2023年11月10日 衆院厚生労働委員会 「依存症治療に逆行」 大麻法改定案が可決 宮本徹議員反対

配付資料 出典:東京新聞2023年11月9日付
配付資料 出典:松本俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長)提供資料
配付資料 出典:一般社団法人ARTS「『大麻使用罪』創設に関する緊急要望書」

 大麻取締法などの改定案が10日、衆院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民の各党の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
 改定案は、大麻由来の医薬品の使用を解禁し、現在原則禁止されている所持・栽培・譲渡への罰則を強化するとともに、新たに「使用」も罪に加えます。欧米では大麻成分の医薬品が難治性てんかん治療薬として認められていますが、日本では医療目的の大麻使用が禁止されてきました。
 日本共産党の宮本徹議員は、医療用大麻解禁には「日本てんかん協会などの強い要望が出ており賛成」と述べました。
 使用罪の新設や厳罰化には依存症の支援団体などが反対しています。当事者や家族が相談したくても通報・逮捕を恐れて相談しづらくなり、治療につながりにくく、偏見・差別を助長し、社会復帰を妨げることなどを理由に挙げています。
 宮本氏は同日の質疑で、国連人権高等弁務官事務所が「薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらす」(6月23日)と指摘しており、「薬物依存症の人に必要なのは刑罰ではなくて治療ではないか」と追及。武見敬三厚労相は、依存症当事者などから医師や自治体への相談の守秘義務に関し「対応にばらつきがある。治療に配慮し全国共通の指針を検討する」と述べました。
 宮本氏は討論で、法案策定過程で厚労省が依存症支援団体のメンバーを排除したことに触れ「結論ありきの出来レースだ。使用罪を削除し、関係者で徹底的な議論を求める」と表明しました。

以上2023年11月11日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年11月10日 第212国会衆院厚生労働委員会第3号議事録 宮本徹法案質疑抜粋≫

○大岡委員長代理 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。大麻草からできた医薬品の解禁は私たちも当然だと考えておりますが、大麻について新たに使用罪を設けることについては、依存症支援団体などから批判の声が上がってまいりました。まず、立法事実についてお伺いしたいと思います。大麻所持での検挙数は増えておりますけれども、大麻の使用が増えることでどんな問題が国内に生じているんでしょうか。病気が増えている、暴力が増えている、交通事故が増える、こういうことは起きているんでしょうか。
〔大岡委員長代理退席、委員長着席〕
○城政府参考人 お答え申し上げます。近年の大麻事犯の検挙者数は、覚醒剤に迫る勢いで増加傾向を示しておりまして、令和三年には過去最多の検挙者数を記録をいたしまして、今まさに大麻乱用期の渦中にあると言える状況だと承知をいたしております。一方で、海外に比べていまだ大麻の生涯経験率が低い我が国におきましては、大麻に起因する病気や暴力、交通事故などの影響までが社会で顕在化している状況にはないと考えております。しかしながら、大麻の乱用自体は人体に対して有害でありますことから、大麻事犯の増加は憂慮すべきことと考えております。
○宮本(徹)委員 病気や暴力や交通事故が顕在化しているわけではないという話なんですね。午前中の参考人のお話の中では、警察庁の発表では、犯行の原因、動機について、薬物依存よりもギャンブル依存の方が多かった、こういう話なんですね。この間、カジノは合法化に道を開く、その一方で新たに大麻に使用罪を設ける、大変ちぐはぐなことが進んでいるのではないかなということも感じております。大臣にお伺いしますけれども、大麻使用罪を設けることのデメリットについてはどうお考えでしょうか。
○武見国務大臣 大麻の不正な施用を法律上禁止することで、若年層を中心とした大麻事犯の更なる拡大への歯止めになる、まずこれが一次抑止として私どもが期待しているところであります。その一方で、審議会の議論では、薬物を使用した者を刑罰により罰することは、薬物を使用した者が孤立を深め、社会復帰が困難となり、スティグマ、偏見を助長するおそれがあるという意見もございました。そのため、厚生労働省としては、今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略の下で、関係省庁とも連携をし、大麻を含む薬物乱用者に対する回復支援の対応を推進をし、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援策も併せて充実させてまいりたい、そう考えております。
○宮本(徹)委員 大麻使用罪を設けることのデメリットについて、孤立を深め、社会的復帰を妨げ等と言ったわけですね。六月に出された国連人権高等弁務官事務所の声明では、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらします、こう指摘されていました。これは午前の参考人質疑でも紹介されました。この指摘については、大臣はどうお考えなんでしょうか。
○武見国務大臣 御指摘の声明は、薬物の所持や使用の非犯罪化や刑罰の軽減を提言したものと承知しておりますけれども、この提言は各国に履行義務を課すものではございません。一方、条約の締約国会議でございます国連麻薬委員会では、各国の処罰について、国内法に従い、医療サービスなどへのアクセスにつながるよう、有罪判決や処罰に関する代替措置や追加措置を講ずることを求めております。これを受けて我が国では、この追加的な措置に相当する対応として、関係各府省が薬物使用者等に、罪を犯した者の地域社会への移行や再乱用防止のための指導を行うプログラムを実施してきております。厚生労働省としては、今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略の下で、関係省庁とも連携をして、大麻を含む薬物乱用者に対する回復支援の対策を推進をして、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援等も併せて充実させていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 いろいろな対策を打っても、結局、新たな犯罪を作っていく、大麻使用罪を設けていくということによって、今指摘されてきたような弊害が、私は拡大していくことは避けられないというふうに思いますよ。それが国際的な到達点ではないかというふうに思います。検討会の取りまとめでも、今大臣がおっしゃったことが言われているわけですよね。大麻を使用した者を刑罰に罰することは、大麻を使用した者が一層周囲の者に相談しづらくなり、孤立を深め、スティグマを助長するおそれがある、こういう意見が記載されてきたわけです。ですから、結局、大麻使用罪を設けると、本来、治療につながらなければならない依存症の患者の皆さんが誰にも相談できなくなって、結果として治療につながりにくくなる、このことは避けられないんじゃないですか。
○城政府参考人 お答え申し上げます。薬物の依存の方につきまして、犯罪を犯したことを切り離して依存症の患者様として考える場合、治療などの支援を提供することが必要なことは言うまでもないことでございます。審議会の議論におきましても、そういった指摘もございますが、刑事司法の手続がないと依存症の治療につながりにくいといったことも指摘をされていたところでございます。こうした治療や断薬プログラムなどの支援を行うといったことが必要であるということ、これまで第六次薬物乱用五か年戦略等でも記載をしておりますので、こういったことにつきまして、関係省庁連携して、一層の支援のための取組を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 言っていることがよく分からないんですけれども、早口過ぎて。いずれにしても、これは、審議会でも国際的にも指摘されているように、やはり医療アクセスを、結局、相談しづらくなる環境をつくることによって妨げていくというのは間違いないことだと思うんですね。加えて、使用罪の創設で健康被害の悪化が懸念される、こういうことも指摘されているわけです。資料の二ページ目ですけれども、これは今日午前中の参考人質疑でも少し紹介されておりました。薬事法を改正して危険ドラッグを禁止して、市中での流通というのは一旦なくなる、今、若干増えてきていますけれども、そういうことになったわけです。ただ、薬物依存の患者数自体は、左のグラフを見ていただければ分かりますように減っていないわけですね。結局、処方薬や市販薬を使用する薬物依存患者が増えて、薬物依存の患者数そのものは減っていないわけですね。つまり、ある薬物の使用を禁止すれば使用する薬物が他の薬物に替わっていって、患者数そのものが減るという単純なものではないということだと思うんですけれども、このことはお認めになりますよね。
○城政府参考人 お答え申し上げます。御指摘いただきましたとおり、ある薬物の規制強化によりまして、新たに他の未規制物質等が乱用される可能性があることについては承知をしているところでございます。その上で、厚生労働省におきましては、保健衛生上の危害が発生するおそれがある未規制物質の指定薬物への迅速な指定等を推進し、他の薬物への移行も抑止するための取締りを強化しているところでございます。また、薬物乱用そのものを未然に防止するための予防啓発活動を関係機関と密接に連携し、取り組んでいるところでございます。引き続き、これらの取組を通じまして、薬物乱用の根絶に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 私も先生にお話を聞いたら、日本人というのは、薬物が嫌いな国じゃなくて捕まりたくない人たちの国なんだ、ですから、捕まらなければハイになりたいとか薬を使って気分を変えたいと思っている人はたくさんいるんだ、規制しても規制してもほかの薬物に替わっていくだけじゃないか、こういうお話を伺いました。今日配っている資料の一ページ目は、ちょうど昨日の東京新聞に出ていた記事です。今日も話題になっていますけれども、合法大麻蔓延と報じられているわけですね。CBDについても、熱やあるいは酸、これを加えていけばTHCに似たものができる。つまり、さっきの話と併せれば、薬物は規制されれば規制されていないところに行くという話ですから、こういったものがどんどんどんどん作られていくという、イタチごっこになっていくと思うんですね。そうすると、大麻使用罪を設けることによって、合法CBDからこうした脱法的なTHCの類似物が、どんどん新たなものが作られていく、そしてより危険なものが流通していく。こうなると、結果として、今の大麻使用よりも、健康被害という側面から見れば、悪化するということになるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○城政府参考人 本改正法案におきましては、大麻の不正な使用に対しまして施用罪を適用することとしております。これによりまして、若年層を中心とした大麻事犯の拡大への歯止めにつながると考えているところでございます。一方で、昨今、大麻の有害成分であるTHCに類似した合成化合物が国内外で流通をしておりまして、大麻の取締りの強化により、これら新しいタイプの危険ドラッグを含む未規制薬物の乱用に移行するおそれがないとは言えないと考えております。こうした未規制薬物に対する取締りを強化するとともに、その有害性や危険性などを広く周知することで、乱用防止につなげてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ですから、大麻使用罪を設けたらこういう新しいものに移行することは否定できないわけですね、厚生労働省も。より健康にとって被害があるものにどんどんどんどん移っていくということになると、麻薬取締法の目的というのは保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図るということですから、法律の目的の逆のことが使用罪を設けることによって起きる、こういう危険もあるということだというふうに私は思います。さらに、今日議論が出ていましたけれども、今、薬物絡みで一番若者たちの健康を損なっているのは市販薬だと。オーバードーズによって救急搬送される患者が増え、死亡事例も出ていると。大麻使用罪の創設によってこういう市販薬のオーバードーズが増えていく、こういう可能性もあるわけですね。そうすれば、これも健康被害が拡大していくということになっていくわけです。大麻使用罪を作れば、大麻の使用をやめようという人はそれなりにいるのは間違いないと思いますよ。依存症になっていない人はやめるでしょう。ただ、依存症の人はやめられないわけですね。結果、大麻使用罪で逮捕されるのは依存症でやめられない人になるんじゃないか、こういう指摘もあるわけですね。大臣、私は、薬物依存症の方に真に必要なのは刑罰ではなくて治療だと思うんですけれども、その点はいかがですか。
○武見国務大臣 私は、やはり、法律上のまず一次抑止効果というものについては、今日、我が国では、他の欧米諸国などと比較した場合に、こうした麻薬であるとか大麻を使用する人の数は、増えてはきておりますけれども圧倒的に少ないわけでありますから、この状況を維持するためには、こういった一次的法的抑止の強化を図るためにこの施用罪に適用するということは、私は正しい選択だと思います。しかし、委員御指摘のとおり、それが結果として、こうした治療をしようとする動機を逆に抑えてしまうというようなことがあってはなりません。したがって、この点に関しては審議会でも様々に議論がされてきましたけれども、依存症の治療等にきちんとつながるように、常にこうした司法の当局との連携を図りながら、そして、こうした依存症に関わる人たちに対する救済の仕組みというものをやはり周知徹底させていく、これが今年八月に策定された第六次薬物乱用防止五か年戦略の基本的な考え方でございますので、この考え方と組み合わせてこの法律を運用することで御懸念の点を解消をし、そして、一次抑止効果については確実に効果を上げる、これが私どもの考え方です。
○宮本(徹)委員 ですから、繰り返しますけれども、やはり、刑罰を新たに作っていくと、そのことによって、治療につながるのは、本当につながりにくくなるわけですよ。幾ら努力したって、刑罰になれば相談しづらくなっちゃうのは誰でも容易に想像できる話ですからね。そこは本当に私は考え直していただきたいんだと思います。その上で、少なくとも、やめられなくて困っている人たちが、通報されないと安心して相談したり、治療を受けたりすることができる社会には最低限してほしい、こういうお話も聞いております。今日、西村議員と大臣とのやり取りも聞いておりました。それを踏まえてお伺いしたいと思いますが、医療機関に相談があった場合、今日の大臣の答弁では、医師は、助けてほしい、治療してほしいと助けを求めてやってきたことについては、通報する義務よりも守秘義務だと大臣はおっしゃいました。これは大変大事な考え方だというふうに思います。この考え方を医療機関全体に通知で徹底していただけませんか。
○武見国務大臣 警察への情報提供の在り方と医師の守秘義務の問題というのが緊密に関わり合ってくるわけでありますけれども、医療機関や自治体ごとの取扱いに、確かにばらつきがあるということは承知しております。したがって、厚生労働省としては、薬物依存症の患者の治療継続に配慮をした警察への情報提供の在り方について全国的に共通した方針を示せないか、今、実は検討を始めております。
○宮本(徹)委員 是非、ここは、医療機関に助けてほしいと相談に来た方については通報はしない、これは医師の守秘義務が優先なんだ、これを確立していただきたいと思います。もう一つ、教育機関での対応の話も西村議員とのやり取りを聞かせていただきました。教育機関においても、捜査機関に通報する義務はない、公務員についても、告発しない裁量というのは否定されていない、こういうのが大臣の答弁で、これは非常に大事な答弁だと思います。ただ、一方で、今でも大学の中では、教育や更生の観点から告発しないという対応を取っているところもあるわけです。当然あるわけですね。ところが、それが、社会から隠蔽しているだとか非難される風潮が一方であるわけですよ。大学に相談してきても、大学で使われているのを隠蔽していると。こうなるとなかなか相談しづらくなるわけですね。今日、大臣は答弁で、大臣、聞いていてもらってもいいですか、今日の答弁を踏まえて聞いていますので。先ほど、文科省との相談をやっていかれるというお話がございましたが、文科省との相談だけじゃなくて、やはり社会全体に対してもそのことをアナウンスをしていく必要があると私は思うんですね。こういう、教育機関に相談があった場合は、それは守秘義務がちゃんと尊重されての対応というのが大事なんだ、通報しなきゃいけないということはないんだ、ここをやはり社会全体に是非アナウンスしていっていただきたいと思いますが、その点、いかがですか。
○武見国務大臣 今も申し上げたとおり、各都道府県ごとにばらつきがかなりあることは事実であります。したがって、これに対する全国的に共通の方針というものをつくる検討に入っておりますから、それがきちんとできましたら、当然これを全国的に周知徹底せしめ、ただ単に自治体の関係者だけじゃなくて国民に幅広く理解していただくための努力は、そこでも私は求められてくると認識をしております。
○宮本(徹)委員 それは教育現場も含めて様々な面でお願いをしておきたいというふうに思います。次の問題ですけれども、治療が必要な薬物依存の方を逮捕、起訴、刑罰を科すと、社会から一層孤立する、再犯リスクを高める、社会復帰を妨げていく、こういうことが繰り返し指摘されてきたわけですが、薬物依存になっても立ち直る上で居場所があるというのが非常に大事だという話をお伺いしました。例えば、薬物で少年院に入った子供でも、元いた学校に戻れた子たちは、その後はいいそうなんですね。大学まで進学していく。ですから、居場所を失わないということが非常に大事だという話をしました。ですから、薬物依存になっても、その後、仕事とか学校とか当たり前のレールの上に戻れていく、こういう可能性があるということが、再犯防止や更生にとっては非常に大切だというふうに思います。ところが、今回の日大の大麻所持事件のように顔写真と実名がさらされると、一生、今はネット社会ですから、デジタルタトゥーがずっと残り続ける、就職にも影響するということがずっと起きてしまうわけですね。そうすると、もう患者さんは薬は断ち切った、やめているにもかかわらず社会復帰、社会参加の道が困難になっていくという問題が生じてしまいます。今日は警察庁にも来ていただいていますかね。少量の大麻所持あるいは大麻使用、こういう逮捕について実名を公表したり実名をリークする、こういうのはやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○猪原政府参考人 お答えいたします。一般論といたしまして、警察が被疑者を逮捕しました場合にどのような報道発表を行うかにつきましては、各都道府県警察におきまして、個別の事案に応じ、捜査活動に与える影響や情報提供を行うことの公益性等を総合的に勘案し、適切に判断しているところでございます。
○宮本(徹)委員 今日の議論、何を聞いていたのかなと。武見さんだって、これから、こういう問題、社会に対して、やはり治療が大事なんだ、警察に通報するということじゃなくて治療こそ大事なんだということで、そういう方向でずっと考えようという方向になっているときに、その答弁はないんじゃないかと。公益ということを考えたら、その一人一人の薬物依存になった方々の立ち直りを支援していく、このことこそ最大の公益だと私は思いますよ。ここは、ちょっと大臣、今の答弁、どう思いました。警察ともちゃんと相談してくださいよ。
○武見国務大臣 警察は、警察として社会の治安、秩序を守る大変大切な役割を持っておるわけでありますから、その立場からのこうした御意見が今示されたものだというふうに思います。私どもも、基本的には、こうした大麻で依存するような方々が増えることを阻止し、そしてなおかつそれを法的に抑止する仕組みをつくる一方で、実際にこうした依存症になられる方々などを救済する仕組みをより丁寧に再構築をしていって、それによって実際にこういった社会の偏見なども是正をし、そして社会復帰が確実にできるようにしていくという政策を組み立てることが基本的な私どもの立場になる、そう思います。
○宮本(徹)委員 是非警察ともよく相談していただきたいと思います。それから、次の問題に行きます。配付資料で、最後に、大麻使用罪の創設に関する緊急要望書、二年前に出されたものですけれども、孤立する若者にワンチャンスの支援をというのが書かれています。今日も若干議論になっていましたけれども、支援団体からは大麻ダイバージョンを導入してほしいという強い要望が出ているわけです。通常の刑事手続に乗せて処理することを回避して、他の非刑罰的な方法を取ってほしいということです。実は午前中、参考人質疑がございました。与党、野党問わずの推薦人の方から同じように、大麻ダイバージョンを設けていくのは大事だと。起訴するのではなくて、起訴の手前にちゃんと医療機関などで依存症回復プログラムを受講させて、その状況によっては不起訴にする、こういう仕組みを設ける、これは、与党、野党の推薦どちらの参考人を問わず、大事だという答弁がありました。これは是非設けていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○田畑委員長 既に時間が経過しておりますから、簡潔な答弁をお願いします。
○吉田政府参考人 まず、前提として、現行法の下でも、大麻を含む規制薬物に係る罪の被疑者が依存症回復プログラムなどを受講した場合に、そのことを犯罪後の状況として起訴、不起訴の判断に当たって考慮することはあり得るものと承知しております。他方で、それを超えて、検察官が被疑者にそうしたプログラムの受講を例えば義務づける、命じるといったことになりますと、被疑者に対してそうした処遇を行う権限が検察官の持っている訴追裁量権、起訴、不起訴を決める裁量権に含まれるのかという問題などがございまして、慎重な検討を要するものと考えております。
○宮本(徹)委員 時間ですので終わりますけれども、大臣、この問題も是非、法務省も含めて相談していただきたいと思います。よろしいですか。うなずいていただけたらいいです。うなずいていただきました。時間になりましたので、終わります。

≪2023年11月10日 第212国会衆院厚生労働委員会第3号議事録 法案討論・採決抜粋≫

○田畑委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。これより討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。大麻取締法等改正案について反対の討論を行います。本法案は、大麻から製造される医薬品の使用を可能とするとともに、大麻について新たに使用罪を設け、現在ある所持罪等を重くするものです。大麻草から製造された医薬品について、日本てんかん協会など関係団体からは国内承認の強い要望が出されており、医療目的の使用に道を開くことは賛成であります。一方、新たに大麻使用罪を創設することに対しては、依存症患者支援に携わる多くの団体、個人、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会、日本医療ソーシャルワーカー協会などから反対の声が上がってきました。違法だと知りつつ薬物に手を出してしまう人は、心に痛みを抱え、薬物に頼らざるを得ない社会的に孤立した状態に追い込まれていることが多いと指摘されています。薬物依存症については、発生予防だけではなく、進行予防、再発予防の三段階の予防策を充実することが重要です。しかし、新たに大麻使用罪を設けることになれば、一層周りの方に相談しづらくなり、治療につながりにくくなることが指摘されています。また、薬事犯としてのレッテルで、スティグマを助長し、社会的孤立を一層深め、再び薬物を使用する悪循環に陥っていくことが指摘されています。支援団体だけでなく、国連人権高等弁務官事務所の声明においても、薬物問題への刑罰は既に社会から疎外されている人々に汚名を着せます、薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらしますと弊害を指摘しております。政府の薬物乱用防止五か年戦略においても、薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援による再乱用防止を目標に掲げています。大麻使用罪の創設は、弊害を深刻にし、この政府の目標への障害となる危険があります。使用罪の創設は、適切な治療と効果的な社会復帰支援を妨げることにつながり、賛成できません。必要なことは、薬物依存症の方が、誰もが安心して相談でき、早めに医療サービスにつながれる社会にすることであり、未来が奪われず再チャレンジできる社会にすることであり、何よりも、生きづらさと社会的孤立を生む社会を変えていくことです。加えて指摘したいのは、法案提出過程の問題です。厚労省における大麻等の薬物対策のあり方検討会では、委員十二名のうち、依存症患者支援に関わる三名の委員が使用罪の創設に反対し、使用罪の創設については検討会としての一致した見解は出せませんでした。これを受けて設けられた大麻規制小委員会では、使用罪に反対する立場の人を入れず、使用罪に反対しない人を集め、結論ありきの出来レースともいうべきものでした。薬物対策を練り上げる上で大事なことは、当事者家族を始め、薬物対策に関わる第一線の方々の知恵を集めることだと思います。本日の審議の中でも、賛成だと考えていた委員からも、賛成が揺らぐ状況だ、こういう発言もございました。法案の大麻使用罪の創設に係る部分については削除し、関係者で徹底的な議論をすることを求め、反対討論といたします。

○田畑委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○田畑委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。この際、本案に対し、古賀篤君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。野間健君。

○野間委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 各国において難治性てんかん治療薬として承認されている大麻から製造された医薬品について、我が国において薬事承認を受けた場合に備えて、その製造や施用が適切に行われるよう、免許制度等の流通管理の具体的仕組みを適切に運用すること。
二 今般の大麻から製造された難治性てんかん治療薬の処方については、今後の承認審査において、研修の受講等の一定の資格を満たす医師が行う等の要件の必要性について検討すること。また、小児のてんかん患者に関して、発作時の介助、急な発作に備えた生活環境整備等についての患者本人や家族への支援を検討すること。
三 第一種大麻草採取栽培者が大麻草の栽培に用いる種子等のテトラヒドロカンナビノールの含有量の基準や濫用による保健衛生上の危害が発生しない量として定めるテトラヒドロカンナビノールの製品中の残留限度値については、米国や欧州の基準等を参考に合理的なものとすること。
四 テトラヒドロカンナビノールの残留限度値を担保するため、その検査法や検査体制については、明確かつ実効性があり、事業者による対応が可能なものとすること。
五 カンナビジオールを使用した製品について、安眠等の機能を過度に強調した広告で消費者が惑わされることのないよう、監視指導を行うこと。
六 大麻草を活用した産業の育成を図る場合には、関係省庁が連携して進めるようにすること。
七 大麻の不正な施用に対する罰則について、大麻不正施用者が一層周囲の者に相談しづらくなり、その孤立を深め、偏見を助長するおそれがあるとの指摘があることを踏まえ、大麻不正施用者に教育プログラムや治療プログラム、就労支援プログラム等への参加等を推進する仕組みの導入、大麻不正施用者が安心して相談できる体制整備等について検討すること。また、大麻不正施用罪の検挙・立証に必要な証拠の研究等の適正な取締りを実施するための方法を検討すること。
八 大麻乱用者その他の薬物事犯者の薬物再乱用の防止のため、保護観察期間中における治療・支援につながるための働きかけの強化、保護観察期間満了後や満期釈放後の自発的な地域における治療・支援につながることができる取組の実施、保護観察の付かない執行猶予者や起訴猶予者に対する治療・支援等について、薬物事犯者に対する長期的な支援を目指して関係機関が連携しながら総合的な取組がなされるよう検討すること。
九 大麻に有害性はない、健康に良いなどといった誤った情報が氾濫し、若年者の大麻事犯が増加し続けている現状に鑑み、大麻の乱用について開始時期が早く、使用量が多く、乱用期間が長いほど依存症となるリスクが高まること等科学的根拠に基づいた大麻の有害性に関する正確な情報を取りまとめ、必要以上に薬物使用の恐怖を煽ることなく、若年者の視点を生かしながら、教育の現場等における分かりやすい乱用防止のための広報啓発活動等に取り組むこと。
十 我が国の薬物乱用対策は、違法薬物に手を出さない一次予防に重きが置かれた結果、薬物依存症者に対する差別を助長しているのではないかとの指摘があることを踏まえ、今後の対策に当たっては、一次予防のみならず、違法薬物を使用してしまった者の早期発見及び早期介入並びに早期治療を行う二次予防、薬物依存症者に対する再発防止や社会復帰等を支援する三次予防についても配慮して実施すること。
以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○田畑委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○田畑委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、武見厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武見厚生労働大臣。
○武見国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいります。
○田畑委員長 お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○田畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。