2023年10月30日 衆院予算委員会 コストカット経済見直せ 首相、歴代政権の反省なし 宮本徹議員 抜本転換迫る

配付資料(パネル写し) 各国の実質賃金指数
配付資料(パネル写し) 非正規率と大企業の内部留保
配付資料(パネル写し) 有期契約労働者の割合と雇止め相談件数
配付資料(パネル写し) 配偶者のいない非正規労働者(25~64歳)の所得分布
配付資料(パネル写し) 各国の最低賃金
配付資料(パネル写し) 地方自治体の常勤・非常勤職員数と人件費総額
配付資料(パネル写し=修正) 国家公務員の男女賃金格差
配付資料(パネル写し) 経団連役員企業の男女賃金格差
配付資料(パネル写し) 年金生活者の実質可処分所得
配付資料(パネル写し) 後期高齢者の一人当たり受診日数

 日本共産党の宮本徹議員は30日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相がいう「コストカット型の経済」をつくりだしてきた歴代自民党政権の責任を指摘し、この間の政策への反省と抜本的転換を迫りました。岸田首相は、一つひとつの具体的な指摘に答えず、「コストカット型の経済」を見直す姿勢がないことが浮き彫りになりました。
 賃金のコストカットが行われ、日本は「先進国」で唯一、30年にわたり「賃金の上がらない国」になっています。
 宮本氏は、「賃金のコストカット」が進められてきた根底には、歴代自民党政権が進めた労働法制の規制緩和による非正規雇用の拡大があると指摘。「コストカット型の経済」の転換のためには、非正規雇用の正社員化、有期雇用を合理的な理由がある場合に限定する「入り口規制」を設ける―など、政策の抜本的転換が必要だと迫りました。
 岸田首相が「現行の無期転換ルールが適切に運用されるよう取り組む」と答えたのに対し、宮本氏は、「そもそも現行のルールの適用から逃れる運用をしている企業がある。『入り口規制』を行い有期契約の乱用の抑制をすべきだ」と重ねて求めました。
 また宮本氏は、最低賃金をめぐる岸田首相の「2030年代半ばに1500円」との発言をあげ、「あまりに遅い」と追及。「最低賃金は公労使それぞれの立場からどうあるべきか議論することが重要だ」などと言う岸田首相に対し、「首相が主導力を発揮し行っていこうという姿勢が全く見えない」と批判し、最賃引き上げのための大規模な中小企業支援を行うべきだと求めました。
 もう一つ、コストカットが行われてきたのが社会保障です。
 宮本氏は、介護、障害福祉、医療、保育の人材不足が極めて深刻だと指摘。とりわけ、賃金が全産業平均より7万円も低い介護職等の賃上げや、事業者の収益増加のために毎年改定で基本報酬を引き上げるよう求めました。
 岸田首相は「必要な処遇改善の水準を検討していきたい」として、全産業平均並みの賃上げが必要との認識は示さずじまい。毎年報酬を引き上げる改定の提案についても「まずはデフレ脱却に向けた経済対策を用意することに専念する」として問題を先送りにしました。
また宮本氏は、岸田首相が、少子化対策の財源として医療・介護などの歳出カットを名指ししていることは重大な問題だと指摘。年金が増えない中、介護保険利用料の2割負担の対象拡大が狙われていると指摘し、「必要な介護サービスを我慢せざるを得ない人を生み、配偶者の困窮を生む。やめるべきだ」と述べ、「介護保険は利用料を引き上げるのではなく、国庫負担を引き上げるべきだ」と強調しました。

以上2023年10月31日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年10月30日 第212国会衆院予算委員会第3号議事録≫

○小野寺委員長 これにて浅野君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。総理、まず、ガザ・イスラエル紛争についてお伺いいたしたいと思います。多くの命が奪われ続けております。ガザは壊滅的な人道状況であります。世界中で停戦を求める声が上がっております。国連安保理が機能不全の中、国連総会で、即時かつ持続的な人道的停戦を呼びかける決議が採択されました。イスラエル、ハマス、全ての当事者がこの決議に従うべきです。そして、国際社会はこの決議履行に最大の努力をすべきです。ところが、この決議に日本政府は棄権をいたしました。総理、なぜ棄権したんですか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の決議についてですが、同決議は、ハマス等によるテロ攻撃への強い非難や、全ての国連加盟国が国際法に従って自国及び自国民を守る権利の重要性に関する言及がないなど、全体として内容面でバランスを欠いているとしたために、我が国として総合的に判断し、棄権をした次第です。しかしながら、同決議に含まれている人道アクセスなど、ガザの人道状況に対処するための重要かつ前向きな要素については、我が国として支持できる内容であり、この点、本決議に対してカナダから提出された修正案、これについては、ハマスによるテロ攻撃及び人質拘束を明確に非難する旨、追加する趣旨がありました。このカナダからの修正案については、我が国として賛成をした次第であります。
○宮本(徹)委員 ちょっと説明になっていないと思うんですよね。ハマスの三文字は入っていないかも分からないですけれども、この決議の中では、パレスチナとイスラエルの市民を狙ったテロ行為、無差別攻撃を含むあらゆる暴力行為を非難すると書いているわけじゃないですか。人質の解放も入っているわけですよ。ハマスの三文字がないだけで賛成しないというのは、こんなおかしな話はないんですよね。総理、今一番大事なことは、今起きている殺りくを止めるために、国際社会が結束して停戦を働きかけることじゃないですか。もしかして、アメリカが反対しているから、アメリカが反対しているものには賛成するわけにはいかない、こんなことで棄権に回ったんじゃないんですか。
○岸田内閣総理大臣 今申し上げたように、ハマスへの、攻撃、そして人質拘束、こういったものについて明確に非難する趣旨、これがカナダ案には盛り込まれていました。こういったことから、カナダ案に我が国として賛成をしたということであります。このバランス、今回の中東情勢につきましては、大変微妙なバランスの中に存在いたします。こういった視点も含めて、この決議の内容、この全体のバランスがどうなっているのか、これを総合的に判断することが重要であると認識をしております。
○宮本(徹)委員 ハマスの三文字がないからといって、フランスも同じようなことを言っていますけれども、フランスも名指しの非難があった方がいいという立場だけれども、フランスは決議には賛成していますよ。スペインも賛成していますよ。ノルウェーも賛成していますよ。ベルギーも賛成していますよ。結局、アメリカの顔色をうかがっている、こういうことなんじゃないんですか。パレスチナ、イスラエル双方との独自の関係を築いてきた日本の立場を生かして、暴力を止め、命を守るために力を尽くすべきだ、そのことを強く指摘しておきたいと思います。続きまして、経済対策についてお伺いしたいと思います。岸田総理は、コストカット型の経済から三十年ぶりに歴史的転換を図る、こうおっしゃいました。総理、この三十年、一番何がコストカットされてきたという認識ですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げましたが、デフレの悪循環の中で、賃金、投資、消費、物価、成長、こうしたものがカットされることによって悪循環に陥っていたと認識をしています。是非、この悪循環を断ち切って、成長と分配の好循環に移行していくことが重要であると認識をしております。
○宮本(徹)委員 一番初めに賃金を挙げられたように、賃金が一番カットされてきたわけですよね。日本はこの三十年間、先進国で唯一賃金が上がらない国になってしまいました。ここを変えなければなりません。どうやって賃金のコストカットが進められてきたのか。リストラであり、非正規雇用の拡大なわけであります。非正規雇用は、雇用者全体の三七%にもなっております。これを後押ししてきたのが歴代の自民党政権です。労働者派遣の自由化など、労働法制の規制緩和を行って非正規雇用を広げてきました。総理、反省が必要です。総理、コストカット型経済の転換のためには、非正規雇用を広げてきた政策を抜本的に転換する必要がある、この自覚はおありですか。
○岸田内閣総理大臣 デフレの悪循環が続いたその背景として、リーマン・ショックを始め様々な経済危機に見舞われた、その中で、民間企業を含めて、それぞれが生き残るために苦労した、こうしたデフレの悪循環が続いてきた時代が続いたと認識をしています。だからこそ、アベノミクスにおいて、デフレではない状況をつくり出そうということで、GDPを高め、雇用を拡大する努力を続けました。女性や高齢者の就労参加、こういったものも進めてきました。そして、岸田政権に入ってから、同一労働同一賃金の遵守徹底、あるいは非正規雇用労働者の正社員化、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保する観点からも進めてきた、こうしたことであります。是非、今回の経済対策においても、こうした同一労働同一賃金の更なる遵守、そして、在職中の非正規雇用労働者に対するリスキリング支援の創設、あるいは正社員化に取り組む事業主を支援する、こうした具体的な政策を盛り込んでいきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 反省が一言も語られないんですね。何か自然現象のようにデフレが続いたわけじゃなくて、デフレを促進するような雇用政策をやってきたんじゃないのか、それを転換する必要があるんじゃないのかということを私は申し上げているわけです。正社員化はしなきゃいけない、その認識は総理、お持ちだと思うんですけれども、では、具体的にただしていきたいと思います。この間、有期契約の出口規制として、無期転換ルールができました。有期契約が更新されて通算五年を超えたら、労働者の申込みによって、期間の定めのない雇用に転換ができます。無期転換ルールがスタートして、有期雇用の比率は、パネルにありますように、若干、三%ちょっと下がりました。ところが、この二年は二五%前後で下げ止まっている状況なわけですね。依然として雇い止めが多く、相談件数も減っておりません。企業の中には、無期転換ルールが適用されないように雇用上限を五年までにしている、こういうところも少なくなく、あるわけですね。一方、ヨーロッパの多くの国では、有期雇用については入口規制をやっています。有期雇用は合理的な理由がある場合に限定して、臨時的な仕事などに限っております。常時ある仕事は、正規雇用、無期雇用を原則にしております。総理、ここはやはり、歴史的転換と言っているんですから、日本でも有期雇用の入口規制を行うべきではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 有期労働契約については、二〇一一年に、労働契約法の改正内容について労働政策審議会で検討を行いました。その際に、合理的な理由がない有期労働契約の締結を禁止するいわゆる入口規制の導入、これも議論を行いました。そして、雇用機会の減少などの懸念があることを踏まえて、導入すべきとの結論に至らなかった、こういった経緯がありました。他方、公労使の三者で丁寧な議論を行った結果として現行の無期転換ルールが定められており、引き続き、こうしたルールが適切に運用されるよう取り組むとともに、希望する方が正社員として就労することができるよう、正社員化に取り組む事業主への支援、これを講じていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 今のルールを幾ら適切に運用しても、そもそも、そのルールを、適用から逃れる運用をしている企業があるわけですから、どうにもならないじゃないですか。だから入口規制が必要じゃないかということを私は申し上げているわけですね。従来どおりの答弁をさっきされたわけですけれども、せっかくコストカット型経済から歴史的転換をするというんだから、どうやったら二五%で下げ止まっている非正規の有期契約の皆さんが正社員になれるようになるのか、もっと法改正も含めて私は考えるべきだと思いますよ。大変消極的ですよ。この間、このグラフを見てもはっきりしているのは、出口規制だけでは有期雇用はなかなか減っていかない。やはり入口規制をして、有期契約の濫用を抑制していく必要があるということを申し上げておきたいと思います。加えて、もう一点お伺いしたいと思います。これはパネルを御覧いただきたいと思いますけれども、配偶者のいない非正規雇用労働者の所得分布でございます。女性では年収二百万円未満が約六割を占め、三百万円未満が九割以上となります。男性でも年収三百万円未満が八割。今、物価高で大変厳しい生活になっています。私たち日本共産党は、最低賃金について、時給千五百円ということをかなり前から申し上げてまいりました。時給千五百円にすれば、フルタイムで年収三百万円になるわけですよ。底上げがどんと図れる状況になります。月でいえば手取り二十万円ぐらいになるわけですね。総理も、この夏、ようやく、最低賃金時給千五百円を目指していくということをおっしゃいました。ところが、二〇三〇年代半ばというんですよね。余りにも遅過ぎますよ。物価高で国民は本当に大変なんですよ。何で二〇三〇年代半ばなんですか。
○岸田内閣総理大臣 最低賃金につきましては、最低賃金法に基づいて、労働者の生計費等を考慮しつつ、着実な引上げを行っていく、こういったために、公労使三者構成の最低賃金審議会の議論が存在いたします。この審議会で毎年賃上げ額について議論をしていただく、この積み重ねによって、二〇三〇年代半ばに全国加重平均が千五百円となるよう目指していきたいと考えております。こうした議論の中で、最低賃金のありよう、公労使それぞれの立場から、どうあるべきなのか、これを議論していくことが重要であると思っています。そして、政府としては、その環境整備として、三位一体の労働市場改革、あるいは中小企業の省力化投資など、生産性を上げる構造的な改革や価格転嫁対策、これを進めていきたいと考えております。最低賃金について、こうしたそれぞれの立場の中で議論が積み上がっていくこと、これを目指していかなければならないと考えています。
○宮本(徹)委員 何か公労使の議論に委ねるかのような発言で、総理が指導力を発揮して何かやっていくという姿勢が全然見えないんですよね、もちろん公労使の議論は大事ですけれども。今年、四・三%最賃を引き上げましたよね。毎年四・三%引き上げたら、二〇三〇年代半ばよりももうちょっと早く実は千五百円になるんですよね。ということは、今年の最賃引上げペースよりも落とすということを、この二〇三〇年代半ばというのは、総理、言っていることになるんですよ。本当に最賃引上げに後ろ向きと言わなければならないと思います。大体、総理は本会議で、国民民主党の玉木さんの質問の答弁でこう言っていたんですよね、賃上げにあらゆる政策手段を集中的に講じていきたいと。二〇三〇年代半ばに千五百円というのは全然集中的じゃないですよ。海外の最低賃金を見てくださいよ。フランス、イギリス、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、最低賃金、時給二千円前後、こういうところまでなっているわけですよね。こういうところまですぐにやれとは言いませんけれども、千五百円ぐらいは速やかにやらなきゃいけないと思うんですね。これは、働いている側の立場からしたら、当然の、必要な金額だと思います。ただ、その際には、事業者は支援が必要になります。事業者は最賃引上げの直接的な支援を求めております。今年の中央最低賃金審議会の公益委員見解にこうあります。赤字法人においても賃上げを促進するため、更なる施策を検討することも必要である、更なる施策を検討せよと。地方最低賃金審議会の答申でも、四十一都道府県が中小企業への支援策を求めています。そして、二十五県が税、社会保険料の減免を求め、昨年よりもこの数は大きく増えております。総理、賃上げにあらゆる政策手段を講じていくんだ、集中的に講じていくんだというんですから、最低賃金引上げについてもこれまでにない大規模な支援をどんと行って、思い切って最低賃金を引き上げる、ここに踏み出すべきじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 まさに委員御自身が御指摘されたように、この最低賃金の議論においては、働く方々、労働者の立場もありますが、地方の多くの中小零細企業を始め、事業者の立場にもしっかりと議論を広げていかなければならないと考えています。ですから、公労使三者の議論が大事だと申し上げています。そして、事業者の立場ということで、先ほど申し上げました、政府の対策として、中小企業の省力化投資支援ですとかあるいは価格転嫁対策、こうしたものをしっかりと環境整備として進めていく、そういったことによって、事業者の立場からも、最低賃金、この引上げに向けてしっかりと対応できる環境整備を進めていくことが重要であると考えています。
○宮本(徹)委員 だから、価格転嫁対策は大事ですよ。もちろんそれは大事ですよ。省力化投資も大事ですけれども、もっと大胆な、大規模な支援が必要じゃないかというのが、最低賃金審議会で中央からも地方からも上がっているじゃないですか。なぜ、あらゆる政策手段を集中すると言いながら、そんなしょぼしょぼの支援しか出てこないんですか。私は、毎年二兆円規模、五年間で十兆円の、最賃引上げに当たっての事業者への支援をやろうということを何度も提案していますよ。そういう規模での支援をやって、事業者の皆さんも働く側も、どっちもウィン・ウィンの形で最低賃金を引き上げていく、これを目指すべきじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 事業者の立場にも配慮して環境整備に努めなければならない、これは御指摘のとおりであります。だから、今回の経済対策においても、供給力の強化、すなわち企業の稼ぐ力、これを伸ばさなければならないということで、様々な政策を用意して経済政策の中に盛り込んでいく、こういったことを申し上げております。そして、その中にあっても特に中小零細企業に対する様々な支援が必要であるということで、省力化対策ですとかあるいは価格転嫁対策ですとか、こうした対策が重要であるということを申し上げています。是非、経済対策全体の中で、事業者に対する支援もしっかり用意することによって、結果として賃金が引き上がる、こうした目標に向けて前進できるよう努力をいたします。
○宮本(徹)委員 ですから、省力化対策だとか価格転嫁対策だって大事だとは認めますよ。でも、その程度の支援では、最低賃金を思い切って上げられないじゃないですか。もう本気で、やはり、あらゆる政策手段を集中的に講じていくというんだから、本気で最賃引上げ、賃金引上げ、そのための事業者への支援も含めてやっていただきたいと思いますよ。コストカット型経済から歴史的転換をするんでしょう。歴史的転換じゃないですよ、総理の言っている中身は。従来の延長ですよ、はっきり言って。何かいろいろ言っていますけれども、次に行きます。もっとひどいコストカットは、公務労働でございます。地方自治体では、正規職員が十五年間で二十八万人減りました。非正規職員は二十四万人増えました。賃金総額は二兆円以上カットということになっております。市区町村では非正規職員が四割を超えております。総理、民間には非正規労働者の正社員化を求めながら、政府、自治体が非正規雇用を広げるというのは、これは筋が通らないと思うんですね。時給で比べると、非正規は正規の四三%、これは民間以上の格差があります。昇給には上限が設けられて、大体数年で頭打ち。四人に三人が年収二百五十万円以下となっています。そして、任用は会計年度単位。自分の就いているポストが、毎年、三年ごとなどに公募にかけられます。現職が公募に応じても任用される保証はなくて、雇い止めの不安を持ちながら働いている。はむねっとという団体の調査では、長く勤めてきた人ほど雇い止めになる傾向があると表れております。これはメディアでも報じられましたけれども、今年三月末で二十二年勤めてきた図書館の司書が雇い止めになりました。毎年新たに出版される児童書数千冊を読んで、学校に推薦リストを提案してきた。経験も積んで、専門性を持った方です。こういう方が雇い止めになるというのは、子供にとっても市民にとっても本当に損失だと思うんですね。総理、コストカット型経済から転換するんだ、そう言うのであれば、非正規公務員も、正規化、待遇の抜本的改善、これに戦略方針を持って政府として取り組んでいく必要があると思うんですが、いかがですか。
○武見国務大臣 恐らく同じ趣旨の話だと思いますけれども。公務員の中で、実際に非正規職員を、どのように増やしていくかという御質問の中で、具体的事例として、ハローワークの件を御説明しようと思っているんです。(発言する者あり)
○小野寺委員長 大臣、今の質問に対して御答弁できますか。今の、御答弁できますか。それでは、総務大臣鈴木淳司君。
○鈴木(淳)国務大臣 地方自治体の運営は任期の定めのない常勤職員を中心とすることが原則でありますが、多様化する行政需要に対応するため、各団体におきましては、常勤職員に加え、非常勤である会計年度任用職員等が地方行政の重要な担い手となっていることを認識しております。会計年度任用職員の給与につきましては、令和二年度の制度導入時から、期末手当を支給できることとしております。本年五月の地方自治法の一部改正によりまして、令和六年度から勤勉手当を支給することができるなど、適正な処遇の確保、改善に取り組んできたところであります。いずれにしましても、女性が多くの割合を占める会計年度任用職員の任用の適正化や処遇の改善については、今後ともしっかりと対応してまいります。
○宮本(徹)委員 勤勉手当を出すのも大事ですけれども、勤勉手当を出したからといって、基本給のところでの巨大な格差は残ったままなんですよね。賃金が途中から上がっていかないわけですよ、会計年度任用職員の皆さんは。ですから、ここを私は変えていかなければならないということを先ほど申し上げたわけですよ。これは、総務大臣がそういう姿勢ですからね。でも、総務大臣は、常時ある仕事は常勤だという話をされましたよね。常時ある仕事が会計年度任用職員になっているんですよ、様々な仕事が。これはちゃんと総理がイニシアチブを発揮してやらないと直らないですよ。総理、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 今総務大臣から答弁させていただきましたように、会計年度任用職員については、制度がスタートした段階から期末手当の支給を可能とし、勤勉手当についても令和六年度から支給できるよう法改正を行うなど、改善に取り組んできたところであります。地方自治体において、常勤職員に加えて、非常勤である会計年度任用職員などが地方行政の重要な担い手となっている、こういった状況もしっかり念頭に置きながら、会計年度任用職員の処遇の改善に努めなければならない、このように思っています。そして、女性が多くの割合を占める非常勤職員の任用の適正化、そして処遇の改善、今後とも対応してまいります。
○宮本(徹)委員 処遇の改善ということを言われるわけですけれども、私は、やはり基本は、常時ある仕事は正規にすべきだというふうに思うんですね。非正規の割合を見ると、保育士でいうと五六%、図書館職員は七三%、スクールソーシャルワーカーでいうと九四%。会計年度任用職員の皆さんが担っている職種は、専門性や継続性が求められる職種も多いわけですよ。例えば、引きこもり支援の職員に、自分は翌年度は関われないかもしれない、こんなことを思わせながら働かせるというのは、私は間違っていると思いますよ。国会でも決議が上がっているんですね。例えば、消費生活センターの消費生活相談員、二〇〇九年の国会の附帯決議にこう書いていますよ。正職員化を含め雇用の安定を促進するための措置を早急に講じること、こう決議があるんですけれども、その後も非正規は増え続けて、消費生活相談員の八三%が今非常勤ですよ。総理、国会決議にも背く事態で非正規がどんどんどんどん広がっている。やはり国として、財源の手当ても含めて、ちゃんと正規雇用の責任を果たすべきじゃありませんか。
○自見国務大臣 消費生活相談員は、地方消費者行政の立場で消費者からの直接の相談に対応するなど、重要な役割を担ってくださっております。消費生活相談は自治事務でございまして、消費生活相談員の任用は、地方公務員法等に基づき、各自治体で検討されるものではございますが、その職務と能力に見合った処遇となることが非常に重要でございます。そのため、消費者庁といたしましても、御指摘の平成二十一年の附帯決議も受けまして、平成二十六年に消費者安全法の改正を行いまして、消費生活相談員の職が専門職であることを法律で明確に位置づけをさせていただいたところでもございます。この改正を踏まえ、その職務と能力に見合った適切な処遇を講じていただけること等を、地方公共団体に対し、繰り返し働きかけを行ってきたところでございます。消費者庁といたしましては、相談員の処遇改善に向けて、引き続き、粘り強く自治体への働きかけも行うこととともに、地方消費者行政強化交付金を通じた支援などもしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 やはりちゃんと、これは正規の職ですということで、地方交付税で対応を取って正規化を進めるというのはやらなきゃ駄目ですよ。進まないですよ、その程度では。加えて、自治体で非正規公務員の四人に三人は女性でございます。女性が多くを占める専門的な資格職ほど非正規化が進んでおります。これは間接的な男女賃金差別と言っていいと思うんですね。国家公務員についても今日はパネルを作ってきました。省庁ごとの男女賃金格差です。非正規の女性が多い省庁ほど、男女の賃金格差が大きい。外務省がよく見えるけれども、これは何か数字が間違っていて訂正発表があったそうなので、八二・何%が正しいという数字だそうです。典型的なのは厚生労働省ですよね。ハローワークの職員が非常勤が大変多い。三年に一度、自分のポストが公募に出される。ハローワーク職員が不安定雇用というのはブラックジョークにもならないですよ。総理、男女賃金格差の是正の観点からも、非正規公務員の正規化を思い切って進める必要がある、このことを強く求めておきたいと思います。時間との関係で、次に進ませていただきたいと思います。パネルを御覧いただきたいと思いますが、加えて、これは民間の企業の男女の賃金格差。経団連役員企業を見ても、女性の賃金が男性の四割、五割のところも少なくありません。そして、赤いアンダーラインを引いているところが賃金格差の要因を説明していない企業なわけですけれども、そういうところも多数あるわけです。私たち日本共産党の提案に応じていただいて、男女の賃金格差の公表が始まったのは非常に大事な取組だと思います。次のステップとして、総理、対象企業を拡大することと併せて、企業に、男女の賃金格差の要因を分析すること、そして格差是正の計画を持つこと、これを義務づけるべきじゃないかと思うんですけれども、総理のイニシアチブで取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘のように、昨年七月、女性活躍推進法に基づいて、従業員が三百一人以上の企業を対象に男女間賃金格差の公表、これを義務化したところです。今後、その施行状況をフォローアップし、開示義務の対象拡大の要否、これを検討することとしております。これに加えて、厚生労働省において、公表義務の対象となる各企業に対して、男女間賃金格差の要因分析、そして改善に向けたアドバイスなどのコンサルティング、これを実施していると承知をしています。これらの取組を通じて、男女間賃金格差の是正を図り、女性の所得向上、経済的自立、これを図ってまいります。
○宮本(徹)委員 厚生労働省がお手伝いするのも大事ですけれども、やはりちゃんと法的枠組みをつくって、賃金格差是正自体そのものを進める実効ある仕組みを設けていただきたいということを思います。加えて、男女の賃金格差の要因は、先ほど来議論してきた、女性に非正規雇用が多い。それから、管理職比率が女性は低い。コース別採用の問題もあります。背景には、家事、育児という無償労働の女性への偏りという問題もあります。これを一つ一つ是正していくのが大事です。あわせて、日本は説明のできない男女賃金格差が大きい国だと指摘されております。メルカリという会社が自社の賃金を重回帰分析したら、客観的要因が特定できない説明のできない格差が七%あったというんですね。そこで、報酬調整を実施して、二・五%にまで格差を縮めたということがありました。海外では、スイスが、勤続年数や職種などが同じなのに男女賃金格差がないか、企業が自己診断できる計算ツールを提供しているんですね。ドイツなどにもこういう取組が広がっております。総理、男女賃金格差を自己診断できる計算ツールを提供して、格差を是正する取組を政府として進めるべきではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 男女の賃金格差については、先ほど申し上げた公表義務化を行った上で、その対象拡大を検討している、こういったことでありますし、厚生労働省において、各企業に対して、要因分析ですとかコンサルティングを行っている、こうしたことであります。このように、男女の賃金格差について是正を図るべく環境整備を行っているということであります。今委員の方から、ツールを使ったらどうかという御提案でありますが、より男女賃金格差是正を図る上でどんな取組が効果的なのか、こうした議論は政府としても検討を続けていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 具体的な提案をさせていただきましたので、しっかり検討していただきたいと思います。次のテーマに行きます。もう一つコストカットされてきたのが社会保障であります。今、介護、障害者福祉、保育、あるいは医療、人手不足が極めて深刻です。今年の春闘も医療や介護の分野は置いてきぼりで、介護職の賃金は全産業平均よりも七万円低い状況です。ヘルパーの有効求人倍率は十五倍ということです。地元の訪問介護事業所でも、若い人はもう入ってこないわけですね。平均年齢六十三歳、上は八十歳、下は四十九歳、体力の要る身体介護ができる人が減ってしまって、もう介護ニーズに応え切れないと悲鳴が上がる状況でございます。私は、これは賃金を全産業平均並みに速やかに引き上げる必要があると思います。ところが、来年度の介護職等の賃上げはたった六千円と報道されたわけですね。公務員の初任給は今度一万二千円引き上げるんですよ。何で半分なんですか。総理、ケアワーカーの人材確保のためには賃金を全産業平均並みに引き上げる必要がある、この認識はございますか。
○岸田内閣総理大臣 医療、介護、障害福祉、保育分野における賃上げ、そして人材確保、これは重要な課題であり、岸田政権としても、公的価格の見直しを掲げ、そして累次の処遇改善を講じてきました。引き続き、ICT機器活用による生産性向上、あるいは経営の協働化を通じた職場環境改善、こうした取組に加えて、令和六年度同時改定に向けても、必要な処遇改善の水準を検討していきたいと考えております。加えて、数字だけではなくして、そうした処遇改善が現場の方々に構造的につながる仕組みも構築していかなければならない。こうした取組を続けることによって、介護を始め現場で働く方々の処遇改善を考えていきたいと思っています。
○宮本(徹)委員 聞いたことにお答えになっていないんですけれども、全産業平均並みに引き上げる必要があるのではないかと言っているんですけれども、そこを目指すという立場に総理は立たれないんですか、立っているんですか。
○岸田内閣総理大臣 具体的な数字は厚労大臣から答弁させていただきますが、こうした公的価格と呼ばれる処遇改善についても、社会を支える上で大変重要な賃上げであると認識をしています。他の全体の賃上げ状況も念頭に置きながら、こうした賃上げも考えてまいります。
○宮本(徹)委員 全産業平均並みに引き上げる必要があるという認識を示されないのは極めて残念ですね。そこまで引き上げないと人材流出は止まらないですよ、人の確保はできないですよ。真剣に考えていただきたいと思います。やはりそういう分野の方々の人材をしっかり確保するというのは、高齢者や障害者の皆さんの尊厳ある暮らしを支える上で不可欠なんですよ。そこの認識を持っていただきたいと思います。加えて、物価高騰などによる事業者の経営悪化も深刻であります。特養ホームも六割が赤字で、私の地元を回っていましても、修繕の積立てもできない、こういう状況であります。一方、介護や障害者福祉の報酬改定は三年に一度、診療報酬の改定は二年に一度ということになっているわけですね。その間に物価が上がる、最低賃金が上がる、経営が悪化する、賃上げは置いてきぼりになるということになっているわけですね。私は、今までのこの三年、二年というやり方でいいのかと思うんですね。インフレ局面ですから、物価高騰や最賃引上げだとか、こういうものを踏まえてしっかりと毎年基本報酬を引き上げていく、こういう改定方法を考える必要があるんじゃないかと思いますが、総理、いかがですか。
○武見国務大臣 御質問の件でありますけれども、実際に、今回、補正の中で、改めて総合経済対策の中で、こうした介護労働者等に関わる処遇については、重要な柱としてその中に組み込まれておりまして、これをまず補正で進めることを通じて、その後の同時改定の中における改定結果と結びつけて、こうした介護労働者に関わる処遇というものをより安定した形で確保するという考え方でございます。
○宮本(徹)委員 補正で対応するのは当然必要ですよ、早急に。今、賃上げもできない状況で、本当に経営がピンチなんですから。それで、同時改定で対応するのも当然ですけれども、インフレ局面なんですから、今後の改定の在り方として、三年に一回、二年に一回というのでいいのかということ自体を考え直す必要があるんじゃないかということを言っているんですよ。これは総理に。
○岸田内閣総理大臣 まず、たちまちは介護人材等に対する処遇改善、今、厚労大臣の答弁にありましたような対策で臨んでいきたいと存じます。そして、今後に向けて、同時改定の在り方、要は、診療改定の間隔の問題、これについて御提案でありますが、今インフレ局面に入ったとおっしゃいましたが、今まさに、デフレ脱却に向けて総力を挙げて経済対策を用意しなければいけない、こういった局面であります。まずはそこに専念をした上で、将来についても考えていくべきではないかと考えます。
○宮本(徹)委員 これは是非真剣に考えていただきたいと思います。その上で、最後のテーマに入っていきますけれども、本来、賃上げで予算をたくさん確保しなければいけない医療や介護、福祉の分野ですけれども、総理は、少子化対策の財源として、この分野を名指しして歳出カットをしようとしているわけであります。とりわけ、介護保険の利用料の二割負担の対象拡大というのが検討が進んでおります。パネルを御覧いただきたいと思います。これは、年金生活者の実質可処分所得の推移なんですね。この間、年金削減、それから社会保険料の引上げ、消費税の二度の増税、物価高騰で、年金の実質的な価値というのはもう本当に大きく目減りしている状況です。二〇一一年、年金が百八十万円あった方、当時は、可処分所得は社会保険料を引いた百六十九万五千円だったわけですね。これが、実質化したら二〇二三年は百四十六万円の価値しかない。二十三万円も目減りしているという状況なんですね。こういう状況の上に、介護保険の負担を二倍化したら、必要なサービスを我慢せざるを得ない、あるいは配偶者が困窮する、高齢者の尊厳が守れない、こういう事態になると思うんですね。これは、総理、やめるべきじゃありませんか。
○武見国務大臣 今の御質問です。高齢化と人口減少という大きな社会の変化を迎えている中で、介護保険制度が全ての世代にとって安心なものとなるよう、サービスの質を確保しつつ、制度の持続可能性を維持することは重要な課題であるという認識をまず述べておきます。こうした観点から、介護保険における利用者負担の在り方については、骨太の方針二〇二三において年末までに結論を得ることとしておりまして、社会保障審議会介護保険部会において昨年秋から丁寧に議論を重ねています。これまでも、生活への影響を踏まえて慎重に検討すべきことであり、負担能力のある方には適切な負担を求めることも重要といった様々な御意見をいただいております。引き続き、利用者が必要なサービスを受けられるよう、様々な御意見をしっかりと聞きながら、丁寧に検討を進めたいと思います。
○宮本(徹)委員 もう一つのパネルを御覧いただきたいと思うんですけれども、昨年十月から、七十五歳以上の医療費の窓口負担、年収二百万円以上の方が二倍になったんですね。これは厚労省が調べたら、くっきり受診抑制が起きているんですね。収入が多いはずの二割負担の人の方が、去年の十月を境に一割負担の人よりも受診が少なくなっているわけですね。これは、私、この場でも当時質問したことがありますけれども、当時、年金年収二百万円の人は余裕があるといって、高齢者の医療費の窓口の二倍化をやったわけですよ。しかし、余裕などなかったというのは明白だと思いますよ。年金年収二百万円だとか、こういう方に余裕がないのははっきりしているんじゃないですか。介護保険の利用料の二割負担はやめるべきだと思いますが、総理は、年金年収二百万円の方々に余裕があるとお思いですか。総理の基本的な認識をお伺いしたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 介護保険制度の議論においては、サービスの質の確保と、そして制度の持続可能性を維持すること、これが重要な課題であると思います。その議論の結果、御指摘のような対応を考えたということであります。それぞれ厳しい環境の中にあるわけでありますが、サービスの質の確保、そして制度の持続可能性、これを維持することが制度の利用者にとっても大切であると考えております。利用者負担の在り方については、今後とも、骨太の方針二〇二三において年末までに結論を得るということにしております。是非、必要なサービスの維持のためにどうあるべきか、議論したいと思います。
○宮本(徹)委員 余裕があるというお答えはさすがにできないわけですよね。制度の持続可能性と言いますけれども、こういう事態ですから、暮らしの持続可能性こそ、私は総理が考えなきゃいけないことだと思います。社会保障コストカットは転換すべきだ、年金は増える年金に改革すべきだ、介護保険は利用料を引き上げるんじゃなくて国庫負担を引き上げるべきだ、このことを強く求めて、質問を終わります。
○小野寺委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。