2024年6月5日 衆院厚生労働委員会 認可外の院内保育所で働く保育士の処遇改善を

配付資料 全医労保育所ニュース212号 
配付資料 標準生計費(令和5年4月)4人世帯 
配付資料 2023年6月30日「令和5年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会」(第1回)資料№1より 
配付資料 標準生計費(令和5年4月)単身世帯 
配付資料 北海道・東北の最低生計費試算調査 
配付資料 最低生計費試算調査結果2023年3月現在 

 日本共産党の宮本徹議員は5日の衆院厚生労働委員会で、病院内の認可外の保育所で働く保育士への処遇改善を求めました。
 院内保育所は医師、看護師が子育てしながら働く上で重要な役割を果たしていますが、認可外の院内保育所で働く保育士はこの間、政府が重ねてきた保育士の処遇改善の対象外になっています。
 宮本氏は、大半の都道府県が、院内保育所の保育士1人あたりの毎月の補助単価を2013年度の基本額18万800円のまま据え置いていると指摘し、「賃金が上がる手だてを考えるべきだ」と要求。武見敬三厚労相は「最新の状況について把握する。実態を把握した結果、極めて低い実態が確認されたら、是正するための対応策を検討する」と応じました。
 また宮本氏は、国立病院機構の院内保育所の委託業者が3~5年で更新される問題の是正を求めました。
 この春、国立病院機構の30の院内保育所で契約更改があり、14の保育所で委託業者が変更になりました。宮本氏は、継続して働く保育士が新規採用扱いとなって、有給休暇の日数が減る、賃金が下がるなどの問題が起きていると指摘し、深刻な人手不足のもとでの安定的な保育所存続のためにも、直営に戻し、労働環境の改善を図るよう迫りました。

以上赤旗ホームページネット配信より抜粋

≪2024年6月5日 第213回国会衆院厚生労働委員会第22号議事録≫

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、まず、国立病院機構の院内保育所についてお伺いしたいと思います。百十五の園があるそうですが、運営をそれぞれ、株式会社や社福に委託しております。ところが、これが三年や五年で契約を更新していくんですね。今年度は三十の園が更新の年を迎えて、十六の園は委託業者は継続でしたけれども、十四の園は委託業者が変更になったということでございます。配付資料にありますけれども、少しアンダーラインも引いておきましたけれども、委託業者が変更になると、有休がまた初めの十日に戻ってしまう、あるいは賃金が下がってしまうだとか、こういう問題が生じているわけです。今日は国立病院機構の副理事長に来ていただきましたけれども、三年や五年で委託先を変えていくデメリットについてどう考えているのか。そして、人手不足は保育士でも大変深刻な状況であります。労働環境の改善をすることは、院内保育所の今後の存続にも必要なことではないかと思います。組合の皆さんは、直営に戻す、このことを求めているわけですけれども、そのことも含めた抜本策が求められるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大西参考人 お答えいたします。院内保育所につきましては、医師、看護師など病院の職員が子育て中でも安心して働くことができるようにするための環境整備の一つとして重要なインフラと考えておりまして、その円滑な運営というものは国立病院にとっても重要な課題というふうに認識してございます。当機構は、基本的に病院を運営する法人でございますので、保育所を運営するノウハウに乏しいということ、あるいはまた、保育をめぐる状況は地域によって異なっているということで、適切な運営を確保するために院内保育所の運営につきましては各病院において外部の事業者に委託を行っているというところで、先ほど先生からも御指摘を賜ったとおりでございます。各病院における運営委託契約はおおむね三年から五年という期間になってございまして、契約期間の満了時に、新たな委託事業者の選定を行います。その際、可能な限り現在勤務する保育士の雇用に配慮を求める観点から、当機構の本部から各病院に対しましては、公募の仕様書において、旧受託者の職員が新受託者での雇用を希望する場合は可能な限り応募の機会を設けるということを記載していただくようにお願いをしております。病院による公募の結果、委託事業者が変更になりました場合には、現在勤務する保育士の方が新受託者での雇用を希望し、そして採用されたという場合には、新受託者との雇用契約で、先生御指摘のような新規採用としての年次休暇の付与とか、あるいは賃金水準の決定というようなことがあるということは、私どもも承知をしております。一方で、なかなか、院内保育所の運営につきましては、最初に申しましたとおりですが、保育事業の専門的知識のある専門事業者による運営委託ということで質の高い保育サービスの提供ができるということなので、病院が直接運営するという形に切り替えていくことは、率直に申しまして、難しい面があるというふうに考えてございます。院内保育所で働いていただいている保育士の方々の労働環境の問題も含めまして、院内保育所が安定的に運営され、引き続き、病院職員が安心して子供を預けることができる体制というものが確保されるよう、当機構としても努力をしてまいります。
○宮本(徹)委員 三年から五年に一回委託先が替わるということになったら、これは安定的な、円滑な運営はできないわけですよね。幾ら次のところで雇用を継続してくださいといったって、また有休は減っちゃう、賃金も下がっちゃう、こういうことになったら、当然、いや、ほかの保育園に移りますよという方だって出てきてしまうわけですよ。ノウハウがないということをおっしゃいますけれども、国立病院機構になる前、独立行政法人になる前は、全部直営でやっていたわけですよね、国立病院の時代は。ですから、ないはずはないんです。国立病院だって、別に保育園のプロでやっていたわけじゃないですけれども、それでちゃんとやれていたわけですから。長い間、国立病院の時代から保育士として引き続き働いている方々も今いらっしゃるわけですから、その方々が退職する頃になったら本当に継続性がなくなっていくと思いますし、本当に、直営に戻すなら私は今しかないと思いますよ。それをやめたら、もう後は、三年、五年というのがずっと続いてしまって、それこそ魅力のない職場ということで、保育所の存続自体が大変厳しくなるのではないかと思うんですけれども、そういう危機感というのはないんでしょうかね。
○大西参考人 独立行政法人ができる前、国立病院が国の一部であった時代につきましては、各共済組合の委託という形で院内保育の事業が実施されていたというふうに承知しております。先生御指摘のとおり、今、人材の確保の問題、非常に難しい問題でございまして、そういう中で、保育士さんが安心して働いていただけるということは本当に大事なことだというふうに認識しております。各病院におきます院内保育所の事業委託の状況というものを本部としても注視をいたしまして、保育所の安定的な運営に支障が生じないように、病院と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ですから、三年、五年で委託先をまた替えていくということ自体を改めないと、これはなかなか大変なことになりますよ。また次回といいますか、次の機会にいろいろただしていきたいと思います。あわせまして、労働組合のアンケートを見ていましたら、国立病院の院内保育所の正規雇用と契約社員の方の基本給の平均額が十八万五千円と書いてあったんですね。随分低いわけであります。認可外の保育所の場合は、累次の処遇改善の対象外となっているわけです。厚労省として、認可外の院内保育所で働く保育士の賃金水準というのはどう把握しているのかというのをお伺いしたいと思うんですね。そして、私もちょっと調べてみましたんですけれども、今は二〇一四年度から都道府県の地域医療介護総合確保基金から補助金が院内保育所に出ているわけですけれども、保育士一人に月の補助単価十八万八百円、これは二〇一三年度の国の時代の補助金の単価なんですね。この補助金の単価から基本的にほとんどの都道府県が変わっていません。私、二十六県調べましたけれども、そこから補助金が増えているのは一県だけ、減っているのが二県、あとは十八万八百円という金額になっているわけですね。これだとやはり、認可の園は賃金は上がっていきますけれども、認可外の院内保育所、とりわけ地域医療介護総合確保基金で運営している院内保育所の賃金は上がっていかないということになると思うんですね。賃金が上がる手だてをちゃんと考えなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか、大臣。
○武見国務大臣 実際に、厚生労働省の賃金構造基本統計調査において保育士全体としての賃金の調査は行っているんですけれども、認可外の病院内の保育所、言うなれば院内保育所で働く保育士に限定した賃金は把握していないんです。看護職員を始めとする医療従事者の離職防止や再就職を促進するために、子育てをしながら働けるようにする取組として、院内保育所の設置は非常に重要だということは私も認識をしております。地域医療介護総合確保基金によりその支援をしてきておりますが、補助の基準額については、都道府県が地域の実情に応じて設定することが可能となっております。今後、当該基準額の最新の状況について把握するとともに、引き続き、都道府県を通じて院内保育所に対する支援を実施してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 把握は、私もホームページで調べましたから、すぐできると思うんですよね。ほとんど十年前の水準から変わっていないわけですよ。引き続きするんじゃなくて、これは実態に合わせて、保育士の賃金が上がって、院内保育所の保育士も確保できる水準に引き上げることも検討していくと、引き上げますと今日言わなくてもいいですよ、ちゃんと人材が確保できるように検討していくと、そこまで述べていただけますか。
○武見国務大臣 実際に、実態をちゃんと把握しようということは、きちんと私からも指示を出しております。その結果として、もし極めて低い実態が確認されたというようなことになれば、それを是正するための対応策は当然、その結果として検討していくことになるだろうと思います。
○宮本(徹)委員 前向きな答弁になったと思いますので、よろしくお願いをいたします。二つ目の問題です。最低賃金についてお伺いをしたいと思います。最低賃金法では、最低賃金は、労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならない、こうされているわけですね。この間、厚労省は、労働者の生計費については、最低賃金審議会で資料として使われているのが、各都道府県人事委員会が作成した標準生計費と説明しております。そこで、資料を是非御覧いただきたいと思うんですけれども、二ページ以下、各都道府県の県庁所在地を基本としているんですけれども、都道府県の人事委員会のホームページに出ている標準生計費なんですね。これは皆さん、見たら驚きますよ。皆さんも地元の都道府県と自分の周りのところがどうなっているかというのを御覧いただいたらと思うんですけれども、例えば四人世帯、二ページが四人世帯ですけれども、一番低い愛媛は十三万八千八百十円。四人世帯で十三万八千八百十円で標準で暮らしているんですね、愛媛の人は。隣の高知は二十一万三千円で、随分な差があるわけですね。一番、四人世帯で高いのは石川で、二十七万八千七十円になっているんですね。何で石川が愛媛の二倍、もっと言えば、愛媛は石川の半分しかないのか。あるいは、都市部との比較でいくと、例えば愛知は十九万八千八百円、隣の三重は二十七万七百三十円と、三重の方が一・四倍近くあるわけですよね。これは二〇二三年四月の標準生計費です。次に、その前の年と、その前の前の年も載せておりますけれども、年ごとの変動もすごいんですね。大阪は、二〇二三年が二十四万七百九十円ですけれども、その前の年は十八万千五百二十円で、一年で六万円も変わるんですよ、この標準生計費というのは。あるいは、この二年間で物価は上がっていますけれども、二年前よりも下がっているというところも結構あるわけですね。さらに、資料、次のページ、五ページ目は、単身世帯の標準生計費ですね。基本は四人世帯で見ているそうですけれども、単身世帯の方もすごいんですよね。愛媛は単身世帯の標準生計費は七万七千六十円。どうやって暮らすのかなと思います。愛知も十万八千八十円。三重なんかは十七万円ということであるわけですけれども。これはちょっと、今日は愛媛の政務官がいらっしゃいますので、いつも私は余り政務官を指名することはないんですけれども、特別に今日は感想を述べていただこうと思って塩崎さんに指名させていただきましたので、よろしくお願いいたします。
○塩崎大臣政務官 お答えいたします。委員からお示ししていただいたこの資料ですけれども、標準生計費、このとおりだとすると、愛媛県というのは全国で一番生活コストが安いということで、これは、うれしいやらショックやら、ちょっと複雑な気持ちでございますが。確かに、最低賃金については、やはり経済の実態に即した形で定められるということが大事だろうというふうに理解をしております。そういった意味で、最低賃金を定める上では、こちらの標準生計費だけでなくて、消費者物価指数や生活保護基準に関する資料、こういったものを踏まえてこれまでも定めてきているというふうに考えておりますので、そうした形で、今後も実態に即した議論をしていただくことが大事だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 実態に即した議論をしなきゃいけないということになると思うんですよね。実態にとてもじゃないけれども即していないというのが、政務官の思いなんだろうというふうに思います。大臣、最低賃金法では労働者の生計費を考慮して決めなければならないと言っているのに、生計費と名前のつく資料というのはこれだけなんですよね。確かに、今政務官がおっしゃったように、生活保護基準、これも参考にしているという話ですけれども、生活保護基準は、御存じのとおり五年に一回ですよ。しかも、それ自体、決め方はいろいろな議論もあるわけですけれども、五年に一回ですよ。毎年毎年の最低賃金改定とは少し違うわけですよね。こっちの標準生計費なるものは毎年毎年出ているんですけれども、毎年毎年、とてもじゃないけれどもこんな数字は参考にならないじゃないかと、地方の最賃審議会でもこれは何だという声が上がるようなものが資料として使われているんですね。これはちょっと、是正して、ちゃんとまともな生計費をつかむ統計を作る必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 まず、こうした最低賃金の審議などに関してはどのような調査を資料として用いているかというのは、公労使の三者構成の最低賃金審議会自身で御議論し、決定していただいているところなんですよ。それぞれお地元の公労使の中でどういう資料を使うかを議論してこういう格好になっているわけですね。その労働者の生計費の考慮ということになっては、人事委員会が作成した、これは先ほども政務官から話をしましたけれども、標準生計費だけではなくて、消費者物価指数であるとか生活保護基準に関する資料などを含めて御議論いただいているところでありますから、労働者の生活実態を踏まえた審議が私はなされているんだろうというふうに思います。こうした最低賃金の決定に当たっては、こうした資料等を踏まえ、生計費を含む三要素、これはすなわち、賃金とそれから企業の支払い能力ですよね、これをやはりちゃんと考慮に入れながら、こうした最低賃金審議会においてしっかりと議論をしていただきたい、こう思っております。
○宮本(徹)委員 ですから、今、委員の皆さんからも見直した方がいいという声が出るように、これはさすがに、各都道府県で決めているとおっしゃいますけれども、厚労省自身のホームページでも、四十七都道府県の標準生計費をまとめて審議会のところにも出しているんですよね。(発言する者あり)いや、三重県が高い、十七万円というのは、私はそれぐらいが適当な額だと思いますよ。三重県が高いというんじゃなくて、三重県は割と実態を反映しているんじゃないかと思いますけれども、労働者の生計費ということを考えたときに。ですけれども、これは本当に、極めてサンプル数が少ないものを使ってやっているから、年ごとにばらばらになるし、地域ごとにもいろいろなことが起きるという事態になっているんですね。これはちゃんとした指標を作るべきではないかと。だって、これが使えないということになったら、生活保護基準でやるんですかという話になるんですよ。労働者の生計費なんですから、生活保護基準とはまた違うんですよね、概念が。労働者の生計費と生活保護基準はまた違うわけですから。生活保護基準は、健康で文化的な最低限度の生活の権利です。最低賃金は、低廉な労働者の生活の安定のための基準として定めていくわけですから、生活の安定のために決めていくわけですからね、本来ならば、当然、憲法二十五条の生活保護の基準よりも高い水準になるのが当たり前のことだと思うんですね。ちょっと、大臣、おかしいと思うでしょう、この標準生計費の数字は。
○武見国務大臣 担当の方から詳細の説明はしてもらおうと思いますけれども、物事の決め方というのは今までの経緯を非常にやはり重視しなきゃなりません。したがって、各都道府県の中で政労使がきちんと議論をして、どのような資料を使うかどうかも含めて合意の上でこうした最低賃金に関わる議論を進めるという仕組み、これをどう変えるかというような御議論になると、それは決して簡単なことではございません。改めて、基本的な今までの議論の仕方というものを踏まえた上で、さらに、どういうふうな適正な議論の仕方があるのかということを、これは相当丁寧に議論をしなければいけない重要課題だと思います。
○宮本(徹)委員 丁寧に議論しなければいけない重要な課題と。本当に重要なんですよ、最低賃金というのは、一番賃金が低い方々の生活を守る上での非常に大事な指標になりますので。今年の非正規春闘というのがあったんですね、非正規春闘の取組の結果を見たら、半分近くの事業所では賃上げがなかったというんですよね。最低賃金が上がった、十月には賃金が上がるんだけれども、それ以外は、春は上がらなかったと。もっと最低賃金を上げないといけないということも表していると思うんです。最後、資料だけ紹介しておきたいと思いますけれども……
○新谷委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。
○宮本(徹)委員 時間が来ますので。資料六ページのところに、これは、静岡県立大学の中沢准教授の下で労働組合の皆さんが行っている最低生計費の調査であります。二〇一六年は千五百円弱のところが多かったわけです。千五百円前後ですね。それが千七百円前後になってきているんですね、時給でいえば。これが実態だと思うんですよ。ですから、先ほどの標準生計費、各都道府県の人事委員会からいえば、三重あたりが恐らく今の実態なんじゃないか、愛媛はその半分になっているんじゃないかと思われますので、しっかりこれは、最低賃金を引き上げていくというのは政権の方針だとも思いますので、それに使える、実態を反映した資料を、統計を作っていただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。