2022年1月25日 衆院予算委員会 新自由主義抜本転換こそ 格差・貧困広げた歴代自民党政権

パネル1 非正規比率の上昇と大企業の内部留保の増加
パネル2 有料職業紹介事業所数の推移
パネル3 介護、保育の人材紹介手数料総額の推移
パネル4 OECD諸国の男女の大学・大学院進学率の差
パネル5 大卒の男女間収入格差

提出資料 厚生労働省HPより 

 日本共産党の宮本徹議員は25日の衆院予算委員会の基本的質疑で、新型コロナウイルスのオミクロン株急拡大でひっ迫する検査体制への支援を求めました。また、岸田文雄首相がいう「新自由主義の弊害を是正する仕組み」を壊してきたのが歴代自民党政権だと追及し、この間の政策への反省と抜本的転換を迫りました。岸田首相は、一つひとつの具体的な指摘に答えず、新自由主義的政策を見直す姿勢がないことが浮き彫りになりました。
 宮本氏は、オミクロン株急拡大で、発熱外来がひっ迫しているとして、「なぜ診療・検査体制の補助金を行わないのか」と追及しました。岸田首相が診療報酬上の「切り替えを行ったから」と答えたのに対し、宮本氏は昨年10月に行った加算を超えて昨年12月に検査の診療報酬削減が行われていると批判しました。
 また、医療現場の抗原検査キット不足が深刻だと指摘。「薬局での販売を可能にしてきた」などと言う岸田首相に対し、「キットをどう確保するのかの話が昨年来やられてこなかった。あまりに後手後手だ」として、支援拡充を求めました。
 宮本氏は、新自由主義の弊害として低賃金の労働者が増える一方で企業の内部留保と配当が増えるなど「格差や貧困」が拡大したと指摘。「自民党政権のどの政策が日本社会に格差と貧困をもたらしたのか」とただしました。
ところが岸田首相は「90年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレで停滞の時代を経験した」などとしか答えません。
 宮本氏は[貧困と格差を広げた新自由主義的な政策の際たるものが労働者派遣法と有料職業紹介の原則自由化だ」と指摘。1999年に労働者派遣が原則自由化され、派遣労働者が低賃金の雇用の調整弁として扱われ、コロナ禍でも多くが失業したとして「労働者派遣の原則自由化が、貧困と格差を広げた一因との認識と反省はあるか」とただしました。
後藤茂之厚生労働相は答弁で、「待遇改善が必要となった面もあった」と弊害があったことを認めました。
 宮本氏は、岸田首相が資本主義の中に「弊害を是正する仕組みを埋め込む」というのであれば、「派遣労働を臨時的・一時的業務に限定し、1年を超えれば直接雇用に転換できる法改正を行い、非正規労働から正規雇用への転換を促進すべきだ」と追及。後藤厚労相は「派遣労働者の正社員化や待遇改善に取り組んできている」と無反省な姿勢に終始しました。
宮本氏は「新しい資本主義」は財界のもうけ優先の自民党政治の継続だとして、新自由主義的な政策の抜本的な転換を求めました。

以上2022年1月26日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年1月25日 第208回衆院予算委員会第3号 議事録≫

○根本委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、コロナ対策についてお伺いをいたします。オミクロン株の感染が急拡大する下で、発熱外来が逼迫して、検査の予約が取れない、予約は取れたが二、三日後だ、こういう声があふれております。様々な形で必要な診療、検査体制をつくることは政治の責任であります。発熱外来のキャパを増やす上で、診療所の不安として、医師が感染した際に診療所を閉めなければならなくなり、その後も患者が戻らないのではないのかという経営上の不安も伺います。あるいは、これまで発熱外来に取り組んできたが、以前あった診療、検査体制確保の補助金がなくなったので、今は様子見、こういうところもあると聞いております。しっかり財政的支援を行う、このことで発熱外来のキャパを増やしていくことが大事だと思います。総理、昨年あった診療、検査体制確保の補助金、これは何で今年やらないんですか。
○岸田内閣総理大臣 昨年あった診療体制確保のための診療報酬上の支援は何でなくなったのかということですが、端的に言いますと、切替えを行ったということであります。発熱外来について、昨年秋以降、診療・検査医療機関において、新型コロナの疑いのある患者に対して、必要な感染予防策を講じた上で外来診療を行った場合、診療報酬上の特例的な評価を拡充している、こうしたことであります。オミクロン株は、軽症の感染者が多いということ、感染力が大変強いということ、こういった点から考えても、こうした部分にしっかりとした支援を行うという考え方は的を得ているんではないかと考えております。
○宮本(徹)委員 何でやめたのかというのは、切り替えたという話ですけれども、ホームページに公表したら二千五百円加算すると、去年の十月にやられましたけれども、実はそれ以上の診療報酬の削減を、検査については十二月にやっているわけですよね。抗原検査ではマイナス三千円、自分の病院でPCRの検体を取るところは一万千円、それ以外でも四千五百円、診療報酬でいえば下がっているわけですよ。これだけ発熱外来のニーズが高まっているときに、そして経営上の不安だとかいろいろなところから踏み出せないところがあるのに、そこにしっかり支援をしていく、そのことによって発熱外来を増やすというのは、私はやらなきゃいけないことだと思いますよ。
○後藤国務大臣 発熱外来の体制整備については昨年から経緯がありまして、一昨年来、体制整備の補助ということで、医療機関における感染拡大防止対策を強化するための各種支援を行って、診療・検査医療機関は現在までに三・五万か所整っていまして、一応体制ができたと思います。昨年秋以降、今度は、体制ができたので、診療・検査機関において、新型コロナの疑いの患者に対して、必要な感染予防策は講じた上で外来診療を行った場合の診療報酬上の特例的な加算をつくりました。そして、これを、三月までとされていたので、この三月までの特例報酬の改定を、四年度の新しい診療報酬の改定の明示的な財源に計上して今年度の診療報酬の改定をやっている。そのことが、振替を行って、しっかりと体制整備、その後の病院、空床を充てるような形の、仕組みをうまく使いながらの感染予防対策に充てていくということで、これが今の診療報酬につながっているということだというふうに考えています。それから、総額約六・八兆円の予算を医療機関に投入してきたということは、マクロとしては申し上げておきたいと思います。
○宮本(徹)委員 新聞の投書にまで、検査をやるたびに赤字だ、こういう投書まで開業医の方から出ているわけですよ。やはり、本当に真剣に発熱外来の体制、どうやって増やしていくのかというのは考えていただきたいと思います。続いて、抗原検査のキットを活用した自主検査と組み合わせた診療、検査体制の拡充も非常に大事であります。ところが、午前中も議論がありましたけれども、現状は、医療現場からも抗原検査キットが不足しているという悲鳴の声が上がっております。医療現場など、症状がある方の診療、診断のために優先して安定供給する仕組みが必要ではありませんか。
○後藤国務大臣 宮本委員御指摘のように、抗原検査キットの供給につきましては、感染の急拡大あるいは無料検査事業の開始によりまして、短期間で検査需要が大幅に増加をいたしております。今週の生産百四十三万回に加えまして、足下四百六十万回分の在庫を有しておりますけれども、この在庫四百六十万回は、例えば、最近の出荷量と比べると三週間分に相当する量でございます。しかし、最近の感染状況の中で急速に検査需要が伸びていることから、一部の地域では一時的に検査が受けにくい状況が生じているということは承知をいたしております。厚生労働省において一月十四日に増産を要請したところですけれども、一月十八日には総理からも改めて指示をいただきまして、メーカーに対して、国が買取り保証をして、当面、一日八十万回分の増産を要請をいたしております。医療機関、希望する有症状者に対する行政検査など、今御指摘のあったように、そうしたところをしっかりと優先しつつも、引き続き必要な量を確保していきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 世界を見ると、この抗原検査のキットはもっと大規模に活用しているわけですよね。アメリカのバイデン大統領は、十億回分、各家庭に配付をすると。そして自主検査も進めております。私、実は、昨年夏の第五波のときに、神奈川県の取組を紹介しながら、抗原検査キットの家庭への配付を提案をいたしました。その際、尾身会長からは、国においても検討するに値する、こういう答弁があったわけでございます。ところが、現状は、抗原検査キットが医療現場ですら足りない状況だということであります。総理にお伺いしたいんですけれども、昨年の夏以降、抗原検査キットの確保についてどういう努力をされてきたんですか。
○岸田内閣総理大臣 抗原検査キットについては、職場において、昨年六月から、直接入手をして検査できるようにし、そして、高齢者施設に対して、昨年七月から七百八十万回分の配付を行いました。そして、さらに、家庭等で検査ができるようにするため、昨年九月末には薬局における販売を可能とし、直接入手することができるようにし、昨年十一月には、一層入手できるよう、薬局での広告や店頭陳列も認めている。さらには、昨年十二月末には無料検査事業を開始した、こうしたことであります。昨年までは、この抗原検査キットの使用、これは今の状況と比べますとかなり低調でありました。しかし、ここへ来て、オミクロン株の感染拡大もあり、この感染キットの要望は格段に高まっている。こういった状況も鑑みて、今、後藤大臣から紹介させていただきましたように、四百六十万の在庫に対して、毎日八十万回分の増産を加えて、こうした要望に応えていこうという体制を取っているというのが現状であります。
○宮本(徹)委員 抗原検査キットの、昨年来、販売する場所を増やしたという話がありましたけれども、抗原検査キットをどう確保するのかという話が全然昨年来やられていなかった、つい最近になってからやったという話じゃないですか。 余りにも私は後手後手過ぎると思います。私は去年の夏に提案して、尾身会長だって、国として検討に値すると専門家の立場でおっしゃっていたわけでございます。総理は、先週、抗原検査キットの増産の指示を出したということでございますけれども、抗原検査キットの国内供給能力を総理が知ったのはいつなんですか。
○岸田内閣総理大臣 済みません、国内供給能力について知ったのはいつか、ちょっと質問の趣旨を十分把握しておりませんが、要は、国内の供給体制については、昨年九月に薬局においてキットの販売が可能になったことを受けて、メーカーに対して増産を要請いたしました。そのことによって、在庫数はそれ以降順次増加し、昨年十一月、十二月以降では、常時、約六百万回分が保有されていた、こういった供給体制になっていたと承知をしています。ただ、ここへ来て需要が高まったことから、足下の数字、これが四百六十万回分になった、これを先ほど後藤大臣から紹介させていただいた次第であります。
○宮本(徹)委員 そうすると、六百万を目指してずっと確保していたという話じゃないですか。デルタのとき、デルタは国民の皆さんのワクチン接種で急速に抑え込む、これができましたけれども、デルタのときだって、国民全員が感染するかも分からないと言われていたわけですよ。オミクロンはもっとすごいスピードで広がっている。そして、オミクロンの亜種はその更に二倍だということを言われているわけですよね。本当に、検査して診断するというのは、一番、治療につながる上でも出発点ですからね。それが全く備えがなっていなかったと私は言わなければならないと思います。私は、本当にこのままいったら、八十万の増産といっていても、これでも足りなくなると思いますので、いろいろな手だてを取って、更に確保に努めていただきたいと思います。次に、医師、看護師等の国家試験についてお伺いいたします。試験が来月に迫っております。コロナに罹患していれば受験ができません。病院は国家試験合格を前提に四月入職者の内定を出しているため、試験を受けられない影響は受験生にも病院にも出ます。大学入試については、文部科学省が各大学に要請し、新型コロナに罹患した人にも追試験などの機会が設けられております。医師、看護師等の国家資格についても、過去には、二〇一四年の看護師国家試験では、大雪の影響で万全な体調で受験できなかった人のために、三月に追加試験が行われております。総理、この医師、看護師等の国家試験について、今回、新型コロナに罹患して受験できない方々にも追試験などの機会を設けるべきではないですか。
○後藤国務大臣 医師、看護師等の国家試験の追加試験につきましてですが、こうした試験は職業資格を担保するための国家試験でありまして、広く青少年にチャレンジの機会を与えるための、そうした選別の大学受験の試験とか、そういうものとは、国家試験としての性格として違うものだと思っております。そして、本試験と同等の質、量を担保した試験問題ということになりますので、これを短期間で作成、実施することはなかなか難しいというふうに考えております。国家試験においては、従来から心身の不調を理由とした追加試験は実施しておりませんので、緊急事態宣言下にあった昨年も行っていないということでございます。そうした事情を考慮しますと、本年の国家試験においても追加試験の実施は難しいと考えておりますけれども、一方で、試験当日に発熱症状がある者に関して、試験会場で抗原検査キットによる検査を実施して陰性の場合とか、あるいは、試験前に濃厚接触者とされた者に対し、試験当日に無症状等の条件を満たした場合には別室で受験をさせる等、特例的な対応をすることで、コロナ禍においてもできる限り受験が可能となるように最大限の措置を講じてまいりたいというふうに思っております。平成二十六年の大雪の際、交通障害によりまして受験会場に到達できなかった方がおられた看護師国家試験の追加試験、確かに実施をいたしました。これについては、一部の地域、限られた職種、つまり看護師だけです。その特例的に実施したものでありまして、先ほど申した幾つかの理由から、緊急事態宣言下にあった昨年も行っていない、それと類似の取扱いにするように今考えております。
○宮本(徹)委員 いや、昨年が間違っているわけですよ。昨年も私はこれを求めましたよ。何で大雪の被害のときは再試験ができて、コロナ禍のパンデミックなら、感染していたら再試験、追試験が設けられないのかと。パンデミックの中で感染することは自己責任なんですか。違うでしょう。医療現場は本当に、長引くコロナ禍で深刻な疲弊状況にあるわけです。こうしたときに使命感を持って入職しよう、看護師さんになろう、お医者さんになろう、こういう方は、本当にどんなことがあっても、本来、人材確保をするために国は努力しなきゃいけないんじゃないですか。総理、ちょっと、検討するという指示を出してくださいよ。
○岸田内閣総理大臣 ただいま後藤大臣から御説明させていただきましたように、医師国家試験を始めとする国家試験の様々な事情を勘案して、追試験は難しいという判断を厚労省としてもしていると承知をしております。当日の別室での試験、濃厚接触者に対しての配慮等、別室での試験等の様々な工夫はしているかと思いますが、追試験については厚労大臣が今説明したとおりであると私も認識をしております。
○宮本(徹)委員 全く説明になっていないですよ。大雪でできて、パンデミックでなぜできないのか。本当に聞く力があるんだったら、こういう医療現場の声こそ聞くべきだということを申し上げておきたいと思います。次に、総理の新しい資本主義についてお伺いをいたします。総理は、施政方針で、新自由主義的な考え方が様々な弊害を生んだと述べ、様々な弊害を是正する仕組みを資本主義の中に埋め込むと述べられました。しかし、格差や貧困を是正するために日本経済に埋め込まれていた労働法制や社会保障、直接税中心の累進課税などを次々壊してきたのが歴代の自民党政権であります。弊害を是正するというのであれば、この間の政策への根本的な反省が求められます。総理は弊害の一つとして、公平な分配が行われずに格差や貧困の拡大をもたらしたと指摘されました。この間、ワーキングプアと呼ばれる低賃金の方々が増える一方、企業の内部留保と配当が増えております。そこで、総理にお伺いをいたします。この間の自民党政権の行った政策のうち、どの政策が新自由主義的な考え方によって日本社会に貧困と格差をもたらしたとお考えですか。
○岸田内閣総理大臣 私が申し上げたのは、一九八〇年代以降、新自由主義的な考え方が世界的に主流とする中で、欧米諸国を中心に中間層の所得が減少し、格差や貧困が拡大したということであります。例えば、国民総所得に対する雇用者報酬の割合を示す労働分配率で見ると、日本は横ばいである一方、アメリカ等の先進国では趨勢的に低下傾向にあるということであります。そして、我が国ということで申し上げるならば、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによって停滞の時代を経験し、企業は投資や賃金を抑制し、消費者は将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷し、デフレが加速するという悪循環であったと承知をしております。その結果、我が国の人的投資や設備投資の対GDP比、また可処分所得の伸び、これは主要先進国に対して劣後してしまいました。デジタル化や気候変動といったイノベーションの波、あるいは世界的な課題への対応に乗り遅れてしまった、これが我が国の現状であると認識をしています。この現状に対して、しっかりと経済再生に向けて新しいモデルをつくっていこうではないか、こういったことを申し上げております。
○宮本(徹)委員 何か、格差と貧困が広がったのは世界の話であって、日本の話じゃないみたいな答弁ですけれども。 総理、総裁選のとき、こうおっしゃっていたんですよね。小泉構造改革以降の規制緩和、構造改革の新自由主義的な政策は富める者と富まざる者の格差と分断を生んできた。総理自身が、この間の新自由主義的な政策で格差を生んできたというふうにずっとしゃべっていたじゃないですか。総裁選ではそういうことを話しても、総理になったらそれは否定されちゃうんですか。
○岸田内閣総理大臣 新自由主義的な経済政策によって市場や競争が重視されたことによって様々な課題も生じてしまったということを申し上げてきました。新自由主義的な経済政策そのものについては、まずは成長のエンジンとして大きな役割を果たしたと思っています。ただ、その中でも幾つか課題が生じてしまった。その一つとして格差の問題もある。ただ、格差の問題については、所得の格差だけではなくして、大企業と中小企業、大都市と地方、様々な格差が生じている。これをしっかりと目を向けて様々な対策を資本主義の中に盛り込もうではないか、こういったことを申し上げてきました。問題意識は変わっていないと思っています。
○宮本(徹)委員 じゃ、どの新自由主義的な政策が格差と貧困を広げたのか、ここをなかなか岸田総理はおっしゃらないわけですけれども、私はその最たるものは労働者派遣と有料職業紹介の原則自由化だというふうに思います。戦前、人貸し業が横行し、ひどい中間搾取やピンはねが行われて、労働者は無権利状態に置かれておりました。この反省に立って、戦後の労働法制は、賃金をピンはねする労働者供給事業や有料職業紹介を罰則をもって禁止して、直接雇用を原則といたしました。ところが、一九八六年に一部の専門業種で労働者派遣が解禁され、一九九九年には労働者派遣が原則自由化されました。以来、派遣労働者が低賃金の雇用の調整弁として扱われ、このコロナ禍でも多くの方が仕事を失いました。年末年始の年越し相談村に私も生活相談員として参加をいたしましたけれども、ある方は、十八歳の高卒以来、派遣労働者として働いていたけれども、コロナ禍で派遣の仕事が大きく減って生活に窮している、こういうお話を伺いました。私も、政治の責任に大変胸が痛みました。岸田総理、自民党政権が行った労働者派遣の原則自由化が、雇用の非正規化、不安定化を広げ、貧困と格差を広げた一因だという認識はありますか。
○後藤国務大臣 平成十一年の労働者派遣法の改正による対象業務原則自由化は、当時の非常に厳しい雇用情勢に加えまして、ILO第百八十一号条約において、労働者派遣事業を含む民間の労働力需給調整事業の運営を原則全ての業務で認めた上で、その労働者を保護することを目的とする制度をつくるということでございましたので、そうしたものを踏まえまして改正したものでございます。これにより、多様な機会、雇用の機会の拡大につながったものと考えておりますが、非正規雇用労働者の待遇改善が必要となった面もあったというふうには考えております。非正規雇用労働者の待遇改善については、同一労働同一賃金の導入など、労働者の保護に欠けることがないように十分留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度整備を行ってきたところでございまして、労働局による助言指導等により、雇用形態にかかわりない公正な待遇の確保に向けて法の履行確保を図っていく必要があると思っております。
○宮本(徹)委員 非正規労働者の待遇の改善が必要になった面もあるということを大臣はおっしゃいましたけれども、そういう格差をもたらした、待遇の劣化をもたらしたということの反省の言葉が私は必要なんじゃないかというふうに思いますよ。私は、資本主義の中に弊害を是正する仕組みを埋め込むというのであれば、派遣労働については、やはり臨時的、一時的な業務に厳格に限定して、一年を超えれば直接雇用に転換できる法改正を行い、非正規労働から正規雇用への転換を促進すべきだと思いますが、いかがですか。
○後藤国務大臣 労働者派遣法におきましては、派遣労働者の同じ職場への派遣は三年を上限とすることになっておりまして、派遣の受入れは、今委員もおっしゃったように、あくまで、原則、臨時的、一時的に限ることとしております。加えて、一定の派遣期間、三年でございますけれども、が満了する場合の派遣先に対する直接雇用の依頼や計画的な教育訓練の実施などを派遣元の義務として定めておりまして、派遣労働者の方の正社員化や待遇改善に取り組んできているというふうに考えております。派遣期間が一年を超えれば直接雇用に転換することを法律に位置づけるのかという御提案についてでございますけれども、かえって派遣労働者の方の雇用の場を狭めるおそれもあるのではないかというふうに考えております。非正規雇用労働者の待遇の改善につきましては、同一労働同一賃金の導入など、労働局による助言指導等により、雇用形態にかかわらない公正な待遇改善の確保に努めてまいりたいと思います。また、非正規雇用の方の正社員化について、キャリアアップ助成金による支援や、人への投資、三年で四千億円の施策パッケージ等も創設しておりまして、分配戦略を強化しつつ、様々な施策を通じて、非正規雇用労働者の待遇改善と正社員化を推進してまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 現状は、三年たつ前に契約更新を行わないということがあちらこちらで行われているのは御存じでしょう。しかも、このコロナ禍の中、真っ先に雇い止めに遭った方々は派遣労働者の皆さんでしたよ。皆さんもたくさん相談を受けたんじゃないですか。こういうのをどう繰り返さないのかということを真剣に考えるのが、資本主義の弊害を是正する仕組みを埋め込んでいくということなんじゃないかと私は思いますよ。もう一点、一九九九年に、労働者派遣と同時に全面的に自由化されたのが有料職業紹介であります。それまで、有料の職業紹介は一部業種に限定され、紹介手数料の上限も年収の一〇%程度に制限されておりましたが、紹介手数料の上限も取っ払ってしまいました。さらに、二〇一四年には、ハローワークの求人情報が人材紹介会社に提供されるようになりました。これが今大変な問題を引き起こしております。医療、介護、保育の現場では大きな弊害が生まれております。社会保障費の抑制がもたらした低賃金、きつい労働条件による慢性的な人手不足の中、人材紹介会社が営業攻勢をかけ、人材手数料も年収の二〇%、三〇%、三五%と上がっております。ちょっとこれは数字を紹介してほしいんですけれども、二〇一四年と比べて人材紹介会社が手にした手数料収入は、介護関係、保育士、それぞれ幾らから幾らに増えておりますか。
○後藤国務大臣 民間職業紹介事業者からの毎年度の事業報告によりますと、介護サービスの職業の紹介手数料収入は、二〇一四年度で二十五億円、二〇一九年度では約二百十八億円となっております。また、保育士の紹介手数料収入は、二〇一四年度約十二億円、二〇一九年度で約百二十八億円となっております。
○宮本(徹)委員 今の数字のとおり、人材紹介会社の手数料収入は、この間、介護は八倍、保育士は十倍、ちなみに看護師さんも二〇一三年比で五倍に増えております。一般企業への人材紹介とは違って、医療、介護、保育の事業所が支払う人材紹介手数料の原資というのは、国民の皆さんの税金であったり保険料ということになります。事業者の皆さんからも、本来ならば給与の改善に充てるべきものが人材手数料に消えていくのは悔しい、こういう声が上がっております。ある社会福祉法人からは、今年度、既に紹介手数料が一千万円を超えた、こういう声も届いております。病院協会等の二〇二〇年の調査では、一般病院の利益率一・八%に対し、人材紹介手数料の平均比率は〇・三八%、一部の病院では二%前後になっている。また、福祉医療機構の調査でも、小さな保育園では、人材紹介手数料が収入の約二%、中には五%にも達している。医療、介護、保育の事業所の経営が人材紹介手数料で圧迫される事態すら、今、起きております。しかも、厚労省の調査でも、人材紹介会社からの就職はハローワークからの就職に比べて短期で離職する、これが、率が高い。そして、短期で離職と就職が繰り返されれば人材紹介会社の利益になり、事業所は更に経営が圧迫されるということになっております。一九九九年、有料職業紹介を自由化した国会で、当時の担当大臣からは、規制緩和することで働く者も使用者の側もメリットが大きいと言っておられましたが、介護や保育の分野で働く者にどんな大きなメリットがあったんですか。
○後藤国務大臣 有料職業紹介事業が原則解禁されました職業安定法の改正、これも先ほど御紹介させていただいたILO一八一号条約において根拠のあるものでございますが、それによりまして、これまでハローワークが独占的に行っていた職業紹介について、民間事業者も……(宮本(徹)委員「短く短く。メリットだけ言ってください」と呼ぶ)はい。求職者が自分の希望に合った求人を探す上で選択肢が広がったこと、多様なサービスが展開されている中で自分に合ったサービスを行う事業者を選ぶことも可能になったというのがメリットだと考えております。
○宮本(徹)委員 現実には、多様なサービスといいながら、ハローワークの情報を使って民間人材紹介会社はやっているだけで、就職先のメニューが増えるわけでもないわけであります。さしたるメリットはない。それどころか、本来ならば労働者の賃金に回すべき保険料、税金が人材紹介会社に流れて、労働者に回らないわけですから、どう考えても、その分賃金は増えないわけですよ。大したメリットはないのに、事業者も経営に苦しむ、労働者も賃金がその分増えない、人材紹介会社だけがもうかる、こういうことになっているわけですよね。岸田総理も、この弊害に是非目を向けてほしいと思います。医療、介護、保育の事業所や関係団体からは、弊害の是正を求める切実な要望が繰り返し出ております。一つは人材紹介手数料の適正化、上限規制です。もう一つはハローワークによる職業紹介の充実であります。総理、少なくとも、医療や介護、保育など、税金や保険料を財源とする公的分野については、人材紹介手数料の上限規制を設けるべきではないですか。また、医療、介護、保育関係は国が責任を持って、無料で迅速に職業紹介できるように、ハローワークに専門部門を設けるなど、ハローワークの拡充を図るべきではありませんか。
○後藤国務大臣 紹介手数料の水準につきましては、労働市場の需給の状況に応じて変動するものだというふうに思います。また、求人の内容に応じて様々であるために、一律に上限を設けることについて、そこは慎重に検討が必要になるのではないかと考えております。厚生労働省としては、利用者のニーズに合った職業紹介事業者を安心して選択できる環境を整備することが重要であるというふうに考えておりまして、先生のおっしゃっているようないろいろな事情についても、十分目を光らせていく必要もあるというふうに思います。平成三十年一月から施行されている改正職業安定法に基づき、手数料等の情報開示を義務づけるとか、職業紹介事業の利用者である医療、介護、保育分野の業界団体等が参画しました、医療、介護、保育分野における職業紹介事業に関する協議会におきまして適正な職業紹介事業者の基準を策定しまして、今年度より、基準を満たす事業者を認定する制度の運用を開始したところでもございます。こうした取組を通じて、利用者が優良な職業紹介事業者を選択することが可能な環境を整備することによりまして適切に役割を果たせていくように考えていきたいというふうに思っております。また、医療、介護、保育関係等の人材不足分野のマッチングを支援、強化するために、令和四年度予算案にハローワークの専門窓口である人材確保対策コーナーの拡充を盛り込んでおりまして、引き続き人材不足分野の人材確保に取り組んでまいります。
○宮本(徹)委員 一律の上限規制は慎重だという答弁がございました。そして、ホームページで適正な事業者、これを公開しているんだという話もありましたけれども、新しく適正な事業者の認定制度、何が適正なのかなと思うんですけれども、それを見ても、手数料三五%とか掲げているところも適正だとなっているわけですよ。手数料の上限規制をやらない限りは、本当に皆さんの保険料や税金が働いている方々には行かないということになるわけであります。元々規制があった分野ですよ。その規制を取っ払って弊害が起きているのに、その弊害を是正しようともしない。これが新しい資本主義なんですか。ちなみに、この労働者派遣の自由化、職業紹介の自由化、ハローワーク情報の民間開放、こうしたものについて、政府の会議の中で主張し、旗を振ってきたのは誰か。今は人材派遣、人材紹介大手のパソナの会長になっている竹中平蔵さんであります。それで、岸田総理は、この竹中平蔵さんを総理の看板政策の会議のメンバーに選んで、これまでの政権同様、重用しているわけでございます。総理、これでは、弊害を是正する仕組みではなく、新自由主義的政策を進める仕組みを引き続き埋め込んでいる、こういうことなんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の竹中平蔵氏につきましては、政府の会議の中で、デジタル田園都市国家構想会議において議論に参加していただいているということであります。全体の枠組みではなくして、デジタル、この分野において今日までの知見に基づいて貢献していただければということでお願いをしている次第であります。
○宮本(徹)委員 今日私が指摘した弊害について、岸田総理も一つ一つ見直すということはおっしゃられませんでした。総裁選のときには、新自由主義的な政策を見直すとおっしゃったにもかかわらず、具体的に一つ一つ指摘してもそれは正されない。労働者派遣法、人材紹介業の自由化で富を増やしたのは、派遣会社、人材紹介会社だけではございません。コストカットで大企業は利益を増やし、巨大な内部留保を積み上げました。結局、総理の言う新しい資本主義は、財界のもうけ優先の自民党政治の継続にすぎない、私はそう思わざるを得ません。新自由主義的な政策の根本的な転換を求めたいと思います。次に、男女の賃金格差の是正についてお伺いをいたします。総理が、我が党の求めに応じて、男女の賃金格差を有価証券報告書の開示項目にすること、また、女性活躍推進法での開示の充実を表明したことは一歩前進であります。配付資料を見ていただきたいんですけれども、現在の女性活躍推進法では、そもそも男女の賃金格差の把握が義務づけられておりません。また、情報開示も、女性労働者への機会提供やワーク・ライフ・バランスの指標、たくさんある項目から企業が一つないし二つ選んで公表するという仕組みであります。この選択項目に男女の賃金格差を加えても、公表する、しないは企業任せになるということであります。総理、この女性活躍推進法で、男女の賃金格差については必ず把握すべき基礎項目に加える、そして、男女の賃金格差を含めて、少なくとも基礎項目については企業に公表を義務づける、こういう仕組みが必要なのではないですか。
○岸田内閣総理大臣 女性活躍推進法ですが、求職者の職業選択等に資するよう、女性活躍に関する情報の公表を義務づけることで、企業に女性活躍推進の取組を促しており、結果として、男女間賃金格差の是正も期待してきたところですが、その際に、同法においては、女性活躍の状況や課題が事業主によって様々であることを踏まえて、その実情に応じた取組が進められるよう、今委員の方から御指摘ありましたように、省令で定めた一定項目の中から企業の規模に応じた項目数を選択して公表することを義務づけております。そして、昨日私から申し上げたとおり、依然として男女間賃金格差が大きい状況も踏まえ、男女活躍推進法のスキームを更に実効あるものにするよう、男女間賃金格差そのものの開示を充実する制度の見直しについて具体的に検討し、速やかに着手してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 だから、その答弁があったから私は聞いているわけですよ。具体的に、じゃ、どうするのかということで、必ず把握すべき基礎項目に加える、そして、それも含めて企業には公表を義務づける、こうした仕組みが必要ではないかと言っております。
○野田国務大臣 まず、我が国のジェンダーギャップ指数が非常に低い、百五十六か国中百二十位というのは大変残念なことで、特に、御指摘の男女の賃金格差を含む経済分野においてはスコアが大変低調です。我が国の取組が諸外国と比べて非常に遅れているということを示していますし、御理解いただきたいと思います。男女の賃金格差の是正に向けて、例えば、諸外国においては、一定規模以上の企業に対し、男女の賃金格差の公表の義務づけが行われている例もあると承知しています。こうした諸外国の状況もしっかり分析しつつ、依然として男女間賃金格差が大きい状況も踏まえて、女性活躍推進法のスキームが更に実効のあるものになるよう、今総理からもしっかりと前向きなお話をいただきましたので、男女間賃金格差そのものの開示を充実する制度の見直しについては、厚生労働大臣と連携しながら、具体的に検討し、速やかに着手してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 今までじゃなく、ちゃんと義務づける、そこまでやる方向で検討されている、検討していこうという意思があるという、うなずいていただければいいですので。うなずいているということですので。(発言する者あり)いや、いいです、いいです。時間がないので、次に行きます。さらに、やはり情報開示を求めた上で、企業にその情報に基づいて格差の是正を義務づける仕組み、これを設けないと前には進まないと思います。開示を義務づけた上で、その情報に基づいて格差の是正を義務づける、これにも取り組まれますか。
○後藤国務大臣 先ほどの話から言いますと、まず……(宮本(徹)委員「ちょっと短く」と呼ぶ)分かりました。それでは、開示させる情報をどう生かしていくかということでよろしいですね、そちらの方だけで。女性活躍推進法については、行動計画策定義務の拡大などを盛り込んだ改正がこの四月から完全施行されることになっておりまして、今、その施行に万全を期しているところです。依然として男女間賃金格差が大きい状況も踏まえて、同法のスキームが更に実効あるものとなるように、男女間賃金格差そのものの開示を充実する制度の見直しについてしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 ちゃんと格差の是正を義務づける仕組みがないと、開示だけなら、一九九九年三月までは有価証券報告書にも男女別の従業員の平均給与月額は開示されておりました。それでも男女の大きな賃金格差がありました。開示だけじゃなくて、賃金格差を是正する具体的な仕組みが必要だということを重ねて申し上げておきたいと思います。最後に、女性の賃金が低いことは、教育も含めて深刻なゆがみを私たちの国にもたらしております。パネルを見ていただきたいんですけれども、OECD諸国の中で日本だけが、女性の方が四年制大学の進学率、大学院の進学率が低いということになっているわけでございます。もう一つのパネルを見ていただきたいんですけれども、なぜ日本だけが女性の進学率の方が低いのか。幾つか理由がございますけれども、その一つは、やはり高等教育を受けたことでどれだけ生涯収入が増えるのか。これは、パネルですけれども、各国比較です。日本の女性は、高等教育を受けたことによる収入の伸びが諸外国の中で断トツに低い、小さい。男女の収入格差がこの点でも極めて大きいということになっております。総理、最後の質問ですけれども、男女の賃金格差が日本の若い女性の進路選択を狭める大きな要因の一つになっている、こういう自覚はございますか。
○岸田内閣総理大臣 御質問に端的に答えるならば、御指摘のとおり、賃金格差が女性の進路選択に影響を与えると考えられると認識をいたします。
○宮本(徹)委員 ですから、私たちのこの国をこれから発展させていく、成長させたいというのは本当に皆さんの多くの思いだと思いますけれども、社会の半分を占める女性の力を入口のところから発揮させない国に私たちの国はなってしまっている。これは社会にとっても大変大きな損失だと思います。ジェンダー平等をあらゆる面で、そして土台中の土台である賃金の面で進めてこそ、結果として、私たちの社会は本当に住みよく、そして経済も発展していく、こういう国になっていくんだということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。