2023年11月24日 衆院本会議 世論は消費税減税圧倒的 補正予算案衆院を通過 宮本徹が反対討論

 2023年度補正予算案が24日の衆院本会議で、自民、公明、維新、国民民主の賛成多数で可決しました。日本共産党、立憲民主、れいわは反対しました。共産党の宮本徹議員は反対討論で「物価高騰対策があまりに不十分な一方で、物価対策とは無縁な民意に反する税金のむだ遣いがてんこ盛りだ」と批判しました。
 宮本氏は「世論調査でも国民が求める物価対策は圧倒的に消費税減税だ」と指摘。エンゲル係数(消費支出に占める食費の割合)がこの40年で最高の水準で、食べ物を減らさざるを得ない深刻な生活苦が広がっているとし、「物価を下げる消費税減税に踏み切るべきだ」と迫りました。
 人手不足が深刻な介護・障害福祉分野の賃上げも急務です。宮本氏は政府の処遇改善策について「月6000円では一桁たりない」と断じ、診療報酬・介護報酬・障害福祉報酬改定で抜本的な賃上げを求めました。さらに中小企業への賃上げ支援策も不十分だとし、毎年2兆円・5年で10兆円の支援で最低賃金を時給1500円にすることや、年金、児童扶養手当の引き上げを要求しました。
 宮本氏は、憲法違反の長射程ミサイルの大量取得など8130億円もの軍事費投入や、沖縄県民の民意を無視する辺野古新基地建設強行に対し、「国民の暮らしそっちのけで軍拡競争に血道をあげ、緊張を高めあうのは亡国の道だ。今必要なことは軍拡ではなく、外交、暮らしの支援だ」と力説しました。
 宮本氏は「国民の苦しみに寄り添わず、米国と財界におもねり、国民の信を失った岸田政権は退陣すべきだ」と強調しました。

以上2023年11月25日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年11月24日 第212国会衆院本会議第8号議事録≫

○小野寺五典君 ただいま議題となりました令和五年度一般会計補正予算(第1号)外一案につきまして、予算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。まず、補正予算二案の概要について申し上げます。一般会計補正予算については、十一月二日に閣議決定されたデフレ完全脱却のための総合経済対策に基づき、「物価高から国民生活を守る」「地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する」「成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する」「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する」「国土強靱化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する」の各項目を実施するために必要な経費の追加等を行う一方、歳入において、租税及び印紙収入の増収を見込むとともに、前年度剰余金の受入れや公債金の増額等を行うこととしております。これらの結果、令和五年度一般会計予算の総額は、歳入歳出共に当初予算から十三兆一千九百九十二億円増加し、百二十七兆五千八百四億円となります。特別会計予算については、エネルギー対策特別会計、交付税及び譲与税配付金特別会計など十特別会計において、所要の補正を行うこととしております。なお、財政投融資計画については、総合経済対策を踏まえ、八千八百六十億円を追加しております。この補正予算二案は、去る十一月二十日本委員会に付託され、同日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、翌二十一日から質疑に入り、基本的質疑、締めくくり質疑を行い、本日、質疑を終局いたしましたところ、立憲民主党・無所属及び国民民主党・無所属クラブから、それぞれ、令和五年度補正予算二案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出され、趣旨の説明がありました。次いで、補正予算二案及び各動議について討論、採決を行いました結果、各動議はいずれも否決され、令和五年度補正予算二案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。以上、御報告申し上げます。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。小山展弘君。
〔小山展弘君登壇〕
○小山展弘君 立憲民主党の小山展弘です。会派を代表して、ただいま議題となりました政府提出の令和五年度補正予算案に反対の立場から討論を行います。(拍手)今回の補正予算の規模は約十三兆円ですが、そのうち物価高対策は二兆七千億円、一方で公共事業等の予算は四兆三千億円です。この四兆三千億円の中には、明らかに緊要性を欠くものや本予算で組むべき内容も散見されます。また、財源の調達のために公債を八兆九千億円も追加発行する内容です。本補正予算において、物価高対策は必要であるものの、それ以外の水膨れしたばらまき財政出動を実施することは、更なる物価高騰を助長し、国民生活を一層圧迫することになりかねません。補正予算の中身について述べる前に、自民党五派閥の政治団体による合計四千万円の収支報告書虚偽記載の疑いに触れざるを得ません。東京地検特捜部は、五派閥の会計責任者に任意で事情聴取を進めているとのこと。この中には、岸田総理が会長の宏池会も含まれています。巨額の不記載がミスであったとは思えず、裏金づくりとの疑いすらあります。この疑惑が本当だとすれば、政治資金の透明化をうたう政治資金規正法違反に当たります。自民党総裁であられる岸田総理が先頭に立って、徹底的に調査をして、国民に説明責任を果たすべきであります。次に、副大臣、政務官の不祥事も指摘せざるを得ません。青少年の健全育成を担うべき文科政務官が不倫問題で辞任、法秩序の維持を掲げるべき法務副大臣が公職選挙法違反の疑惑で辞任、徴税を所掌する財務副大臣が税金滞納を繰り返したことが発覚して辞任と、明らかに異常事態です。岸田総理御自身もお認めのとおり、任命責任は免れ得ません。そのほかにも、パワハラ、セクハラなどの様々な疑惑が報道されており、資質に問題のある政務三役がまだいるのではないかと懸念されます。岸田総理御自身や大臣以下政務三役、国会議員の期末手当を含む特別公務員の給与引上げ法案を、野党の必死の反対にもかかわらず成立させてしまいました。国民が物価高に苦しむ中、経済情勢や国民感情を踏まえないものであり、一層の政治不信を招きかねず、理解できません。旧統一教会問題について、自民党さんには、被害者救済へのやる気が全く感じられません。これからも旧統一教会の選挙支援を受けたいという下心が見え見えです。被害者救済に取り組む全国弁連や被害者の方々が財産保全の法整備を強く要望しているにもかかわらず、与党が提出した法案では、財産保全措置は見送られました。これでは、教団による財産隠しを防げず、被害者は賠償金を受け取れないおそれがあり、被害者救済は無理です。我々が提出している旧統一教会財産保全法案を成立させることを強く求めます。補正予算について。まず、大阪・関西万博の会場建設費に七百五十億円もの関連費用を計上していますが、到底賛成できません。当初の倍近い増額を政府は容認しましたが、しっかりと検証したんでしょうか。三百五十億円もかかるリングと呼ばれる屋根は、日よけとしては豪華過ぎです。安易に費用増額を容認し、全国の国民に負担を押しつけることは、絶対にやめていただきたい。メキシコを始め複数の国がパビリオン撤退を検討していると報道されております。夢洲の地盤沈下、開催地への交通アクセスが少ないことなど課題山積で、更なる追加費用が懸念されます。万博予算こそ、費用を一から見直して、当初の会場建設費の範囲内で実施を目指す、真の身を切る改革の姿勢で臨むべきであります。岸田総理が突如として打ち出した所得税、住民税減税にも多くの問題があります。減税が始まるのは来年六月からですが、物価高対策、経済対策としては遅過ぎます。一方で、この減税は、今後の防衛増税を含む増税をごまかすための偽装減税とのそしりは免れ得ません。また、岸田総理は、今回の減税は過去二年間の税収増を国民に還元するものとおっしゃいました。しかし、鈴木財務大臣が過去の税収増は既に使ってしまったと答弁しているとおり、還元の原資はもうありません。したがって、減税を実施するには新規の赤字国債の発行が必要となります。還元どころか、負担を将来にツケ回して、減税という出血大セール、大盤振る舞いをするようなものであり、国民を欺くものです。減税を打ち出したのに岸田内閣の支持率が下がっているのは、こうしたからくりを国民に見抜かれているからではないでしょうか。なお、今回の補正予算では、約八兆九千億円の公債を追加発行する内容になっていますが、決算剰余金が防衛財源に充当されるために補正予算に使うことができず、そのために赤字国債をより多く発行する構造となっていることは明白です。我々が度々指摘した財源ロンダリングが、まさに現実となったと言わざるを得ません。今回の補正予算では、異次元の少子化対策と言っているものの、国民が効果が見込めると期待できるインパクトのある対策にはなっておりません。少子化対策や真に支援を必要とする家計、事業者への直接的、重点的支援など、使うべきところに思い切って使うような補正予算こそ求められているのではありませんか。多くの国民が物価高で苦しんでいます。直近の消費者物価上昇率は約三%であり、政府と日銀の物価目標である二%を上回っています。しかも、内外金利差の拡大による円安、それによる輸入物価の上昇が物価高の大きな要因です。しかし、これまでのアベノミクスなるものや異次元の金融緩和によって、日銀だけでなく民間金融機関のバランスシートも傷つき、金融政策を機動的に変更できない状況に陥っています。こうした中、先月末に日銀が取った苦肉の策が、長期金利ゼロ%程度というイールドカーブコントロールを維持したまま、長期金利一%超えも認めるという意味不明の金融政策でした。これはまさに、日銀が貨幣を大量に供給する金融緩和さえ行えば、デフレも日本経済の低成長の問題も解決できると読み誤った、十一年間にわたる自民党政権の失政が原因であります。加えて、自民党政権の下で、日本の国力は衰退の一途をたどり、日本は先進国から転げ落ちる寸前です。一人当たり名目GDPは世界三十二位、IMD世界競争力ランキングは三十五位、引用される科学論文数は十三位に低下しました。安倍政権以来、実質賃金はマイナス傾向が続き、平均賃金は韓国以下、現在の岸田内閣の実質実効為替レート指数は田中角栄内閣時の指数をも下回っています。日本経済の再生には実体経済の立て直しこそ必要で、そのためには、一人一人の所得を増やす政策と、これまで手薄であった人への投資を増やし、全ての人に居場所と出番がある、多様で自由な共生社会こそ目指す必要があります。また、環境エネルギー、医療、介護、農業、デジタル化の推進、新産業の創造に思い切った予算配分を行うことが必要です。有効な物価高対策を打ち出し、国民の生活を守り、実体経済を立て直し、政治に緊張感を取り戻すには、今の与党とは異なるビジョン、国民の生活が第一の姿勢を持った政党による政権交代こそ必要です。我々こそがその重責を担う、どんな困難があっても信念を貫く覚悟であることを申し上げて、反対討論とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) 大野敬太郎君。
〔大野敬太郎君登壇〕
○大野敬太郎君 自由民主党の大野敬太郎です。私は、自由民主党、公明党を代表し、ただいま議題となっております令和五年度一般会計補正予算及び令和五年度特別会計補正予算、以上二案に対しまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)日本経済は、歴史的転換点を迎えています。バブル崩壊後の三十年間、コストカット型経済に陥ってきた日本経済は、現在、新たなステージへと移行する千載一遇のチャンスを迎えています。決してデフレに後戻りすることのないよう、国内投資の拡大による供給力の強化、構造的賃上げの実現のための環境整備など、大胆な政策を総動員することが急務であり、このことによって、日本経済を一段高い成長軌道に乗せ、物価高に負けない賃上げを達成することで、成長と分配の好循環を実現することが我々の責任であります。また、同時に、中長期的な視座に立って、人口減少を乗り越え、社会経済の持続的な発展のため、デジタル技術の社会実現や制度・規制改革、頻発する自然災害等から国民の安全、安心を確保する取組なども、剛毅果断に取り組まなければなりません。こうした問題意識に応えるものが、今回政府が策定した総合経済対策、そしてその裏づけとなる補正予算であります。以下、本補正予算に賛成する主な理由を申し述べます。第一に、本補正予算においては、足下の物価高から国民生活を守り抜くため、ガソリン等の燃料油や、電気、ガスの激変緩和措置の延長を行うとともに、物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大し、一世帯当たり十万円の給付を行うこととしており、物価高に最も切実に苦しんでおられる方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図るものとなっております。加えて、各地方自治体が地域の実情に応じた物価高騰対策を講じることができるよう、重点支援地方交付金を追加することとしていることは、物価高に苦しむ生活者や事業者に対し、切れ目なく、きめ細かく支援する観点から、的を射た支援であると考えます。第二に、中小・中堅企業を含めた持続的な賃上げの実現や、国内投資の拡大に向けた支援を強化する予算となっています。経済全体の生産性向上や供給力の強化を図ることが持続的な成長を実現する鍵でありますが、この点、今回の補正予算では、半導体など戦略分野への投資拡大や、宇宙等のフロンティアの開拓、GX、DXの推進及びAIの開発力強化、利用促進、スタートアップの支援等を積極的に推進するものとなっています。また、地方にも景気回復の基調が広がるよう、中堅・中小企業による工場等の拠点の新設や大規模な設備投資への支援のほか、足下の円安環境を生かし、インバウンドの拡大を含む観光立国の取組、農林水産事業者や中小企業の輸出拡大の支援なども盛り込まれており、全国の幅広い分野の成長に資するものとなっていると考えます。第三に、公共サービス提供の高度化、効率化に資する国、地方のデジタル基盤の統一化、共通化等を推進するほか、子育ての環境整備や認知症施策などの包摂社会の実現に資する予算となっています。これらは、人口減少、少子高齢化に伴い人手不足が恒常化する中、経済社会活動を維持発展させていくため、利用者起点に立って、デジタルの力を活用した社会変革を起動、推進するために、是非とも必要な対応であります。最後に、相次ぐ災害に屈しない国土づくりを進めるため、防災・減災、国土強靱化を機動的に進めるとともに、昨今厳しさを増す外交、安全保障環境の変化に的確に対応するものとなっています。さらには、子供、若者の性被害防止のための緊急対策や花粉症対策など、国民生活に密接に関わる社会課題への対応にも目配りするなど、国内外の様々な課題に直面する中で、国民の安全、安心の確保に万全を期す内容、予算となっております。以上、本補正予算に賛同する理由を申し述べました。議員皆様の御賛同を賜りますことを強くお願い申し上げ、賛成の討論とさせていただきます。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) 宮本徹君。
〔宮本徹君登壇〕
○宮本徹君 私は、日本共産党を代表して、補正予算案に断固反対の討論を行います。(拍手)総理は、経済、経済、経済と叫びましたが、この補正予算案では、物価高騰に苦しむ国民の暮らしは守れません。一回こっきりの、遅過ぎる増税隠し減税は、国民から選挙目当てと見透かされております。国民の暮らしの支援の必要性を認めるなら、軍拡のための庶民増税を撤回すべきであります。個人への四万円の所得税、住民税減税と世帯への七万円の給付の組合せは、不公平を生み、はざまに一千万人もの方が置かれ、莫大な事務負担が生じる点でも、愚策としか言いようがありません。世論調査で、国民が求める物価対策は、圧倒的に消費税減税であります。エコノミストからも、所得税減税より消費税減税の方が経済効果が高いと指摘されております。物価高騰の中、食料品の消費が減り、GDPがマイナスとなりました。食品の高騰で、エンゲル係数はこの四十年で最高の水準です。食べるものを減らさざるを得ない深刻な生活苦が広がっております。物価を引き下げる消費税減税に踏み切るべきであります。何よりも重要なのは、物価を上回る賃上げです。岸田総理は、政労使会議で民間に賃上げを求めながら、政府が直接責任を負う分野の賃上げは全く不十分です。人材不足が深刻な介護、障害者福祉分野で働く職員の処遇改善は、僅か月六千円。一桁足りません。看護師は、年末一時金の減額回答が相次いでいるのに、補正予算では一円の処遇改善もありません。診療報酬、介護報酬、障害福祉報酬改定で抜本的な賃上げをすべきであります。中小企業、小規模事業者の賃上げの支援策も全く不十分です。毎年二兆円、五年で十兆円の大胆な支援で最賃千五百円へ引き上げ、賃金の底上げで暮らしを守るべきであります。年金や児童扶養手当も引き上げるべきです。物価高騰対策は余りに不十分な一方で、本補正予算案は、物価対策とは全く無縁な、民意に反する税金の無駄遣いがてんこ盛りです。万博会場建設費等に七百五十億円、万博の機運醸成に十億円計上されていますが、国民世論は建設費倍増の万博を全く認めておりません。与党議員からすら、国民置き去りと批判が出ました。万博は、中止に踏み切るべきです。また、保険証を廃止し、マイナ保険証を推進するために、利用率が上がった医療機関への支援金や、広告費、システムの改修などに八百八十七億円も計上されています。今ある保険証を残し、税金の浪費はやめるべきではありませんか。補正予算には、半導体企業など特定企業への巨額の助成を始め、多数の基金が盛り込まれております。これらは、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出とは到底言えず、補正予算に計上することは財政法の趣旨に反します。更に問題なのは、中国を抑え込むアメリカの軍事戦略の一翼を積極的に担うために、憲法違反の長射程ミサイルの大量取得を始め、八千百三十億円もの巨額の軍事費を盛り込んでいることであります。補正後の今年度の防衛省予算は七兆六千億、民主党政権時から約三兆円増にもなります。また、防衛力強化資金を一兆円も積み増ししています。沖縄県民の民意を無視して、米軍基地の苦しみをたらい回しにする辺野古新基地建設を始め、米軍再編経費は際限なく膨張し続けています。国民の暮らしそっちのけで、軍拡競争に血道を上げ、緊張を高め合うのは亡国の道です。世界の現状は、絶対に戦争にしない平和外交こそ何よりも重要であることを示しています。今必要なことは、軍拡ではなく外交です。軍拡ではなく暮らしの支援です。国民の苦しみに寄り添わず、血税の浪費を重ね、ひたすらアメリカと財界におもねり、国民の信を失った岸田政権は退陣すべきです。日本共産党は、国民の暮らしに寄り添う新しい政治への転換へ力を尽くしていく、この決意を申し上げ、反対討論とします。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) 林佑美君。
〔林佑美君登壇〕
○林佑美君 日本維新の会、林佑美です。私は、ただいま議題となりました令和五年度一般会計補正予算、令和五年度特別会計補正予算の両案につきまして、会派を代表して討論いたします。(拍手)まず初めに、今般の補正予算案については、財政のルールや政策手法など、我が党の原理原則を基に検討すると、とても承服できない点があることを強調する必要があります。総理は、三十年に一度と言われる賃上げの機運を背景に、あらゆる事業に緊要性や供給力向上をひもづけて、取捨選択なく事業を経済対策に取り入れた結果、財政法上の補正予算の趣旨が没却されていると言わざるを得ません。一体、政府は緊要性をどのように定義しているのでしょうか。総理は、今般の補正予算の全事業について、それぞれ必要額を精査した上で予算措置をするものであり、緊要性が認められるものとしています。しかし、必要額を精査して予算措置をするのは、当初予算に計上する事業でも同様であります。よって、政府は、補正予算の財政法上の位置づけを考慮に入れた緊要性の判断ができていないとみなすほかありません。そもそも、政府は、コロナ禍以降の巨額の政府支出について、需要を牽引することでGDPギャップを埋め合わせるためであるとしてきました。一方で、歳出予算のうち、多くの割合を基金の造成や積み増しに使用してきたことも事実であり、令和四年度第二次補正予算では、歳出総額二十八・九兆円のうち八・九兆円、約三一%が基金への投入に充てられています。しかし、基金に積み上げられた資金が実際に支出されなかった場合、新しい需要が創出されず、結果として、GDPギャップの埋め合わせに寄与し得ません。昨年度末で十六・六兆円に上る基金残高は、国民から税や国債によって集められたものの、活用されずに死蔵されていると言うほかありません。政府は、今般の補正予算でも、基金に四・三兆円を投入することとしています。そもそも、基金制度は財政法のらち外であり、抑制的に取り扱うべきところ、既存の基金の検証が終わらぬ間に新規の造成や積み増しを行うというのは、財政法を中心とした財政のルールをなし崩し的に揺るがしかねません。加えて、形式面だけではなく、政策の内容にも問題がある旨を指摘しなければなりません。財務省は、令和五年度の国民負担率の見通しを四六・八%としています。総理は、国民負担率について、足下では低下すると述べていますが、今後、更なる高齢化が見込まれる日本では、長期的には上昇傾向にあると考えられます。たとえ来年以降に賃上げが実現しても、国民負担率が上昇しては元のもくあみとなりかねません。かくなる状況下において、ばらまき色の強い単年度の所得減税は、賃上げまでの間を持たせるための短期的なびほう策としかなり得ず、長期的な負担軽減にはつながりません。実質賃金上昇率がマイナス続きである今、総理の述べるようなデフレマインド払拭につながるかは、甚だ疑問であります。しかし一方で、政策手法に差があるといえど、政府の主張する経済対策の必要性を否定することはできません。総理は、足下の経済状況について、賃上げや設備投資、GDPギャップの解消の進展などを挙げ、明るい兆しが見られ、デフレ脱却の千載一遇のチャンスを迎えていると述べています。この時局認識については、我が党も軌を一にするところであります。確かに、経済対策で主張する個別の政策については、政府が、国民への還元として実施する所得減税と給付の組合せや、燃料油価格激変緩和対策事業に代表される特定業界への大規模な補助金を中心とする一方、我が党は、現役世代と将来世代を重視した社会保険料の引下げに加え、暫定税率の廃止を主張し、最初から集めない経済対策の考え方を徹底するなど、その手法に隔たりがあることは否めません。とはいえ、経済対策の総論的な方向性としては、物価高対策に加え、国民の可処分所得を向上させ、需要を向上させるという点で、同じ方角を指していると言えます。また、政府の経済対策で国民への還元と両輪を成す供給力の強化が、賃金と物価の好循環を起動するための軸であることは、総理も指摘するとおりです。しかし、車輪に例えて言えば、軸をどれだけ太く丈夫にしても、さびついていては回転し得ません。回転を円滑化するための機械油となるのは、ばらまきではなく、規制緩和による構造改革であります。冒頭で指摘したとおり、政府の経済対策には緊要性の判断に疑義がある事業が数多く含まれています。看板政策の名をかりた既存の業界団体への利益供与は、供給力を強化するトリガーとはなり得ません。しかし、補助金による資本ストックの強化と併せて規制改革に取り組むのであれば、一概に否定するものとはなりません。今般の経済対策では、三位一体の労働市場改革や医療DXの推進、外国人材の活用等、従前の経済対策よりも規制改革に重点を置いた記載が見られました。当然、我が党の観点からは踏み込み不足と言わざるを得ませんが、それでも、オンライン診療等の医療の規制緩和やライドシェア等、デジタルを活用した新産業の推進など、前進した点が多く見られます。特にライドシェアの解禁については、二十日の衆議院本会議で、総理から、観光地や都市部を排除することなく、デジタル技術を活用した新たな交通サービスという観点も排除せずという、極めて踏み込んだ発言をいただきました。政府は、ライドシェアの解禁を嚆矢として、今後も、新産業の発展を阻害する岩盤規制の打破に邁進することと期待しています。加えて、予算委員会で、我が党の委員の質疑に対して、総理が憲法改正に期限を切って前向きな姿勢を示しました。憲法改正は、あるべき国の形を根本から検討するという改革の第一歩であり、これも、我が党として非常に評価するところであります。近頃、マスコミ等で負の面がクローズアップされがちな大阪・関西万博についても、今行う意義や、上海万博に次ぐ百六十もの参加国のパビリオンの着工状況、民間パビリオンの企画内容、外交上の意義や経済効果、全国的な機運醸成の方向性等を丁寧に御説明いただきました。今後も、国を先頭に、大阪府市、万博協会、経済界が一丸となって、必ずや成功させられると確信しています。ここまでるる指摘したとおり、政府の補正予算案には、様々な点で、ばらまきによる人気取りの思惑や、既得権のしがらみが見え隠れし、構造改革への踏み込み不足が露呈しています。しかし、まずは可処分所得を増やすという方針や、規制改革への認識等について、政府と我が党で同じ立場に立っております。進路が同じであれば、あとはどれだけ前に進めるかです。今後も、社会保障制度等で、我が党の指摘を真摯に受け止め、改革を一層推進することを期待しています。さきの予算委員会の質疑では、自見国際博覧会担当大臣より、十八歳の意識調査では万博の開催に六八・一%が賛成であるという世論調査結果を御紹介いただきました。未来ある若者のために先行投資をし、夢のある社会を実現するために、政府・与党には、今後も我が党と正面から改革推進の議論を行い、岩盤規制を打破することによりデフレ脱却につなげていただく期待を込めて、賛成討論といたします。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) 斎藤アレックス君。
〔斎藤アレックス君登壇〕
○斎藤アレックス君 国民民主党の斎藤アレックスです。私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました令和五年度補正予算案に対し、賛成の立場から討論を行います。(拍手)記録的な円安の影響で、物価高が止まりません。今年の春闘での賃上げは三十年ぶりの高水準となったものの、物価上昇率を超す賃上げとはなっておらず、実質賃金が減少を続け、家計は悪化をしています。国民生活にとって、物価高対策と賃上げ政策が喫緊の課題であることは、与野党を超えた共通認識だと思います。国民民主党は、昨年の夏の参議院選挙の際に、公党の中で唯一、電気料金の引下げを公約に盛り込み、その一部を実現させることができました。しかし、政府が行っている補助金を使った物価高対策には問題もあります。ガソリンなどの価格抑制策の実施過程でも、補助金が価格抑制に使われず、元売会社の利益補填などに回ったり、多額の事務経費、余計なコストがかかったりしているような問題が明らかになっています。このような問題を解消するため、国民民主党は、トリガー条項の凍結解除実現に向けて、改めて与党との協議を行うことといたしました。また、国民民主党が十月に取りまとめた国民に直接届く経済対策では、物価高騰を上回る持続的な賃上げを実現するためにも、所得税減税として、三十年ぶりのインフレによる生きるコストの上昇を考慮し、基礎控除、給与所得控除の額を引き上げることにより可処分所得を増やす生活減税を提案し、法律案を提出するなどしています。政府・与党には、国民生活の視点に立って、トリガー条項凍結解除を始めとする様々な国民民主党の提案を受け入れ、実現するよう強く求めていきます。同時に、本補正予算には、その審議過程にも、そして内容にも様々な問題点があると指摘しなければなりません。来年度の本予算の審議を目前に控えたこの時期に組む予算として、緊要性があるとはとても思えない基金の創設や積み増しが膨大な金額に上るのみならず、使途が定まっていない予備費は、コロナ禍が収束しているのにもかかわらず、依然として高い水準で計上されるなど、財政民主主義上問題のある財政運営となっており、政府にはその是正を強く求めます。日本が今抱える最大の問題は、人口減少です。少なくなる労働人口で経済規模を維持し、社会保障制度、地域社会、防衛力などの土台である国力を維持していくためには、一人当たりの賃金、生産性を上げていくほかありません。そして、賃金が上がるようになれば、物価が上がることにも家計は十分に対応できるようになります。今必要なのは、何よりも賃上げ。給料を上げて物価高に打ちかち、そして人口減少を乗り越え、経済社会を維持発展させていく政策です。国民民主党が訴えてきた、給料が上がる経済への転換、そして日本の積年の社会問題の解決に向けて、全力で取組を続けることをお約束して、会派を代表しての討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。