医療現場で増えてくる可能性は私も現時点で危惧しておりますが、こればかりは、市販薬や処方薬と基本的には同じ状況になってくると思いますので、同様の対応をしていくしかないだろうというふうに考えています。
○一谷委員 ありがとうございます。太田先生、田中先生、時間の都合でちょっと質問できなかったんですが、今日、本当に、参考人の皆様の意見を聞いて、午後からの意見の私の密度が大分上がったと思いますので、今後ともどうぞ御指導をよろしくお願いします。私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○田畑委員長 次に、福重隆浩君。
○福重委員 公明党の福重隆浩でございます。本日は、五人の参考人の先生方に、お忙しい中、国会までお越しをいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。時間も短うございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。まず初めに、エピディオレックスに対する期待について、日本てんかん協会の田所事務局長様にお伺いをさせていただきます。二〇一九年の九月に、日本てんかん協会を始め、関係する四団体から当時の加藤厚生労働大臣宛てに要望書の御提出をいただきました。その要望書を受け取ったのは、本日の委員会にも出席しております、当時厚生労働副大臣でありました我が党の伊佐議員でございました。大麻成分を含む難治性てんかん薬、エピディオレックスは、現在、臨床試験の段階であります。医薬品としてエピディオレックスは多くの患者さんが待ち望んでいると思います。長きにわたる要望活動が実を結んだことは明らかであると思いますが、田所事務局長様の今の御意見をお伺いしたいと思います。
○田所参考人 ありがとうございます。公明党さんの中には、てんかんの対策を推進するプロジェクトチームをつくっていただいておりまして、その中心になっている方々が、てんかん患者、今回対象になっているドラベ症候群のお子さんを持つ親御さんが議員さんで、たまたま応援をしてくださるということで始まっているわけですけれども、その方々、親御さんとしての思いもあって、厚生労働省に、早い時期にこの薬を何とかということでスタートしたのが始まりでしたので、大変ここまでいろいろありましたけれども、家族、患者本人も含めて新しい選択肢ができるということはありがたいことだと思っておりますので、是非これを国内の中に広めていただいて、更に充実をしていければいいなとは思っております。
○福重委員 どうもありがとうございました。次に、大麻を含む違法薬物の乱用に陥る方の背景には、先ほどもちょっとお話ございましたけれども、不良交友、孤立、孤独、社会的差別など、様々な要因が考えられます。こうした方々は、置かれている環境から、医療機関や行政など誰にも相談できずに悩み、苦しんでいる方も多いと思います。個人が抱える悩みや置かれている環境に対して適切に対応できる仕組みが私は必要であると思いますけれども、小林先生、太田先生からの御意見をいただければと思います。
○小林参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。これまでどうしても依存症の業界においてなかなか注目されてこなかった点が、まさにこの小児期逆境体験であると思います。当院では、もう十年前から、初診の患者さんに対して、十五歳まで、中学三年までにどのような逆境体験を経てきたかということを全ての患者さんにアンケートを取って、もう十年分のデータがあります。そのデータとして、先ほどお話ししましたように、覚醒剤や大麻、処方薬等の薬物依存の患者さんは、特に、アルコール、ギャンブルと比べても非常に逆境体験に該当する方が多い。もう九割を超えていて、しかもそれがもう三個から四個ぐらい。一つだけじゃないんですね。一つの例を挙げますと、十五歳までに片方又は両方の親と離別体験があると答えた人は、ほぼ三人に一人の割合でいるんですね。いろいろな意味で分かりやすいいわゆる虐待とかネグレクトだけではなくて、様々な、表面的には恵まれているけれども、非常に自分の感情の持っていき場所がない、自分の感情を一人で我慢しなければいけないという、そういったことがございます。ですので、私、いろいろな場面でお話ししているんですけれども、思春期になってからでは本当に遅くて、場合によっては母子保健の段階から、例えば母子家庭で妊娠されている方、シングルマザーの妊婦の方とか、その後も経済的に苦境に置かれている方、あるいは、表面的には非常に優等生で、部活でも活躍しているように見えているんだけれども、実は非常に本人が我慢していて、そういった、周りに合わせ過ぎている方。近年、ネットゲーム依存が増えている背景には、表面的に別にそんな虐待を受けているわけではないんだけれども、やはり本人が自分の本音をシェアできる場所がない、そういった心理的に孤立している若者たちが非常に増えている。かつての、一九七〇年代のような、いわゆる校内暴力みたいなそういった激しい人は減っていて、むしろ、引きこもってしまったりとか、自分の心の殻の中に内向してしまう人がいる。そういった意味では、早めに相談できる窓口を増やしていくということが一つなんですが、ただ、相談できる窓口を増やしても、本人自身が、そういった逆境体験を経ている上で、だんだんと相談すること自体を諦めてしまって、周りに期待しなくなっていってしまう、こういった問題があります。そういった意味で、御家族は非常に困るんですけれども、本人は、本当に、一人で、誰の助けも必要ない、自分はこの依存症の行動さえあれば、薬物、アルコール、ギャンブルさえあれば何とかなるんだというふうに閉じこもってしまう、そういったリスクはあります。ですので、そうなってからのもちろん支援も必要なんですけれども、こういう事態、依存症の背景にはこういった問題があって、自分一人で抱え込んで、自分一人で何か努力や我慢だけでしのいでいくというライフスタイルや生き方そのものに問題がある、それが実は依存症のリスク要因なんだということを、早い段階で子供たちに教育して、またその養育者である親たちにもやはり教育していく。しばしば母子保健では、母親に対していろいろな、授乳の仕方とか赤ちゃんの体のことについての指導は結構保健福祉センターなどでやられているんですけれども、もっとメンタルの面、子供を養育していく上でどういったメンタルの支援が親として必要なのか、親がどういう子供の面を見ていかなければいけないのかという、そういったメンタルヘルスのリテラシーを親御さんたちに上げていくための支援を提供していくという視点が今後必要になってくるだろうと私は考えます。
○太田参考人 私は刑事法の研究をしておりますけれども、その一方で、性暴力でありますとかDVでありますとか、そういう犯罪の被害者の方たちの支援に携わっております。こうした人たちの中には、そういった様々な問題を抱える中で、薬物の依存に陥らざるを得なかったような方たちがいらっしゃいます。そこで、一つの方法としては、まず、薬物の方の問題として医療機関で関わった方が、その薬物の面だけではなくて、そういった背景にある様々な逆境体験とか性暴力といった問題に対して関係機関にきちんとつなぐことができるような、いわゆるワンストップサービスといいます。被害者支援では、様々なところにつなぐワンストップサービスといったものを今構築しようとしております。こういった薬物依存に陥った方も、医療機関に関わってそれ以外の問題を放置すると、また薬物依存の方に陥っていって、そこから抜け出すことが非常に難しいので、そういった医療機関がハブとなるとして、そういった関係機関にいろいろつないでいくような、そういったワンストップの支援の体制といったものが重要であるかと思います。これは、刑事手続に乗ってしまった少年、少年院に収容されたり、それから、先ほど言った全部執行猶予を受けたような、それで保護観察になったような人たちに対しても、今、こういった逆境体験に対する配慮といったことは非常に問題意識が高まってきておりますので、単に薬物は駄目ですよということだけじゃなくて、その背景にあったような問題にきちっと対応するような対応が今図られつつあります。ただ、問題は、例えば少年院から出た後の保護観察の期間とか、それから、刑務所、刑事施設から仮釈放された後の保護観察期間が非常に短いという問題がありまして、もう少し、社会の中でそういった依存の問題、プラス、その背景にある逆境体験の問題に対してきちんと対応できるようになるまでの間、司法も伴走しつつ、次第に地域の支援なんかに移行していけるような、そういう比較的一定期間の見守り期間が必要な法制度が必要だと思っております。
○福重委員 ありがとうございました。実は、今太田先生がおっしゃられた再発防止、再使用、こういったことをどう未然に防いでいくかということは非常に大事なこと、そういった意味で今お話をしていただいたんですが、もう少しそこの部分で太田先生の方から何か御所見があれば教えていただければと思いますが、今のことでよろしゅうございましょうか。再発防止に対してということです。
○太田参考人 繰り返しになってしまいますけれども、やはり、一つ、司法に関わらなかった依存の方が医療機関に自ら受診した場合のその後の様々な本人の抱える問題に対するケアをどうしていくかというそういう体制づくり。それから、私がちょっと関わっておりますそういった司法の方に関わらざるを得なかったような依存の人たちを、刑罰とか、保護処分というその後の保護観察という社会の中における処遇の期間においていかにその依存に対する処遇とか治療とともに、本人の抱えている問題にきちんと対応できるための体制づくり。それから、期間が今非常に短くなっていますので、そこを長期化するためにはかなり大きな法改正がちょっと必要になってまいりまして、こういった再乱用防止とその背後での問題の緩和、若しくは働きかけのためには、やはり司法ももう少し、それだけでできるとは私全く思っておりませんが、司法の方ももう少し伴走期間をつけて、その間に社会の中における様々な支援につないでいくという、その司法の期間、それから司法と社会の地域の支援機関が伴走する期間、そして社会の中だけの支援に完全に移行する期間という、その三つの段階で移行していくシステムづくり。ただ、そのためにはかなり法改正も必要な部分がございますので、そういったものも併せて御検討いただければというふうに思っております。
○福重委員 どうも大変ありがとうございました。医療に道を開いていく今回の法律改正、そしてまた、乱用を防いでいくというような、様々な五人の先生方々の御意見をしっかりと踏まえて、今後もこの問題についてしっかりと取り組んでいきたいと思いますので、どうか今後とも御指導いただけますようによろしくお願い申し上げます。本日は大変にありがとうございました。

○田畑委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。本日は、五名の参考人の皆さん、ありがとうございます。大変、それぞれの立場で、参考になりました。早速、質問させていただきたいと思います。まず、小林先生に二点お伺いしたいと思います。今回の大麻取締法の改正は、大麻事案の検挙が増えているということが大きな原因であり、さらに、若者の利用があるということでありまして、先生は、その理由としては、小児期の逆境体験、またさらには、信頼障害仮説というのも読ませていただきましたが、こうおっしゃっています。若い世代に利用が増えているのは小児期の問題が増えているということと関連づけて増加の理由を捉えていいのかということが一点でございます。二点目は、今回の施用罪の創設についてです。先生は、ほかのところで、なくてもぎりぎり今は問題ない、しかし、今回の医療用大麻の解禁や様々な合法的な大麻の流通が増える、これはペアの議論であるということをおっしゃっています。そしてさらに、アメリカでは、産業用の、産業系の、鎮痛剤や、医療用大麻のネット流通や、また入手可能な時代が来るのじゃないか、この対応が求められているからこそセットで議論がされている、そういった理念がこの施用罪にあるということをおっしゃっています。私も、単に取締りが増えたから、検挙が増えたからというだけではちょっと根拠が弱いのかなと思った中、こういうお話をされていましたので、その思想的な部分についてもお聞かせいただければと思います。
○小林参考人 御質問ありがとうございます。大麻が増えているということの一つの理由としては、薬物乱用の中にも、やはり流行とかファッションがございます。昔はシンナーが若者の一番、大流行だったわけですけれども、もはや今はもうシンナーは見られなくなっていまして、一つのトレンドとして、今実際、大麻や市販薬や処方薬に移行しつつある。だからといって、じゃ、かつての子供たちが生きづらくなかったのかといったら、そういうことはないと思います。ただ、一つ言えることは、より、ここ数十年の社会構造の変化の中で子供たちが心理的に孤立しやすい環境は実際にあるだろうと思います。それは、皆さん御存じのように、少子高齢化で、そもそも同胞の数が減っておりますし、ネット社会は非常に広まって、子供たち自身のリアルなつながりや、子供たちが地域の中で様々な自分の感情を受け止めてもらえる大人が減りつつある。そういった子供たちを取り巻く環境が、実はもはや我々中年の人間が子供の頃に過ごした時代とは大分変わってきているのではないか。そういったことの複合的な要因がありますので、一つの要因だけを捉えて言うことは難しいと思いますけれども、ただ、一つ、やはり、私が初診の患者さんから聞き取ってきた多くのそういった逆境体験の中身を見ますと、本当にもう非常に幅が広い。表面に表れないんだけれども、結構社会的には立派な立場のお父さん、お母さんでも、結構、家の中の閉ざされた密閉空間では暴力が満ち満ちていたりとか、そういったことを実際に患者さん本人から聞くことはございます。そういった意味で、非常に子供たちがSOSを出しづらい環境があることは、今日の薬物乱用の増加にはつながっているというふうに考えております。そしてまた、今回の使用罪に関する理念的な問題なんですけれども、何度も言いますが、刑罰で別に依存症が治るわけではない、あくまでこれは一つのツールとして、患者さんの困り感を高めるための一つの契機にはなるだろう。それぐらい、逆に言うと、市販薬や処方薬の依存症の患者さんを診ていく中で、彼らにとってのそれをやめるメリット、やめる理由が非常に乏しいがゆえに、逆に難治になっている、なかなかやめづらい、繰り返し繰り返しODをしてしまうというところはあると思います。そういった意味で、私たち依存症の臨床医は、ほとんど素手で戦っています。特効薬もありません。基本的には、患者さんの、どうしてそういったアルコール、薬物、ギャンブルがやめられないのかということの背景にある、それが彼らの生きづらさを緩和する上で役に立っているという彼らの心情を理解し、そのような状況にあっては誰にも助けを求めることができない状況にあって、人間以外のそういった薬物に助けを求めざるを得なくなった、その彼らの孤立感に共感することからスタートしなければ、やはり治療的な力を発揮することはできません。その上で、やはり、患者さんたちが非常に人に助けを求めない生き方を選び続けるのか、それとも、それを選び続けると様々な社会的なデメリットがあるのであれば、じゃ、人に助けを求めるという新しい医療を受ける、新しい支援を受けるという方向に踏み出すのか、そういった彼らの中でのデメリットとメリットを勘案する中で、使用罪というのは一つの方法にはなる。そして、これを通して、是非、司法の方々にも、単なる刑罰では終わらない問題が実は多数含まれているんだということに関する理解を広めていっていただきたい。そして、具体的な法の運用に関しては、私たち依存症の臨床現場にいる者の意見や様々なそういった考えが反映されるような、願わくば合議体のようなシステムを、法の運営においては是非検討いただきたいなというふうに医療の現場からは思っております。
○田中(健)委員 ありがとうございます。先生のお話の中にもありましたが、ただ刑罰を与えるだけでは意味がない、それでは解決しないという中で、先ほど来、太田先生からも、ダイバージョンのチャンスをつくるというお話がありました。これは先ほど御説明をいただきましたけれども、実はこのお考えは田中さんも提案しておりまして、治療的ダイバージョンのチャンスをつくるべきじゃないかということで、薬物乱用が短い初犯など軽微な事案については、執行猶予期間中に医療機関などの依存回復プログラムを受講させて、不起訴になるような仕組みづくりも必要じゃないかとおっしゃっていましたが、これらについて御意見をいただければと思います。
○田中参考人 ありがとうございます。やはり、いきなり逮捕されてしまうと、本当に仕事も失い、教育の機会も失い、場合によっては家族も失いということで、余りに失うものが大き過ぎるというふうに私たちは考えています。なので、執行猶予がつくとしても、いきなり実刑判決ではなくて、きちんと治療プログラム若しくは生活改善のプログラム、認知行動療法などに取り組んでいる場合に、そして、その取組姿勢が良好な場合には、処分に対して不起訴というような、先ほど島根県警の例にもありましたが、あちらの事例も、本当に少量の所持だったということで、結果として不起訴になっております。ですので、そういった処分ということも考えていただければなというふうに願っております。ありがとうございます。
○田中(健)委員 ありがとうございました。もう一点、田中さんにお聞きをしたいんですけれども、相談支援づくりということで、先ほど、警察への通報や行政機関への届出を恐れて治療を避けている人もいるんじゃないかというお話がありました。一方で、小林先生などは、ハームリダクションをやっていますということで、覚醒剤を使ってきた人も絶対に通報しない、医療の現場では罰則を与えないということもおっしゃっていまして、これも私、皆さん、同じ立場なんだなということは分かりましたけれども、実際、その支援をされている中で、そうはいっても、医療機関や相談支援機関、若しくは大学の問題もありましたけれども、大学の医療機関というところが、なかなか、守秘義務というのが本当に守られているのかという心配もありますが、これらの現状についてもお聞かせいただければと思います。
○田中参考人 現状は、守秘義務が優先されていることの方が少ないと思います。日大の事例を見てもお分かりのように、学生が正直に相談をしてしまえば通報されてしまうというのが現実で、また、私も支援に関わっていて、入院された、本当に覚醒剤のODというかで倒れてしまった方が病院に救急で運ばれたら、いきなり通報されてしまったというようなことがありましたので、現実には、今ほとんど通報してしまう病院の方が多いのではないかなというふうに、病院だけに限らず学校とかでも多いのではないかなというふうに思っております。一部の依存症のことをやっていらっしゃる機関の先生たちは通報しないということがありますけれども、それは本当にごく少数だと思います。
○田中(健)委員 ありがとうございました。田中さんの方からこの資料の「ダメ。ゼッタイ。」のポスターを見させてもらって、確かに毎年どんどんどんどんグロテスクになっていくのを見ておりましたが、これについても実は太田先生も小林先生も、駄目、絶対だけでは解決しないんだということをおっしゃられていましたけれども、これについても一言ずつ、二人からもらえればと思います。
○太田参考人 駄目、絶対というのも、一次予防の効果を上げるという点では、日本ではある程度成果を収めてきていると思います。だからこそ、欧米では非常に大麻そのほかの薬物の生涯使用率が、経験率が非常に高いのに、日本では非常に低いということも、こういった薬物乱用防止教育に一定の効果があるというふうにやはり評価した方がいいと思っております。ただ、問題は、駄目だけで終わってしまっているのが駄目で、要するに、薬物を使った場合のこと。昔は、そういう教育をすると、薬物を使うことを何か容認しているかのような雰囲気を醸し出すから駄目だというふうな主張がありましたけれども、私はそんなことはないと思っていて、やはり、いろいろな問題を抱えている子供や大人がいる中で、薬物を使ってしまった場合にどうしたらいいのか、様々な支援体制がきちんとあるということを学校の教育、それから国民に対するいろいろな広報啓発でもきちんと、二次予防の重要性と必要性と、それから先ほど言った守秘義務のことも含めて徹底していくこと。要するに、子供も含めて、安心して相談や治療ができるという体制づくりが必要だと思います。先ほど大学という話がちらっと出ましたけれども、最近、学生を見ていて、大学生でも非常に人に頼れない子供が増えている、人に弱みを見せられない学生が増えているなというふうに、この三十年で大きく変わってきたように思います。そういう人でも、こういうふうにすればいいんだよということをきちんとルートを示していくということが、やはり薬物乱用の防止、それから再乱用の防止につながると思っております。
○小林参考人 依存症医療に従事している者から見ると、やはり、駄目、絶対の言葉の背景にある、意思を強く持てばやめられる、そういったフィロソフィーをどうしても強調されてしまうことは非常に懸念しております。意思の問題ではないです。やはり、彼らは生きづらいから、辛うじてそれだけしか助けを求められないから使っているわけなので、むしろ、しんどいときには、助けてもらいたいときには必ず助けてくれる人がいるんだということをメッセージとして私は発していくべきだというふうに思います。衝撃的だったのは、とある学校で、依存症は治療できるんだということを言わないでくださいと言われたことがあるんです。治療できるということは使ってもいいというふうに誤解されかねないからみたいな、余りに、ちょっと私は驚いてしまったんですけれども、それぐらい、やはりまだまだ医療も司法も、そして、医療も、医学部においても、依然として依存症の授業が行われているところは極めてまれです。そういった意味で、まだまだ医療現場において依存症という疾患の特殊性を幅広く、まだまだ社会全体のリテラシーを上げていく必要があるということをこの場をかりてお伝えしたいと思います。
○田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。

○田畑委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、五人の参考人の皆様、大変貴重なお話をありがとうございました。田中参考人から、当事者の話を聞いてほしいというお話がございましたが、薬物依存症の御家族にとって一番のお困り事というのはどういうことなんでしょうか。
○田中参考人 本当に、今、薬物依存症の御家族に対するケアや支援というのがほとんどないのが現実なんですね。なので、私たち、やっとのことでつながってこられた御家族のお話を聞くと、まず、公共の相談機関、例えば精神保健福祉センターのようなところに電話をしたら、その電話が盗聴されているんじゃないかとか、録音されているんじゃないかとか、電話をしたらすぐに通報されるんじゃないかということを心配してしまって何年も電話ができなかったというようなことをおっしゃるんですね。私たちも、相談してください、絶対通報しませんということをホームページなどに掲げているんですけれども、そういうところにたどり着けるまで本当に長い時間がかかって、物すごく状況が悪くなってしまったということ。あとは、やはり、こういった問題に関わってくださる、今、司法の問題が出ているわけですけれども、司法の方の専門家の方たちも全く分かっていないので、例えば、保護観察処分になったとしても、保護司さんが、お母さんの育て方が悪いから薬物なんかに手を出したんですよとか、御家庭の教育の在り方が悪いとか、お母さんの愛情が足りなかったのではみたいなことを言われてしまって、家族の人たちは、やはり自分が悪いんだということを責めて、病院とかそういったものにつながっていくということが難しいということが一番大きな問題だと思っております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。加えて、田中参考人から、駄目、絶対、先ほども話題になっておりましたけれども、この啓発が偏見を助長している、こういうお話がございましたけれども、この弊害について詳しく教えていただけるでしょうか。
○田中参考人 駄目、絶対と言って手を出さないのであれば何も問題はないというか、駄目、絶対と言って手を出してしまう人を救うことが大人の考えることだと思うんですね。例えば、薬物のこと以外で、駄目、絶対、闇金とか。駄目、絶対、殺人とか。そんなキャッチコピーをやっているところなんかありませんよね。なので、駄目、絶対というのは余りにも単純なコピーで、その裏にある本当の意味というのが取りにくく、そして、駄目人間という方にどんどんどんどん進んでしまったんです。これは三十年前に厚労省が電通と一緒に仕掛けたキャッチコピーですが、電通のこのコピーを作った方が、このコピーには効果がないとおっしゃっているんですね。なので、もうこのコピーを変えるべきだというふうに思っています。三十年間も同じコピーでやっていて、これはもう変えるべきだというふうに思っています。そして、駄目、絶対という、薬物依存症者の人権を否定して、こんなになったら二度と、人生はもう終わりだよというのがペアになっているんですね。一度でも手を出したら人生破滅、人生終わりというのをペアにして、その脅しがいいことだと思っているんです。だから薬物の依存症の人たちは諦めてしまうんですね。自分はもう回復できない、こんな人間は最低だと。私たちの方でも、こういった運動で声を上げると、もう自分は無理だから放っておいてくれというような電話をいただくことがあるんです。その絶望を皆さんお分かりいただけるでしょうか。ですから、こういう分かりやすい、そして誤解を招くようなコピーを変える時代が来たというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。あと、田中参考人のお話の中でも日本大学の大麻所持事件への言及がございましたが、今回の日本大学当局の側の対応についてどうお考えでしょうか。
○田中参考人 やはり、日本大学の先生方は、あのように実名なんかを報道機関に渡してしまったというか、逮捕に至ってしまったので仕方がないんですが、学生から相談があった場合に、あれを、捜査機関に情報を渡すということは必要なかったのではないかなと。むしろ、薬物問題の専門家に相談して、彼らに対してどのような教育をしたらいいのか、彼らがどのような問題を持っているのか、例えば、カウンセリングや認知行動療法などで再発を防止するべきではなかったかな、それで彼らの将来ある身ということを守ってあげる必要があったのではないかなと。教育者としては、捜査機関に名前を出すよりも、やはり相談機関に、薬物依存症の専門家のところに相談に行くべきだったというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 次は、太田参考人と小林参考人と田中参考人、三人にお伺いしたいと思います。依存症、アルコールもギャンブルも薬物もあるわけですけれども、その中で、大麻は今回、使用罪が設けられるということになっているわけですけれども、有害性だとか、社会に対して与えている犯罪の統計なんかも今日、田中参考人からも紹介があったわけですけれども、刑罰、それぞれの依存に対しての刑罰に様々差があるわけですけれども、このことについてはどうお考えなんでしょうか。
○太田参考人 それぞれの犯罪に対する刑の重みについては、やはり、犯罪とされる行為の社会や本人に対する影響の大きさとか責任に応じて決められているというふうに承知しておりますので、様々な依存の中の行為にも様々な態様があって、それをひとしく同じような、依存という問題からすればいいというのは、これはどちらかというと予防的な発想でございまして、あくまでも犯罪と刑罰制度というのはその者が行った行為責任に対する制度でございますので、そういった点から差をつけざるを得ないという面があろうかと思います。ただ、それはあくまでも刑罰制度として、刑法とかいろいろな法律で規定されている刑罰としての法定刑の話でありまして、実際には、各事件において、それをどのように適用するかということにおいて様々な事情を考慮しているというふうに承知しております。特に、先ほども申し上げましたけれども、日本では、大麻については三〇%が起訴猶予になっておりますし、起訴された場合でもほとんどが執行猶予ということになっております。そのほかの薬物でも、起訴猶予率は低いんですが、執行猶予率が非常に高くなっております。ただ、問題は、その後の、保護観察ないしは処遇とか治療に結びついていないというところが問題であります。私も、刑事規制だけで全て解決できるとは全く思っておりませんで、例えば、一定の非常に反跳が軽い薬物の使用とか所持の場合には、私は、場合によっては起訴猶予にして、海外で広く行われているような、いろいろな、薬物に対する防止プログラムを受けることを条件として起訴猶予にしますよという制度を日本でも導入すべきだというふうに思っております。そうすれば、前科もつかず、裁判も行われませんので、社会復帰に対する障害も格段に低くなるというふうに思っておりますので。一番問題が大きいのは、起訴して、刑を科して、保護観察もつけずに何もしないというのが一番大きいと思っておりますので、刑事手続に乗ってしまった者に対しても、できるだけ、犯罪であることは前提としなければいけないんですけれども、その者に対して、個々の状況に応じて、場合によっては刑罰を回避するような、それで、回避しただけで終わりでは駄目で、それに対して処遇とか支援につないでいくという仕組みづくりが必要だと思っております。
○小林参考人 古くは禁酒法がアメリカで失敗したのと同じように、使用者が圧倒的に多い状況ではそういった犯罪化というのはもう無効だということは、まさにバイデン政権が認めているとおりだと思うんですね。もし日本も大麻の生涯経験率が四〇%を超えるような社会になってしまっていたら、私もここで、使用罪については反対したと思います。ただ、日本は一%台です。この状況において、今まだ司法がおせっかいの力を、一%台だったら発揮し得る。これが四〇%台になったらもうおせっかいも意味がなくなってしまう。そういった理由での、私は、アルコールやあるいはニコチンとかいろいろなほかにも害があるものは幾らでもありますけれども、それと大麻はどうなんだというところの唯一の論点は、ここの、どれだけの生涯使用率なのか、それを司法で対応することの有効性がどれぐらいあるのか、そういったプラグマティックな観点がやはり必要だというふうに考えます。
○田中参考人 ありがとうございます。私は、おせっかいを焼くなら、刑法ではなく、三次予防でやればいいのではないかというふうに考えております。また、宮本先生の御質問にありましたように、刑罰に余りにも差があるということで、先日、闇カジノの経営者が長野県で捕まったんですけれども、闇カジノの経営者で執行猶予がついて、求刑は一年だったんですけれども、執行猶予は三年です。これは、大麻所持の某有名人と全く同じ判決です。闇カジノでたくさんの被害者を出しているにもかかわらず、そんな軽微な犯罪なんですね、ギャンブルにおいては。ところが、大麻使用罪は、自分以外は傷つけている人はいないわけですよね。被害者を生み出しているわけではない。それなのに、これだけの重罪を科されている。今現在、十分に不平等だというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。時間なので終わります。

○田畑委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 無所属の四人で会派を組んでいる有志の会の福島伸享でございます。五人の参考人の皆さん、今日は有意義なお話をありがとうございます。早速質問に入らせていただきますけれども、最初に小林先生にお聞きをしたいんです。この間、バズフィードというニュースのインタビュー、先生のやつを読ませていただきまして、大麻しか使われない人も一定いるけれども、最初から健康に問題を抱える人はほとんどいないとか、あるいは、まともに依存症の診療をやっている人間だったら、大麻のみの使用だとコントロールできていて、問題を起こさないということは分かっていますとおっしゃっていて、医学上いろいろな問題はあるんでしょうけれども、そうしたことをおっしゃっています。司法の強制力を使ったおせっかいとしてやるんだと。特に、今おっしゃっていらっしゃいましたように、アメリカほど使用率が上がっていない今だからこそやるんだということをおっしゃっていましたが、ただ、ほかの麻薬と同じ扱いになると、先ほど来議論されているように、いきなり刑罰、懲役の刑罰がつく罪になるわけですけれども、これは果たしておせっかいなのかなと。先ほど田中さんからもありましたけれども、もっと別のやり方があってもしかるべきじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○小林参考人 既にお話ししているように、大麻は短期的には大きな影響が出ないんですね。使い続けて習慣化していく中で影響が出てきます。そういった意味では、特に若年で、保護者が気づく、学校が気づく、そういって医療につながった段階では、確かに、御本人には何の困り感もありません。それが、逆に言うと、医療機関で困っているポイントです。先ほどの法の運用に関しましては、実際にすぐに厳罰化するということに関しても、私は全く、それを別に要求しているわけではございません。あくまで、今回の司法対応をきっかけに、普通に刑務所に行かないために適切な医療や福祉の支援を受けるというダイバージョンがここで実現されることを、それで、願わくば、これが大麻にとどまらず、実は、覚醒剤等ほかの違法薬物に関しましても、より、刑務所や刑罰に行くのではなくて、きちんと医療や福祉に行けるような呼び水となることを私は期待したいと思います。
○福島委員 ありがとうございます。もう一点、同じニュースのところで、大麻のあり方検討会で松本先生、第一人者が使用罪に反対していたところ、厚労省が困るから委員が替わったのだと思うというふうに発言されていますけれども、それは事実なんでしょうか。
○小林参考人 恐らく、こういった刑事政策、違法にするということが最終的には患者さんの回復に資するというふうな観点を考えたときに、様々な医療の立場で一つの意見だけが表明されてしまうということはやはり問題だろうと。すなわち、臨床現場においても、この使用罪に関しては様々な意見があります。ですので、賛成する、反対する、それぞれの意見がきちんと表明される機会がやはり必要だというふうに私は考えていますので、それを反映したものだというふうに思います。
○福島委員 ありがとうございます。次に、田中さんにお聞きしたいんですけれども、本当に私、現場の、関わってきた方の声は大事だなと思って、私自身、立派な大学を卒業しただけの、頭でっかちの政策論議をしているんじゃないかと改めて反省した次第であります。そうした観点から、先ほどの小林先生との質問と同じなんですけれども、今回の立法プロセス、厚労省の検討プロセスについて思うところを述べてください。
○田中参考人 先ほどのときにも申し上げたとおり、一番この問題で困っているのは、薬物の問題を抱えた御家族だと思うんです。けれども、その御家族が大麻のあり方検討会には誰も入れなかったというようなことがあり、また、松本俊彦先生も使用罪は作るべきではないということを強調されていたと思うんですけれども、やはり、現場感があって、一番私たちがこの薬物問題で頼りにしているのは松本俊彦先生ですので、松本俊彦先生が当事者や家族のこと、気持ちを代弁してくださっていたのではないかなというふうに私たちは考えております。なので、大麻のあり方検討会は、本当に、学者の先生方とかそういった先生方ばかりが占めていて、ちょっと、メンバーを見ると、一体この先生は何で入ってこられたんだろうと思うような先生方もいらして、そして、何度も繰り返しますが、本当に一番困っている家族が入れなかったということは非常に残念に思っております。
○福島委員 ありがとうございます。やはりそれが当事者の声だと思うんですね。ですから、新たに使用に対して刑罰を科すということにはそれなりの合理的な理由がないと、我々立法府としても、なかなかそこは慎重に考えなければならないのかなという思いにも、今日お話を聞いてなりました。そこで、太田先生、使用罪がないから使用が認められているわけではないとさっきおっしゃったんですけれども、法学者として、罪刑法定主義の観点から見て、それでよろしいんでしょうか。
○太田参考人 私が申し上げたのは、大麻取締法で所持とか譲渡し、譲受けが犯罪として禁止されているということは、要するに、持っていることも、人に渡しても、人からもらってもいけないというのは、なぜそういうものが罪として規制され、刑罰が科せられているかというと、別に、大麻を見て楽しむのを禁止するためではなくて、大麻を使用することを防ぐために所持や譲渡し、譲受けを禁止しているというふうに理解している、そういう趣旨で申し上げた次第でございます。
○福島委員 でも、そうであれば初めから使用が禁止になるわけで、我々法を扱う者は今の法律の条文に忠実であるべきなんじゃないかなと、私は個人的に思います。法律の条文のない刑罰について、さも禁止されたように言うのであれば、立法府の立場として、そこに合理性があるのであれば立法措置を行うべきであるし、それをもう何十年もやってこなかったというのはそれなりの理由があるという前提で法律改正の議論をしないと、私は、全ての罪刑法定主義なり立法主義の前提はおかしくなっちゃうと思うんですね。その上でお伺いするんですけれども、このあり方検討会報告書では、制定時に大麻の使用に対する罰則を設けなかった理由は現状においては確認されず、大麻の使用に対して罰則を科さない合理的な理由は見出し難いとなっているんですね。理由は分からないけれども、でも罰則を科さない合理的な理由は見出し難いという論理が、私は一番合理的じゃないと思うんですよ。やはり、罰則を科す合理的な理由がなければ駄目で、さっき先生がちょっとおっしゃっていましたけれども、それまでは農産物としてしか扱っていなかったからそこに規制がなかったけれども、これこれこういう合理的な理由があるから規制しますということなら分かるんですけれども、それをすっ飛ばした上で、使用がなかったのは、単に、理由は分からないけれども合理的と言われると、恐らく、我々国会の中で様々な立場の方の御意見を聞いて刑罰をかけるという重い改正をやるときに、それに反対する人や、そこに問題を感じている人の説明になかなかならないと思うんですね。私は、だから、逆に、厚労省が今回の取りまとめをするに当たって、そこをもう少し、なぜ使用に刑罰が今までかかっていなかったのか、今回どのような事情があって刑罰をかけるかというそこの論理構成をもっともっと緻密に作るべきだったんじゃないかなと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
○太田参考人 先ほども意見陳述の際に申し上げましたけれども、実は、日本では戦後、大麻が麻薬として使用も禁止され、犯罪とされて、刑罰も法定されていました。それがどうして落ちてしまったのかというのは、当時の国会なんかの答弁を見てみますと、麻薬とかは、要するにモルヒネとかがございますので規制対象は医療従事者である、それに対して大麻というのは、要するに繊維を取るための農業であるから農業従事者を規制する必要があるので、それで免許制にすることによって不正取引と不正使用を規制することが望ましいというような答弁があったというふうに承知しておりますので、こういうことが一つの立法事実になっているのかと思います。
○福島委員 それでも、どうも、話を聞いて、なぜ使用が当時禁止されなかったかというのは謎のままなんですけれども、これから法案の審議、また私、登場いたしますので、短時間でありますが、しっかり議論してまいりたいと思います。参考人の五人の先生方、どうもありがとうございました。

○田畑委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。