2024年4月12日 衆院厚生労働委員会 医師長時間労働正せ 養成人数削るな

配付資料 NHK2024年4月2日 みんなでプラス より宮本徹事務所作成
配付資料 朝日新聞2024年4月10日
配付資料 東京新聞2024年4月1日
配付資料 OECD, Health at a Glance 2023 
配付資料 医療従事者の需給に関する検討会第35回医師需給分科会 令和2年8月31日より 

 日本共産党の宮本徹議員は12日の衆院厚生労働委員会で、医師の長時間労働の是正を図り、医師養成数の削減をやめるよう求めました。今月から勤務医の時間外労働に上限規制が設けられましたが、労働時間に算入されない「宿日直許可」の乱発や「自己研さん」扱いなどによって、長時間労働が是正されていない実態が報道などで明らかになっています。
 宮本氏は「『医師の働き方改革』でサービス残業が広がっていないか。労働基準監督署の定期監督に位置付けて調べる必要がある」と指摘。武見敬三厚労相は「法令違反が認められた場合には、是正指導を徹底する」と答えました。
 宮本氏は、長時間労働の解決には「そもそも医師の数が足りているのかの議論が必要だ」と指摘。医師の必要数を考える上で、(1)必要な医療へのアクセス(利用)(2)医師のワークライフバランス(生活と仕事の調和)の実現(3)大学病院等での十分な医学の研究時間―の三つの要素が欠かせないと強調しました。
 武見厚労相は「指摘の点は極めて重要だ。これを踏まえながら医師の需要や供給の算出を行っていく」と答弁。厚労省が2020年に示した需給推計は過労死ラインの月80時間の時間外労働が前提になっているとして見直しを迫る宮本氏に、武見厚労相は「推計の前提と実態が大きく変わる場合は、必要に応じて確実に見直しを検討する」と述べました。

以上2024年4月13日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年4月12日 第213国会衆院厚生労働委員会第12号議事録≫

○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。前回の一般質疑に続きまして、医師の問題について質問したいと思います。医師の労働時間の上限規制に合わせて、宿日直許可の乱発や自己研さん扱いなど、労働時間を労働時間として扱わない、こういう事態が広がっております。実際は労働時間は減っておらず、サービス残業が蔓延している。資料をお配りしております。これもまた、NHKに寄せられた声、サイトから抜き書きをして載せておきました。紹介しますと、一月の時間外労働の時間が六十時間までと通達されており、タイムカードでは明らかに超しているにもかかわらず、それが反映されないシステムになっています、あるいは、今週も帰宅は午前二時、出勤は朝七時前、時間外に換算されたのは一日三時間だけとか、月八十時間を超えると働き方改革を進めている先生から部長が怒られてしまいます、そのため実際に働いた時間よりも短い時間しか残業をつけられません、さらには、残業として申請すると病院から駄目と削られる、自己研さんとせよと言われると。どれもこれも、どう見ても労基法違反なわけですよね。資料の二枚目、これはついおとといの朝日新聞ですね。これは大学病院のケースですけれども、二段落目を見ますと、午前七時から入院患者を回診し、朝礼にも出席するよう指示されたが、午前八時より早い時間については時間外手当が認められなかった、終業後も、夜のカンファレンス、術後の患者の管理、研修医の指導などは申請の対象外とされた。このどれも労基法違反だと私は思います。医師の働き方改革でサービス残業が広がっていないのか、労基署の定期監督で位置づけて調べる必要があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 労働基準監督署における監督というのは定期監督として行われておりますが、医療機関も含め実施しているところであり、監督指導の際には、賃金不払い残業などの労働基準関係法令違反がないかを調査を行い、法令違反が認められた場合にはその是正を指導をいたします。本年四月から医師の業務に時間外労働の上限規制が適用されたことを踏まえて、今後とも、医療機関を含めて、労働基準関係法令違反が疑われる事業場の情報をしっかりと把握をして、法令違反が認められた場合には是正指導を徹底して行いたいと思います。
○宮本(徹)委員 定期監督、全部回れるわけじゃないですから、日本中の事業所。でも、病院についてはしっかり位置づけて、いつもよりも比重を高めて取り組んでいただきたいと思います。そして、資料の三ページ目でございますけれども、これは日本産婦人科医会の調査で、分娩を扱う病院の半数が宿日直許可を取得済みか申請中だったということです。この中で、医会の勤務医委員長の関口医師はこう言っているんですね。夜間でも頻繁な診察や緊急手術があり、妊婦の経過観察も気を抜けず、休息扱いは実態とかけ離れている、こう指摘しております。宿日直許可の要件というのは、御存じのとおり、夜間に十分睡眠が取れることなんですね。ところが、この間、様々な報道では、一睡もできない産婦人科医のケースが、宿日直許可が出ている。要件を全く満たしていないという状況が広がっております。私、これはしっかり監督していただきたいと思うんですけれども、同時に、こうした過重労働が、働いているお医者さんの健康にとっても重大な問題ですけれども、あわせて、医師を過重労働から守るということは、医療ミスを防いで、国民の医療の安全にとっても不可欠だと思うんですね。その認識、大臣、ございますか。
○武見国務大臣 我が国の医療は、医師の献身的な長時間労働によって支えられてきた側面というのは確実にありました。医師の健康を守るために、医師の業務負担を軽減して、働き方改革を推進することが重要であります。同時に、医療現場において医師が健康に働き続けることができる環境を整備することは、患者に提供される医療の質、安全を確保するためにも極めて重要であります。このように、医師の健康を守ることと、安全で質の高い医療を患者に提供することの、この両方の観点から、医師の長時間労働の改善を進めることは不可欠であると考えております。
○宮本(徹)委員 そのとおりなんですよね。献身的な長時間労働、お医者さんが頑張って支えられてきたわけですけれども、やはり、医師の長時間労働は美徳だという考え方から抜け出す、国民の医療の安全、こういう視点が本当に大事だと思います。ただ、日本は二十八時間連続労働が認められているわけですよね、医師は。こういうところも改善が必要だと思います。その上で、宿日直許可は一旦下りてしまったら、事業者側から定期的に報告するような必要はないわけですよね。一回取ってしまったら、ある意味それっきりになっているような状況がございます。こういう運用は私は改める必要があるんじゃないかと思いますし、加えて、外部からもチェックできるように、宿日直許可の取得状況について情報公開もすべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 医療機関における宿日直許可については、特殊の措置を必要としない軽度、短時間の業務であること、それから夜間に十分な睡眠を取ることができることなどの許可基準に適合しているものに限って、労働基準監督署において許可を行っております。こうした許可基準に適合しているか、また適正に運用されているかについては、労働基準監督署において適切に審査、確認しているところであり、これを外部に公表してチェックしてもらうということは、今の段階ではまだ考えておりません。それから、いずれにしても、宿日直許可が適正に運営されるように、引き続き、実態の把握に努めるとともに、法令違反が認められた場合には、厳正にこれに対処してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 ですけれども、前回もお話ししたように、宿日直許可が、先ほど条件は十分に夜寝られることだと大臣もおっしゃいましたけれども、寝られない病院でいっぱい出ているんですよね、この数年。先日、見ていましたら、四病院団体協議会の調査では、病院の約九〇%が宿日直許可を取得した、こういう直近の話もあるわけですよね。大体、救急車がばんばん来る急性期病院で夜間に十分睡眠が取れる、こういうことはおよそ考えられないわけであります。ですから、これはやはり本当にしっかりチェックする仕組みというのが私は必要だと思います。そして、先日来、ここで医師の偏在の問題も議論になっておりますけれども、診療科の偏在という問題もあるわけですよね。外科医のなり手が少ない、産婦人科医、なり手が少ない。こういうことを考えても、救急外来、産婦人科、こうした勤務医の過重労働をそのままにしていたら、そうした皆さんが勤務医を辞めて開業医になっていってしまう、そして、こうした分野のなり手の確保は厳しくなっていくのではないか。私はそういう懸念があるんですけれども、大臣、そういう認識はお持ちでしょうか。
○武見国務大臣 御指摘の救急であるとか外科については、その他の診療科と比較して長時間労働となる傾向が確かにあります。委員御指摘のとおり、これらの診療科の医師を確保するためにも、勤務環境改善に取り組む必要があると考えています。このような中で、各医療機関においては、これまで、医師の労働時間の現状を把握した上で、タスクシフト・シェアやチーム医療の推進などを通じて労働時間短縮に取り組んでいただいてきておりまして、救急科、外科の長時間労働を行う医師の割合は着実に減少してきております。医療機関の勤務環境改善に向けて、厚生労働省としても財政支援や助言を実施してきたところでありまして、勤務間インターバルや必要な休息期間の取得促進と併せて、引き続き、医師の健康確保のための体制整備等、これにしっかり取り組んでいきたいと思います。
○宮本(徹)委員 しかし、長時間労働をしている医師が減っているという統計上の数字を本当に信用していいのかという実態があるんですよ。初めに私紹介しましたけれども、今、サービス残業扱いされているものがばんばん出ているということですから。多分、医師の労働時間の上限規制ができましたから、それを守るために労働時間の見せかけは減っていくかも分からない、だけれども、実態は減っていない、こういう状況だと思います。ここをどう解決していくのかということを考えた場合に、ここでも様々この間議論になっております。武見大臣が日曜の討論で様々発言された偏在対策というのが議論になっています。私は、偏在対策自体は、これはもちろん必要なことだと思いますよ、必要なことだと思います。同時に、そもそも医師の数が足りているのか、ここを私はもう一つの観点として今日は議論をさせていただきたいというふうに思っております。やはり国民の命を守るためには、どの地域でも、どの診療科でも、必要な医療にかかれるようにしなければなりません。大前提として、二つの事実について共通認識が大臣と私にあるのか、確認したいと思うんですね。資料を御覧いただきたいと思います。資料の四ページ目でございます。これはOECDの資料ですね。四ページ目は、これは医学部の卒業生の十万人当たりの人数ということになっています。OECDの平均が十四・二人、日本は七・二人。増やしてきた、増やしてきたと大臣この間ここで述べられていますけれども、それでもOECD平均の半分程度です。OECD全体で見たら、下から二番目というのが日本の医師養成数だということなんですね。さらに、次のページを御覧いただきたいと思いますが、これは千人当たりの医師数ということになります。OECDの平均は三・七人、日本は二・六人、これも下から数えた方が随分早い位置に日本はあるわけですね。さらに、この表を見ていただけたら分かるんですけれども、丸印が二〇一一年で、緑が二〇二一年、ほぼどこの国もこの間医師は増やしている、増えている。それぞれの国のいろいろな事情はありますけれども、当然のことながら、医療は世界でも日本でも高度化していきます。それで、人間も長寿命化が進んでいます。そうすれば、これまで発見できなかったがんも発見できるようになって、その分、医療ニーズは当然高まっていくということになっていくわけですね。ですから、今日、大臣とここで同じ認識なのかというのを確認したいんですけれども、日本の医師はOECD諸国の中で比べて少ない、そして、これからも医療の高度化、人間の長寿命化に伴って医療ニーズは高まっていく、この認識はあるでしょうか。
○武見国務大臣 OECD諸国の医学部卒業生や医師の数については、各国の医療制度や各医療従事者の役割がそれぞれ異なるということがあるのは、それぞれの国のタスクシフトだとかタスクシェアリングがかなり制度的に違うということもあって、実はそう簡単に比較することはできないところもあります。ただ、いずれにしても、我が国においては需要に合った医師の確保が重要であるというふうに認識しております。これまで、高齢化の進展により、全体として医療のニーズも増える傾向にありましたが、今後、人口が減少していくことや医療技術の更なる高度化や医療DX等による効率化が進む可能性もある中で、医療ニーズ、その内容や形態も様々であり、一概に増加するとは限らないと考えております。委員御案内のとおり、医療の需給バランスあるいは医療に関わる需要と供給というのを測定しようとするときには百家争鳴であります。実際に、百人研究者がいれば百人違ったことを言うと言っても過言ではないぐらい、それぞれ違った統計の取り方などがあります。したがって、この問題をまずきちんと解決して、医師の需給バランスに関わる分析をやはりしっかりとコンセンサスを持って行えるようにしていくことが必要かと考えます。今後とも、医療を取り巻く状況の変化についてはしっかりと注視をしながら、医療ニーズに応じて必要な医療を提供するために、地域における医師の確保など必要な取組は引き続き進めてまいります。
○宮本(徹)委員 OECDの定義は様々ありますけれども、国によって医師がどこまで役割を果たすのかというのは確かに違いはありますけれども、ただ、大きな傾向でいえば、本当に日本は突出して医師が少ない国の方だということは言えると思います。そして、加えて、医師の必要数を考える上で、私は次の三つのことを考慮しなきゃいけないと思うんですね。一つは、国民が必要な医療にアクセスできているのか、二つ目に、医師の人権が守られ、ワーク・ライフ・バランスが実現できているのか、三つ目に、大学病院等で医学の研究時間が十分取れているのか。ここは、私は医師数の必要数を考える上で欠かせない要素だと思いますけれども、この点は同じ認識ですか。
○武見国務大臣 今委員が御指摘なさった点は、いずれも極めて重要な点だと思います。直近の医師の需給推計というのは、厚生労働省の検討会において二〇二〇年に行ったものがあります。その際の有識者の議論も踏まえて、将来の医療需要を指し示す将来人口構成の推移、それから、医師の働き方改革により労働時間が短縮すること、それから、大学病院等の医育機関で研究等に従事する臨床医以外の医師数など、委員の御指摘の観点というのもやはり踏まえながら、恐らく推計、前提条件に組み込んだ上で、医師の需要や供給の算出を行い、医師の必要数の検討を行っていくことになるだろうと思います。ただ、いずれにせよ、申し上げたいことは、こうした需給バランスを測定するときに、どういう仮説を設定してこうした医療需給バランスを測定するかという、そこの議論で多くの専門家の間で意見が極めて分かれていて、この合意形成というのをするのは極めて大変な課題であるということは御理解いただければと思います。
○宮本(徹)委員 この三つの観点は今後の検討で踏まえられるという答弁をいただきました。ただ、二〇二〇年の需給推計、私、前も田村さんのときでしたか、これを議論したことがあるんです。二〇二〇年の需給推計、資料の一番最後のページにつけましたけれども、このときは二〇二九年に約三十六万人で均衡ということになっていますけれども、この前提というのは、労働時間は週六十時間ですよね、年間九百六十時間の時間外労働と。月八十時間、年間九百六十時間の残業というのは一般的な過労死ラインですよね。一般労働者の残業時間は原則三百六十時間ですよ、年間。例外で七百二十時間と。ですから、こういう、医師は長時間労働が当たり前と試算されているのが二〇二〇年の需給推計ということになっているんですね。もうEUなんかは、医師についても週の労働時間は四十八時間、こういうふうになってきております。ですから、私は、長時間労働をしてもらうのが前提という医師の需給推計は、これはもう見直していかなきゃいけないというふうに思うんですね。ちゃんと医師の過重労働の問題を解決できる医師数を前提とする必要があると思いますが、いかがですか。
○武見国務大臣 医療の現場は医師の長時間労働によって支えられてきた側面があるということは、もう何度も申し上げているところであります。時間外、休日労働が非常に長い医師もいらっしゃいます。そうした中で、令和六年四月以降の副業、兼業先も含めた医師の時間外、休日労働時間の上限の特例については、通常九百六十時間、これはA水準と呼んでおりますが、としたものでございます。医師の需給推計については、こうした医師の働き方の実態や働き方改革の考え方を踏まえて、専門家による検討を経て実施してきております。一方で、今後、医師の働き方改革の取組が進むにつれて、医師の労働時間も縮減されることが期待されます。推計の前提と実態が大きく変わる場合には、必要に応じて確実に見直しを検討していかなければならないと思っております。
○宮本(徹)委員 実態が変わる前に実態を変える目標をしっかり立てて、長時間労働前提じゃない需給推計をしっかり立てていただきたいと思います。時間が迫ってきましたので、これは申し上げるだけにしておきますけれども、もう一つ、需給推計で大きく変わってきているのは、女性医師が増えてきているという問題なんですよね。昨年、初めて女性の医学部入学者が四割を超えるということになりました。三二%の数字でこれまで需給推計を出していますので、ここも大きく変えて。当然、女性医師の方が皆さんの統計でも労働時間が短いですから。そうすると、二〇二〇年の需給推計をいまだに配って皆さん議論をされていますけれども、こんなのはチャラにして、これを前提に医学部の養成数を減らすという話が始まっていますけれども、それはストップしていただきたい。そのことを申し上げまして、質問を終わります。