2023年11月10日 衆院厚生労働委員会 「依存症治療に逆行」 大麻法改定案が可決 宮本徹議員反対
配付資料 出典:東京新聞2023年11月9日付
配付資料 出典:松本俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長)提供資料
配付資料 出典:一般社団法人ARTS「『大麻使用罪』創設に関する緊急要望書」
<反対討論>
日本共産党の宮本徹です。大麻取締法等改正案について、反対の討論をおこないます。
本法案は、大麻から製造される医薬品の使用を解禁するとともに、大麻について新たに使用罪をもうけ、現在ある所持罪等を重くするものです。
大麻草から製造された医薬品について、日本てんかん協会など関係団体からは国内承認の強い要望が出されており、医療目的の使用に道を開くことは、賛成です。
一方、新たに大麻使用罪を創設することに対しては、依存症支援にたずさわる多くの団体、個人、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会、日本医療ソーシャルワーカー協会などから、反対の声があがってきました。
違法だと知りつつ薬物に手を出してしまう人は、心に痛みを抱え、薬物に頼らざるをえない社会的に孤立した状態に追い込まれていることが多いと指摘されています。薬物依存症については、発生予防だけではなく、進行予防、再発予防の3段階の予防策を充実することが重要です。しかし、新たに、大麻使用罪をもうけることになれば、いっそうまわりの方に相談しづらくなり、治療につながりにくくなることが指摘されています。また、薬事犯としてのレッテルで、スティグマを助長し、社会的な孤立をいっそう深め、再び薬物を使用する悪循環におちいっていくことが指摘されています。
支援団体だけでなく、国連人権高等弁務官事務所の声明(2023、6、23)においても、「薬物問題への刑罰は、すでに社会から疎外されている人々に汚名を着せます。薬物問題の犯罪化は、医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらします」と弊害を指摘しております。
政府は薬物乱用防止5ヵ年戦略においても、「薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援による再乱用防止」を目標に掲げています。大麻使用罪の創設は弊害を深刻にし、この政府の目標への障害となる危険があります。使用罪の創設は、適切な治療と効果的な社会復帰支援を妨げることにつながり、賛成できません。
必要なことは、薬物依存症の方が、誰もが安心して相談でき、早めに医療サービスにつながれる社会にすることであり、未来が奪われず再チャレンジできる社会にすることであり、何よりも、生きづらさと社会的孤立をうむ社会を変えていくことです。
加えて指摘したいのは法案提出過程の問題です。
厚生労働省における「大麻等の薬物対策のあり方検討会」では、12名のうち、依存症対策に当たる3名の委員が使用罪の創設に反対し、使用罪の創設について、検討会としての一致した見解は出せませんでした。これを受けて設けられた「大麻規制小委員会」では、使用罪に反対する立場の人を入れず、使用罪に反対しない人を集め、結論ありきの出来レースともいうべきものでした。
薬物対策を練り上げる上で大事なことは、当事者、家族をはじめ、薬物対策にかかわるの第一線の方々の知恵を集めることだと思います。本日の審議の中でも、賛成だと考えていた委員からも、賛成が揺らぐ状況だ、こういう発言もございました。
法案の大麻使用罪の創設にかかる部分については削除し、関係者で徹底的な議論をすることを求め、反対討論とします。
以上2023年11月11日付赤旗日刊紙より抜粋
大麻取締法などの改定案が10日、衆院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民の各党の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
改定案は、大麻由来の医薬品の使用を解禁し、現在原則禁止されている所持・栽培・譲渡への罰則を強化するとともに、新たに「使用」も罪に加えます。欧米では大麻成分の医薬品が難治性てんかん治療薬として認められていますが、日本では医療目的の大麻使用が禁止されてきました。
日本共産党の宮本徹議員は、医療用大麻解禁には「日本てんかん協会などの強い要望が出ており賛成」と述べました。
使用罪の新設や厳罰化には依存症の支援団体などが反対しています。当事者や家族が相談したくても通報・逮捕を恐れて相談しづらくなり、治療につながりにくく、偏見・差別を助長し、社会復帰を妨げることなどを理由に挙げています。
宮本氏は同日の質疑で、国連人権高等弁務官事務所が「薬物問題の犯罪化は医療サービスへのアクセスを深刻に妨げ、人権侵害をもたらす」(6月23日)と指摘しており、「薬物依存症の人に必要なのは刑罰ではなくて治療ではないか」と追及。武見敬三厚労相は、依存症当事者などから医師や自治体への相談の守秘義務に関し「対応にばらつきがある。治療に配慮し全国共通の指針を検討する」と述べました。
宮本氏は討論で、法案策定過程で厚労省が依存症支援団体のメンバーを排除したことに触れ「結論ありきの出来レースだ。使用罪を削除し、関係者で徹底的な議論を求める」と表明しました。